FATE/BiOHAZARD   作:ダイアジン粒剤5

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ニュクス Ⅱ

 無限の剣製の世界をニュクスに向かい突き進む、三千大千天魔王。

 その進行を止めようとニュクスの底部から湧き出た白いゾンビの大群が群がるが、エミヤにより操られる無数の剣により薙ぎ払われる。

 

 「マスターたちに、近付かせはしない!」

 

 白いゾンビの大群を相手に戦うエミヤ。

 白いゾンビたちの生命力は凄まじく、頭部以外への損傷は即座に回復し、頭部への攻撃すら完全に頭全体を吹き飛ばさなければ回復する程。

 だが動きは通常のゾンビよりマシとはいえ大して早くなく、爪や牙が生えているわけでもない。

 英霊の相手には全く不足。

 

 「離れろ!」

 

 三千大千天魔王に張り付き進行を邪魔しようとする白いゾンビを、エミヤは全て倒す。

 三千大千天魔王は後光輪からの魔力砲撃を続けながら、進行を続ける。

 

 『おのれぇ!』

 

 ニュクスから響く、スペンサーの怒号。

 ニュクスは全身から発電し稲妻の鎧をまとい、自らに迫る魔力弾を全て打ち落とす。

 

 『消えろォ!』

 

 全身に浮かぶ眼球が光り、無数の稲妻の槍が三千大千天魔王に迫る。

 

 ――だが、その槍が三千大千天魔王を貫くことは無かった。

 

 魔王の肩に乗る、ピアーズ。

 彼が掲げた異形の右腕がニュクスの放った稲妻の槍を全て引き寄せ、そのエネルギーを取り込んだからだった。

 

 ――雄叫びをあげ右腕を構える、ピアーズ。

 

 先程取り込んだエネルギーを全て、今度は逆にニュクスに向けて放つ。

 一つに集約されたエネルギーは一本の巨大な稲妻の槍となってニュクスの纏う稲妻の鎧すら突き破り、その白い巨体に突き刺さる。

 

 ――痛みに悶え響く、スペンサーの絶叫。

 

 その声を尻目に、ピアーズは全身から煙を放ちながら膝を着く。

 

 「ピアーズ、大丈夫?!」

 

 「……大丈夫だ。 流石に、少し無理があったな」

 

 苦しみに顔を歪めながらも、藤丸に対し笑みを返すピアーズ。

 ピアーズは気丈に立ち上がり、言葉を返す。

 

 「それよりマスター、あの医者先生から何か預かってたよな? あれを見せてくれ」

 

 藤丸は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに懐から白く輝く薬液の入った小さな瓶を取り出した。

 

 「それが?」

 

 「うん、Tウイルスを完全に消し去る新薬だって渡されたんだ。 もし感染したら飲むように、むしろ感染して飲むようにって」

 

 「――デイライトか。 この短期間でそれに至るなんてあの医者先生、性格はアレだが本当に医神なんだな」

 

 言葉を続けるピアーズ。

 

 「それを渡してくれ、マスター。 あの化け物に喰らわせてやる」

 

 デイライトをピアーズに投げる藤丸。

 ピアーズは異形化していない左手で、薬を受け取る。

 

 「でも、そんな量で効くの?」

 

 天高く聳え立つニュクスを見上げながら問う、藤丸。

 ニュクスは既に先程の稲妻による損傷をほぼ完治させ、再び稲妻のバリアを纏い始めている。

 

 「外から打ち込んでも無理だろうな。 だからあのデカブツの中に隠れている核、スペンサーを引きずり出して飲ませる」

 

 聳え立つニュクスへと、どんどん進撃を続ける三千大千天魔王。

 接敵まで、あと少し。

 

 「フォローは任せたぞ、マスター」

 

 「うん、任せて」

 

 互いに頷きあう、藤丸とピアーズ。

 それとほぼ同時、遂にニュクスの目前にまで至った三千大千天魔王。

 

 ――睨み合う、白い肉柱の神と黒い骸骨の魔王。

 

 先に均衡を破ったのは、悍ましき白い肉柱の神。

 柱の各部に牙の生えた口が突き出し、白い触手が無数に生える。

 

 「ノッブ!」

 

 藤丸の声に骸骨の頭頂に立つ信長は頷き、魔王に指示を下す。

 

 ――魔王は吠え、六腕を振るいニュクスに殴りかかる。

 

 サンドバックを殴るか如く炎を纏った拳の連打がニュクスに叩きこまれ、白い体に生えた無数の目と牙を潰す。

 痛みから苦痛の呻きを漏らすニュクスだったが、怯まず触手を伸ばし魔王の腕に巻きつけ動きを止めた。

 そして魔王の腕を突き出した自らの口に引き込むと、咀嚼し牙で嚙み砕かんとする。

 

 「はなせ、化物!」

 

 右腕から稲妻を放ち、魔王の腕を縛る触手を焼き切るピアーズ。

 それに続き信長も巨大なガトリング砲を魔力で形成し、砲撃により触手を引き千切る。

 

 ――魔王の六腕の一つが自由になり、再びニュクスに殴りかかった。

 

 再び潰され始める、ニュクスの目。

 ニュクスは新たに触手を生やし魔王の腕を掴もうとするが、ピアーズと信長により触手は切られ魔王の腕はどんどん自由になり殴打は激しくなる。

 

 『おのれ! 貴様ら! 神の、私の、玉体をォ!!』

 

 スペンサーの怒号。

 それに合わせてニュクスの体が捻じれ、柱の先端が降りてくる。

 そして先端は上下左右十字に分かれ、無数の牙が剣山の如く生えた大口が開く。

 

 ――そしてニュクスの大口はワームの如く魔王の頭に喰らい付き、牙を立てる。

 

 間一髪、信長は大口による一撃を躱したが魔王の頭は噛み付かれた。

 頭蓋を噛み砕かんと、力を籠めるニュクス。

 軋むような音と共に、魔王の頭にヒビが入る。

 

 「ピアーズ、アイツの頭に飛び乗って!」

 

 響く藤丸の声。

 ピアーズは問いを返すこともなく飛び上がり、魔王に噛み付くニュクスの先端に飛び乗る。

 

 「エミヤ、着地任せた!」

 

 魔王の肩から宙に跳ぶ、藤丸。

 あらかた白いゾンビを殲滅し終わっていたエミヤは、藤丸に向けて駆け出す。

 

 「ノッブ、燃えて!!」

 

 藤丸の指示。

 その声に従い信長の体から炎が立ち上がり、やがてその全身を燃やし始める。

 同時に、三千大千天魔王の体も燃え始める。

 

 ――魔王信長の本質は、彼岸にて燃え盛るヒトの形をした炎。

 

 本来の姿に戻った信長とその分身たる魔王は巨大な炎となり、ニュクスを焼き苛む。

 無数に空いた口に今度は自ら燃え盛る腕を突っ込み、ニュクスを内部から焼き始める。

 

 ――身を捩り、苦悶の叫びを上げるニュクス。

 

 やがて体を内部から焼く炎から逃れるように、先端の大口から何かが絶叫しながら飛び出してくる。

 

 「ギャアアアア! 熱い、熱いィィィィ! 貴様ら、神たる私に、よくもォォォォ!!」

 

 巨大な眼球を肩から生やした全ての元凶、スペンサー。

 醜悪な傲慢さに満ちた呪いの言葉を吐き散らしながら荒れ狂う、異形の老人。

 

 ――その背後に立つ、ピアーズ。

 

 「いい加減その臭い口を閉じろ、化物」

 

 背後からスペンサーを抑え、その口にデイライトを叩きこむ。

 

 「グボォァッ!?」

 

 「これも、もらっていくぞ」

 

 スペンサーの肩に生えた巨大な眼球に異形の右腕を突き刺す、ピアーズ。

 そのまま眼球を抉りながら引き抜いた右腕の先には、スペンサーの所有していた聖杯が。

 

 「じゃあな、化物。 その狂った野望ごと、ウイルスと共に消え去れ」

 

 ニュクスから飛び降りる、ピアーズ。

 

 ――後に残されたスペンサーは、口を押えながら放心する。

 

 だがすぐに苦しみだし、全身を振るわせ始めた。

 やがてその振るえは信長の炎に焼かれるニュクスの本体にも伝播し、無限の剣製の世界をも揺らし始める。

 

 ――ニュクスはTウイルスそのもの、全身がTウイルスで構成されていると言ってもいい。

 

 そんなニュクスにとってTウイルスを完全に消し去る特効薬、デイライトは致死毒そのもの。

 それも医神たるアスクレピオス謹製の品ともなれば、その効果は計り知れない。

 

 ――全身の細胞が死滅していき、ニュクスはその巨体を維持できなくなり溶け始める。

 

 融解した細胞は液化し津波となって錬鉄の世界に押し寄せ、まだ生き残っていた白いゾンビの群を飲み込む。

 

 ――やがて剣と荒野の世界の全てが白い海に染め尽くされ、車輪と炎の空に青空が広がり始める。

 

 白い津波は対界宝具の如き効果を起こし、エミヤの固有結界を強制解除させたのだ。

 

 ――固有結界が解除された後に残ったのは、ニュクスの死骸たる白い海に覆われ崩壊し使い物にならなくなったアンブレラの工業地帯。

 

 スペンサーの、アンブレラの。

 狂気の野望の終着点は、それだった。

 




遅れてすみませんでした。
次回投稿予定は9月20日です。
次こそは遅れないように頑張ります。
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