ほのぼの鬼殺隊生活(完結)   作:愛しのえりまき

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23話 縁壱零式

翌日炭治郎君と一緒に鋼鐵塚さんを探して歩いていると、霞柱・時透無一郎君が戦闘訓練用カラクリ人形“縁壱零式”を巡ってもめている場面に遭遇。揉めている相手はその持ち主、あの小鉄少年だ。

この時の無一郎君は記憶を取り戻す前でかなり態度が悪く、しかもそれを悪意なくやっているところがすごい。

先祖代々受け継いだ貴重な物だし、壊れたら自分ではもう直せない。子供の小鉄君がそこまで言っているのに、柱である自分に訓練用の人形を使わせないのはもう頭おかしいとまで言う。

「刀鍛冶は武器作るしか能がないでしょ?壊れたらまた作れば?柱の時間と君たちの時間では価値が全く違うんだよ。早く鍵渡しなよ」

無一郎君は無表情のまま小鉄君に迫り、このままじゃ半殺しにしかねない。炭治郎君も怒っているが、俺は思わずもめている2人の間に割って入る。

「無一郎君、俺が相手しようか?」

自分でも意外だったが、俺は柄にも無くちょっと熱くなってしまっていた。

「歯ごたえのある稽古したいんだろう?木刀くらい近くにあるだろうから、やろうよ」

無一郎君にそう言ってみた。

「……君、誰だっけ?」

何というショッキングなセリフ。

無一郎君は、いきなり入って来た俺を見て表情一つ変えずに聞いてきた。アニメで見た、何だっけあの鳥……って言ってた時と同じ、どうでもいい時の口調じゃないか。マジで覚えてないの?柱合会議では、俺と風柱がひと悶着あったでしょうに。

俺ってば存在感薄っ!

「柱合会議で会ったでしょ、ミ・ズ・ハ・ラ・リ・ン・ド・ウ!」

仕方なく自分で名乗る。カッコつけて登場した割に無一郎君に相手にもされず、ショックを受けている俺の様子を見て小鉄君が気を利かせて、

「分かりました。鍵渡すよ……」

と言ってくれたので揉め事はスッキリ解決。って全然嬉しくないぞ。

「大丈夫だよ倫道さん。俺も覚悟決めるよ」

寂しそうに鍵を渡す小鉄君。

何だか俺だけバカにされた気分なのだが、無一郎君に全く悪意は無いので責める訳にもいかない。

でもこのままでは無一郎君の時間が無駄になる。原作によると、人形はレベルや動きが調節できるのだ。より高いレベルで訓練しなければ、無一郎君ほどの剣士には意味がない。

鍵を渡す時に、折角だからと俺は小鉄君にお願いする。

機能を万全にして訓練させてあげて欲しいと。考えてみれば、無一郎君だって我欲で訓練したいと言ってる訳じゃなくて、人を護りたいから剣の腕を上げたい訳で。どうせなら身になる稽古をさせてあげて欲しい。

「そんな……!」

小鉄君は難色を示すが。

お願いします!俺は懸命に頼んだ。無一郎君のために、これから彼に救われる人たちのために。

「もう分かったよ。あんたお人好し過ぎだよ」

結局小鉄君は根負けして、

「人形は、手首と指を回して調節し、剣士の弱点を突いた動きにできます」

と教えてくれた。

無一郎君は一連のやり取りを見て俺たちに少し興味が湧いたのか、

「なんでそんなにおせっかいするの?他人に構うの?」

そう聞いて来た。

俺と無一郎君がバチバチにやり合うんじゃないかとハラハラしていた炭治郎君は、どうやらそうならないことにほっとしながら、

「人のためにすることは結局、巡り巡って自分のためにもなるんじゃないかな」

小鉄君を慰めながらそう答えた。

「えっ?今――何て言ったの?」

思いがけず炭治郎君の口から飛び出した言葉に、無一郎君の表情が変わる。無一郎君の記憶が揺さぶられているのだ。これは覚醒のきっかけとなるキーワードの一つ。

 

無一郎君が縁壱零式と戦っているのを見学していると、小鉄君が概要を説明してくれる。

戦国時代、小鉄君の先祖が実在の剣士をモデルに作った自律型カラクリ人形で、腕が6本あるのは、そうしないとその剣士の動きを再現できなかったからだそうだ。その顔に、炭治郎君だけでなく俺も何故か懐かしさを感じていた。モデルは縁壱さんと分かっている。原作で良く知っていたはずの展開なのに何か引っかかるものがあった。

「すごい。俺と歳も変わらないのに、柱で、才能があって」

炭治郎君が嘆息する。考え事をしていた俺も、我に返って訓練を眺める。

「アノ子ハ天才ダカラ当然ヨ!アノ子ハ“日ノ呼吸”ノ使イ手ノ子孫ダカラネ。アンタ達トハ次元ガ違ウノヨ!」

無一郎君のカラス、銀子が得意気にまくしたてる。

「“日の呼吸”って、始まりの呼吸の……。でも彼が使うのは“日の呼吸”じゃないんだね」

失礼なカラスに向かって、炭治郎君が生真面目に答える。炭治郎君、それ言っちゃダメなんだ。

「黙ンナサイヨ!目ン玉ホジクルワヨ!」

痛いところを突かれた銀子が激怒して炭治郎君をつつく。俺は巻き添えを食わないようにそっと離れつつ、

「見ろ、また設定上げるぞ」

みんなに声をかける。無一郎君は自分で設定をいじってどんどん難易度を上げて訓練は過酷になり、ついに最高難度まで上げて訓練を続ける。無一郎君はだんだんと傷を負い、吹っ飛ばされるがそれでも稽古を止めなかった。いい気味だ、と意地悪な笑みを漏らしていた小鉄君も、やがてその真剣な姿に打たれた様子で、(頑張れ)と呟いていた。時間とともに次第に無一郎君が躱して責めることが多くなり、打ち込めるタイミングが来た。

だが無一郎君は打ち込む代わりに、頸の後ろの鍵で自ら人形の動作を止め、稽古を終了した。

縁壱零式に無用な衝撃を与えることを避けたのだと分かった。

 

「無一郎君」

人形を壊さないでくれてありがとう。俺はそう声をかけようとして、彼の顔が少し変わったのに気付いた。

「良い修行になったよ。刀はボロボロになっちゃったけど、ありがとう」

無一郎君はそう言って、少しふらつきながら宿に帰って行った。

 

「さあお2人も、あの人に負けてられませんよ!」

ふと、小鉄君が燃えているのが目に入った。原作では無一郎君の無礼に対する怒り、今は目の前ですごいものを見せられて、その感激?といったところか。

「お2人は俺の事庇ってくれたから、これ使って十分に訓練させてあげます!」

めっちゃ張り切っている。ええっ俺も?今から?

「そうです!倫道さんと、それと」

「竈門炭治郎です。でも、良いの?貴重なものじゃあ……」

炭治郎君も名乗り、真面目な彼らしく壊れたりする心配をしている。

「俺は小鉄って言います。壊れたら俺が直してみせます!だから炭治郎さんも」

こんな会話があって、俺たちにもスパルタ訓練が施された。

実際に縁壱零式と対峙するとすごい。だけど何か物足りないような。――腕は6本あるけども本物はもっとすごい、そう思う。なぜかは分からないのだが。

極限集中を使うまでもなく、俺は数時間で訓練を終了した。

炭治郎君にはとても良い訓練になると思ったのだが、宿にしばらく帰って来ないので見に行くと、

「倫道さん……俺……もう3日間何も食べてないです……」

幽霊のようになっていた。お労しや、炭治郎君。

炭治郎君は、生物学的な限界を無視した小鉄君のしごきによって絶命しかねない状況であったので、俺は医学的な見地から、集中力が落ちている状況では学習効率が落ちるため、適切な栄養と水分を取るよう(かなりきつく)助言し、原作主人公が死ぬという事態は避けられた。

その後すぐに炭治郎君は、“匂い”による相手の動作予知能力を獲得、数段の飛躍を遂げた。さらに訓練を続けると、俺の目の前で遂に縁壱零式に一撃を入れた。

人形はまるでそれを待っていたかのように壊れ、中から謎の刀が姿を現した。

秘密のアイテム出現にテンション爆上げの子供たち2人。大はしゃぎしているが、抜いてみると当然錆が酷くて使える状態ではない。

「大丈夫です!がっかりしてません!」

涙を流しながら気丈に笑う炭治郎君だが、分かりやすく落胆している。

そこに、ムッキムキになった鋼鐵塚さんが突如現れ、挨拶をする俺を無視して刀を渡せと迫った。

訳も言わず子供たちから謎の刀を取り上げようとする大人気ない大人、鋼鐵塚さん。刀は人形の持ち主の小鉄君の物だと主張する子供2人。大騒ぎになり、同じく刀鍛冶の鉄穴森さんがやって来て仲裁しようとしてくれたが、

「鋼鐵塚家に伝わる研磨術で研ぎ上げて下さるんですね!」

俺は先回りして説明し、刀を鋼鐵塚さんに預ける流れを作ってあげた。子供たち2人も納得したところで鋼鐵塚さんは炭治郎君に予備の刀を渡し、謎の刀を持っていそいそと去って行った。本当に手のかかる三十七歳児だ。

 

 

鋼鐵塚さんの研磨が始まり、とりあえずやることが無くなった俺と炭治郎君は、部屋ですっかり寛いでいた。

「というわけでさ、刀の研磨に3日3晩かかるらしいんだよ。覗きに来るなって言われてるけど、見に行っても良いかな?倫道さんはどう思います?」

炭治郎君が畳に胡坐をかいてせんべいをボリボリ食べながら、顔だけ向けて俺にも聞いてくる。

「そうだな、ちらっと見るくらい良いんじゃないの?でも包丁持って追いかけられたりしてな(笑)」

俺も胡坐をかき、ちゃぶ台の上のみかんをそのままムシャムシャ食べながら言う。

「あれはもう勘弁してほしいですね。倫道さん追いかけられたことあるんですか?」

ボリボリ。炭治郎君、口の周りにせんべいのカス付いてるぞ。

「いや、ないよ」

ムシャムシャ。ん?どうした炭治郎君。何か言いたい事でも?

「あ、あの……、倫道さん、皮」

炭治郎君が、皮も剥かずみかんを1個丸ごと口に入れている俺に微妙な視線を向けて来る。

「みかんの皮には栄養があるんだ。漢方薬の材料にもなるんだよ」

これは本当だ(陳皮、というが、本来は乾燥させた皮)。それに、ベータクリプトキサンチンやヘスペリジンも豊富に含まれており、これを摂取しない手は無いだろう。決して皮を剥くのすら面倒くさいという理由ではない。決して。そんな風にダラダラしていると

 

ぶううっ

あっ……。ん、ゴ、ゴホン。そのー、なんだ。

ごめん、肛門まで緩んで思わず屁こいちゃったよ。

 

……炭治郎君、ダメ人間を見るようなそんな目で俺を見るな。

 

しばしの間、俺たちは欠伸をしながら空気の抜けたような会話をして、あはは、と笑っていた。それにしてもこんなに寛いでて良いんだろうか、いや良いのだ。

 

 

「玄弥、倫道さんにお茶もらっていい?」

炭治郎君が気を利かせて聞いてくれたのだが、先ほどから何やら殺気が漂っていて、それがどんどん強くなっている。

見ればこの部屋の主が怒りの形相で俺たちを睨んでいる。どうした、何を怒っているのだ玄弥君?さっき屁こいたから?

「竈門!出てけお前!友だちみたいな顔して毎日来るんじゃねえ!倫道さんも!なんで俺の部屋でのんびりしてんだ!ここはたまり場じゃねえ!!」

と2人とも追い出されてしまった。

寂しいだろうと思ってせっかく来たのに、解せぬ。

 

 

 

俺は夜間のパトロールを続けていたが、まだ何も起きていない。そろそろ来る、はずなのだが。

とその時住宅密集地の方から悲鳴が上がり、

「敵襲!!」

見張りの叫びと半鐘の音が里に鳴り響いた。

見れば、上弦ノ伍・玉壺の血鬼術で生み出された化け物どもが、住居を押しつぶして進んでいる。体長は4、5メートル、金魚の体に力士の手足を生やしたような化け魚だ。気持ち悪っ!

俺たちが泊っている宿でも上弦ノ肆・半天狗との戦闘が始まっているはずだ。

どうする?

俺は一瞬自問自答し、まずこの化け物群を始末して里長の鉄珍様や周囲の人を助け、その後鋼鐵塚さんを護りながら玉壺本体を叩くと決めた。

 

 

 

倫道は化け魚を斬って人々を助けながら里長の鉄珍の屋敷へ急ぎ、鉄珍を襲っていた化け魚を両断して無事助け出した。原作では甘露寺に助けられるはずなのだが、

(鉄珍様、甘露寺さんじゃなくてごめんなさい!)

倫道は心の中で謝りながら、鉄珍を抱えたまま次々と周囲の化け魚を始末して行く。そこに甘露寺が到着し、新体操のリボンのような刀を一閃、背後から倫道を狙っていた化け魚を一瞬でバラバラに刻んだ。

原作では鋼鐵塚の工房付近に玉壺が現れ、鉄穴森、小鉄に大怪我を負わせ、鋼鐵塚に至っては片目を潰されてしまうので何としても防がなければならない。そこでは今も鋼鐵塚が不眠不休で刀の研磨に当たっているのだ。

倫道は里の中心部付近の守りを甘露寺に任せ、助けた鍛冶職人に場所を聞いて鋼鐵塚の工房へ急いだ。

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