FATE/BiOHAZARD   作:ダイアジン粒剤5

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召喚

 ジャズバーから病院への道のりは、決して平坦なものではなかった。

 

 ゾンビを始めとした怪物たちに襲われたのは街に戻ってきた時と同じだったが、その戦闘音に引き寄せられたのかゾンビ化し牙が異様に巨大化したゾウに襲われたのだ。

 ゾウはピアーズから聞いたゾンビ化の原因――ウイルスの影響か、コンクリートの壁を体当たりでブチ破れるまでに身体能力が向上しており他の怪物とは比べ物にならない程の脅威だった。

 巨体に見合った生命力とタフネスさも凄まじく、ピアーズの電撃すらモノともせずコンクリートの壁を容易く破壊する程の威力を持った鼻による一撃を加えてくる。

 なんとか逃げるしかないと思った時、手の甲の令呪が輝きカルデアにいる英霊たちとの縁が繋がったことを感じた。

 

 危機に気付いたカルデアの仲間たちが何らかの対策を打ってくれたのか、あるいは他の理由か。

 なんにせよ藤丸は自分と契約してくれているカルデアのサーヴァント――坂本龍馬の影を召喚する。

 

 戦闘中にのみ短時間召喚出来る英霊の影は自立思考が出来ず、指示したことを機械的に実行することしか出来ない。

 しかし、持ちうる力は英霊本体と遜色ないものだ。

 召喚された坂本龍馬の影は宝具であるお竜さん――神代の大蛇を本来の漆黒の龍の姿に変え、その頭に駆りゾンビエレファントに襲い掛かる。

 

 ゾンビ化により凶暴性が上昇しているためか、ゾウは目の前に現れた漆黒の巨竜にも怯むことなく鼻と牙を振り回しお竜さんの鼻先に打ち掛かる。

 自分を超える巨体を持つお竜さん相手に一歩も引かず、お竜さんの吐く毒のブレスすら既にゾンビと化しているためか無視して攻撃を続けたゾンビエレファントは、やはり他の怪物達とは一線を画する化物だった。

 だが遂に宙を自由に舞うお竜さんの起動能力が、ゾンビエレファントの強化された身体能力を上回る。

 

 お竜さんはゾンビエレファントの背に噛み付き、そのまま脊椎から胸骨にかけての背骨を噛み砕いた。

 

 いくらウイルスの力により生命力が増しているとはいえ、それほどの損傷を受けては生命を維持することは出来ない。

 ゾンビエレファント――かつてラクーンシティの市民たちの人気者だったゾウのオスカーは、ようやく偽りの生を終え眠ることが出来た。

 

 

 

 ――そして、ラクーン総合病院近郊。

 

 その地下に存在するNEST2。

 其処に特異点の元凶についての手掛かりがあることを、藤丸とピアーズは半ば確信していた。

 

 「沖田さん、一ちゃん! お願い!!」

 

 浅黄色のだんだら羽織を羽織った新選組一番隊隊長沖田総司と三番隊隊長斎藤一の影が、巨大な爪を持った二足歩行の爬虫類の怪物を切り捨てる。

 

 「副長も!」

 

 黒色のだんだら羽織を羽織った新選組副長土方歳三の影が藤丸の言葉に従い、人を一口で丸呑みにしてしまいそうな大口を広げて突進してくる両生類のような怪物にライフル弾を撃ち込み絶命させる。

 

 「気を付けろ、マスター! こいつ等は、今までのイレギュラーミュータントとは違う。 戦場で人を殺すためだけに創られたB.O.W.……生物兵器、ハンターだ!!」

 

 何者かの明確な意思を持って、ハンターの群れはラクーン総合病院に近付くものを排除するように動いていた。

 

 「クソッ、β型か?! 反応が、早い!」

 

 「沖田さん、援護を!」

 

 驚異的な反応速度で飛びのき、ピアーズの右腕から放たれた電撃を回避するハンター。

 そのまま発達した左腕の爪を振りかざしながら跳躍しピアーズの首を刈り取ろうとしたところを、縮地により移動した沖田の影の突きをくらい絶命させられる。

 

 「すまない、助かった!」

 

 「任せてください! でも、この数は……!」

 

 周囲に蔓延るハンターの数は、目視出来るだけで百を下らない。

 一体ごとの強さは新選組の影たちなら一撃で葬れるほどだが、彼らを召喚している藤丸はハンターの跳躍による首狩りを避けることは難しい。

 ピアーズもまた半身が異形化しているためか動きや反応が鈍く、高い機動性と群れの連携を駆使して襲ってくるハンター相手には苦戦を強いられる。

 

 「負けはしない。 だが、強行突破は難しいか」

 

 ピアーズの言葉に、藤丸はこの局面を打破できるサーヴァントを召喚出来ないか考える。

 

 (強力な突破力のある宝具を持つ英霊を召喚して、病院まで強行突破する? でもそんな強力な英霊を召喚して宝具まで使えば、現界を維持できる時間は少ない。 それに魔力もかなり消耗するから、次の召喚が出来るようになるまで魔力が回復するのに時間がかかる。 もし病院にこのハンターたちと同等以上の戦力がいたら、対処が出来ない!)

 

 手詰まりという言葉が脳裏をよぎった時、背後からハンターのモノとは異なる唸り声が聞こえてきた。

 

「リッカーだと!? しかも、この数……!」

 

 ここにくるまで散々襲われた、むき出しの脳と肌に鋭い牙と爪を持った四つ足の怪物。

 それが十数頭、更に後ろにはゾンビの群れまで引き連れている。

 

 「クソッ!! マスター、ここは撤退だ! いったん――」

 

 ピアーズの言葉が終わるよりも早く笛のようなものが鳴り響き、リッカーの群れが突進してきた。

 

 「みんな!!」

 

 藤丸の指示が響き、新選組の影たちは藤丸とピアーズを守るべく方陣を組む。

 

 だが――リッカーの群れはそんな藤丸たちを無視し、その先のハンターの群れに襲い掛かったのだった。

 

 「え――?」

 

 困惑する藤丸とピアーズ。

 その視線の先では、リッカーとハンターによる熾烈な戦いが始まっていた。

 

 「ふむ。 こんな所で出会うとは奇遇だな、マスター」

 

 困惑する藤丸にかけられる、平坦な調子の男の声。

 その声の主を、藤丸は良く知っていた。

 

 「まあそんなことより、そっちの男だ。 見たことのない症例だ、実に興味深い。 さあ、僕に診せてみろ」

 

 どこかの預言者の如くゾンビの群れを割って進み出てくる男の名は、アスクレピオス。

 カルデアにて藤丸立香と契約を交わしたサーヴァントであり、医神と讃えられる英霊である。

 

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