FATE/BiOHAZARD   作:ダイアジン粒剤5

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テイロス

 体躯と同じほどもある巨腕を使い、人の腕程もある巨爪を地に食い込ませて這い進んでくる変異テイロス。

 その体当たりと腕のひと薙ぎは、サーヴァントなら兎も角人間である藤丸には一撃で致命傷となるだろう。

 

 「副長!!」

 

 それを避けるため、テイロスを止めるべく飛び出す土方歳三の影。

 刀を振りかぶり斬りかかる土方に対し、テイロスも突進の勢いを乗せた巨腕の一撃を見舞う。

 エミヤを吹き飛ばした一撃を遥かに超える、サーヴァントですらまともに受ければ重傷は免れない怪物の一撃。

 

 ――土方は其の一撃を正面から完全に受け切り、テイロスの突進を止めた。

 

 土方の宝具『不滅の誠』は、発動中に負う肉体損傷による身体能力の劣化を一時的に無効化する。

 ボロボロになり退去寸前になりながらも、土方という英霊の全力はマスターの命を刈り取りかねないテイロスの突進を止めたのだ。

 

 そうして動きを止めたテイロスに対し、エミヤとピアーズは一斉射撃を浴びせかける。

 エミヤは投影した弓により矢を、ピアーズはありったけの弾丸を。

 変異前に全身を覆っていた装甲は既にエミヤにより剥ぎ取られており、今のテイロスは生身である。

 肥大化した筋組織と骨格により致命傷には至らないが、それでも傷を負う事は避けられない。

 

 ――テイロスは怒気を含んだ唸り声をあげ、背中の触手を持ち上げ深紅の光線を放った。

 

 エミヤとピアーズは光線を躱し、斎藤一の影は藤丸へと向かって来た光線を刀で弾く。

 弾かれた光線は地を焦がし、コンクリートで固められた地面を溶かす。

 通常の生物では有り得ない、熱線攻撃。

 テイロスは最早人の造り出した生体兵器などという範疇には無い、神話伝承の世界に息づく類の怪物へと進化を遂げていた。

 怪物は人という種の天敵、人が敵う相手ではない。

 

 ――だが、そんな怪物を倒してきたからこその英霊でありサーヴァントである。

 

 エミヤとピアーズはテイロスの攻撃を躱しながらも即座に体勢を立て直し、矢弾の雨を浴びせかける。

 そして斎藤一の影は既に光の粒子となって退去した土方に代わりテイロスに近接し、その体を滅多斬りに。

 既に装甲のないテイロスでは斎藤の斬撃を弾くことは出来ず、その身に数多の裂傷を負う。

 テイロスは斬られる痛みから両腕を振るって斎藤を払い除けようとするが、変幻自在の自由の剣たる斎藤を捉えることは出来ず傷ばかりが増えていく。

 とはいえ、斎藤の攻撃でテイロスが致命傷を負うことはない。

 斎藤の斬撃はテイロスの体表を傷つけるだけで命には届かず、与える傷もテイロスの驚異的な再生力により即座に塞がっていく。

 

 ――しかし、最も危険な光線を放つ触手は全て切り落とされた。

 

 また痛みはテイロスから冷静な思考力を奪い、意識を眼前の3人のサーヴァントに固定する。

 サーヴァント達にとっての最大の弱点。

 倒れた警官と治療を行っているアスクレピオスを守るため、その場から動くことが出来ない藤丸(マスター)を狙うという発想をテイロスから奪う。

 

 ――時間にして十数分。

 

 テイロスはその驚異的な生命力により三騎のサーヴァント達の攻撃に耐え抜き、巨大な両腕を振り回し暴れ回った。

 しかしサーヴァント達を倒すことは出来ず。

 底無しに思えた生命力も遂に尽き、テイロスは生命活動を停止した。

 

 

 

 「……とんでもない化物だったな」

 

 力尽き地に倒れ伏したテイロスの頭に止めのショットガンを撃ち込み、完全に息の根を止めた事を確認したピアーズはそう愚痴る。

 

 「確かにな。 サーヴァント三騎を相手に渡り合う、こんな怪物が人の手で造り出されたのかと思うとゾッとする。 こんな化物が兵器として暴れ回る世界など、決して認めるわけにはいかない。 何としてもこの特異点は修正するぞ、マスター」

 

 光の粒子となって退去していく斎藤の影に感謝の言葉を告げていた藤丸はエミヤに向き直り、力強く頷いた。

 

 「うん、必ず特異点を修正しよう。 ――それでアスクレピオス、その人は大丈夫?」

 

 「……施術は完了した」

 

 戦闘中、ずっと黒人警官の医療を行っていたアスクレピオスは短く答える。

 

 「実に興味深く、そして難しい施術だった。 ……ああ、安心しろマスター。 峠は越えた、恐らく助かるだろう」

 

 アスクレピオスの答えに、藤丸は安堵の息を漏らす。

 

 「良かった、助かったんだね」

 

 「ああ。 …………マスターの令呪も、治療の役に立った。 僕としても、常以上の実力が出せた。 ………………治療への協力、感謝する」

 

 出会ってから常に傲岸不遜といった態度を取ってきたアスクレピオスが、感謝の言葉を告げたことに目を丸くするピアーズ。

 そんなピアーズには一切目もくれず、アスクレピオスは言葉を続ける。

 

 「だが、未だ意識は取り戻しておらず油断はできない。 容体が急変する可能性も考慮する必要がある。 ――故に僕は此処に残るぞ。 医者が、完治していない患者の傍を離れるわけにはいかないからな」

 

 断固としたアスクレピオスの言葉。

 戦線離脱を宣言するその言葉に反発の声を上げようとしたピアーズだったが、マスターである藤丸の顔を見てその声を飲み込む。

 藤丸はアスクレピオスの意思を完全に受け入れていた。

 

 「うん、その人をよろしくね」

 

 「当然だ。 ――では、お前たちは早く地下へ向かうといい。 そのための扉は、奴らが抉じ開けてくれたようだしな」

 

 アスクレピオスの指示した先には在るのは、テイロスのロケット弾により崩壊した警察署のエントランス。

 特に元々彫像が立っていた場所は激しく破壊されており、その先には地下へと繋がる階段が続いていた。

 

 「それとマスター、これを持っていけ」

 

 そう言うとアスクレピオスは、白く輝く液体の入った小瓶を藤丸に手渡す。

 

 「これは?」

 

 「今完成したばかりの新薬だ。 効能は――」

 

 アスクレピオスからの説明を聞く藤丸。

 一方エミヤとピアーズの二人は、地下へと続く会談へと視線を向ける。

 

 「では、私が先行しよう。 黒幕の潜む(NEST)に、乗り込もうじゃないか」

 

 階段へと向かうエミヤ。

 藤丸とピアーズも、その後に続く。

 

 ――3人は地下に建設された研究所へと向けて、闇の中へ消えていった。

 




次回投稿予定は8月2日です。
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