人物紹介
緑川…サイコロステーキ先輩。だんだんいいヤツになる
村田…指揮能力高め
裁判が無事終わったので、
「では、私もこれで」
俺もそう言って帰ろうとしたが、
「倫道もここに残ってくれるかい?」
お館様に引き留められた。
「さて、柱合会議を始めよう。最初に私から一つ。今まで柱は9人と決まっていた。現在9人の柱がいるが、将来的にもう1人増やそうと思う」
なるほど、それでこの実力派エリートのワタクシをお呼びになったのですね。いやー、隠していた力を見抜かれてしまいましたか。なんちゃって。
「倫道、君はとても柱に近い位置にいると思う。……そこで君の意見も聞きたいと思ってね。この場に残ってもらったんだ」
なんだ意見を聞くだけか。将来的にとおっしゃってたし、今すぐどうこうではないようだ。何となく俺が推薦される流れだったので、ちょっとイキッてしまってとても恥ずかしい。
自分の事でないと分かったので、
「お館様の御意のままに。柱に相応しい、そのようにお館様がお認めになるのであれば、私は異存ありません(キリッ)」
俺はまじめな顔をして適当に返事をする。
お館様は満足そうにうなずき、
「そうか、では決まりだね。現在水柱は義勇が務めてくれているが、それに次ぐ者として、水次柱(みずのつぐばしら)という役職を用意した。――倫道、受けてくれるね?」
……は?
「倫道は甲だし、下弦ノ伍を倒している。それに君に助けられたという者が大勢いてね。みんなも異存は無いかな?」
「御意」「……御意」
何かすごく間が開いた人いなかった?
まあ多少の不満もありながら、みな賛同してくれた。柱になれたらカッコイイなとは思ってたけど、遠い世界の事だと思っていたよ。
お館様、ありがたきお言葉。光栄至極に存じますが、それはまずいです。
「では私が柱を引退し、代わりに彼に水柱を任せてはいかがでしょうか」
義勇が言い出す。ああやっぱりな、そう言うだろうと思ったよ。しかし意外にもそれを遮ったのは不死川さんだった。
「てめえだって務め上げてるじゃねえか柱をよお。引退するなんぞふざけるな!」
不死川さん素晴らしい。何だかんだ言って義勇の事認めてるじゃん。義勇ってば本当に世話の焼ける子なのよお。仲良くしてあげてね。口下手だけど悪い子じゃないのよお。
お母さんの様な事を考えながら、柱同士の絆も確認出来て思わず頬が緩んだが、柱の看板背負ってヘマしたら殺すぞ、という不死川さんの視線を受けたのでまじめな顔を作り、俺が水次柱を拝命することでその場は収まった。
次の議題では何故か村田さんが呼ばれ、那田蜘蛛山の仔細報告をした。原作では直接その場面は無かったし、村田さんを直接責める訳ではなかったが色々と言われているようだった。ただ最後に、
「十二鬼月を相手に貴方たちの隊は全員無事生還しました。私たちの救援が間に合ったのもありますが、悪くない采配でしたよ」
しのぶさんにそう褒められて、村田さんは涙ぐんでいた。
その後俺は炭治郎君から聞いたというていで、みんなが気にしていた無惨の情報を提供した。
「彼が浅草で会ったという無惨は、仕立ての良い洋服を着た身なりの良い若い男性の姿。人間の妻と子を連れていたそうです。瞳は紅梅色、瞳孔は縦長。ですが人間の様に細工もできるようです。炭治郎君は匂いで分かったと言ってました」
お館様も、柱たちも息を呑む。
「人間社会に紛れ込んで、色々探ってやがる訳か」
「おそらくこれだけではなく、その他にも様々に擬態してるでしょう。探っているのは我々鬼殺隊の動静もあるでしょうが、目的の一つは日光を克服する方法――。あくまで俺の想像ですが」
鬼殺隊随一の情報収集能力を持つ宇髄さんが、そういう方向からもさらに興味を引かれた模様。原作の知識だが、俺はさも自分の考察のように答えた。そして、無惨や鬼たち、また彼らと人間たちを繋ぐ者も合わせると、鬼の関係者はおそらく相当数が人間社会に紛れて生きているのだろう。鬼のスパイが紛れ込んでいるかもしれない、注意喚起のつもりで言った自身の言葉が、後々まさに自分の首を絞めることになろうとはこの時俺は予想もしていなかった。
無事に柱合会議も終わり、その帰り際。
「最終選別での事は黙っておくよ」
お館様?な、何をおっしゃるので……?
「別に責めるつもりはないから安心していいよ。私は、錆兎が助かって良かったと思っているんだよ。他にもたくさんの子供たちを助けてくれているみたいだね。……ただあまり続けて任務をこなしたり、無茶はしないように」
お館様は、俺だけに聞こえるように囁いた。
は、はて、何のことやら。私には身に覚えがございません。
代々産屋敷家の当主たちには、常人ならざる優れた直感力と直観力が備わっている。その力で様々な危機を乗り切り、財を成したらしい。
その力を俺も身をもって知る。隠していた力を見抜かれたどころの話じゃない、俺の正体まで正確に知られることはないだろうが、普通の人ではないくらいは見通されているようだ。最終選別で錆兎を助けたことはもうバレてるし、隠密同心、じゃなかった隠に擬態しての活動もバレている節がある。
俺はちょっと挙動不審になりながら産屋敷邸を後にした。
知っている人たちは柱就任を伝えるとみな喜んでくれたが、
「マスカラス、俺柱になったよ」
「カァー、柱!リンドー、良クヤッタナ!アタイハ鼻ガ高イゾ!」
マスカラスが一番喜んでくれた。
……カラスに鼻?まあいいけど。
柱って言っても見習いだ。スーパー戦隊で言うところの追加戦士的な扱いだぞ。違うかな?引き続き頑張るけども。それよりお前、テンション上がってやたらにつつくの止めてくれ。血がっ!血が出てるじゃないか!加減というもんがあるだろう。
その後しばらくして、蝶屋敷に炭治郎君たちのお見舞いに行った。炭治郎君、善逸君、伊之助君の主人公グループに原作ブレイクの緑川君も同室に入って、よりドタバタして面白かった。
「うるせえぞお前!薬が苦いからって騒ぐんじゃねえ!子供か!」
「だって苦いんだもん!」
……病室に入らなくても聞こえてくるやり取り。緑川君と善逸君、なかなかいいコンビだな、コントのバカ兄弟みたいで。
「隊員の質が落ちているって柱合会議で言われてさぁ……」
丁度みんなの見舞いに来ていた村田さんが、ため息をつきながら言った。
そういえばそんなん言われてましたね。すんません、聞いてませんでした。えへへ。
「お前いたんじゃないか!何で庇ってくれなかったんだよ!すげえ怖かったんだぞ!……でもな、俺たちの部隊は誰も死んでなかったんだよ。それだけはちょっと褒められた。水原の命令のおかげかもな。それに、緑川も本当によく生きて帰って来られたな……。後で聞いたけど、喧嘩吹っ掛けた相手が十二鬼月ってシャレにならねえよな」
緑川君の方を見て笑っていた。
いや、それは村田さんの指揮とみんなの力だよ。何より生きて帰って来てくれた、それだけでおじさん嬉しいよ。また泣いてしまいそう。
「倫道さんには直接助けてもらいましたけど、緑川さんや、村田さんにもすごく助けてもらいました。みなさんのお蔭で俺は生きて帰れました」
炭治郎君が言う。君は本当に良い子だね。あ、目から鼻水が。
「水原さんまた泣いてんのかよ」
緑川君が可笑しそうに言うので、
「泣いてない。これは鼻水だ。泣いてるって言えば、緑川君だって俺が来た時、やっと来てくれたのね、あたし嬉しいわ(泣)、みたいな顔しただろう」
俺がそう返すと、
「あれは……違うよ、そんなんじゃねえ!だいたい遅いんだよ、来るのが!仲間が死にそうだってのに」
緑川君も言い返す。俺はニヤニヤしながら、
「ふーん、仲間……。君も素直になったねえ。そういう風に思えるようになったんだあ……。いやいや、成長したねえ」
と大げさに喜ぶと、
「俺だって仲間ぐらい分かるよ!人でなしみたいに言わないでくれよ!」
ムキになる緑川君。でもその後、
「まあでも……助けられたのは本当だし……ありがとうございました」
ブスッとしながら改めて俺に礼を言い、全くよぉ……。と言いながらも、ふと笑ったのだ。
「以前の俺だったら、1人で逃げてた。でもあの時は、炭治郎が死にそうになってたから、思わず余計なおせっかいをしちまった。安全に出世するはずが、これじゃ命が幾つあっても足りねえじゃねえか……まあ仕方ねえか。……仲間ってのも悪くはねえな。――という感じか」
調子に乗った俺は、勝手に緑川君の胸中を代弁してやった。
「何言ってんだよ!もう帰れよ!」
嫌な顔をしつつ笑う緑川君。
でも、君の成長は嬉しい限りなんだよ。
俺はうんうんとわざとらしく頷きながら、本当は泣きそうだった。
「ほらやっぱり泣いてるじゃねーか」
緑川君がさらに言い返す。
「泣いてない。これは鼻水だと言ってるだろう。……そういえば、十二鬼月をぶった斬った鎌鼬は君のじゃない。俺のだからな」
俺がそう言うと、
「うっわ!何この人、大人げ無え!みんな、聞いた?今の!」
と返しやがった。
周囲は爆笑、騒がしいので様子を見に来たアオイさんも、一同の明るいパワーに押されて苦笑している。
周囲の成長を実感しながら、俺は嬉しかった。
だが、俺は密かに企んでいる。
治ったらまた狭霧山に送ってやるからな。楽しみにしとけ。