『では、続いての質問です。』
こうなりゃ何でも来いだ。こいつのお遊びに付き合って無事に帰れるなら、
それはそれで構わない。頼むから一刻も早く終わらせて解放してくれ。
『貴方はご自身の勤める会社に対して絶対に言えない秘密がありますか? 』
おいおい。冗談ならキツ過ぎるぞ。「そんなもんはない! 」と声を大にして叫んでやるよ。
と、言いたいところではあった。しかし、そうすることが出来なかった。
なぜなら。あるのだ。会社には決して言う事が出来ない秘密が...。
この秘密が第三者に知られているわけがない。友達にも、家族にも打ち明けたことがない秘密だ。
それなのに...わざわざこんな質問をすると言うことは、こいつはその秘密を知っているのだ。
どうして。
いや...待てよ。こいつは秘密の内容には触れていない。
これは罠かもしれない。俺が焦って秘密を打ち明けることを期待している可能性もある。
もし、イエスと答えて秘密の内容を言え。と言われれば、言わざるを得なくなる。
そりゃそうだ。自分で秘密があると認めてしまっているのだから。
勿論。命に代えられる程のことではない。だが、命の次くらいには大切な秘密ではあった。
ここはイチかバチかで白を切ってみるのもありかもしれない。
もしかしたら、この監禁の実行犯は俺に疑念を抱いた会社内の誰かのなのだとしたら...。
俺は真っ暗闇の視界の中で何人かの顔を思い浮かべていた。
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『貴女は素直で助かります。』
目の前のモニターに現れた文字を見る限り、私は上手く相手を信用させられているようだ。
ん?
『貴女は』...?
『は』?
それとも単なる言葉の綾と言うことなのかな?
『続いての質問です。貴女は学校や両親に打ち明けていない重大な秘密がありますか? 』
まさか...。あの事を言ってるの?
あの秘密の事を言っているの?
いやいや...普通に生きていたって誰にも言えない秘密の一つや二つぐらい誰にだってあるよね。
私が過敏になっているだけ。だって、知っているはずがないじゃない。
誰にも言ってないんだから。しかも、たった一度きりの事じゃないの。そう...一度だけ。
バレているはずがないじゃない...。大丈夫よ。
私は意を決して首を縦に振った。こうしておけば嘘をついたことにはならない。
あの事以外にだって、誰にも言っていない可愛らしい秘密は何個かあるし。
私の首の動きが確認できたのか、モニターから文字が消えた。
頼むから...あの事ではありませんように。
次に浮かび上がってくる文字次第では、もしかしたら...。
ちょっと待って。
まさか、それが狙いなの?
あの秘密を私から聞き出すことが目的なの?
もしそうだとしたら...。
深く考えずに首を動かしてしまったことを後悔するも、それを訂正する手段も挽回する方法も
ないのだった。
焦る気持ちとは裏腹に、気が付けばモニターには新たな文字が表示されていた。
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結局、俺はイエスと答えていた。
どれくらいの確率かわからない『もしも』よりも自分の命を優先させたのだ。
それに秘密の内容を知ることが、こいつの目的だったとして俺が失うものといえば、
職といくばくかの金だろう。そうなったとしてもやり直せば良いんだ。
命が残っていれば、やり直しなんて幾らでも出来るんだ。
そう考えれば、答えは一つだった。
俺のイエスと答えてから数分が経っていた。なぜだろう。反応が無い。
俺は嘘を付いていない。秘密はあるんだ。ちゃんと答えたのになぜだろう。
そう思っていた時だった。また背後の扉が開けられるような気配を感じた。
その音自体がトラウマであるかのように、先ほどの恐怖が蘇ってきていた。
「俺は嘘をついていないぞ! 」
後ろから誰かが近づいてくる気配がする。その気配は俺の言葉など聞こえていないかの様に
止まることなく確実に近づいてきていた。
「おい! 聞いてるのか? 」
その気配が俺のすぐ後ろでピタリと止まったのが伝わってきた。