ほのぼの鬼殺隊生活(完結)   作:愛しのえりまき

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28話 ネタバラシ

本日俺は、珠世さんと愈史郎君の鬼殺隊本部への移動に際して護衛を仰せつかっていた。護衛とは言っても、珠世さんと愈史郎君に鬼殺隊本部に来てもらうようお館様のカラスが珠世さんを説得している間、口添えして一緒に説得するという役割が大きい。

珠世さんと愈史郎君に鬼殺隊本部に来ていただくこと。共同研究をお願いする件もあるし、2人の安全のためでもある。

 

「貴方が水原さんですか。手紙を下さった……」

珠世さん?それは言わないでいただきたかったのですが。

強い殺意を感じて恐る恐る視線を動かすと、愈史郎君がそりゃあもうものすごい目で俺を睨んでいる。

「茶々丸も随分懐いているようですし、お話はお聞きしましょう」

確かに茶々丸君とは仲良しです。茶々丸君可愛いんですが、俺の羽織で爪研ぐの止めさせてください。

 

無惨への復讐に燃える珠世さんにとって、鬼殺隊という数百名に及ぶ軍事勢力が味方に付くことはやはり大きい。鬼殺隊にとっても、珠世さんの頭脳は貴重だ。それに、愈史郎君の血鬼術も最終決戦の切り札と言って良いほどに大きな力となる。

 

お館様の代理のカラスと俺は誠心誠意、両者が協力することのメリットを説いた。その結果2人を鬼殺隊本部へお招きする事になったのだ。

俺たちの説得もあったが、やはり炭治郎君と触れ合ったことが大きいと考えられる。炭治郎君の優しさに珠世さんが心を動かされる描写もあった。

この件では、炭治郎君が隠れたMVPと言える。珠世さんと愈史郎君を鬼殺隊に迎えられたことは対無惨戦に向けての大きな一歩だが、研究を進めてもらうにあたり、もう一つの大仕事が残っている。

 

お館様は珠世さんに、しのぶさんとの協同研究を提案なさっている。確かにこの両者が力を合わせればきっと上手く行くだろうと思える。最初はとっても大変だろうけど。

 

 

俺のもう一つの大仕事、それがしのぶさんの説得だが、これも頑張らねばならない。

 

 

 

 

刀鍛冶の里が上弦の鬼2体によって襲撃され、それを討伐した後、臨時の柱合会議が開かれた。

「当主輝哉の病状が悪化し、皆さまの前へ出ることがかなわなくなりましたこと、心よりお詫び申し上げます」

奥様であるあまね様が、代理として会議を取り仕切るようだ。それほどまでにお館様の状態は悪い。点滴なども進言してみたがそれはしなくてよいと言われてしまい、立つ瀬がない。

 

本日の議題は、炭治郎君から始まり、無一郎君と甘露寺さんにも発現した“痣”のことだ。

無惨をあと一歩まで追い込んだ始まりの呼吸の剣士たちには、鬼の紋様に似た痣があったという。しかし痣の者たちは次々に死に、それ以降痣の者は現れることが無く情報はほとんど失われてしまった。

しかしごく少ないながらもがはっきり伝わっている情報がある。

 

痣の者が1人現れると共鳴するように周りの者たちにも痣が現れるということ。そして、痣を発現した者は二十五歳を前に死ぬということ。

 

炭治郎君や甘露寺さんは痣の発現条件について具体的に説明できなかったので、無一郎君が経験的に説明する。

体温は39℃以上、脈拍は200/分以上。

 

俺はこれを複雑な思いで聞いていた。柱たちは二十五歳前に死ぬことなど誰も恐れないだろう。無惨を倒せるなら喜んで痣を発現させるに違いない。

これらの情報が伝えられてあまね様が退出された。

(戦いに勝つだけではなく、痣も何とかしないとな)

俺は思案する。ただ現在のところ良いアイディアがあるわけでは無いが。

(何かすごい癒しの術でもあれば……)

 

俺がそんな風に思っていると、あまね様に続いて

「では俺も失礼する」

義勇も退出しようとして、一悶着あった。

他の柱たちは当然止める。今後のことなど話し合わねばならないことはたくさんあった。

「その話し合いは残った9人でやると良い。俺には関係ない。……俺はお前たちとは違う」

義勇は出て行ってしまう。

全くいつもいつも手のかかる子だ。仕方ない、フォローしておくか。

「すみません、みなさん。実は、口止めされているのですが」

俺はただただ頭を下げて必死に詫び、最終選別での件をみんなに話した。

自分はただ気絶して隠れていただけで、選別に通ったとは言えないと思っていること、したがって、柱のみなと並んで立つことなど許されないと思っている。

それにおそらくだが、お姉さんが彼を庇って亡くなっている事も一因であろう。やっぱりまだ吹っ切れてないんだな。

 

「ちっ、全く仕方のねえヤツだ。水原ァ、てめえがしっかり言っとけよ!アイツはどこをどう見たって柱だぁ。てめえが血ヘド吐くほど叩きあげてここまで来たことを忘れんじゃぁねえとな」

多少言葉はきついが不死川さんも、それに伊黒さんも意外なほどあっさりと矛を収めてくれた。

「まあ、上手く言えないのは冨岡さんらしいですが、どうしましょう?」

しのぶさんが言ったので、俺は、兄弟子がすみませんと改めて謝罪した上で、

「俺が良く話しておきます」

と取り成しておいた。

 

ここで悲鳴嶼さんから提案があった。鬼の出現が無くなった今こそ、隊員たちのレベルを底上げすべく“柱稽古”を行ってはどうかというものであった。反対する者はなく、隊員たちが柱の元を回り直接稽古をつけてもらうという強化訓練を行うこととなった。

 

また俺からも、無限城に潜入させた式神から上弦を始めとした鬼たちの詳細な情報が得られたので、有力隊員たちを一同に集めて説明会をしたいと申し出て、これも了承された。

 

 

 

数日後、義勇も含めた柱たちと、丁以上の隊員たちに集まってもらった。

村田さんや緑川君、尾崎さんも含まれ、選別に通ったばかりだが既に柱に次ぐレベルの千寿郎君、復隊した槇寿郎さん、育手と剣士両立の錆兎にも来てもらっている。

 

式神からの情報と偽り、原作、コソコソ噂話、公式ファンブック、ネットで得た知識を総動員し、詳細なレクチャーを行った。

「無惨をはじめとする鬼どもの居城、無限城。その位置は大体特定されています。鬼殺隊がそこに乗り込んで戦うことになるでしょう」

また無惨、上弦の鬼たちの容姿や血鬼術、武器、戦法などもそれぞれ余さずレクチャーした。この時代にネットがあれば間違いなく「画伯」と言われるだろう俺のイラスト付きだ。失笑が漏れたのはきっと気のせいだと思う。

無惨については体中が口になったり、腕や体中から生やしたチューブで毒を伴う超高速の斬撃を行うことなども説明した。

 

 

「上弦ノ壱・黒死牟。残念ながらこいつは、四百年ほど前の、始まりの呼吸の剣士たちの一人。その名を継国巌勝、そのなれの果てです」

 

「こいつは“月の呼吸”を使います。鬼殺隊士の全集中の呼吸に血鬼術を併せることで、1回の斬撃を繰り出す度に、その周囲に不規則な軌道を描く三日月状の刃がいくつも発生して相手を攻撃します」

 

「上弦ノ弐・童磨。万世極楽教の教祖を隠れ蓑にし、信者らを喰っています。にこにこと屈託なく笑い穏やかに喋る、爽やかな風貌の青年の鬼。帽子を取ると、頭に血を被ったような紋様があります」

原作でカナエさんが語った表現を入れる。しのぶさんの表情が一瞬険しいものになった。

 

「こいつの武器は刃の付いた2本の鉄扇。この武器による攻防も優れていて、隙はなかなかありません。こいつは氷の血鬼術を使いますが、広範囲で高威力。また厄介なのは、凍らせた血を自身の周囲に撒き散らす技で、知らずに吸い込むと肺が凍って壊死します。斬撃を仕掛けながらこの攻撃を織り交ぜてきますので注意してください」

 

「上弦ノ参・猗窩座。以前杏寿郎さんたちは相対していますね。もともと拳法家で、徒手空拳で戦う鬼ですが、その突き蹴りの威力は恐るべきものです。攻撃しようとする意思を察知して対処してくるので、対処できないくらいの攻撃密度で攻め切るくらいしか方法が浮かびません……」

 

「新上弦ノ肆・鳴女。琵琶の音で無限城自体を自由自在に操り、人間や鬼を無限城内の任意の空間に転移させたりします。最終決戦では無惨にバレないようにこの鬼を我々の管理下に置くことで、戦況をある程度支配できると思います。また自分の分身である卑妖を使って捕捉した者を、無限城内に召喚することができます。おそらく無惨は、こいつの能力で捕捉した隊員たちを無限城内に落とし、殲滅を狙うものと思われます。柱を含め上級戦闘員は意図的に位置を把握させ、まだ力不足の隊員たちは頻繁に居所を変えるなどして匿うのがよろしいかと存じます」

鳴女が放つ目玉の卑妖は、意図的に見逃したり撃墜したりしてコントロールしてやろう。

 

「新たな上弦ノ陸が補充されたようですが、これは残念ながら情報がありません」

獪岳という雷の呼吸の剣士が鬼にされたようです。呼吸を基にした血鬼術を使います。

とはとても言えかなった。

この直前、獪岳が鬼になったことにより、元鳴柱での雷の呼吸の育手・桑島さんが切腹したとの報がもたらされている。幸い発見が早く、しのぶさんと隠の水谷としての俺、その他優秀な助手役の隠隊員たちと共同で長時間に及ぶ手術を行い、何とか一命は取り留めたがまだ絶対安静だ。その情報は既に知っている者も多くおり、誰もそれ以上は触れなかった。

善逸君はうつむき、膝の上で硬く拳を握っている。ごめんな善逸君。桑島さんのこと、事前に察知できなくて命の危険に晒してしまったよ。

「俺は、俺のやるべきことをやる。俺がやらなきゃ駄目なんだ。じいちゃんをこんな目に遭わせやがって」

善逸君は周りに聞こえないくらい小さな声で、そう呟いていた。

 

 

「鬼ども、特に無惨は単体の戦闘力、生命力においては、人間の我々とは比較になりません。ですがそれはあくまで血鬼術や再生能力など、鬼としての生物の特性によるものです。集団戦において、明確な戦略や戦術は持ちません。従って、優れた指揮官によって統制された軍隊の強さを知らない。我々はある程度お館様の指示で動くことになるかと思いますが、各々が役割を果たし、良く連携して戦えば勝機はあります。そして戦闘員は単独で敵に当たらず、必ず複数で掛かるようにしてください」

俺はそう結んだ。

そして、これから始まる柱稽古では鬼一体に対して複数の隊員で対処するため、連携が取れるよう十分に訓練をしなければならない。

 

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