向かってくるエミヤとピアーズに対し、最初に反応したのはネメシスであった。
ネメシスは叫び声をあげ、壁に向かって触手を伸ばす。
そして伸ばした触手を戻した時、その先にはロケットランチャーが掴まれていた。
――目を見開くエミヤとピアーズ。
そこに、タナトスとヒュプノスの二体が襲い掛かる。
タナトスの攻撃を、何とか躱すピアーズ。
躱しざまにマシンガンを撃ち込むが、タナトスの分厚い筋肉は弾丸を全て受け止め怯みもせず、更に剛腕と爪を振るう。
一方、エミヤはヒュプノスの攻撃を正面から受け止めた。
干将莫邪の両剣は、ヒュプノスの黒い巨爪からエミヤの体を守り抜く。
だがエミヤ自身はヒュプノスの肥大化した左腕による攻撃を受け止めきれず、吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。
「カハッ……!?」
肺を圧迫され、息を吐くエミヤ。
その手の干将莫邪は衝撃の大きさから投影の限界を迎え、崩れ落ちる。
「まったく……! パワーだけなら、バーサーカー並みだな。 これで現代技術の産物というのだから、恐れ入る」
愚痴るエミヤ。
その姿にヒュプノスは牙を剥き出しにして跳躍し、左腕を振り上げ更なる追撃を見舞う。
――だが、流石にそれを喰らうエミヤではない。
左腕による一撃を躱しながらも新たに弓と矢を投影し、ヒュプノスの背後に回り込む。
そしてその背びれの生えた背に矢を放ち、矢はヒュプノスの背に当たると同時にブロークン・ファンタズムを起こし大爆発を起こす。
――煙に包まれるヒュプノス。
しかし即座に煙を切り裂き、ヒュプノスは姿を現す。
その身は傷ついてこそいるものの致命傷には程遠く、傷自体も驚異的な回復力によりどんどん塞がっていく。
「タフさも神話の怪物並みか! こんな化物が跋扈する世界など、御免被るな!!」
エミヤの言葉が終わると、ほぼ同時に。
藤丸の眼前で上がる爆炎。
ネメシスが手にしたロケットランチャーから放たれた、ロケット弾。
藤丸を狙って放たれたそれを、景虎が手にした刀槍で撃墜したのだ。
――唸り声をあげ、更にロケット弾を放つネメシス。
しかしそれらは全て景虎により切り捨てられ、撃墜される。
ネメシスは怒りの声を上げ、触手を地面に叩きつけた。
そして次の触手を持ち上げた時、その先に掴まれていたのはガトリング砲。
「させるか!」
ネメシスに向けてマシンガンを撃つ、ピアーズ。
触手を引き千切りガトリング砲がネメシスの手に渡ることを阻止するための銃撃だったが、タナトスの攻撃により銃撃は妨害される。
――そしてガトリング砲は、ネメシスの手に。
ネメシスの雄叫びと共にガトリング砲が唸りを上げ、銃弾の嵐が吹き荒れる。
味方であるヒュプノスやタナトスへの配慮など欠片もない、全体へ向けての徹底的な斉射。
ピアーズはタナトスの巨体を盾に何とか銃撃から逃れようとするが、タナトスは無数の銃弾に貫かれながらも爪を振り上げ攻撃を止めない。
銃弾の雨とタナトスの巨爪の二重攻撃に、遂にピアーズは足を銃弾に貫かれ動きが止まる。
そんなピアーズに止めの一撃を見舞わんと、タナトスは右腕を高々と掲げる。
一方、エミヤは。
咄嗟にロー・アイアスを展開しガトリング砲の斉射から身を守ろうとしたが、タナトスと同じく無数の銃弾に貫かれようと物ともせず攻撃を続けるヒュプノスの左腕による一撃により、エミヤは吹き飛ばされた。
ロー・アイアスは強制的に解除され、無防備となったエミヤの体に無数の銃弾が突き刺さる。
――銃撃の衝撃により、更に吹き飛ばされるエミヤ。
そこでガトリング砲の斉射が止み、致命傷を与えられずに済んだのは幸運だっただろう。
無理な連射による銃身の焼け付き、オーバーヒート。
ネメシスは怒りを込めて唸り、使い物にならなくなったガトリング砲を投げ捨てる。
――とはいえ、エミヤが重傷を負った事に変わりはない。
そこに更に追撃を加えんとする、ヒュプノス。
だがその攻撃は、藤丸を小脇に抱えた景虎の槍の一閃により弾き飛ばされる。
藤丸は身軽な景虎に抱えられることにより、銃弾の嵐を躱し切ったのだった。
「エミヤ、大丈夫?! すぐに回復する!」
身に纏う礼装の力により発動した回復魔術をエミヤの体に流し込み、銃撃により生じた傷を塞ぎ始める藤丸。
だが怪物達も、それを黙って許すほど甘くはない。
ヒュプノスは景虎に襲い掛かり動きを封じ、その隙にネメシスが手にしたロケットランチャーの照準を合わせる。
打ち出される、誘導式ロケット弾。
止める者のいないロケット弾は、確実に藤丸の命を刈り取る――はずだったが、ピアーズの放った雷撃が、それを阻止した。
稲妻により撃墜され、爆発するロケット弾。
爆風から守るため、ピアーズが藤丸とエミヤの前に立つ。
「無事か、マスター!?」
油断なく異形化した右腕を構えながら問いかける、ピアーズ、
その視線の先には、右腕を失い火傷を負ったタナトスが襲い掛かってくる姿が。
「景虎さん!」
藤丸の声に従い、タナトスへと斬りかかる景虎。
そして始まる景虎とタナトスの斬りあいを尻目に、藤丸はピアーズに手の平を向ける。
「ピアーズも、すぐに回復する」
再び礼装を起動する藤丸。
ピアーズはタナトスを振り切るために相当無茶をしたらしく、体はボロボロだった。
「有難うマスター、楽になった」
「ううん、それより体は大丈夫なの?」
初めて出会った時と同じ、異形の姿へと変貌したピアーズを心配し問いかける藤丸。
それに対しピアーズは、快活な笑みを浮かべる。
「ああ、問題ない。 またこんな姿になっちまったが、前と違って体調はいい。 むしろ全身に力が漲ってる。 あの先生の治療のお陰かな」
心配ないと示すように、体を軽く動かしてみせるピアーズ。
そんなピアーズに、同じく傷を癒したエミヤが話しかける。
「医神だからな。 性格はアレだが、腕は確かだろう。 ――だが、良くない状況だな」
怪物たちを睨みつける、エミヤたち三人。
そんな三人を守るように、景虎の影が刀槍を構えて立つ。
その先に立つタナトスは、景虎に斬られ吹き飛ばされ大きな裂傷を負うも、未だ戦意を滾らせている。
その傍らには再び立ち上がり、牙を剥き出しにして唸るヒュプノスが。
奥に立つネメシスは新たに火炎放射器を取り出し装備したらしく、威嚇でもするように炎を放射する。
「一刻も早くスペンサーを追わねばならないが、奴らは強い。 簡単には倒せないだろう。 ここは私が宝具を使って奴らを全員引き付ける。 その間にマスターたちはスペンサーの後を――」
「いや、エミヤは魔力を温存しておいて。 ここは俺が景虎さんの宝具で突破口を開く」
エミヤは、鋭い視線を藤丸に向ける。
「……マスターの魔力は、大丈夫なのか?」
「うん、ここで宝具を使っても、後二回は皆を呼び出せると思う。 それに、エミヤ一人を置いて行ったりはしないよ」
藤丸の断固とした言葉。
その言葉にピアーズは愉快そうに笑い、エミヤは苦笑する。
「やれやれ、仕方ないな。 分かった、マスターの判断に従おう」
「うん、じゃあ、いくよ!」
藤丸は礼装により己の体力・生命力を魔力に変換生成し、生成した魔力を己がサーヴァントたる長尾景虎の影へと送る。
「毘天八相車懸りの陣!!」
宝具の真名が開帳され、景虎の姿が八つに分身した。
次回投稿予定は8月23日です。