ほのぼの鬼殺隊生活(完結)   作:愛しのえりまき

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モブキャラの活躍が始まります。
人物紹介 
村田光良…改変キャラ 村田さん
緑川駿人…改変キャラ サイコロステーキ先輩こと累に刻まれた剣士
尾崎東子…改変キャラ 母蜘蛛鬼に操られる女性隊員
佳代ちゃん…オリキャラ 一家惨殺事件の生き残り
成嶋多門…オリキャラ 白虎隊の生き残り 鬼



会津若松編
10話 合同任務


マスカラスが指令を伝えて来た。

適当な隊員数名を帯同し、会津若松に向かえ。そこではこの1年に30人もの人が消えている、と。

会津?

原作にないが。主人公たちは療養中だし、どうするか?

丁度良い機会なので、那田蜘蛛山編に備えて鍛えておきたい隊員たちを選び、連れて行くことにしよう。村田(村田さん)、緑川(サイコロステーキ先輩)、尾崎(母蜘蛛鬼に操られる隊員)この3人だ。

あの場にいる彼らが強ければ、那田蜘蛛山での人的被害がかなり抑えられるはずだ。それに3人とも水の呼吸を使うのも都合が良い。マスカラスを通じて、早速3人を俺の実家に呼んでもらった。

俺は実家へやって来た3人を茶菓でもてなしながら、世間話などして3人の緊張をほぐしていった。村田さんは一つ年上の二十一歳、緑川君と尾崎さんは十七歳。3人ともかなり緊張してやって来たが、俺は一見穏やかで他人に緊張を強いるタイプではないので、話しやすかったと思う。短時間で打ち解け、鬼殺隊員としての苦労話や愚痴も言い合えるようになっていた。

「水原は冨岡の弟弟子かあ。俺は同期なんだよ。まあずいぶん差がついちゃったけど」

村田さんが自分を卑下して言うが、生き残ることだって大変なことは俺はもちろん良く分かっている。

「内緒なんだけど、あの選別の時は大変でさあ……。1人大怪我して、でもそいつは結局助かったらしいんだけど、その治療したのが覆面被ったヤツでさあ……」

村田さんがこっそりと打ち明ける。村田さん?その事は誰にも話してはいけないと言われませんでしたか?言えばお前の命は無いと……。そうだ言ってなかったっけ。それにしてもあの時切り離した脚を抱えて卒倒した村田さんが逞しくなったものだ。約8年経ってるから当然かもしれないが。俺は曖昧に笑ってごまかしながら、さらりと話題を変えた。

ある程度人となりが分かったところで任務の概要を改めて説明し、遠征任務の前にやってもらうことも説明した。

「3人とも、まずは明日から一週間、俺の師匠のところで強化練習をしてもらいます」

任務の前に、基礎の確認とレベルアップだ。もちろん鱗滝さんにも許可はいただいている。

 

 

 

「村田光良(ムラタミツヨシ)、緑川駿人(ミドリカワハヤト)、尾崎東子(オザキハルコ)以上ノ3名ハ、丙隊士水原倫道ノ元ヘ行ケ」

カラスからの指令だ。

3人はほぼ初対面で、どうして自分たちが、と疑問に思った。さらに見知らぬ上級隊員に帯同しての合同遠征任務だという。カラスに言われるがまま、連れ立って倫道の家にやって来たのだった。

次期柱候補だと聞いていたのでどんな豪傑が出て来るのかと思っていると、爽やかな笑顔の青年が出迎えた。

水原倫道二十歳。階級は丙。そう名乗り、

「まあどうぞ、上がって」

にこやかに迎えてくれた。倫道の柔らかな雰囲気に、お茶や菓子まで出され、短い時間の間に隊員としての苦労話や愚痴も言い合えるようになっていた。

「どうして俺たちを?」

村田は気になっていたことを聞いてみた。

「庚で有望な隊員は誰か聞いたら、3人の名前が出たので。それと、3人とも水の呼吸だよね」

倫道は虚実を交えてそう答える。彼らは原作のある意味重要人物である。彼らは有望、倫道はそう見込んでいるが、実際に周囲から特別に認められているわけではなかった。彼ら3人の才能は磨かれておらず、まだ刀の色変わりも果たしていないのだ。

「私たちで大丈夫ですか?」

尾崎が聞いた。大丈夫、倫道はそう言った後、

「明日から一週間、俺の師匠のところで強化練習をしてもらいます」

さらに告げた。だが村田は気付いてしまった。倫道は義勇の同門、厳しいことで有名な鱗滝の門下だ。3人は、厳しい稽古があるのかと憂鬱になった。

 

 

 

3人を連れて狭霧山にやって来たのは、言うまでもなくもう一段、二段、レベルアップしてもらうためだ。稽古を始めると、基礎練習で弱音を吐く彼らに錆兎も呆れていたが、1日中付き切りで教えると、3人とも見る間に上達してその潜在能力の高さを証明した。また彼ら自身の意欲も上がり、終了する頃には初日とは別人のように強くなっていた。

見込んだ通り、この3人は強くなる。俺は期待通りの展開に嬉しくなっていた。

狭霧山に来たのにはもう一つ理由があった。任務に発つ時に、実家から持って来た荷物を錆兎に渡す。

「お礼と言っては何だが、練習して存分に使いこなせるように頑張ってくれ」

詳しい使い方を錆兎に教え、励ました。俺の贈り物第1弾に錆兎は驚愕していたが、

「感謝する」

と微笑んだ。

「それと錆兎宛にもう一つ、鋼鐵塚さんから荷物が届くはずだから、それも受け取っておいて欲しい」

俺はそう言い残して遠征に出発した。

 

俺たちは合同稽古中や道中、色々な話をした。身の上話や鬼殺隊員となった思いなども腹を割って話した。みんな肉親を殺されており、辛い思いをしたから鬼殺の剣士を志したのだ。

緑川君とは特に話をした。祖父母と留守番中に鬼に襲われて祖父母は殺され、彼の仕業かもしれないと疑われた。疑いはすぐに晴れたが、家出同然で育手に弟子入りしたのだった。

正隊員になってもなかなか人を守れず悔しい思いをしたこと。

死ぬような思いでやっと助けた人々から、なぜもっと早く来ないのかと罵声を浴びせられたこと。

辛いことが重なり、自分が何のためにいるのか分からなくなり、努力もしなくなってしまったという。

鬼によって理不尽に奪われる命を救いたい。鬼殺隊員ならみんなそう思うだろう。でも俺たちは神じゃない。救えない命もあれば、届かない思いもある。それに、助けられた人は、助けた方の事情なんて分からない。

ヒーローなんて、そんなもんだろう。

助ける方の心と体がどんなに弱っていたとしても、それに目を向ける者はいない。

「でも君は“護りし者”だろう?」

俺がそう言うと、緑川君が不機嫌に押し黙る。屁理屈の様な反論もしないし、いい加減に調子を合わせてごまかすこともしない。心に響いてくれたのか?原作ではあんな描かれ方だが、案外素直なのかもしれない。

「君は才能がある。現にこの短期間で見違える程強くなっている」

だから腐るな。君の努力を見ている人は必ずいるから。俺はそう発破をかける。自分の出来る事からやれば良い。ただし全力で。そうすれば出来ることが増え、頼られることも多くなる。

一生懸命仕事をすれば、周りの信用とお金がついてくる。――得意先の社長の受け売りだけども。

「そうして強くなって、その上で金を稼ごうぜ!」

俺はそう言って笑いかけた。

「あんた変な人だな、水原さん。分かったよ、俺に出来る事で良いならやるよ。そこまで言われちゃしょうがねえ」

緑川君は、無理に怒った顔を作ろうとしたが、結局困ったように笑った。

うん、いい表情になって来たな。決して性根が腐ってる訳じゃない。彼は、本来の快活な少年に戻りつつあった。

 

出発前、どのように潜入するか考えたが、諸国漫遊を気取る金持ちのバカ殿とそのお供の者たち、という設定で行くことにした。バカ殿役は村田さんだ。

「俺が若殿役?お金持ちの御曹司に見える?そうか、似合ってるか。ちょっと照れるけど」

村田さんは、サラサラヘアーをかき上げて喜んでいるが、ヴァカ殿、とそのあたりを多少濁して説明したのが良くなかったのだろうか?村田さんが気に入ってくれたのならいいけど。

俺は執事兼護衛、緑川君と尾崎さんはお世話係兼護衛ということにした。財閥の御曹司なので、警護する我々の帯刀はお許し願いたいと地元の警察署に話を通し、賄賂も送っておいた。その結果、

”東京より財閥の御曹司一行が来たる”

小さくだが地元の新聞に載ってしまった。到着すると早速地元の警察署長やら、お偉いさんが数名あいさつに来た。ちょっとやりすぎたかと思ったが、人が来れば情報も集まるだろうし良しとしよう。

あの、村田さん?宿の人たちに手を振らなくてもいいです。

「ああ、良きに計らえ」

何言ってんだこの人。顔を白く塗ってやろうかとも思ったが目立ち過ぎるので止めておいた。

 

俺たちの到着の前の晩に、近くの村で一家惨殺があったと情報があった。奇跡的に佳代ちゃんという五歳の女の子が1人生き残り、身寄りがなく扱いに困っているという。金持ちの物好きが孤児を引き取るというていで、俺たちで彼女を保護することにした。尾崎さんもいるし、お世話も大丈夫だろう。

警察に見られないよう事件現場にこっそり行ってみると、室内の惨状はそのままであり、血痕も残されていた。強化五感で探ると一家は稀血で、それが鬼に知られてしまい襲われたようだった。

しかし稀血の反応は佳代ちゃんが一番強い。鬼がまた襲来する可能性は十分にあった。

 

鬼の匂いは二つ。佳代ちゃんの話だと2つの影が争っていたということで、稀血を巡り鬼同士が争ったのだろうか。それに一方は刀らしき物を持っていたらしい。刀を持った人が助けに入ったのか?しかし近くにいる鬼殺隊の別部隊は無い。だとすると、刀を持った鬼?いずれにしてももう少し調査が必要だった。

 

現地入りしてから1週間、有力情報がない。この1年で30人が行方不明、その中には多数警察官も含まれていた。神隠しや鬼、そんな話を街中などでそれとなく聞いて回ると、旧会津藩士の亡霊という噂があった。

 

旧会津藩士が白虎隊の墓所がある飯盛山に潜み、明治政府に復讐を狙っているのでは?という内容だ。これだけでは都市伝説の域を出ない。

行き詰まり、佳代ちゃんを連れだしてみんなで遊びながら考える。佳代ちゃんはもうすっかり俺たちに懐いてくれている。無になっていた感情が少しずつ戻り、明るさを取り戻しつつあるのが嬉しかった。別れは辛いが、この任務が終わったら東京に連れて帰り里親を探そう。可愛らしい子だし都会ならいくらも引き取り手はあるだろう。

 

(仇を討って、一緒に東京に行こうな)

そう思っていた。

さらに数日たったある日、宿に長く勤めているばあちゃんと話していると、会津藩士の亡霊の話になった。すると詳しい話を知っていた。

旧会津藩士が戊辰戦争後に出身を隠して警察官となった。当時の官憲は薩長土肥の出身者が中心で、10年余り勤めたにもかかわらず、会津藩出身であることがばれて彼は辞めさせられ、その後も元同僚に嫌がらせを受け一家は離散した。

ある日街で元同僚たちが彼を見かけて連行し、道場でリンチを加えたが、彼は元同僚ら十数人を返り討ちにして血の海に沈め、それ以来行方が分からないという。

 

「今はどこで何をしてるのか、生きてるか死んでるかも分からない。白虎隊にいながら生き残ったのにねえ……」

ばあちゃんは遠い目をして言った。その彼が鬼になり、官憲に復讐?

「あの子は、多門はそんな子じゃない」

やけに詳しいですね。もしかして。

「ああ、弟だよ。年は離れてるけど。別れた奥さんの実家のことを気にしていたよ。それなのに殺されてしまって……。この子も、1人残されてかわいそうにね」

と佳代ちゃんを見た。じゃあ、その多門さんの、元妻の実家って佳代ちゃんの家?

そういえば一家と関係ない名前が仏壇にあったような。“成嶋多門”ってその人か。

その人が鬼になり、山中に潜んで今も人を襲っている。警察官や、稀血とはいえ自分の家族までも?釈然としないが矛盾はない。

 

鬼がその人であってもなくても、人を襲うなら滅殺するまでだ。

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