FATE/BiOHAZARD   作:ダイアジン粒剤5

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スペンサー

 

 ――警察署の地下道は、情報通り地下の下水道へと繋がっていた。

 

 そして予想通り地上に戦力を集中させている分下水道に配備されている守りは手薄で、せいぜいハンター程度。

 ただ研究所へと続くモノレール道となるとそうはいかず、痩身の怪物たちが襲い掛かってきた。

 

 地上で何度も戦った大男タイラントが、瘦せ細ったような姿。

 

 巨大化した両手の指がミミズのような触手に変異しており、それを鞭のようにしならせ攻撃してくる。

 ハンターとは比べ物にならない強敵。

 しかし、サーヴァント二騎を止められるほどの怪物ではなかった。

 体の前面はピアーズの全力砲火を受けても攻撃を続けられるほどに頑丈だったが、無理な変異の影響か首筋に未知の臓器が剝き出しで形成されている。

 そこを攻撃することで怪物は大量出血。

 難なく撃退し、3人は先に進んだ。

 

 

 ――そして目的地。

 

 ラクーンシティ地下最奥部、秘密研究施設『NEST Ⅰ(ネスト ワン) 』。

 乳白色の肉塊が壁や天井、廊下にまで縦横無尽に網目状に纏わり付いた近代施設という異形の地。

 

 「化物の臓物だな、まるで。 マスターは大丈夫か?」

 

 「うん、慣れてるから」

 

 藤丸の答えに目を丸くするピアーズ。

 そんなピアーズに、エミヤが苦笑いを浮かべながら話しかける。

 

 「心配は無用だよ、ピアーズ。 このマスターが超えてきた修羅場の数は、神代の英霊にも引けを取らない程だ。 今更この程度で動じることは無いさ」

 

 ――あまり良い事ではないがね、と続けようとしところで、館内のスピーカーが雑音を流す。

 

 『ようこそ、NESTへ。 歓迎しよう、異界からの来訪者たちよ』

 

 しわがれた、他者を見下す傲慢さに満ちた老人の声。

 その声の主が誰か、三人にはすぐに分かった。

 

 「スペンサーか!」

 

 『その通り、私はオズウェル・E・スペンサー。 新世界の創造主にして、その新たなる地に君臨する神だ』

 

 正気で放たれる、狂気の言葉。

 その言葉に怒気を滲ませると、ピアーズはこれ以上異常者と言葉を交わしたくないとばかりにスペンサーの言葉を無視し、先に進み始める。

 

 「行くぞ、奴を倒すんだ!」

 

 頷き、後に続く藤丸とエミヤ。

 3人は締め切られた扉を破壊し、NESTの深部へと突き進んでいく。

 そんな彼らの前に全身に植物が寄生したかのようなゾンビの群が襲い掛かるが、最強の生物兵器たるタイラントすら退けた彼らの歩みを止めることは出来ず、3人はスペンサーの巣食うNESTの最奥へと歩を進める。

 そしてその間、スペンサーの一方的な自分語りは続く。

 

 『あの裏切り者……。 アルバートの奴に貫かれ、私はあの日死んだ。 だが生と死の狭間の中、私は得たのだ。 この、聖杯を』

 

 『これぞ奇跡、世界は私が神として君臨する新世界を望んでいる。 それが運命なのだ』

 

 『私は聖杯の力を使い、この1998年のラクーンシティに特異点を作り上げた』

 

 『なぜならこの地には、私の理想を実現するために必要な全てが揃っているからだ』

 

 『人類に強制進化を齎すTウイルスを全世界に散布するための最終兵器、ニュクス。 そして選ばれた者だけを新世界に救い出すための箱舟、抗Tウイルス用ワクチン』

 

 『当時は制御に難があったニュクスも聖杯の力があれば完全に制御でき、十分な量を確保出来ていなかったワクチンも聖杯の力で量産できた』

 

 『後はニュクスが完全に成長し塔となれば、このラクーンシティは正しき歴史の1998年アメリカに浮上する』

 

 『そうなれば私の理想の実現まで後一歩だ』

 

 『成層圏にまで成長したニュクスは地球の気流にTウイルスを乗せた胞子をバラまき、ウイルスは全世界に散布される。 ウイルスは人から人へと感染していき、劣等なる者はゾンビとなり淘汰されウイルスに選ばれた優秀な者だけが生き残る』

 

 『無論、ウイルスだけに選別を任せる気はない。 私がこれは、と見込んだ者にだけはワクチンを与え、新世界に迎え入れる』

 

 『ウイルスに選ばれ進化した新人類と、私が選んだ優秀な人間だけが生きる理想郷』

 

 『世界が辿るべき、運命。 私が創り出し、私が神として君臨する新世界はもうすぐそこだ』

 

 『醜き旧世界を守ろうとする旧人類よ、来るがいい』

 

 『新世界の神が、お前たちに引導を渡してやろう』

 

 

 

 NESTの最深部へと至る、3人。

 そこに座すのは、無数の核を備えた乳白色の巨大な肉の柱。

 そしてその前には、車椅子に座った老人が一人。

 その右肩は異様なほど盛り上がっており、巨大な眼球がギョロギョロと蠢いている。

 この老人こそがオズウェル・E・スペンサー。

 アンブレラの総帥にして、世界に悲劇と混乱を齎した元凶。

 

 「何が神だ、狂人め。 お前はただの大量殺戮者で、イカれたテロリストだ」

 

 銃を構えるピアーズ。

 その銃口は、蠢く巨大な眼球へと向けられている。

 

 「……いや、お前はもう、それ以下の存在だ。 その眼球、Gウイルスを接種したな? お前は怪物。 人々に害をなす、生きていてはいけない生物だ」

 

 ピアーズの指先が、引き金を引く。

 

 「くたばれ、化け物!!」

 

 鉛の弾丸が、G生物に向けて放たれた。 

 

 




次回投稿予定は8月9日です。
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