FATE/BiOHAZARD   作:ダイアジン粒剤5

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エピローグ

 爆発に巻き込まれ、ピアーズは吹き飛ばされ宙に舞う。

 そのピアーズを空中で抱き留めたのは、傷の痛みに顔を歪めるエミヤだった。

 

 「まったく……私はこれでも重症なのだがね。 あまり、無茶はさせないで欲しいものだ」

 

 エミヤはピアーズを抱えたまま、藤丸の待つ崩壊した工場の屋根に降り立つ。

 

 「大丈夫、ピアーズ!?」

 

 駆け寄ってきた藤丸に、ピアーズは立ち上がり笑みを返す。

 

 「ああ、大丈夫だ、マスター。 この通り、ピンピンしてる」

 

 

 「――素人の自己判断ほど危険なものはない。 どれ、僕に診せてみろ」

 

 

 突如背後から掛けられた声。

 その声に三人がギョッとして振り返ると、そこにはアスクレピオスが立っていた。

 

 「い、医者先生?! アンタ、いつの間に……」

 

 「さっきだ。 それより動くな、これより診察を始める」

 

 驚く三人を無視し、アスクレピオスはツカツカ前に進み出てピアーズの診察を始める。

 

 「アスクレピオス、君が治療していた黒人警官は? 確か、一緒にいたと思ったのだが……」

 

 「奴は既に完治した。 健康な人間に興味はない、だから置いて来た」

 

 先程までアスクレピオス達がいた方向に視線を向けると、そこではあの黒人警官が手を振っていた。

 それなりに離れた場所にある工場の屋根だったが、サーヴァントの脚力なら十分に跳んでこれる距離だった。

 

 「良かった、無事で。 そういえば、結局あの人の名前って何だったの?」

 

 「マービン・ブラナーだ。 ……そういえば、感謝していたぞ。 この街をこんな風にした奴と戦ってくれてありがとう、と言っていた」

 

 ピアーズの舌を引き出しながら告げられた言葉に、三人の顔が僅かに綻ぶ。

 当事者からの感謝の言葉。

 それはこの特異点を解消したことに対する、確かな報酬だった。

 

 「診察は終わりだ。 ……僅かにあった擦り傷も、驚異的な自然治癒力により回復。 つまらん、もっと面白い傷を負っていれば良かったのに。 だがウイルスの再活性化による右腕の再変異は面白いな。 採血するぞ、あと細胞片も欲しいので一部切開する。 ――……ああ、痛かったら申告するように。 鎮痛系の薬剤も、幾つか試してみたい」

 

 野太い注射器と、切開用の工具を取り出すアスクレピオスに慌てるピアーズ。

 そんな二人の姿に藤丸とエミヤが苦笑していると、大きな鏡が現れた。

 

 「――……あ、繋がった! 大丈夫、未来クン?! 妨害は無くなったみたいだけど、そっちはどうなってるの!?」

 

 鏡に映る、卑弥呼の姿。

 特異点の元凶であったスペンサーを倒したことにより、カルデアとの接続が回復したようだった。

 

 「大丈夫、こっちの問題は片付いたよ」

 

 卑弥呼は藤丸の答えに一瞬ポカンとした表情を浮かべたが、すぐに太陽のような笑みを返した。

 

 「――そっか、良かった! じゃあ、この鏡に入って。 そうしたらカルデアの皆の体に戻れるから!」

 

 そう言うと卑弥呼は、えーと皆の体に繋がった鏡はどれだったかなー?、と言いながら鏡の奥へと消えていった。

 

 「……どうやら、マスターたちは帰る目途が立ったみたいだな」

 

 かなり多くの血を抜かれたのか、青い顔をしたピアーズが近付いて来た。

 

 「うん、これでカルデアに帰れるよ。 ……ところで、大丈夫?」

 

 異形化していたピアーズの右半身は、そのほとんどが包帯に巻かれている。

 

 「ああ、あの医者先生に変異した部分をほとんど切除されたんだ。 人間らしい見た目に成れたから、むしろ良かったよ」

 

 ピアーズは右半分を包帯に覆われた顔で、ぎこちなく笑う。

 そして当のアスクレピオスは、切り取ったピアーズの体をラベリングしながら何かを診断書に書き記していた。

 

 「決して、悪い人物ではないんだがな……」

 

 「分かってるよ、あの先生は良い医者だ。 この姿も、間違いなく治療はしてくれた訳だからな。 ――それでマスター、頼みがあるんだが」

 

 ピアーズは、真剣な面持ちで藤丸に向き合う。

 

 「出来たら俺も、マスターたちのカルデアってところに……って、なんだこりゃ!?」

 

 ピアーズの体は細かい光の粒子となり、徐々に薄くなっていた。

 

 「――退去が、始まったんだ。 君はこの特異点が召喚したサーヴァント。 特異点の元凶が倒れた今、これ以上現世に留まるのは世界が許さないのだろう」

 

 神妙な面持ちで語るエミヤ。

 ピアーズは驚きに目を丸くしていたが、すぐに諦めたように頭をかく。

 

 「……そうか、残念だな。 俺もカルデアってところに行って、マスターの戦いの手助けがしたかったんだが。 俺は、ここでも途中で退場か」

 

 「そんなことないよ」

 

 自嘲するピアーズに、藤丸がはっきりと告げる。

 

 「また、会えるよ」

 

 「いや、だが俺は英霊の座ってところに――」

 

 「カルデアにて再び召喚されろ」

 

 いつの間にか近付いてきていたアスクレピオスが、断固とした口調で命令する。

 

 「お前の治療は、まだ途中だ。 僕の治療を途中で止めるなど、決して許さない。 何が何でもカルデアに来て、治療の続きを受けてもらう」

 

 「――そうだな、そういう事もあるかもしれないな」

 

 笑みを浮かべたエミヤが、二人の言葉を継ぐ。

 

 「今、人理はとても不安定な状態だ。 今の君そのもではないかもしれないが、君が再びマスターの力になることもあるだろう。 その時が来ることを、私も祈るとしよう」

 

 「…………」

 

 三人の言葉にしばし無言で答えるピアーズだったが、やがて居住まいを正し敬礼する。

 

 「ああ、またな!」

 

 そうしてピアーズは、光の粒子となって退去する。

 その光を藤丸、エミヤ、ピアーズの三人は最後まで見送るのだった。

 




これにて終わりです。
このような拙い文章に、五カ月近くもお付き合いくださり有難うございました。
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