ほのぼの鬼殺隊生活(完結)   作:愛しのえりまき

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土の呼吸 玖ノ型・蚯蚓破裂(みみずばれ)…【野良着の隊士】オリジナル技。
土の呼吸 㭭ノ型・土嚢城壁(どのうじょうへき)…【野良着の隊士】オリジナル技。
土の呼吸 陸ノ型・粒子舞撫煙(りゅうしぶぶえん)…【野良着の隊士】オリジナル技。


第十七話 救出~那田蜘蛛山編~

「今後斗和と倫道はどう動いても構わない。私はできる限り協力しよう」

斗和と倫道は鬼殺隊当主である産屋敷耀哉に転生者であることを告白し、近い将来起こる鬼と鬼殺隊に関する事を説明した。

 斗和と倫道の行動の目的が”より多くの人を救い、より良い未来を作ること”そう理解した耀哉は、二人に対して自由に行動できる許可を与え、協力を約束した。

 だが耀哉は、「二人だけで全てを背負い込もうとしないように」という注意も添えた。言葉の通り、二人に負荷が集中しないようにという配慮が一つ。

 

「鬼殺隊は斗和と倫道だけが頑張っているのではなく、大勢の仲間たちがそれぞれの思いを胸にみんな頑張っている。思いは同じ、もし一時的に他の隊士とぶつかることがあっても上手くやって欲しい」。

もう一つこんな意味もあるのだろうと倫道は推測し、異質な存在である自分たちを受け入れてくれた耀哉の度量に改めて感謝していた。

 

 

(那田蜘蛛山には以前申し上げた下弦ノ伍がいます。私も救援に向かいますが、柱による増援をお願いします)

倫道は、村田たちが那田蜘蛛山に向かったことを知り、マスカラスを本部に飛ばしてそう報告し、現地に急行した。那田蜘蛛山で起こることは以前に耀哉に報告していたが、”下弦ノ伍と対決しこれを打ち破る”という概要のみで、”那田蜘蛛山”という詳しい場所までは語らなかった。

 

 耀哉は倫道からの報告を受け、炭治郎たち三人のすぐ後に冨岡、しのぶの二人の柱の追加派遣を決めた。

「マスカラス、ありがとう。……やはり柱を行かせなくてはならないようだ。義勇、しのぶ」

耀哉は背後に控える二人に背中越しに声をかけた。

 

「御意」

冨岡としのぶは揃って返事をした。

 

「そこには十二鬼月がいるのかい……。倫道たちの言う通りだったね」

耀哉が呟く。

 

「お館様。水原さんがどうかしましたか?また何か」

それを聞いたしのぶが訊ねた。しのぶは倫道がまた何かしたのかと訝しんだ。冨岡としのぶはそれぞれ倫道と関わっており、普段の穏やかさと行動する時の情熱的な激しさ、そしてその裏に得体の知れない何かを感じていた。

 

「討伐隊を向かわせた後、胸騒ぎがしてね。倫道にはもう現地に向かってもらっているんだよ。倫道と合流して他の子供たちを助け、あの山にいる鬼を退治して欲しい……では、頼んだよ」

”那田蜘蛛山に向かう”と倫道から連絡を受けていた耀哉は、自分が送り込んだとさり気なく倫道をフォローし、冨岡としのぶを見送った。

 

「倫道。遠慮することはない、今度こそ君の力を存分に示しておいで」

耀哉はそう期待を込めて呟き、微笑んだ。

 

 

 既に先遣隊はほぼ全滅していた。倫道は、山に入ったばかりの村田の隊やその他の部隊の隊士、そして炭治郎たちは救いたかった。

 倫道が現地に着いてけもの道を駆け上がっていると、村田がいると思われる十人の隊士の列が見えてきた。

 

 

「どうした?」

後続の隊士が先頭の隊士に声をかけた。

 先頭の隊士は急に酔っ払いのような足取りになり、二、三歩歩いて立ち止まった。そして何故か刀に手をかけ、ぎこちない動きで振り向いた。その表情は虚ろで目の焦点も定まっていない。

 

「おい!何だ、どうした?!」

後続の隊士はまた声をかけたが、先頭の隊士はぼんやりとした様子のまま抜刀、後続の隊士に向かって迷いなく刀を振り下ろした。

 

 母蜘蛛鬼に操られ、まさに同士討ちが始まる寸前であった。風のように現れた倫道が、操られた隊士の斬撃を弾いて後続の隊士を護った。

 

「操られているんだ!互いに間合いを取れ!体についた蜘蛛の糸を切れ!」

倫道は叫びながら先頭にいた隊士の周囲で刀を振り、操り糸を切った。

 

「何するんだ!」

「あんたは誰だ!」

操られた隊士を斬るのかと勘違いし、倫道を口々に咎める隊士たち。しかし列の後方で、他にも三名が同じように急に様子がおかしくなり、仲間に斬りかかろうとした。

 

水の呼吸 参ノ型・流流舞い

 

 倫道は操られた三人の隊士の糸を瞬く間に切ってこれを救出した。糸を切られた隊士たちはまさに人形のように崩れ落ちるが無傷であり、すぐに正気を取り戻した。その様子に仲間の隊士たちは安心し、落ち着きを取り戻して倫道の話を聞ける状態になった。

 

「急に手足の自由が利かなくなったと思ったら、頭がボーっとしてきて……気付いたら仲間に斬りかかっていて……」

助けられて正気に戻った隊士が恐ろし気に言った。蜘蛛の糸で自由を奪われると、一時的に軽い催眠状態になって抵抗できなくなる。その後しばらくすると強い刺激で覚醒できるが、その時には操り糸による強固な支配が既に完成しているのだ。

 

「そこら中を這い回ってる蜘蛛に気を付けろ!蜘蛛が鬼の手先として糸を繋いでいるんだ」

倫道が説明しながら一匹の蜘蛛を斬って見せると、蜘蛛は死骸も残さずに煙となって消滅した。

 

「みんな、離れて!今からこいつらをまとめて消す」

倫道は隊士たちを一ヶ所に集め、蜘蛛がつかないように互いに注意させておいた。広範囲攻撃で周囲にいる蜘蛛をまとめて消し去るつもりだ。

 

土の呼吸 陸ノ型・粒子舞撫煙(りゅうしぶぶえん)

土煙を舞い上げて蜘蛛を吹き飛ばして斬り、

 

水の呼吸 陸ノ型・ねじれ渦

 

 さらに残りの蜘蛛も全て消し去った。

 

 蜘蛛は一時的に全滅してもまたすぐに血鬼術で生み出されてくる。しかし炭治郎と伊之助が来るまでの時間稼ぎには十分だった。

 

「俺は甲・水原倫道。もうすぐ救援が来るから協力して本体の鬼を叩くんだ!それに柱も今向かってるはずだ。鬼を倒してみんなで生きて帰ろう!」

倫道はそう言い残し、姉蜘蛛鬼に遭遇する隊を助けるためにそこを離れた。

 

 山の西側では数多くの繭が木にぶら下がっていた。村田たちの隊と前後して入山した隊士たちは命を救えたが、もっと以前に繭にされた者たちはドロドロに溶かされて殺されており、救えなかった。

 

 繭を降ろして救出するのにかなり時間を要してしまい、戦局が動いていた。倫道は炭治郎を助けるため、累と対峙している場所へ急いだ。その途中、キョロキョロと用心深く辺りを伺いながら歩く一人の隊士に出会った。

 

「こんな所にいるとこ見ると、あんたも逃げて来てはぐれたのか?」

倫道の姿を見てその隊士が話しかけてきた。

 

(見たことあると思ったら、サイコロステーキ先輩!)

倫道はこの人物の正体に気付いた。

 

「俺は庚の西条(さいじょう)だ。あんた、どこの隊?俺の隊は全滅しちまったよ」

(サイコロステーキ先輩って、西条て言うんだ!さいじょう、さい……じょう……賽状?!やっぱり賽の目にされるっぽいじゃないか、放っとけない!)

「何だ、君は庚か。俺は甲、水原倫道」

倫道は西条をじろりと睨み、珍しく高圧的な態度に出た。

 

「えつ?あんた甲?同じくらいの人かと思った……。す、すんません」

サイコロステーキ先輩は倫道を上官と見てガラッと態度を変えた。

 

「手強い鬼がいると聞いて救援に来た。……そうだ、君に命令する。さっき俺は山の西側で襲われてた隊士たちを救助してきた。君はその隊士たちを護りながら下山しろ。鬼はもう周囲にはいないはずだし柱も向かってる。生存者を無事に連れて帰ればお館様の覚えもめでたいぞ。階級もぐっと上がるかもしれないな。それとも」

倫道はわざと戦闘狂っぽく顔を歪ませ、西条に聞いた。

 

「俺と一緒に十二鬼月を倒しに行くか?強いヤツと命(タマ)の取り合いをするのはワクワクするだろ?ああ、我慢できねえ!へへへ……早くぶっ殺してえ!」

倫道は涎を垂らしながら目を見開いて狂気の笑みを浮かべ、ぶるぶる震えるほど刀を握りしめた。

 

(こいつやべえ……完全にイカレてるぜ)

西条は顔を引きつらせてドン引きしている。

「い、いや、いいっす。俺は怪我人連れて下山します」

倫道の渾身の演技が奏効し、西条は全力で倫道の誘いを断り、西の方へ慌てて駆けて行った。

 

 

 

 冨岡としのぶが那田蜘蛛山に入ると、嵐が吹き荒れた後のような、大小の木々がなぎ倒されている一角があり、そこには数人の隊士の遺体もあった。戦闘の痕跡はあるが、周囲には生き物の気配が無かった。

 

「二手に分かれて探索しましょう。私は西から参ります」

しのぶが提案し、

「承知した」

冨岡も了承し、それぞれが探索を開始した。

 

 

 

 

(早く立つんだ!呼吸を整えて回復を!)

炭治郎は焦る。しかし水の呼吸からヒノカミ神楽へと呼吸を無理やりに変え、全ての力を使い切っており、這って移動するのさえやっとだった。背後からは怒りに燃える累がゆっくりとした足取りで迫っていた。

 

 下弦ノ伍・累は炭治郎に日輪刀で頸を斬られそうになったが、自分の頸を自分の糸で斬ることで危うくそれを免れた。

 

 十二鬼月の自分が斬られかけた。しかも相手は柱でも何でもなく、小さく弱いただの平隊士だ。その事実は累のプライドを大いに傷つけた。

 

「十二鬼月の僕が、お前みたいな下っ端に倒されると思った?さぞ愉快な妄想だったろうね。……楽しかった?」

内心とは裏腹に、累が気怠そうに呟く。

 

「でもね、僕は少しも楽しくないんだよ。……少しも!」

累の口調が一変した。冷静さを保とうとするが、抑えきれない怒りの激しさを表すように表情は歪み、その目は一層赤く光る。累は切り離された頸を胸に抱え、ゆっくりと炭治郎に迫る。

 

「こんなに腹が立ったのは、鬼になってから初めてだよ。もういいや、お前も妹もバラバラに刻んで殺してやるよ」

 

(焦るな、落ち着け!正しい呼吸をすれば回復できるはずなんだ……!ああ、でも早く!)

炭治郎は懸命に回復を図るが、腕すらまともに動かすことができない。背後からさらに累の足音が近づく。累が自分の頸と胴をくっつけると瞬く間に元通りに繋がり、傷が塞がった。

 

 累が血鬼術・殺目篭を放とうとしたその時、累の背後から音も無く接近する者がいた。頸が繋がっていなければ斬ることができない。倫道は、累が再び頸を繋げるのを待ち、それを確認して、動いた。

 自分で元に戻したばかりの累の頸が、ゴロっと落ちて地面を転がった。

 

水の呼吸 壱ノ型・水面斬り

 

 倫道の落ち着いた声が炭治郎の耳に届いた。

そして灰のような臭いが漂い始め、炭治郎は救援に来た倫道によって鬼が斬られたのだと分かった。

 

「御両親も君と一緒に居てくれるはずだ。今度は親子仲良くな」

累の体が灰となって消えていく。倫道は累の背中に手を置き、声をかけて見送ってやった。

 

「炭治郎君!良く頑張ったな!本当に良くやったぞ!」

「倫道さん……禰豆子を」

倫道が炭治郎に駆け寄って抱き起こすと、炭治郎はそう言って気絶した。

 

「斬ったか」

冨岡が現れ、倫道に声をかけた。

「はい、炭治郎君が弱らせていたので、俺が止めを刺しました。俺たちの弟弟子は成長著しいですね」

「あの時の子供か」 

冨岡が倫道と話しながら状況を確認していると、そこに兄蜘蛛鬼に蜘蛛にされた隊士たちと善逸の診察を終え、しのぶも到着した。しのぶは禰豆子を見るや刀に手をかけ、斬りかかろうとした。

 

「しのぶさん!待ってください!」

「待て、胡蝶!」

倫道が慌てて攻撃態勢のしのぶを止め、冨岡までもが止めに入り、事無きを得た。

 

「その坊やが連れている女の子が、例の鬼ですね。……話しを聞いておいて良かった」

しのぶは刀を収めて頷いた。

 柱たちは鬼を連れた隊士の事は耳にしており、カナエとしのぶは倫道から直接詳しい経緯を聞いていた。

”理性を保ち、人を喰わない鬼”と聞いて、カナエは目を輝かせた。倫道は”大丈夫”と自信を持って言っていたが、しのぶはカナエほどすんなり信じた訳ではなかった。だが実際に禰豆子を見て、しのぶも何となく大丈夫なのではないかと思った。おそらく厳しい意見が出るであろう柱合会議で、何とか穏便に事が運ぶよう力になってやりたい、しのぶはそう思った。

 

「竈門炭治郎及び妹禰豆子、両名を拘束し本部に連行せよ」

鬼殺隊本部からの命令がカラスによって伝えられ、炭治郎と禰豆子は本部へと連行されて行った。こうして原作程の大量の死者を出さず、那田蜘蛛山の戦いは終わった。

 

 

 

 

 

 那田蜘蛛山の戦いとほぼ同時刻。別の場所でも二人の隊士が鬼と対峙していた。

 

 総髪に着物姿、腰には刀らしき物を差している人物の後ろ姿が、月明かりを受けて浮かび上がる。

 こんな時刻、こんな場所に、自分たちの他に人がいるはずがない。

鬼か、二人の隊士は思った。二人は今回の任務の標的と思われる鬼を倒したばかりであった。もう一匹くらい倒せるだろう、隊士たちはそう考えてしまった。事実、かなり強い鬼であってもこの二人ならば十分対抗できたはずだった。

 

(やるか)

二人は油断なく構えながらゆっくりと接近する。すると気配を感じ、人影が振り向いた。振り向いてこちらを見た、ただそれだけだ。しかし六つの目が開き、その視線に捉えられた途端、二人の隊士は体が竦み、動くことすらできなくなった。立っているだけでこの凄まじい重圧。今まで相手にしてきた鬼とは明らかに別格、別次元の存在だった。

 

「こいつ、上弦……壱!」

年下の隊士が鬼の目に刻まれた文字に気付き、震える声で呟いた。

 

「鬼だな?覚悟しろ!上弦だろうと、放っておくわけにはいかない!」

年長の隊士が勇気を振り絞り、大きな刀を構えて叫んだ。

この声で、年下の隊士もようやく体が動くようになった。二人は恐怖からくる全身の震えを必死に抑えながら、絶望的な戦いに臨んだ。

 

 

 

 

「俺が次に仕掛けたら、全力で逃げろ」

「お前はどうすんだよっ!それに、逃げ切れるとは思えねえぜ」

大した時間も経たず、二人の隊士は全身傷だらけになっていた。致命傷こそ負っていないが、年長の隊士は脚をやられてまともに歩けない状態だった。二人はお互いに相手の怪我の程度を把握する余裕も無く、脚の深手は年下の隊士には気付かれていなかった。

 

「大丈夫だ、逃がしてやる。隙をついて俺も何とか逃げる。全力で逃げれば何とかなるだろう。……後で落ち合おう」

年長の隊士が気力を振り絞って声をかけた。

 

「行くぞ!!」

年長の隊士が気合いと共に鬼に斬りかかった。

 

土の呼吸 玖ノ型・蚯蚓破裂(みみずばれ) 大長足

土の呼吸 㭭ノ型・土嚢城壁(どのうじょうへき)

土の呼吸 陸ノ型・粒子舞撫煙(りゅうしぶぶえん)

 

 年長の隊士は持てる力の全てを使い、まず広い間合いの攻撃を放ち、それから壁を出現させ、さらに土煙で鬼の視界を妨げようとした。

 極限の集中力で、数秒間にこれだけの技を一気に放った。年長の隊士はもとより自分が逃げられるとは思っていなかった。鬼の追撃を止めるためだけに、スタミナ、体力など度外視で技を放った。その後で相手の攻撃を躱したり、さらに攻撃したりする力は残っていない。

(無事に逃げろよ!師範……すみません、俺はもう……。夏世……、もう一度会いたかった……)

完全に体力が尽き、鬼の反撃を食らい、隊士は崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

 遠征任務中の斗和は知らない。那田蜘蛛山にいる倫道も知らなかった。

 

 この戦闘に関しての知らせが届き、斗和と倫道が詳細を知るのは柱合会議の翌日のことだった。

 

 

 鬼殺隊本部、産屋敷家の庭では、竈門炭治郎、禰豆子の柱合裁判が始まったところだった。 

炭治郎は気絶しているうちに連行され、状況が分からない上に禰豆子を護ろうとする気持ちが先走り、上手く説明できずにいた。

 

 禰豆子が鬼であると知っていながら庇ったとして、倫道も裁判に出頭を命じられ、他の柱たちから一人離れて突っ立っている冨岡の隣に控えていた。しかし杏寿郎、宇髄、悲鳴嶼らに炭治郎が口々に”斬首”と言われ、上手く説明できないのを見かね、炭治郎の隣にやって来て説明を始めた。

 

 二年前、無惨によって禰豆子は鬼にされた。しかしそれでも人間であろうとする気持ちを強く持ち続け、理性を保ち、その結果一度も人を喰っていない。また今回の戦いにおいても下弦ノ伍討伐に大きな役割を果たした。今回の最高殊勲者は竈門兄妹です、そう言って、倫道は説明を締め括った。

 

「確かお前が頸を斬ったんだったな。ならそういうことなのか」

宇髄が倫道に聞いた。

 

「禰豆子が鬼を燃やす血鬼術を使って助け、竈門隊士が頸を斬りかけましたが果たせず、私はその隙を突いて運良く頸を斬れただけです。最初からまともに当たっていたら私は殺されていたでしょう」

倫道は誠実そのものという顔で嘘を吐く。下弦ノ伍に気取られずに近づき、あっさりと強固な頸を刎ねるなど、相当な技量が無ければできない芸当だ。

 

(嘘をおっしゃい)

しのぶは呆れながらも、竈門兄妹の処分について話を進めるため、柱たちの意見を聞いた。

 

 禰豆子は鬼になってから二年もの間、一度も人を喰っていない。そして今回の戦いでは十二鬼月討伐に重要な役割を果たした。しかしそれが、これからも絶対に人を喰わないという証明にはなり得ない。”隊律違反である”として、悲鳴嶼、宇髄、杏寿郎、伊黒は炭治郎の斬首を主張、当然鬼である禰豆子を生かしておく理由はない。

 

「みなさん、待ってください!鬼だからと言う理由だけで、その子たちを殺そうとなさるのですか?私は竈門隊士及び禰豆子さんの斬首には反対です!」

胡蝶カナエが異議を唱えた。

 

「鬼はもともと人間が変じたものです。禰豆子さんを調べることで、鬼を人間に戻す治療法の開発に役立ちますし、それに至らずとも、鬼の凶暴性を抑制し人間との共生の可能性を探る一助になります。禰豆子さんは断じて殺してはなりません!!」

カナエは炭治郎の斬首には断固反対、禰豆子も炭治郎と一緒に鬼殺隊に置くべきだと強く主張した。しのぶは姉のカナエ程は楽観的ではないが、炭治郎を鬼殺隊から追放する必要はなく、禰豆子を殺す必要も無いのではないかと思った。

 

 斬首とするか、そのまま鬼殺隊に置くか。双方の主張は真っ向から対立する。

 

「お館様もこのことは御存知なのでは?私たちだけで処分してしまって良いのでしょうか?」

甘露寺が遠慮がちに意見を述べ、確かにそうだと一同が考えたその時。

 

「オイオイ、随分と面白い事になってるなァ。鬼を連れたバカ隊士てえのはそいつかい?……鬼殺隊はいつから鬼を保護する組織になったんだァ?」

禰豆子の入った箱を肩に担ぎ、不死川が現れた。

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