ほのぼの鬼殺隊生活(完結)   作:愛しのえりまき

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蓬萊斗和(ほうらいとわ)…【野良着の隊士】の女性主人公。”土の呼吸”を使う。十八歳。
館坂佳成(たてさかよしなり)…【野良着の隊士】オリジナルキャラ。斗和の継子で十七歳。
小野寺夏世(おのでらかよ)…【野良着の隊士】オリジナルキャラ。斗和の家の家事全般、畑の管理をしている。十九歳。
令和…【野良着の隊士】オリジナルキャラ。斗和の鎹ガラス。寡黙。


第七話 暗躍

 館坂佳成(たてさかよしなり)は土柱・蓬萊斗和の継子だ。

斗和、倫道の一つ年下で十七歳、階級戊(つちのえ)。身長188㎝、体重90㎏の巨漢で未だ成長中であった。真面目で好青年、がっちりと引き締まった体をしており、爽やかなイケメン。現代の有名人で言えば大谷翔平といったところであろうか。恵まれた体格と筋力を生かそうと、岩柱・悲鳴嶼行冥の下で岩の呼吸を学んでいたが、なかなか習得できずに悩んでいた。そんな時、合同任務で斗和の戦う姿を見て、突然視界が開けた気がした。

 華麗な身のこなしで大きな武器を振るう女性隊士。体格は自分より華奢だが、見惚れるほどの技の切れだった。佳成は悲鳴嶼と相談の上で、翌日には継子になりたいと斗和を訪ねた。当時斗和は十七歳、佳成は十六歳、斗和にとって初めての継子志願者であった。斗和はまだ柱ではなかったので弟子となったが、斗和が柱になったので現在は晴れて継子となり、住み込み修行中だった。

 

 斗和は基本的には教え過ぎない。核心となる部分はきっちりと何度も行って見せ、実際に自分の技を受けさせてイメージを叩き込む。そしてその後は、学び手の感じるままに技を磨かせ、手合わせする。こうした指導が良かったのか、土の呼吸の方が佳成の性に合ったのか、一年ほどの修行でメキメキと上達し、順調に剣士としての力を伸ばしていた。

 

 蓬莱斗和の自宅にある広大な庭兼畑兼鍛錬場では、夜も明けないうちから稽古が行われていた。重い訓練用の模擬刀が風を切り、激しい息遣いが漏れる。

 佳成は息を荒げながら激しく刀を振り、仮想の敵と戦う。その横では、師匠である土柱・蓬萊斗和(ほうらいとわ)も特別に誂えた訓練用の鍬(クワ)で技を練っている。

 任務の無い朝の、この師弟のいつもの光景だった。しかし数日前から様相が少し違っている。もう一人、一緒に訓練を行う者がその横にいるからだった。

 

 倫道は、触れるもの全てを両断する激しい気迫と集中力をもって一撃一撃を繰り出し、見えない敵と戦う。鱗滝から手ほどきを受けた水の呼吸の剣技、そして鬼滅の刃以外の作品の色々な技をも再現し、身につけようと努力していた。真空の刃を飛ばす“空破山“と、相手と自分の刀を打ち合わせた衝撃で真空刃を飛ばす“衝破山“は既に会得し、実戦でも十分に役立っている。その他陸奥圓明流体術や詠春拳、シラットの一部の技も前世で視聴したことによって密かに身につけている。ただ、自身の刀は黒であるにもかかわらず、肝心の日の呼吸だけはどうしても上手く再現できずにいたが、焦っても仕方ないと腹を括り、地道な鍛錬を続けていた。

 

「二人とも、もう上がって朝餉にしましょう!」

斗和が佳成と倫道に声をかける。食事の量が増えるので、斗和の家の家事全般と畑の管理をしてくれる夏世(かよ)ももうやって来て朝餉の準備も進んでいた。食べるのは四人だが、その量は約十五人前。

 その声に佳成と倫道は鍛錬を止めて汗を拭う。佳成が斗和の後に続いて鍛錬場から家の方へ歩いて行く。佳成のすぐ後に続いていた倫道がふと歩みを止め、鍛錬場に駆け戻った。呆気に取られる斗和と佳成。

 

「俺は仕上げにもう少しやっていきます」

倫道は笑顔でそう言って素振りを再開する。

 

「師範、俺も仕上げを!」

佳成も慌てて戻り、並んで素振りを始めた。

 

 一しきり素振りを終え、鍛錬場に一礼して上ろうとする倫道だったが、佳成はまだ素振りをしており、倫道をちらりと見た。

 

「!」

倫道はまた素振りを始めた。

 

 その後、十分程が経過した。

斗和たちも待っているだろうと佳成が倫道に軽く目礼して上ろうとした。倫道は佳成をチラ見して薄っすらと笑い、ブンッと殊更に風音を立てて素振りを続けた。

 

「!!」

佳成は素振りを再開した。

 

そしてさらに経過すること十分。

 

 

「二人とも、早く上がっ……ちょっと何やってるの?!」

なかなか二人が切り上げないので、様子を見に来た斗和が思わず目を見開く。

 

土の呼吸 玖ノ型・蚯蚓破裂(みみずばれ) 長足! 

佳成の技が地面に大きなひびを入れる。

 

水の呼吸 拾ノ型・生生流転!

倫道が体を回転させる度に、刀が風を切る音が鋭さを増していく。

 

 鍛錬場の土は抉られて土埃が舞い、エフェクトの水の龍が暴れまわっている。二人は直接戦っているわけではないが、無駄に全力を尽くした技の競演が繰り広げられていた。

 

「二人して!はぁええ加減にしろじゃ!止めねば朝飯抜きにすっぞ(二人とも、もういい加減にしなさい!止めないと朝ごはん抜きにするよ)!!」

斗和の怒声が飛んだ。

 

(斗和さんが方言丸出しになってる!ヤバいぞ佳成君、戻ろう!)

(あんたのせいだ!)

 

 斗和は感情が昂ると方言丸出しになることがあり、普段温厚な斗和を怒らせるとまずい状況になることを倫道は知っていた。佳成も同様であり、二人はアイコンタクトで危機感を共有、息を切らしてお互いをチラ見しながらも急いで稽古を切り上げた。非常事態を前に、二人は一致団結したかに見えた。

 

「お先!」

倫道は佳成の隙を突き、先に風呂場の方へと走り出す。

 

(あっ!このやろう!)

出し抜かれた佳成も、悔しそうに慌てて後を追った。

(くそっ!何なんだよこの人!)

真面目な佳成は倫道に振り回されてヘトヘトになっていた。

 

 倫道は土の呼吸の習得という名目で、しばらく斗和の家に通って手ほどきを受けることにした。もちろんこれは隠れ蓑で、みんなを助けて物語をハッピーエンドに導くためにいろいろと相談事もあり、転生者同士の密談には私邸の方が都合が良かった。そして柱となっている斗和から様々な任務の情報も得られ、隠に擬態して蝶屋敷などに潜入している倫道の情報と合わせれば、量、精度ともにかなりのものになる。そしてその情報を元に、裏から物語をコントロールするべく暗躍するのだ。

 そして倫道にはもう一つ、斗和の病状の経過観察という重要な目的もあった。物語によると斗和の心臓病は無限列車の頃には症状が誤魔化せないくらいに明らかになり、脈が乱れているのを善逸に聞かれて心配されていた。倫道が現在カナエのために取り組んでいる再生医療は目に見える成果は上っていない。しかし上手く行けばカナエと、斗和にもこの治療を受けてもらい、不安の無い状態で存分に戦って欲しいと倫道は願っていた。

 もっとも倫道が土柱邸を訪れる一番の目的は、斗和に会いたいということであったのだが。

 

 倫道は、早朝に土柱邸にやって来て共に訓練に励み、夕方に帰る生活を送ることになった。当初微妙な反応をしたのは継子の佳成だ。弟子になって約一年、住み込みで鍛錬していたこともあり斗和と信頼関係も築けていた。技を伝授され、教えてもらうのは自分一人だったのが、日中だけとはいえ良く知らない者が急に入ってくる。倫道の方が年齢は一つ上、階級も一つ上、という微妙なところが佳成を余計にモヤモヤした気分にさせた。佳成もまだ十七歳、顔に出すほど子供ではないが、ひたすら大歓迎という訳ではないのは見て取れた。そんな彼の気分を察してか、最初だけは倫道も少し遠慮していたが、かといってこの男もただ大人しくしている程できた人間ではなかった。倫道の土の呼吸修練が開始されてから、土柱邸では毎日のようにこんなドタバタが繰り広げられていた。

 

 その後の朝餉でも、二人の間には緊張感が漂う。その微妙な空気に、ふうっと溜め息をつく斗和。何となく落ち着かない夏世。

 

「「いただきます!」」

 佳成と倫道はともにすごい勢いで、競うようにご飯をかき込んでいくが、ご飯を平らげながら意識し合い、お互いを横目で盗み見ている。

 

「夏世さん、俺にお代わりを。大盛りで!」

まだ一膳食べきっていない佳成をちらりと見ながら倫道がお茶碗を差し出す。

 

「!」

少しムッとする佳成が残りのご飯をかき込んで、夏世にお茶碗を差し出す。

「夏世、俺にもお代わりを、超大盛で!」

 

「!!」

それを聞いた倫道の箸が一瞬止まる。

 

「マスカラス!」

倫道は鎹カラスのマスカラスを呼び、頭に止まらせた。

 

「?」「?」

一体何をするつもりなのか、この場の全員の目が倫道に注がれる。

 

(今度は何をするつもりだ?また何かしょうもないことを……)

 佳成は警戒する。

 

 倫道は不敵な笑いを浮かべ、凄い勢いで再びご飯を食べ始めた。頭に止まったマスカラスがそれを見下ろしている。倫道はがつがつとかき込みながら、時々ご飯やおかずの粕漬や玉子焼き、焼き鮭をポイっと真上に放り投げる。すると頭の上のマスカラスがひょいとクチバシでそれを受け、美味しそうに食べている。呆気に取られる一同の視線を集め、倫道とマスカラスは一瞬フッとドヤ顔をして見せた。息の合った曲芸のようなその動きに、思わず斗和が味噌汁をブッと噴き出す。

 

(ウケてる……!)

調子に乗った倫道が菜の花の辛子和えを放った。

 

「ウマイ!ウマイ!ウマ……辛イ!」

倫道が半笑いで、一回だけでなく二回、三回と辛子和えばかり放るので、マスカラスがブチ切れる。

 

「辛イィィ!辛イノバッカリ投ゲルナ!」

「全てを信用するんじゃない!おかず与奪の権を他人に握らせるな!」

「アホカ!オマエガ投ゲテルンダローガ!殺ス!」

 

 倫道とマスカラスがぎゃあぎゃあと喧嘩しているのを見て、最初はポカンとしていた夏世は腹を抱えて笑い、そこまでがお約束なのね、と斗和は納得した。

 

(この技、後で令和にも仕込もう)

斗和は密かにそう決意していた。

(全く何をやってんだこの人は)

呆れて眺めていた佳成も、あまりの下らなさに仕方なく笑った。

鬼との殺し合いの中、ほんの束の間の平和な時間だった。

 

 倫道は土の呼吸を修練すべく斗和のところに通っているが、拾ノ型奥義・大地ノ怒(だいちのいかり)を習得したいと思っていた。だが斗和はこの高威力の技を放つと、一気に力を使い過ぎて失神してしまう。相手がもしこれを耐えきってしまえば、完全に無防備な状態を晒すことになる。今の斗和にとっては相打ちも覚悟の上で敵を殲滅する、一か八かの技。斗和にしかできないオリジナルだ。

 

「斗和さん、拾ノ型も教えて欲しいです」

 一ヶ月ほど通って、壱ノ型から玖ノ型までは一通り説明を受け、形だけは真似できるようになったところで倫道は斗和に頼んでみた。

 

「あれは、人に教えるのはちょっと。あれ?でもどうして倫道君が知ってるの?」

「いや、それは……噂っていうか……すごい技があるって聞いたもので」

 

 倫道は内心の動揺を隠し、何とか返答した。現実世界で”野良着の隊士”を読んでおり、倫道は知識としては土の呼吸の技を全部知っていたが、斗和は佳成にも拾ノ型は見せてはいなかった。

 

「そう、でも拾ノ型は止めておいた方がいい」

 あまりお勧めできない、そう斗和には止められていた。

野良着の隊士の物語では、拾ノ型は数える程しか使っていない。下弦ノ弐、下弦ノ伍を同時に相手取った時と無限列車での猗窩座戦だ。いずれも技を放った後に長時間気絶して、戦闘不能の状態になっている。だがその規格外の威力は何故生まれるのか?

 

 倫道はある仮説を立てていた。

 

 斗和は、一時的に脳の出力をとんでもない値まで引き上げている。この技を放つ際に刀を真横に構える動きはそのスイッチ、究極のゾーンに入るためのルーティン。この技を放っているほんのニ~三秒間、極限まで高まった脳の認知能力と演算能力により、周囲の全ては斗和にとっては眠気を催すほどにノロノロと動くしかない。相手のほんのわずかな筋肉の緊張などでその動作の開始や軌道は全て読まれ、フェイントさえも斗和がそれを認知して対処するスピードが速すぎるため意味をなさない。

 

 通常人間は、脳の力を一割程度しか使っていないと言われている(※作者注 諸説あります。最近では、集中している時はほぼ100%使っているとする説もあります)。しかし斗和は、それを瞬間的に九割以上に引き上げ、さらに全身の筋肉の潜在的能力を(関節が壊れない程度に)解放しているのではないか。そんなことが可能かどうかはともかく、斗和はその脳と身体の強烈な負荷の反動に耐えられずブラックアウトしてしまうのではないか。

 

もし心臓を治すことでさらなる鍛練を積み、ブラックアウトを回避することができたら?

 

 技を放つ際の溜めを作る僅かな時間さえ稼げれば、この強力無比な技をもっと有効に使えるかもしれない。物語では、下弦ノ弐と伍を同時に粉砕するほどの威力だった。

 

 自分もこの技を使いたい。単体でも、他の隊士との合わせ技でも。

戦略の幅が広がる、倫道にはそんな思惑があり、継続して伝授をお願いをしていくことにした。

 

 こうして倫道の土の呼吸集中鍛錬は二ヶ月ほどで一応終了となったが、倫道は今後もちょくちょく土柱邸にお邪魔する許可ももらい、お互いに任務と鍛錬に励むことになった。

 

 

 

 

 

 倫道が瀕死のカナエを診療所に運んだのはおよそ一年前の事だ。その際に、珠世と愈史郎に現代医学のあるアイディアを提供し、研究を進めてもらっていた。

 

 それは、再生医療。

他人や他の生物からの臓器移植ではなく、欠損した部分を自らの細胞で作り出し、補う治療法だ。倫道のもと居た現代ではSTAP現象(分化した細胞を刺激して再び多能性を獲得させる現象)、STAP細胞(STAP現象で作られた多能性細胞)が一時騒がれたが、後にその現象は起きていなかったと判明している。

 倫道はこの現象に目を付け、この世界で起らないものかと研究を依頼していた。それ以来、鬼側に知られないよう、さらに鬼殺隊にも知られないように暗躍し、細心の注意を払いつつ度々珠世のもとを訪れているが、思ったように研究が進んでいなかった。

 

「お前の言う通り、柑橘の果汁や色々な物で刺激を与えたが、分化した細胞がそれ以前の状態に戻るなどと言う現象は起きないぞ。未来では本当にそんなことが起きるのか?」

 

 愈史郎が倫道に厳しい視線を向ける。本来は電子顕微鏡やら色々と特別な機材や器材が必要な研究だが、今は大正時代。まともに考えれば全く不可能な研究だが、何せここは物語の世界。それに珠世たち鬼の力を併せれば大抵のことは可能になるだろう、と倫道は期待していた。だが研究を始めて一年近くが過ぎた段階では、まだ目に見える成果は表れていなかった。

 

(STAP現象だって起きるに違いない)

倫道はこの世界の奇跡に僅かな望みを懸けたのだが、そうそう上手くは行かないようだ。

 

(起きるはずなんだ、この世界なら。現実世界ではオレンジジュースって言ってたけど、実際には起きていなかった……。後は何がある?何かないのか?……そうだ、あれはどうだ?)

 

 倫道の頭にある植物が浮かんだ。現実世界にはない、ある植物。

 

「珠世さん、愈史郎さん、半日ほど待っていただけますか?」

倫道はそう言い残して駆け出した。

(全く忙しないやつだ)

じっと考えこんでいたかと思うと来た時と同じようにまた飛び出して行く。愈史郎は呆気に取られて倫道を見送った。

 

(咲いててくれ!)

倫道は雲取山の山中のある場所へ向かっていた。あの目覚めの日に迷い込んだ場所。時期も同じくらい、時刻も丁度同じくらいだ。あの日以来、訪ねても辿り着けなかった場所を目指して懸命に駆けた。

 

「あった……!」

 

 あの開けた場所に出た。

青い彼岸花が咲いていた。

 

 公式ファンブックによると、一年のうちに咲くのは数日、日中のごく僅かな時間だけ。年によっては咲かないこともある、らしい。だから無惨や他の鬼に見つかることなく、ここだけにひっそりと存在していられたのだ。

 

(うたさん、ありがとうございます!)

 

倫道は亡き継国縁壱の妻、うたにも感謝した。ここはうたが眠っている場所でもあり、うたがこの花と引き合わせてくれた、倫道にはそんな風に思えてならなかった。倫道は青い彼岸花の花と茎、球根も幾つかを採取し、厳重に隠して珠世の診療所へ急ぎ戻った。

 

「これは……!これはどこで?どこで手に入れたのですか?!!」

倫道が持ち帰った物を見て、珠世は目を見張った。無惨が血眼になって探している青い彼岸花、まさにそのものだった。

 

 再生医療を行うには、

全能性(生殖細胞を含む全ての細胞に分化できる)あるいは多能性(生殖細胞以外の全ての細胞に分化できる)幹細胞まで、分化した細胞の時間を巻き戻す必要があり、それを培養して直接植え付けるか、または点滴などで移植する。現在の再生医療の最も確実な手段であるiPS細胞(人工多能性幹細胞)を作るのには、山中4因子と言われる特定の遺伝子を細胞に導入することが必要だが、それはここにはない。受精卵から作るES細胞(胚性幹細胞)も無い。しかし青い彼岸花の抽出物で実験を行うと、その刺激によって、見事細胞が多能性を獲得したことが確認された。

 

(STAP細胞できました!ありがとう〇保方さん!)

現実世界ではそれは起きなかった。だがその概念は、この世界で人を救う重要なアイディアの元となった。そしてこの世界では、STAP現象を起こす物質が見つかった。この世界の偶然が重なり合い、奇跡は起きた。

 

 倫道たちは、刺激惹起性多能性獲得細胞(刺激によって多能性を得た幹細胞=STAP細胞)の樹立に成功し、再生医療への一歩を踏み出した。

 

 青い彼岸花は、鬼化のファクターではなかった。細胞分裂の進化の時間を巻き戻し、色々な細胞に分化しうる幹細胞へとリセットする、つまり細胞の初期化を誘導する物質を含んでいるのだ。珠世は鬼の優れた自己修復能力の要因の一つと考え、再生医療の技術と並行し、鬼化の研究、鬼を人間に戻す研究もさらに進めていった。

 

「今度はあの女自身の細胞から幹細胞とやらを作り出し、培養して肺に移植するという訳か。そこで生着すれば再び肺に分化して成長し、失った機能を取り戻す……」

愈史郎がうなった。

 

 研究は、初期化した細胞群を培養してある程度の量にし、生体に生着させるという次の段階へと進んでいった。

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