ほのぼの鬼殺隊生活(完結)   作:愛しのえりまき

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2話 入門

両親にしばしの別れを告げ、俺は狭霧山にやって来た。麓の家を見つけて訪ねようとしたところ、

「誰だお前」

僅かな気配とともに錆兎が現れ、俺に刀を突き付けて誰何した。本当に斬れる、本物の真剣。

「鱗滝さんに入門を……」

錆兎が生きているという感動も束の間。俺はその迫力にビビりながらも用件を言おうとしたのだが、

「帰れ」

えっ?今なんて?……子供がまだお願いしてる途中でしょうが!

そんなに簡単に引き下がれるか。俺は改めて、鱗滝さんに入門したいので取り次いでくれるよう頼んだ。鱗滝さんを知っているということは、鬼や鬼殺隊を知っているということだ。

(外見は)同年代に見える普通の子供がなぜ、と不審がられたが必死になって頼み、鱗滝さんの元へ連れて行ってもらうことができた。

鱗滝さんに普通に入門を申し出たが、ろくに口も利いてくれずにあっさりと断られた。

鱗滝さん?ほ、ほら、あの時の子供ですよ。こんなに大きくなりました。あの時助けていただいたおかげです。だから、良いじゃありませんか。……駄目ですか?だがそれで引き下がるわけにはいかぬ。

自分は鬼を倒し人々を護りたい。自分には、命を懸けてやり抜く覚悟がある。ここで終わっちゃったら原作に絡めないじゃないか。

半泣きで鼻水を垂らしながら必死にそう訴えた。あまりにしつこく頭を下げるので、

「例のあれをやらせてみてはどうでしょうか?」

錆兎が取り成してくれた。あれ、とは。女だらけの、ではなく、暗闇の中で罠だらけの山を駆け下る夜中の運動会。

その夜、俺は錆兎と義勇に付き添われ山の中腹まで連れて行かれた。

「お前の覚悟とやらを今から試す。お前がやるのは、ここから山の麓の家まで下りて来る、それだけだ。せいぜい頑張れよ」

鱗滝さんに寄せた感じの口調で錆兎に説明を受けた。義勇は何か言おうとするが上手く言えない様子で、その代わり何とも言えない憐れみの視線を向けて来た。罠があるのは教えてくれないのか。知ってるけど。辺りを見回していると、いつの間にか2人は消えていた。

そうかい。ぶっちぎりの最速で帰りついて、びっくりさせてやるぜ!と、いきって駆け出した途端落とし穴に落ちて泥だらけになり、へこみながら地上に上がったところで石つぶてが飛んで来る。若竹のしなりを利用した強烈なパンチもくらった。

ディフェンスをもっと強化しないとこの段階で死ぬかもしれん、そう思いつつ走り続ける。

強化五感を使おうにも、標高が高く気圧が低い環境で全力疾走するため、血中酸素分圧は低下し、スタミナも思考力も無くなってくる。それでも走るのは得意なので、夜明けよりだいぶ早く麓の家の近くまで下りて来た。

アニメ版鬼滅の刃のオープニングみたいになりながら、やっと家が見えて少しほっとしたが、最後の最後で竹パンチを股間にくらってしまった。こんな所にまで罠が……。俺は顔面蒼白になりながら家に辿り着いた。

玄関を入ると、予想よりはるかに早い帰宅に

「お前っ、早いな!」

錆兎は目を見張り驚いていた。

「大した奴だな」

義勇もそう言いながら2人でフラフラの俺を支えてくれた。

「名は、何と言う?」

初めて鱗滝さんがまともに話してくれた。

「みずはら……りんどう……です」

俺はやっとのことで名乗った。

「お前を認める。水原倫道」

鱗滝さんはようやく入門を許してくれた。こうして、俺の修行生活が始まった。

 

翌日から、厳しい修行が始まった。兄弟子と言っても数か月入門が早いだけだが、一つ年上の錆兎や義勇に比べれば体力もまだまだだと思い知らされた。並行して、剣術を初歩の初歩から叩き込まれた。

しかし半年もすると、体力も急激に伸びて兄弟子に迫り、剣の扱いも上達した。

動作を理解し、コピーする能力を存分に使い、兄弟子2人が鱗滝さんから教わったエッセンスを残らず吸収した。徒手格闘は最初から俺の方が強かったが、自己鍛錬で素地を作ったのが役に立ったと思っている。毎日長時間鍛錬して本当にボロボロに疲れるが、はっきりと自分で分かるほどに上達が見えるため、日課の後も自主練習を欠かさず行った。

色々な事を学んだが、錆兎と義勇、この素晴らしい兄弟子2人と一緒に修行できたことが何よりも大きかった。自主練習にも付き合ってくれたし、修行の合間には色々な話もした。義勇が自分で自分を責める理由、義勇を守って殺されたお姉さんとのことも。

原作を知っている俺でも、まさに今目の前で本人が語るのを聞くととても切なかった。歳を取ると共感できることが多くなり、涙もろくなるというのは本当だった。

自分が死ねば良かった、とポツリと漏らす義勇。

「お前は絶対死ぬんじゃない!姉が命をかけて繋いでくれた命を、お前も繋ぐんだ!」

錆兎はそんな義勇を平手打ちし、強くそう言った。俺も泣きながら強くうなずくとともに、

(錆兎、お前もな。お前は俺が絶対に死なせない!)

そう決意を新たにしていた。

2人とも原作以上に良いヤツだ。ともに修行できて良かったよ。でもな、2人とも。

“水と一つになる”訓練で、俺が滝つぼで溺れて死にかけた時、腹を抱えて笑ったのは許さん。

 

 

倫道は不思議なヤツだった。紹介もなく急にやって来て、鱗滝さんに弟子入りしたいと言う。鱗滝さんを知っているということは、鬼や鬼殺隊を知っているということだ。

長いまつ毛で優しげな顔立ちの、お坊ちゃんみたいなこの子供が鬼殺の剣士に?

十二歳になったばかりと言うから、十三歳の俺たちと歳は一つしか違わない。しかし両親は存命で、実家もちゃんとある。天涯孤独で行くところもない俺と義勇とは何から何まで違う。

何か事情でもあるのかと聞いてみたが、ただ一度鱗滝さんに助けられ、自分も人を護りたいと言うだけの理由だ。

アホなのかと思ったが、あまりに真剣に頼むのと、同年代の子供とは思えない異常に鍛えられた脚を見て、こいつの本気が分かったような気がして、鱗滝さんのところに連れて行くことにした。

当然簡単に断られ、引き下がるかと思いきや半泣きで何度も何度も頭を下げて帰る気配がない。そこで俺は山下りをさせてみましょうと鱗滝さんに進言してやった。

夜明けまでに帰らなければ探しに行って助け出し、さっさと追い返せば良い。そう思ったのだが。

こいつは。倫道は。とんでもない短時間で帰って来た。

「あの時の子供が……」

鱗滝さんはため息をついていたが認めざるを得ず、俺と義勇と一緒に修行することになった。

倫道は、体力も剣技も瞬く間に俺たちに追い付いてきた。天賦の才と、日課の鍛錬が終わっても一人復習をひたすら繰り返す努力がそれを可能にしたのだろう。

新たな技を身に付けたり、課題を克服したりすると互いに喜び合い、辛い時は激励し、切磋琢磨し、俺たち3人は良い修行仲間となった。修行の合間に互いの身の上話などをすると、倫道は俺たちの話を涙と鼻水を流しながら真剣に聞いていた。そして、必ず鬼殺の剣士となり、鬼を倒して人々を護ろうと誓い合った。

 

 

 

 

修行を続けている俺の元に、実家から父が倒れたと電報が来た。錆兎と義勇の2人は大岩斬りの課題を与えられており、修行もそろそろ大詰めに入っている。錆兎と義勇が参加する最終選別が近い。

つまりは、そこで錆兎を救わねばならないのだ。父親の件は一大事だが、狭霧山にいないと日程が分からなくなる。

しかしここはやむを得ない。修行を一時中止して鱗滝さんに暇を請い、実家に帰ることにした。錆兎には、くれぐれも1人で突っ込むな、仲間を信じて必ず生きて帰れ、とよくお願いしておいた。

「何のことだ?」

錆兎は事情が分からず訝しがっていたが、俺がいつ戻るか分からないからと適当なことを言ってごまかし、雲取山の近くにある実家に帰った。

 

 

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