ほのぼの鬼殺隊生活(完結)   作:愛しのえりまき

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第二十二話 高みを目指して~刀鍛冶の里編・前編~

 那田蜘蛛山の戦いの後柱合裁判が開かれ、炭治郎と禰豆子はお咎めなし、一部には反対の声はあるもののその存在は本部公認となり、広く周知されることとなった。

 柱合会議で倫道は斗和とともに柱となり、これから大きく動き出す原作の流れに介入し、頑張っていこうとしていた時であった。

 

 佳成の訃報が伝えられた。

 

 もっと注意していれば防げたのではないか?倫道は無力感に囚われたが、立ち止まっている時間はなかった。一緒に任務に当たっていた獪岳も瀕死の重傷で、事情を聴こうにもしばらく面会はできない状態だったので、倫道は柱就任の挨拶とご機嫌伺いも兼ねて、刀鍛冶の里へ鋼鐵塚を訪ねて行くことにした。

 また、里を訪ねるのはある人物に接触する目的もあった。というよりも、こちらが主な目的であった。ターゲットの人物はこの里で何度も目撃されており、度々訪れるのは銃の制作や調整を鍛冶師に依頼するため、そして高い癒し効果のある温泉を使うためだろうと倫道は予想していた。

 

 倫道は里に着くとまず里長の鉄地河原鉄珍を訪ね、挨拶を終えるとすぐに鋼鐵塚の工房へ行き、みたらし団子を差し入れてご機嫌を取った。

 その後は里自慢の大きな露天風呂に入って寛ぎながら、標的が現れるのをじっと待った。しばらくすると、湯気の向こうに一人の人物が現れた。特徴的なモヒカンっぽい頭、ちらりと見える顔の右側にある大きな傷、目つきの悪さ。

 

(身長も伸びて体も逞しくなっているな。成長期ということもあるだろうが、もう鬼喰いをしているのだろう)

今回の標的、不死川玄弥その人だった。

 

「君は、風柱の弟さんか?」

さり気なく玄弥を観察しながら倫道は愛想良く声をかける。

 

「関係ねえだろ、誰だよあんた」

風柱という言葉に反応はしたが、急に話しかけてきた見知らぬ相手に玄弥は警戒を露わにした。最終選別の後、斗和から岩柱の悲鳴嶼を訪ねろと言われ、程無く悲鳴嶼のもとに弟子入りして多少の忍耐は覚えたが、早く強くなりたいという焦りもあって態度は悪かった。それに目の前の倫道はあまり強そうには見えず、年齢も同じくらいだろうと思った。

 

「ああ、いきなりゴメン。俺は水原倫道という。君が風柱の不死川さんに似てたんで声かけたんだ。風柱には時々手合わせしてもらってるからね」

(まあ手合わせって言うより喧嘩だけど)

倫道はそれは口に出さず、ホワホワした笑顔で続ける。

 

「風柱と手合わせを?!すんません、俺は不死川玄弥……っす」

目の前の人が兄と手合わせすると聞いて、玄弥は目を見張った。兄を、風柱を知っているどころの話ではない。手合わせするのは同程度以上の実力があるか、柱である兄に余程目をかけられているということだ。要するに、目の前の人物は自分よりはるかに格上の剣士なのだと理解し、玄弥は慌てて口調を改めて名乗った。

 

(この人が”みずはらりんどう”?蓬萊さんが言ってた人だ!)

玄弥はここであることに気付き、玄弥からも倫道を観察する。

 

「きっと貴方を強くしてくれる」

最終選別に通った後、蓬萊斗和という女性隊士が予言めいたアドバイスをくれた。その中に出てくる二人の名前を、玄弥は忘れなかった。

 一人は現在弟子入りしている岩柱・悲鳴嶼行冥。そしてもう一人が水原倫道だった。数日前、師匠の悲鳴嶼が「蓬萊が土柱に復帰し、水原が水柱になった」と話していたのを聞いたばかりだったのも思い出した。

 

(こんなところで会えるなんてツイてる!)

やっと会えた……のだが、頼りないくらいに穏やかで、玄弥の目にはあまり強そうには見えなかった。

 会いたいと願っていた人が向こうから声をかけてきた、その幸運に感謝する玄弥であったが、倫道が自分を狙って里に来ていたことは知る由もなかった。

 

「自分と同じくらいの歳に見えたんで。すんませんでした」

玄弥はバツが悪そうにしながら、ひょこっと頭を下げた。

 

「気にしなくていいよ、活躍してるようだね。入隊から半年も経ってないのに庚(かのえ)まで上がっているんだろ?大したもんだよ。俺は六年かかって甲だからね」

もちろんここまで生き残ってきただけでもすごいことだ。まして柱になるのは余程の実力と幸運が無ければできないことだが、倫道は特に語らず玄弥に笑いかけた。

 

「ところで銃を使うと聞いたけど」

倫道が何気ない調子で聞くと、途端に玄弥の顔が苦々しくなった。

 

「そりゃあ、俺が”呼吸”使えねえから。……呼吸さえ使えれば、飛び道具なんて」

玄弥は悔しそうに下を向いた。

 

「別におかしいことじゃない。それぞれに合った武器を使えば良い。呼吸だって、使えなきゃ鍛えてそれと同じだけの力を出せば良いだけの話だろ?」

倫道は事も無げに言うが、師匠である悲鳴嶼の呼吸の技の凄さを見ると、同等の力が出せるとは玄弥にはとても思えなかった。強い鬼の頸を斬るには呼吸を用いて身体能力を向上させ、その上で技を極める必要があった。

 

「呼吸の剣技が使えなくとも、君は鬼狩りとして生き延びている。……だが、君がもっと強くなりたいなら、力になろうか?」

倫道は、これまでと変わらない何気ない調子で聞いた。玄弥の目つきが変わった。

 玄弥は悲鳴嶼の弟子となったが、”全集中の呼吸”を身に付けられずにいる。悲鳴嶼は玄弥を見限ったりはしなかったが、どう攻撃したら良いのか、距離の取り方は、など懇切丁寧に戦闘技術を指導してくれる訳ではない。玄弥は悲鳴嶼や他の隊士を見て学んだのだ。呼吸の剣技が使えない、何か自分に適した武器は無いかと探るうちに、的に当てるのが上手い、ということから南蛮銃に行き着いた。試行錯誤で自分の戦闘スタイルを探っているため、銃の改良などの要望を鍛冶職人に伝えるため頻繁に刀鍛冶の里を訪れているのだった。

 

「俺が君の力を生かす術を、銃を使う戦い方を教えようか?剣士のように近距離で立ち回り、刀を使う代わりに銃で止めを刺す。どうだ、カッコイイだろ?」

倫道の頭の中にはイメージができている。

 

「そんなこと俺にできるかな?」

「敵の攻撃を躱す、狙う、引き金を引く。もちろんそう簡単には行かないが、刀を振るって頸を斬るような技術や力は必要ない。狙いさえ正確なら後は弾がやってくれる」

 

 倫道は説明した。

銃撃戦は通常遠距離での戦いとなるが、玄弥に教えようとしているのは近距離、剣士の間合いでの戦いだ。相手の攻撃が届かない遠距離から一方的に攻撃するという銃の優位性は失われ、相手の攻撃を何らかの方法で防がなければならないが、近距離の方がそれだけ命中の確率は上がり、玄弥ならではの攻撃もしやすくなる。

 

 初めて聞くような戦い方に玄弥は戸惑いを隠せない。倫道が描くのは、伝説の殺し屋ファブルやジョン・ウィックのようなイメージだ。倫道のもと居た未来ではガンフー(ガン・アクションとカンフーを掛け合わせた造語)などと呼ばれている、格闘戦で相手を制しながら銃で止めを刺すファイトスタイル。

 

 理想を言うならば、銃の間合いである長、中距離戦も、純粋な格闘戦も強いに越したことはない。確実に弾を撃ち込み、鬼喰いをする隙を作るために接近戦の技術は必要だが、弾切れや鬼化が解けた際、生存確率を上げるためにも身に付けた方が良い。

 

「やるよ。蓬萊さんに聞いたんだ。水原さんが強くしてくれるって!……強くなれるんなら何でも良い、教えてくれ!お願いします!」

弱気な考えを払拭したのだろう、玄弥はやおら立ち上がると倫道に向かってお辞儀をした。深く勢いよく頭を下げたので、顔や髪が盛大にお湯をはね散らかし、倫道の顔はびしょ濡れになった。

 

「玄弥、だったな。それにしても」

倫道は顔を拭いながら、もう呼び捨てにして親近感を演出しつつ、わざとらしく眉をひそめた。

 

「熱心だな。何か事情があるのか?不死川さんは”弟なんかいねえ”ってブチ切れてたけど」

倫道はさらに何も知らない風を装ってさり気なく玄弥の弱点を突き、この話しに乗るように仕向ける。

 

「兄貴は、俺が鬼殺隊に入ったのが気に入らねえみたいだ……。だけど俺は早く強くなって兄貴の役に立ちたいんだ。それに強くなって柱になりゃ、兄貴に会えるんだろう?」

「お兄さんに会えないのか?やっぱり色々と事情があるんだな。……よし、分かった!強くなって、君の力を不死川さんに認めさせようじゃないか。今度悲鳴嶼さんの修行場に挨拶に行くから、それまで待っていてくれ。だが修行は厳しいぞ。覚悟しておけ」

倫道はそう言って、先に風呂から上がっていった。

 

 

 倫道は刀鍛冶のみなさんに幾つかの難易度の高い依頼を行った。

通常使用する自動装てん式の大型拳銃二丁。この当時既に自動装てん式の拳銃は存在していたが、里の優れた鋳造技術で設計を見直し、より大型で速射性に優れた銃の制作をお願いした。もう一つは高威力の弾を発射するためのショットガン。これは銃身を短く切り詰め、取り回しを向上させたソードオフショットガンと呼ばれるものだ。それぞれの銃のフレームや銃身は猩々緋鉄から鍛造されており、それ自体での打突、防御にも使える。そして命中すると弾頭(弾の先端、標的に当たる部分)が潰れ、貫通せずに周辺組織に大きなダメージを与える特殊な弾丸、そしてある刑事ドラマから倫道がアイディアと“ガーディアン”と名前までパクったアームガード。この装備を使いこなすことで、玄弥の戦闘能力は飛躍的に上昇することになった。

 

 

 倫道が玄弥をしばらく預かりたいと申し出ると、悲鳴嶼はすぐに許可してくれた。これで遠慮無く玄弥を鍛え上げることができるようになり、悲鳴嶼はまた、「不死川には知られぬように」とアドバイスもしてくれた。

 

 

「これから何を?」

玄弥は狭霧山にやって来た。鍛えてもらえる、強くなれる。玄弥は期待と共に、どんな猛稽古が課せられるのかと不安になっていた。にこにこと穏やかな倫道の表情が、玄弥の不安をさらに掻き立てる。

 

「まず基礎錬成の一環だ。これを着て山道を駆け上る」

倫道は玄弥に分厚いウエイトジャケット(砂袋の重りが入った上着)を着せた。

 

「なるほど」

悲鳴嶼のもとで錬成している玄弥は体力には少しばかり、いやかなり、いや大いなる自信があった。師匠のように長い距離は動かせないが、巨大な岩を押して動かすこともできる。重りを着けて走るくらいはなんでもない、そう思っていた。

 

「うおっ!?」

立っているだけでずしりと足にくる重さ。だが隣を見ると倫道はそれを二枚重ねで着ており、体から短い手足が生えたその格好はまるでゆるキャラだ。

 

「行くぞ!」

合図とともに、ゆるキャラが物凄い勢いで山道を走り出す。玄弥は慌てて追いかけた。

 

(は、速えっ!)

玄弥は数分で倫道に置いていかれ、その場駆け足で待つ倫道に追いついては引き離される。それを繰り返しながら、何とか山頂までやって来た。

 

「俺だってこのくらいはできるぜ」

地面に倒れ込み、達成感いっぱいの笑顔を見せる玄弥。

 

「じゃ、次は下ろうか」

倫道は無慈悲に告げる。一気に体の力が抜ける玄弥だが、この程度は想定の範囲内だった。

「望むところだ!」

玄弥は震える脚で立ち上がり、山下りに挑み始めた。

 

 倫道が玄弥に施す超スパルタ稽古はごく普通に始まった。だが教える内容は銃を主武器とした、超近距離から遠距離までの幅広い戦闘技術。戦闘に必要な体力の錬成から銃の扱いまで稽古は多くの内容を含み、短期間で身に付けるのは容易ではない。だが玄弥はこの困難に挑もうとしていた。

 

 基本の走りこみも、倫道のトレーニングは悲鳴嶼の鍛錬とは思想が違う。倫道が玄弥に課したのは、スピードアップとスピード持久力の錬成を主眼としたもの。単純な走り込みから罠を避けながら走る訓練へと難易度が上がり、そしてその中に射撃訓練や銃の扱いに習熟するための訓練が織り込まれていく。今までとは方向性の違う稽古、新たに鍛冶師たちに作ってもらった自動装てん式拳銃を使った立ち回り。馴染みの無かったカリキュラムがどっと押し寄せ、玄弥は目を回した。

 

 しかし、玄弥は頑張った。ゆっくりではあるが着々と技術を身に付け、倫道のコーチングもあって半年で見違えるように成長を遂げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 無限列車での戦い、遊郭での戦いを経て、いよいよ刀鍛冶の里での戦いが間近に迫ってきていた。

 

 斗和と倫道は刀鍛冶の里編に介入するかどうか話し合っていたが、シフトを調整して、よほどの重大案件が起きなければ参加しようという結論になった。ただ里の場所は厳重に秘匿されており、平常時は自分で行くことができない。移動などのことを考え、別行動ということになった。

 

 

 

 

 

 

 上弦ノ肆・半天狗と、時透無一郎、炭治郎、禰豆子による戦闘が始まった。時透は瞬く間に老人のような見た目の鬼の頸を刎ねるが、鬼は離れた頸と胴体からそれぞれ再生し、二体の若者の姿の鬼、”積怒”、”可楽”に分裂した。時透と炭治郎はそれぞれに挑むが、霞柱である時透が分裂体の一体・可楽の団扇によって遥か彼方に飛ばされてしまう。

 

 建物の二階の天井は半分が吹き飛んで、部屋の中から夜空が見えていた。

(誰かいる?!)

炭治郎は、屋根の上からこちらを見下ろす人影を視界に捉えていた。その手には、仄かな月明かりを受けて鈍く銀色に光る何かが握られている。

 

 それが、突如火を噴いた。続けて二回、轟音が響く。

(玄弥!)

 

 不死川玄弥だった。

 

 玄弥は炭治郎、禰豆子と二体の鬼の距離を判断し、誤射の危険が低いことを素早く確認して発砲した。弾は二発とも命中し、半天狗の分裂体である積怒と可楽の頸を吹き飛ばした。部屋に飛び込み、驚く炭治郎を背に状況を確認しようとしたが、しかし頸を狙わせるのは鬼が仕掛けた罠だった。

 

「玄弥!そいつらは頸を斬っても倒せない!頸を斬ったら分裂する!若返って強くなるんだ!」

炭治郎が叫ぶ。

 

(なんだとっ!それを早く言え!)

玄弥は焦ったが、さらに”哀絶”、”空喜”が分裂して生成され、分裂体は四体となってしまった。建物の二階は炭治郎、禰豆子、玄弥と四体の分裂体が入り乱れる混戦模様となった。

 

 

 十文字槍を携えた分裂体の一体、哀絶と対峙した玄弥は両手の拳銃を近接武器として握り変えた。銃の本体と銃身は腕の小指側をカバーするように、銃口の向きは相手ではなく自分の手から肘の方を向くようにグリップを逆に握り、銃を琉球古武術のトンファーのように使い、打突と防御を行うためだ。猩々緋鉄でできたアームガード、”ガーディアン“を装着した両腕を斜めにクロスし、その中に体を隠すように半身の構えをとった。

 

「童(わっぱ クソガキの意)、せめてもの慈悲だ。苦しまぬよう急所を一突きだ」

十文字槍を構えた分裂体・哀絶は憐れむように玄弥に一瞥をくれると、隙の無い槍捌きで玄弥に迫った。

 玄弥は全身を目にして激しい突きの連撃を見極める。動きが大きくなってしまうためステップは最小限に、両腕のアームガードと銃での防御に加え、上半身を揺らすスウェーバック、頭や頸への攻撃を避けるヘッドスリップなどボクシングを織り交ぜた動きを繰り出し、連続で攻撃をもらわず、致命傷を許さない。攻撃を見切り、見事な防御の動きは訓練の賜物。哀絶の十文字槍の攻撃は正確で速く隙が無いが、ただの物理攻撃である点も玄弥には幸いしていた。

 

 

 

 

 

 倫道の右パンチ。玄弥が左腕で捌く。次に左パンチ。玄弥は右腕で捌く。

 

 右、左、右、左と、決まった攻撃に決まった防御を繰り返し行う稽古。最初はゆっくりと、それからスピードとテンポを上げていく。それでも不器用な玄弥は、最初は倫道の動きに全くついて行けなかった。それでも連日行っていると目も慣れ、決まった動作とは言え体の動きもどんどん速くなり、凄まじい速さの打ち合いができるようになっていた。

 

 そして動きが速くなるのと同時に反射速度も急成長し、自由な攻防においても著しい上達を見せていた。

 

 

 

 

 

 哀絶の猛攻を何とか凌いでいる玄弥だが、全く近づくことができなかった。致命傷を防いでいたが攻撃に転じることができず、これでは埒が明かない。

 

(くそっ、これじゃ近づけねえ!銃撃から崩して接近するか?だがこの混戦じゃ銃は使いどころが難しいな)

屋根の上から銃撃した先程とは違い、炭治郎、禰豆子と同じフロアで戦っているため、玄弥は銃の使用を躊躇う。玄弥はこの猛烈な槍の連撃を凌ぎ、僅かな隙を見て接近することを選択した。玄弥にしかできないあの攻撃をするためには、どうしても至近距離、というよりゼロ距離まで接近する必要がある。

 

 鬼喰い。

 

 相手の鬼が強ければ強いほど効果は絶大だ。今回は上弦、その効果を思うと玄弥は楽しみでもあった。

 

(この童め、面妖な動きをしおってなかなか串刺しにできぬ)

近づけずに焦る玄弥と同じく、哀絶もまた手応えの無さにイラ立つ。攻撃は当たりはするが急所を巧みに外され、大きなダメージが与えられないのだ。哀絶は突きだけでなく、切り払いも織り込んでさらに激しい攻撃を繰り出した。しかし突きの動作だけのほうが隙は遥かに少ない。切り払いは槍の穂先を横にも動かすため、どうしても動作が増えてしまう。

 

(攻撃動作が変わった!一か八か!)

玄弥は防御を固め、素早く間合いを詰めようとした。

 

「遅い」

哀絶は今度は突き技に戻し、鋭い一撃を繰り出した。

 

「ぐっ!」

玄弥は十文字槍の直刀で体の中心部を貫かれるのは避けられたが、側方の刃で側腹部を斬られた。だが怯むことなく、アームガードを付けた腕で、側刃が腹に浅く刺さったまま槍の穂先をがっちりと抱えた。

 

(この童、何をしている?槍が刺さっておるのだぞ)

哀絶は槍を引き抜こうとしたが、玄弥は槍の穂先をホールドしたまま放さない。面倒になり、哀絶は力尽くで槍を抜こうと思い切り引き戻した。

 

(来た!)

槍が引かれる力に合わせ、玄弥は自ら前に跳んだ。前進する力に槍を引き戻す力が合わさり、これまでにない勢いで玄弥の体を前に運ぶ。槍の穂先より先に飛んで来る玄弥に、哀絶は片手を目の前に突き出して防御したが、玄弥は飛び込みざまにその指先に噛みついて喰い千切り、その勢いで槍を放して転がった。

 

「苦し紛れに噛みつきとは。何と見苦しい、哀しくなる」

哀絶は呆れて言い放った。思いがけない攻撃に指を三本喰い千切られが、即座に再生される哀絶と腹部を大きく斬られた玄弥。双方の攻撃でどちらがダメージが大きいかは明白だった。

 

 余裕をもって槍を再び構える哀絶。だが玄弥も斬られた腹部を押さえながらすぐに立ち上がり、口を血まみれにして笑いながらボリボリと哀絶の指を咀嚼している。

 

(強がりか?まあ良い、すぐに殺してやる)

噛み付きなど一体何の意味があるのか。

 哀絶は、一見無駄な足掻きとも思える玄弥のその行動の理由を知らない。「噛み付きでも何でもするぞ」というアピール程度にしか考えなかった。

 

「哀しい程弱い。今度は一思いに串刺しにしてやろう」

他の分裂体のように大げさに感情を表すでもなく哀絶は淡々と槍を繰り出し、玄弥は徐々に鋭い槍の連撃を捌ききれなくなっていく。炭治郎は飛行能力のある空喜と、禰豆子も可楽とそれぞれ戦っており、互いに手を貸せる状況ではなかった。

 哀絶は言葉通り、身長では頭一つ以上大きい玄弥の体を幾度も串刺しにして空中に突き上げ、軽々と壁や床に叩きつけた。しかし玄弥は血を吐きながらも薄ら笑いを浮かべて立ち上がってくる。

 

「まだ死なぬか。一体何なのだお前は」

哀絶は気味悪そうに玄弥を見下ろす。

何度叩きつけられたか、壁にもたれて座りこみ、しかしまだ何やらぶつぶつと呟く玄弥。聞こえてくるそれはお経であった。

 

「何とまあ、信心深いことじゃ」

この期に及んで神仏を頼る、哀絶はその滑稽さを嘲笑うが、これは反復動作、玄弥が力を解放する際のルーティンだ。

 

「知りてえか?俺の名は不死川玄弥。よぉく覚えとけよ。テメェら鬼を……滅する者だ!」

玄弥は薄ら笑いを消し、哀絶を睨んで言い放った。

 

「即死できぬというのは哀しいのう。だが次こそは死ねるよう、頸と胴を泣き別れにしてやろう」

哀絶は表情も変えず玄弥の頸を狙って攻撃を繰り出したが、玄弥の姿は掻き消え、槍は畳を深く抉った。

 

「むっ……?」

哀絶は玄弥を見失った。玄弥は取り込んだ鬼の力を任意のタイミングで発動できるようになっており、哀絶の指を喰って取り込んだ力を使って瞬時に背後に回り込んだ。同時に両手の銃を素早くしまい、裸締めの体勢で哀絶の頸を締め上げた。

 

「さっきは美味かったぜェ……。もっと喰わせろよ!」

玄弥は牙の生えた口からよだれを垂らし、哀絶の頸を締め上げながら耳許で囁いた。力はどんどん強くなり、哀絶の喉頭部の軟骨が砕かれ、パキパキと枯れ木を折るような音を立てた。玄弥は哀絶の頸にガブリと噛みつき、肉を喰い千切った。歯の強さ、咬合力、消化吸収能力が無ければ不可能な、玄弥にしかできない行為だ。

 

「ふうう……。ウウウ……ガアアアア!!」

玄弥の顔つきがみるみるうちに変わる。顔中に血管が浮き出し、白眼が赤く染まった。牙の生えた口からは荒い息を吐き、さらにミシミシと音を立てながら全身の筋肉がパンプアップして盛り上がった。

 

「さすがは上弦だ、喰い応えがあるぜェ……」

 

(此奴、鬼喰いか!)

玄弥の噛み付き攻撃の意味にようやく気付いた哀絶だったが、既に遅かった。頸を締め付ける力は更に増し、最早人間のものとは思えない程であった。

 

「テメェはかわいいなァ……。弱っちくてよォ!」

玄弥は笑みを浮かべながら哀絶の頸を締め潰していく。

「かっ……エ゛エ゛ェ゛……」

喉の奥から、哀絶の声にならない声が絞り出される。口からは”哀“の文字が刻まれた舌がだらりと垂れ下がり、頸があり得ない程に引き伸ばされていた。

 

「何だ何だ、向こうの方が楽しそうだな。哀絶が頸を絞められておる!面白い!……お前はもういいぞ、娘!」

禰豆子と力比べのような体勢で争っていた分裂体の一体・可楽は、哀絶と戦っている玄弥を見て興味を引かれたらしく、組み合っていた禰豆子を突き放し、右手に持ったヤツデの団扇であおいだ。時透が遥か彼方へ飛ばされたのを見ていた禰豆子は、咄嗟に身を低くしたが避け切れず、壁の一部ごと建物の外に吹っ飛ばされていった。

 

(竈門妹が!あの団扇、人間を吹き飛ばすほどの暴風を起こすのか!)

これを見た玄弥は一層力を込めて哀絶の頸を締め上げながら背中を反らし、さらに体を捻って頸を胴体から引っ張る。頸椎を繋ぐ靭帯やその他の血管や神経、皮膚が裂けるブチブチという嫌な音とともに、哀絶の頸が引き千切られた。

 

「カカカッ!哀絶め、頸を捥がれおったわ!楽しいのう!鬼喰いの童、今度の相手は儂じゃ!」

可楽は愉快そうに笑いながら玄弥に殴りかかろうとしたが、玄弥は引き千切った哀絶の頭をピンポン球でも投げるような勢いで投げつけた。頭部の重さは体重の約一割、つまりボウリングの球がもの凄い速さで飛んで来ると考えれば、その威力が想像できる。頭は可楽の顔面に命中し、骨と骨がぶつかって割れる鈍い音が響いた。可楽は後ろに吹っ飛び、頸は背中に着くくらい後ろに折れ曲がったがすぐに頸の位置が戻り、これは楽しい!と笑いながら再び立ち上がって攻撃態勢に入った。

 

「お前もよく飛びそうじゃ!」

可楽が玄弥に向け、団扇を振り下ろした。鉛のように高密度に圧縮された空気の塊が打ち出され、玄弥に激突した。

 

 

 

 

 

 玄弥は修行中に一度だけ逃げ出した。

 

 それは異様な光景だった。

お寺にある釣り鐘を撞くような丸太が、サイズ違いで何本も吊り下げられている。倫道はそれを勢い良く揺らし、返ってきた丸太を腕や体で受け止めている。ドスンッと肉を打つ鈍い音が響く。

 

 当たる所に力を集中し、相手の攻撃を力でもって跳ね返す。力を力で受け切る、剛の技。標的を正確に狙うため、妨害を受けながらでも体を安定させる必要があった。倫道は、強く揺らした大きな丸太を平然と体で受け止め、ついには思い切り勢いをつけて揺らした丸太に自分からぶつかって行き、逆に跳ね飛ばしていた。玄弥もやってみたが、ごく軽く揺らした丸太が体に当たっただけで吹き飛んでしまう。

 

(キツいとかそう言う次元じゃねえ、内臓が潰れるだろ!狂ってる……!狂ってるとしか思えねえ!こんなことしてたらマジで死ぬ!)

さすがにこの常軌を逸した鍛錬を目にして、玄弥は恐怖を覚えて全力で逃げ出した。

 

(あれ?玄弥どこ行った?)

倫道は玄弥がいないのに気付き、辺りを見回すと森の木立の中にチラリと玄弥の背中が見えた。かなり距離が開いたが、倫道は追いかけた。

 

 玄弥が全速力で山を下っていると、不意に何かが凄い勢いで通り過ぎた。

 

「おっと、行き過ぎた!」

玄弥を追って来て、勢い余って追い抜いていった倫道だった。

 

「どうした玄弥、準備運動か?」

全速力で必死に逃げる玄弥の隣を、倫道は後ろ向きに並走し笑顔で声をかける。

 

「ぎゃあああ!化けモン!」

玄弥は恐怖に顔を引きつらせて叫んだ。

「準備運動が済んだら戻ろうか」

倫道はそう言って玄弥の襟首を摑み、その体をひょいと肩に担ぎ、もと来た道を飛ぶように走る。

「止めろ!止めてくれ!!人さらいだ!!助けてくれ!!」

 

 

 人気のない山中に玄弥の悲鳴だけが虚しく響く。

だが玄弥は徐々にコツを掴み、この訓練にも耐え抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 玄弥は前方から来る衝撃に対して、ガードする腕に全身の力を集中する。鬼化した状態ではそれはさらに強力で、暴風を完全に跳ね返した。

 

「何っ?!」

団扇を振り下ろしても吹っ飛ばない玄弥を前に可楽は笑うことも忘れ、呆気に取られていた。

 

「効かねえなァ」

玄弥はガードの下でニヤリと笑い、一気に間合いを詰めて可楽に強烈なパンチを打ち込んだ。可楽は壁まで吹っ飛び、玄弥は逃げ場のない可楽に拳の連打を叩き込んだ。玄弥の大砲のようなパンチの連打で可楽の頭が捻じ切れんばかりに振られ、血が飛び散った。玄弥の姿はまるで伝説のボクサー、マイクタイソンが倍速で動いているようだった。最後に玄弥は可楽の膝付近にローキックを見舞った。体ごと持っていかれるような強烈な蹴りを食らい、強い波に足下を掬われるように、半回転した可楽は頭から床に叩きつけられた。

 

 

 

 

 

 真っ直ぐ打ち出すストレートパンチよりも、フックのように腕を曲げ、体を捻って打つパンチの方が玄弥には適していると判断し、倫道は徹底的に教え込んだ。パンチ力のための筋力と連打を繰り出すスタミナも日々の稽古で血反吐を吐くほどに鍛えた。また、ハイキックを自在に操るセンスと柔軟性は玄弥にはないが、悲鳴嶼に鍛え上げられた下半身の筋力がある。倫道はボクシング技術を中心とした手技の他、それを存分に生かすローキックも織り込んだコンビネーションも教え込んだ。

 

 

 

 

 

「何をしているんだバカ者が!!」

頸を捥ぎ取られた哀絶に、滅多打ちにされて動けない可楽。積怒はふがいない二人の戦いぶりに怒り、手にした錫杖の石突きを床に叩きつけた。ドンッと大音響がして、白い閃光が玄弥と可楽を包んだ。

 

(雷?!でも何ともねえぞ、こりゃあ……?)

吹っ飛ばされたり行動不能になることはなく、全身にビリビリとした痺れを感じる以上は何も無かった。哀絶を喰って血肉を取り込んだ玄弥には、積怒の雷撃は効果が薄かった。

 

(そうか、こいつらは元々一体の鬼だ。俺はあいつの肉を喰って同じ細胞を取り込んでるからな。自分と同じ細胞にはこの雷は効かねえんだ!)

玄弥はニタリと笑い、可楽を殴りつけて頭を壁にめり込ませ、積怒に向き直った。

 

「今なら遠慮なく使えるな。……食らいやがれ」

炭治郎は鳥の鬼と一緒に飛んで行き、禰豆子は風の攻撃で外へ飛ばされている。圧倒的な数的不利、だが他の味方がいないこの状況なら銃が使える。玄弥は両手に素早く銃を構え、正面の積怒に狙いをつけた。

 次の瞬間、玄弥は積怒を睨みつけたまま両手の銃をあらぬ方向へ向けて連射した。玄弥は積怒の僅かな視線の動きを見逃さず、敵が迫っているのを察知していた。右手は横から槍を持って迫る哀絶に向かい、左手は斜め後方から迫る可楽に。同時攻撃であったが、玄弥は正確に二体の頭を吹き飛ばした。

 

「死ぬまで食らわせてやるぜ。何度でもなァ!」

目の前の積怒にも弾丸を撃ち込んで頭を粉々に破壊し、玄弥が叫んだ。

 

 

 

 

 

 

「敵襲!敵襲!!」

物見櫓の半鐘がけたたましく打ち鳴らされた。里の中心部、長の家を始め、住宅兼鍛冶工房の密集した辺りに、突如巨大な魚の化け物が複数体現れて暴れ始めた。化け物は巨大な姿からは想像できない素早さで、人々を無差別に襲い、建物を壊していく。次々と火の手が上がり、里の警護のため常駐していた鬼殺隊士たちが魚の化け物に立ち向かうために走り出す。だが戦闘開始より早く、一人の黒ずくめの人物が化け物の行く手に立ち塞がった。

 

(隠……?)

警護の隊士の一人は確かに見た。

 隠と思しき人物が背中に隠した刀を抜き、離れた所から化け物どもに向かって刀を振った。すると、ある者は胴を真っ二つにされたり、ある者は手足を切断されたり、化け物どもは次々に地響きを立てて倒れた。隊士は自分たちが斬りかかる前に次々に倒れる化け物の姿に戸惑った。

 

「壺だ!日輪刀で背中に付いている壺を割れ!」

誰かの叫ぶ声で隊士たちは攻略法を理解し、倒れた化け物に日輪刀で止めを刺していく。十体ほどもいた化け物たちは次々に倒されたが、警護の隊士たちは消火に当たると共に、なおも油断無く警戒を続けた。

 

(流石に警護のみなさんは強いのォ、あっという間に鬼を倒してしまいよった!ホンマに助かったわ!)

里長の鉄珍は襲撃が一旦収まってひと安心だった。

 

 

 

 

 真空刃で警護の隊士たちをアシストした隠は、これ以上化け物が出現しないのを確認し、何食わぬ顔で要救助者の救出を手伝っていた。

 

「鋼鐵塚ノ所ニハ斗和チャンガ向カッテル!」

カラスの報告を聞いた隠の隊士は、炭治郎たちが戦っている宿の方へ急いで駆け出した。

 

 

 

 

 

 禰豆子は可楽の団扇によって吹き飛ばされたが、身を屈めたため下方向に飛ばされていた。地面に激突する直前、凄いスピードで走って来た隠が禰豆子を抱き止め、一緒に転がって衝撃を緩和した。

 

「いたた……。禰豆子ちゃん、大丈夫か?すぐ戻れるか?」

腰をさすりながら立ち上がり、隠が禰豆子に声をかける。

 

「むーっ……?」

禰豆子は首を傾げて隠の目元をじっと覗き込み、その正体に気付いた。

 

「むーっ!!」

禰豆子は笑顔になり、元気良く腕を突き上げる。

 

「よしっ!行こう!」

隠はマスクの下で微笑み、禰豆子と手を繋いで跳躍、跳び蹴りで壁を外からぶち抜き、玄弥が戦っている宿の二階へと飛び込んだ。

 

 

 炭治郎は空中を飛んで襲って来る空喜の飛行能力を利用、空喜が上昇する勢いと自ら地面を蹴って跳躍する力で建物の二階へと一気に移動し、壁を壊して元居た二階部分に戻って来た。

 

「玄弥!禰豆子!」

炭治郎は、そこにいるはずの仲間の名を呼んで確認する。そこではバン、バンと大型拳銃の重い銃声が響き、部屋の中を飛び回りながら懸命に戦う玄弥がいた。

 

 玄弥は数的不利な状況ながら、正確な射撃で鬼の頸を飛ばしていた。他に味方がおらず、多くの遮蔽物があるこの条件を玄弥は上手く利用していた。狭い所を走り回り、隙を見て行う弾倉の入れ換え動作も全く淀みがなかった。また積怒の雷撃は効果が薄く、可楽の暴風は力で跳ね返され、哀絶の槍は鬼に近い肉体の玄弥には致命傷を与えられない。鬼の力を使っているとはいえ、玄弥は一対三の戦闘でも押し負けていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「ちくしょう!できねえっ!やっぱり俺にはできねえ!」

玄弥は上手くできない悔しさと自分への腹立たしさで、度々癇癪を起こして暴れた。単純な体力や力ではない、より複雑で、反射速度や巧緻性など多くの要素が求められる稽古の数々。今までやったこともないことばかりで、玄弥のストレスは大きかった。その日も例によって、倫道から言われたことがなかなかできずに叫んでいた。

 

「気が済んだか?気が済んだら稽古に戻れ」

倫道が冷静に言い放つ。

 

「俺にはどうせできねえんだよ!柱にまでなったアンタとは違うんだ!」

血走った目で倫道を睨む玄弥。

 

「お前は、正確にはお前の脳は、今混乱している。やったことも無い動作をさせらるんだからな」

倫道は意にも介さず言葉を重ねる。

 

「ああそうだよ!ムチャクチャ混乱してるよ!できなくて悪かったな!もうたくさんだ!」

玄弥は腹立ちまぎれに怒鳴る。

 

 やれやれと倫道は諫めにかかるが、最初から分かりやすい誉め言葉を使ったり、ストレートに励ましたりはしない。道半ばではあるが確実に前進している事、大いに期待している事、何のために柱を目指すのかをもう一度思い出してみる事。さり気なくこれらをチラつかせてモチベーションの維持を図り、上達の原理を説いて聞かせた。

 

「お前は本当にもったいないことをする。お前は今、混乱していると言ったな?何故その混乱を喜ばない?」

癇癪を起こしている玄弥だが、幾分かの冷静さは残っていた。大興奮のさなか、何かがひっかかった。

 

「どういう意味だよ?!」

「言葉通りの意味だ。混乱状態の脳を利用しろ。脳は混乱を収めようと通常の何十倍もの速さで動いている。まさに必死になっているんだ。その大きな負荷こそが、お前の脳に急成長をもたらす」

 

「……ああっ?!」

「こうして話している間にも、さっきの動きと頭の中で描いた動作を整理して同期させようと、脳はお前の意識しないところで急激に成長している。今はできなくても良い。上達は突然やってくるんだ。明日と言わず、今日この次にやる時はできるかもしれない」

 

「本当かよ?」

「本当だ。だから大いに混乱しろ。できないことを悔しがれ。それが学びだ!確かにお前は不器用だ。習得には時間がかかる。だが常に復習を欠かさない真面目さがあり、習った事を決して忘れない。……不死川玄弥!!柱になるんじゃなかったのか!思い出せ!お前は誰の弟なんだ?!お前の兄貴は誰だ!!お前は必ずできる!柱の高みを目指して、学び、変われ!!」

最後の最後に、ストレートに倫道が熱く語る。

 

「ああ、分かったよ。やるぜ俺はァ!!」

玄弥は途中から落ち着きを取り戻してじっと聞いていたが、最後にはコロリとのせられ、ブツブツ言いながらも訓練に戻った。

 

(高みを目指して、学び、変わる!……そのまんま使ったけど良くできてるな、ゲキ〇ンジャーのキャッチコピーは!)

倫道は笑って、本気で玄弥の成長に賭けている自分に気付く。それは同時に、不死川実弥に対する思いでもある。家族を、親友を奪われ、生き残った弟まで奪われてしまうのだ。この残酷な運命を必ず覆してやる。兄弟が二人ともに幸せな結末を迎えて欲しい、倫道はそう願っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「おらあっ!かかって来いよ虫けらども!何度でもぶちのめしてやるぜ!」

文字通り、牙を剥く玄弥の怒号と銃声が戦場に響く。

 玄弥は鬼化という最大の武器に加え、銃の扱いも徒手格闘においても、原作とは別次元の強さになっていた。

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