FATE/BiOHAZARD   作:ダイアジン粒剤5

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パラサイト

 ゾンビと怪物が蔓延る街を逃げ回ること数時間。

 

 「ここまで来れば……」

 

 藤丸は無数のコンテナが積みあがる広場にたどり着いていた。

 

 最初に襲われた巨大な脳を持つ怪物以外にも、街には多様な怪物たちが徘徊していた。

 ゾンビ化した犬を筆頭に、動物園ででも感染し逃げ出してきたのかゾンビ化したライオンに像。

 それだけならまだしも異様なまでに巨大化したムカデ、クモ、サソリといった昆虫群。

 巨大化した蝙蝠が空から襲ってきた時が一番驚いたかもしれない。

 地獄の蓋が開いたとしか思えない地獄が、街には広がっていた。

 

 「カルデアとの通信はまだできない、か」

 

 手の甲の令呪を撫でるが、やはり英霊たちとの繋がりは感じない。

 カルデアからの通信も、この数時間一切ない。

 英霊の助力を得られずとも連絡が取れ、仲間の助言を受けることが出来れば今後の行動方針を決めることもできるのだが、それもできない。

 現状、ただ闇雲に街を逃げ回ることしかできない。

 この旅を始めて何度目になるかわからない、自分一人では何もできない己の無力さへの悔しさから歯噛みをする。

 

 ――その時。

 遠方のコンテナが何かに持ち上げられ浮き上がり、ソレが自分に向けて投擲される。

 

 「――ッ!」

 

 即座に意識を切り替え、コンテナを避けるべく走り出す。

 

 ――コンテナは背後でものすごい音を立てながらバウンドし、辺りには土煙がまった。

 

 「あれは!?」

 

 目を凝らし、コンテナが飛んできた方をを見る。

 コンテナを投げつけてきた怪物が、その姿を現していた。

 

 包丁のような爪の付いた巨大な片腕を持つ、異様に青白い肌をした身長3メートルはあろうかという大男。

 その背からは自身の体よりも大きく長い昆虫の足のようなものが、複数飛び出している。

 これまで旅した数多の特異点や異聞帯でも見たことが無い、異形の怪物。

 

 怪物は一声吠えると、背から生えた巨大な昆虫の足を起用に使い向かってくる。

 

 「くっ……!」

 

 今までと同じように、風魔小太郎から教わった忍者の体術を駆使して逃げる。

 

 しかし怪物の機動力は、今までの他の怪物とは格が違った。

 

 背から生えた複数の足を使った移動は早いだけでなく、爪を各所に引っ掛けることで三次元の立体的な機動を可能にしている。

 更に巨大なコンテナを投げ飛ばしてきただけあり、パワーが凄まじい。

 生半可な障害物はひと薙ぎで破壊され、吹き飛ばされてしまう。

 そして複数の足を同時に使うことによって為される、大跳躍。

 引き離したと思ったはずが、逆に一気に回り込まれてしまった。

 

 「あ――」

 

 目の前に立つ怪物が振り上げた、巨大な手。

 その先についた包丁のような爪を見れば、自分がこの後どのようにズタズタになるのか容易に想像がついてしまう。

 

 もう、どうしたって躱し様がない。

 

 そう理解してしまい、恐怖から目を閉じる。

 そして振り下ろされた爪によって引き裂かれることを覚悟したのだが――。

 

 自分の命を刈り取る一撃は、降ってこなかった。

 

 目を開けると、一筋の電流が怪物の胸を貫いていた。

 

 「――早く、そこを逃げるんだ!!」

 

 そして聞こえる、男の声。

 その声は酷くかすんでいて、苦しそうで。

 今にも死んでしまいそうな声だった。

 しかし同時に強い意志が込められており、絶対に助けるという強い使命感が声に滲み出ていた。

 

 藤丸は声に従い転がり逃げ、そして声の主を見た。

 

 声の主は、人間とは言い難い姿をしていた。

 まず右腕が完全に人のソレではない。

 腫瘍のような瘤で節くれだった腕の先には鋭い爪が生えており、肘だと思われる部分からは骨のようなものが突き出している。

 だがそれより恐ろしいのは、周囲に亀裂の入ったその右目だ。

 その眼球はまるで昆虫のようで、人としての意思がまるで感じられない。

 

 「君、大丈夫か!?」

 

 だがその左目は。

 苦痛に歪みながらも、確固とした人の意思が宿っていた。

 

 「俺の名は、ピアーズ・ニヴァンス! こんな見た目だが、BSAAの隊員だ! 君は民間人だな?! 大丈夫、必ず助けてみせる!!」

 

 息も絶え絶えながら、紡ぎだされたその言葉には優しが籠っていて。

 この人は、信頼できる。

 藤丸はそう確信した。

 

 ――そしてもう一つ、気付いたことが。

 

 (この人、英霊/サーヴァントだ!)

 

 数多の英霊と絆を結び契約を結んできたからこそ、一目でわかった。 

 このピアーズ・ニヴァンスという人物は今までの特異点を巡る旅の中で幾度となく出会ってきた、マスターを持たない聖杯に呼ばれたサーヴァントだと。

 

 電流に貫かれ跪き蹲っていた怪物が立ち上がり、吠える。

 

 ピアーズが放った電流はかなりの威力があったようだが、それでもこの異形の怪物を絶命させるには至らなかったようだった。

 

 「クソッ、流石はタイラントか! 見たことのないタイプだが、プラーガの支配種でも寄生させているのか!? どこのクソテロリストが、こんな化物を作りやがった!!」

 

 血を吐くように毒づくピアーズ。

 聞きなれない単語を多く含んだその言葉に、藤丸はこのピアーズという英霊がこの特異点についての多くの情報を持っているに違いないと直感する。

 そして直感は続けて告げる。

 この特異点を解決するには、ピアーズの協力が絶対に必要だと。

 

 「君、ここは俺に任せて早く逃げて――」

 

 「ピアーズさん、俺と契約してください!!」

 

 だから藤丸はピアーズの言葉を遮り、そう吠えた。

 

 「何を言って……」

 

 「お願いします!」

 

 困惑するピアーズに、再度嘆願する。

 その気迫に圧倒されたのか、あるいは何かを感じ取ったのか。

 ピアーズは頷いた。

 

 「分かった……君と契約しよう」

 

 その言葉と共に契約が結ばれ、藤丸とピアーズの間に魔力のパスが繋がる。

 

 「これは……」

 

 マスターを得ることにより存在が確定され、魔力が供給され始めたためか。

 終始苦しそうであったピアーズの顔色は良くなり、その動きは機敏になり軽やかなものになった。

 

 タイラントと呼ばれた怪物が再度吠え、虫の足を鎌首の如くもたげ向かってくる。

 一方的に藤丸を追い回していた今までとは、明らかに雰囲気が違う。

 藤丸とピアーズを、全力で殺すべき相手と見定めたようだった。

 

 「色々と聞きたいことはあるが……とにかく、コイツをどうにかしてからだな。 少年、名は?」

 

 「藤丸立香です!」

 

 「そうか。 じゃあリツカ、死ぬんじゃないぞ!」

 

 異形と化した右腕に電流を纏わせ、攻撃態勢をとるピアーズ。

 藤丸もまた精いっぱいの援護をすべく礼装の力を借り体力を魔力に変換し、敵の動きを一時的に止めるガンドの魔術を放つ準備をする。

 

 藤丸立香とピアーズ・ニヴァンス。

 崩壊し亡者と怪物で溢れた死の街での二人の戦いが、今始まったのだった。

 

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