村田…改変キャラ 村田さん 原作よりしっかりしている
緑川…改変キャラ サイコロステーキ先輩 今回見せ場を迎える
12話 自分ではない誰かのために
気味の悪い話だ。
合同任務の時、水原さんが教えてくれた情報。
蜘蛛の能力を持った異能の鬼どもが巣くう山がある。糸で人間を操ったり、頑丈な繭で人間を閉じ込めたり、鋼鉄のように強い糸を刃物の如く操って人間を切り刻んだり。偵察隊も派遣されたが戻らず、近々討伐隊が派遣されるらしい。任務に臨む時は十分に気を付けろ。
水原さんはそう言っていた。
あの合同任務から2か月。それからの俺は、柄にもなく稽古に打ち込んでいた。一緒に行った尾崎には、顔が変わったと言われた。真面目じゃなかった頃の仲間には、気でも触れたか、と心配された。他の同期には、強くなったとか見違えた等と言われ、一緒に稽古しようと誘われた。
何だろう、落ち着かないがちょっといい気分だった。
そんな中、10人編成の隊で那田蜘蛛山の鬼たちを掃討しろと指令が来た。村田さんと尾崎も一緒だ。もしかしたら、これがそうなのか。嫌な予感がした。
村田を先頭に、庚の隊員たち10人で編成された隊が那田蜘蛛山に入山した。緑川と尾崎も一緒で、村田は心強く思った。
(これは水原の言っていたあれでは)
先遣隊が帰らない、そう聞いて村田は直観した。入山前に3人で話し合い、他の隊員にも情報を共有し、用心しながら進んでいった。
突如隊員の1人が体の自由を奪われ何者かに操られかけたが、蜘蛛の糸によるものと見破り、冷静に糸を切って対処した。
(間違いない、ここが蜘蛛の鬼どもの山だ!)
村田たちはさらに警戒を強めた。
「もう見破られた!お人形が足りなくなるじゃない!仕方ないわね」
母蜘蛛鬼は、以前殺した先遣隊の隊員たちの亡骸を操って村田たちに差し向け、操られた仲間の亡骸を相手に村田たちはやむなく戦闘を開始する。
操られていることは理解しているが、操る者の現在地が分からず、操り糸を切ってもすぐに這いまわる蜘蛛が糸を繋いでしまう。それにどうかすると自分まで糸に繋がれてしまう。
生きている仲間を絡めとろうとする糸に気を配りながら、仲間の亡骸を傷つけないように攻撃を捌く。
(まずいな、何とか打開しないと)
村田は焦りを感じ始める。そこに、炭治郎と伊之助が合流。伊之助はこの消極的な戦いを見ていら立った。
「早くぶった斬れ!大した事ねえだろうが!」
「だめだ!これは仲間の亡骸だ!なるべく傷つけたくない!」
斬りかかろうとする伊之助を村田が怒鳴る。
「操られているなら、本体がいるはずだ!伊之助!君が敵の位置を探る何らかの能力を持ってるなら……」
「分かったっつーの、やってやるよ!」
炭治郎が原作通り探知を依頼し、伊之助が獣の呼吸 漆ノ型・空間識覚を発動。超人的な皮膚感覚で操り糸の本体、母蜘蛛鬼の存在を探知した。
村田は隊を分け、緑川と他の7人にこの場を任せ、自分と尾崎は炭治郎たちと共に本体を倒しに行くことにした。
「俺は村田だ。そっちは尾崎。階級は庚。君たちは?」
「竈門炭治郎、こっちは嘴平伊之助。階級、癸です」
炭治郎も名乗った。
「行くぞ子分ども!小便漏らすなよ!」
先頭を行く伊之助の様子に村田は苦笑しつつそれについて走る。
「間違いないな?」
「俺の感覚に狂いはねえ!ついて来い弱味噌!」
伊之助は得意気だ。伊之助を先頭に駆け、4人は母蜘蛛鬼に迫った。
伊之助が跳躍し、母蜘蛛鬼に斬りかかろうとした時、
(近づいてくる!あの人形を出すしかない!)
母蜘蛛鬼は切り札である巨体の鬼を操り、4人に差し向けた。
両腕に巨大なブレードを装着した、頸のない体に戸惑う4人だが、炭治郎が袈裟斬りにすることを思いつく。村田と尾崎が攻撃を躱しつつ接近、左右から同時に接近して両腕を切断、炭治郎と伊之助の連携でこの鬼を切り伏せた。母蜘蛛鬼はほとんど抵抗せず、炭治郎が頸を刎ねた。
母蜘蛛鬼は消えて行く間際、
「十二鬼月がいるわ。……気を付けて」
そう言い遺し、4人はこの山に十二鬼月がいる事を知った。
母蜘蛛鬼を倒し、村田と尾崎は他の隊員と合流するため元の場所に戻り、炭治郎たちはさらに山奥へと進んだ。庚の隊員たちは誰も死ななかったが2人の怪我人が出たため、村田は緑川を護衛に付けて2人を下山させ、残り7人で探索を再開した。
(随分と時間を食った。みんな大丈夫かな)
怪我人を入山口まで避難させ、緑川が山中に戻ると、何か言い争う声が聞こえる。隠れて見ていると、血だらけの癸の隊員と、相手は子供に見える鬼。癸の隊員が斬りかかるが、鬼の放つ糸の攻撃で日輪刀が折られ、傍にいた女の子が空中に逆さ吊りにされた。
(さっきの癸。あいつ、大怪我してるじゃねえか。……刀折られた!それにあの女の子は、鬼?妹って何のことだ?)
さらに追いつめられる癸の隊員。
(あいつ、殺されちまう!くそっ!)
緑川は意を決し、戦いに割って入って……気づく。
(これはやばい!こんなやつの相手してたのかよ!)
子供に見える鬼だが、ただ立っているだけでその重圧に足がすくむ。
「丁度いいくらいの鬼がいるじゃねえか。こんなガキの鬼なら俺でもやれるぜ」
緑川は勇気を振り絞り、癸の隊員を背中に庇うように前に出て、やせ我慢のセリフを吐いた。
「君は誰だ?」
「誰でもいい。……そいつは俺の獲物だ、お前は引っ込んでろ。俺は安全に出世したいんだ。死ぬなって命令されてるしな。とりあえずこいつを倒してさっさと下山するぜ」
緑川は傷だらけの癸の隊員をぐいと後ろへ押しやり、前に出て時間稼ぎを狙う。
右手で日輪刀を構え、背中の左手で癸の隊員に逃げろ、と合図を送り、
「だめだ、よせっ!君では」
という叫びを耳にしながら、子供の鬼に斬りかかった。
(分かってんだよそんなこと!このままじゃお前が死ぬだろうが!早く逃げろ!)
緑川は、斬りかかると見せていったん横に跳んで距離を取った。
(あの糸の射程がわからねえが、距離を取った方が攻撃密度が下がるはずだ)
そう考えたからだ。
(あいつ逃げねえな。そうか、女の子がいるから逃げられないのか。面倒くせえ)
その鬼、累は子供のように見えるが、その姿からは想像できない程に強い。この山の鬼どもを恐怖で縛り上げ、束ねているのは彼だ。
「僕の大事な話の最中に割り込んで来て、お前は何を言ってるんだ?」
累はそう言って緑川をじろりと一瞥する。目が合った。睨むような力は込めていない視線。
「ぐっ!」
緑川が思わず呻く。目を合わせただけだが、先程よりもさらに強い、まともに動けなくなるほどの重圧。
「さっきの威勢はどうしたの?来ないならこっちから行くよ」
累が無造作に前に出ながら片手で鋼糸を射出するが、緑川はステップを踏んで躱した。累は、今度は両手から鋼糸を出して薙ぎ払ったが、緑川は日輪刀で弾き飛ばし、地面に転がり、全て避けた。
(なかなかやるみたいだね。ひとつも当たらない)
目の前の相手を、邪魔な雑魚としてしか見ていなかった累は、緑川を新たな玩具として認識し始めた。
「お前、なかなかやるじゃない。もっと踊って見せろよ」
鋼糸の数を増やし、スピードを上げていく。緑川は全力で走り、跳び、転がって避けるが、全てを避けきることはできず、隊服を着ていても体にはビシビシと傷が刻まれていく。致命傷は負っていなかったが、どんどん激しくなる攻撃に体力も持ちそうになかった。
「どうしたの?逃げてるだけじゃ僕は倒せないよ」
わざと抑えた口調でそう言いながら、ひたひたと累が近づいて来る。
「うるせえ。……てめえなんぞ、すぐにぶっ倒して」
緑川は、肩で息をしながら精一杯強がって笑ってみせた。しかし、いつの間にか間合いに入った累が、緑川をゴミの様に蹴りつける。左腕で防御し、受け身と呼吸で体を硬くしたが、胸に一撃を食らった緑川は数メートルも吹き飛ばされ、体中が痺れた。
庇った左腕と肋骨が何本か折れ、胸の奥から血液が湧いて来て、血の咳が出る。
緑川は、木にもたれかかってなおも立とうとした。
「こんなやつに血鬼術はもったいないけど」
累は止めを刺すために緑川にゆっくり近づく。緑川は累を睨み付け、
(くそっ、早く来てくれよ水原さん!)
そう待ち人に念ずる。
「ぶっ倒すんじゃなかったの?できるならやってごらん。十二鬼月である僕に、勝てるならね」
累は髪をかき上げ、左目の「下伍」の文字を見せつけながら嘲笑う。
(十二……鬼月……!)
絶望にも等しいその宣告だった。その時、待ち人ではなかったが、この劣勢を打ち破る光が差した。
(十二鬼月!あいつが!)
緑川に逃がされた炭治郎もそれを見ていた。
(あの人が殺される!迷ってる場合じゃない、やるんだ。父さんに教わった、ヒノカミ神楽を!)
あの人が戦ってる間に体力も大分回復した。でも、おそらく一度きりしかできない。これで、倒すんだ!
炭治郎は、ヒノカミ神楽・円舞を繰り出し、累の鋼糸を焼き切りながら迫る。炎を纏う炭治郎の斬撃に、初めて累が退く。そして、禰豆子の血鬼術・爆血により、焦る累を大きな炎が襲う。爆ぜる炎の中から炭治郎が飛び出し、累の頸を刎ねた。
炭治郎は、極度の疲労からがくりと膝から崩れ、累の術が解けて落下した禰豆子に向かって這い寄って行った。
しかしその背後には、自らの頸を持ち立ち上がった累の姿。累は炭治郎に斬られるより前に、自分の鋼糸で頸を斬っていたのだ。
「こんなに腹が立ったのは久しぶりだよ。いらいらさせてくれてありがとう」
累は自分の頸を元に戻し、紅く光る眼を大きく見開いた。静かな口調ながら、抑えきれない怒りを滲ませ、構えた両手からギシリと鋼糸を引き絞った。緑川は木にもたれてやっとのことで立ち上がり、この様子を見ていた。
(せっかくあそこまで戦ったのに!本当に殺される!くそっ!)
そして累に向けて、最後の力を振りしぼって倫道に習った鎌鼬(カマイタチ)を放った。
(当たった……?)
累の胴体は腰のあたりで真っ二つになり、上半身がどさりと地面に落ちた。緑川には立つ力も残っておらず、思わずその場に崩れた。