人魚ってさ素敵だよな。下半身魚でも大概美女か美丈夫でさ。
半魚人ってさ最悪だよな。ギョロメで気持ち悪いし、ひどい時は魚の体に人間の手足がついてるよくわからない生き物なんだぜ?
正直な所どう思う?魚に人間の手足ついてるの。
ねぇ、カッコいい?カッコいい?
き、気持ち悪い?
ほんのちょっぴりでいいから格好良くない?
寄るなって……、寄るなって……。悲鳴あげんなし。
泣いてるのかって?泣いてないよ!目から塩水排出してるだけだから。
気持ち悪い言うな!
栄えあるディープ・ワンの名門なんだぞ家は。
え?本人の資質には関係ない?じゃかましいわ!
あっ、いやごめん。帰らないで、ひさびさに友達に会って嬉しかったんだよ。
もうちょっとゆっくりしてって。またくる?
分かったよ。さよなら。またきてくれよ。
ほら、俺こんな形じゃん。出歩けないし、学校にいけないしで寂しいんだ。
今度は他の奴も連れてくるって……、お前本気か。
いや、まじでやめろ。じいちゃんが人に見られて、駆けつけた警官に発砲されながら海に帰ったことあるんだよ。
お前は通報しないだろ。携帯取りだすな、笑えんから。
何をにやにやしてるってこれよ。
小指に赤い糸が結ばっちまってね。いや、頭がおかしくなったんじゃなくて。か・の・じょ!
ほら、俺ってディープ・ワンではモテモテじゃん?えんがちょすんな、どんだけ失礼なんだ。
この前浅瀬に親戚が遊びに来てさ、親に連れ出されたわけ。そこで俺は運命の出会いを果たしたわけだな。ノロケはいらんだとぉ。じゃあこのチョコケーキはいらんわけだな。
欲しいって?食べてる間に話せと。まぁいい、食いながら聞けよ。
彼女は童話に出てくる人魚姫さながらに、月の光に当たってきらきらしてたんだ。岩礁の上にのって打ち寄せる波の泡をすくって遊んでた。
見惚れたね。ほんとにきれいなんだ。上半身は人の形のままで好みドストライクな丸い目をした女の子でさ、腰からきれいに魚の尾鰭になってるわけ。奇跡だね。他の奴は色んな魚の要素が混じってて俺が言える義理じゃないが魚なんだよ。魚人じゃない、魚。人の要素は二足歩行だけなんじゃないかとね。彼女の場合は陸じゃ不自由だろうけどさ。深海で暮らしてるんだ、関係ない。
そんで、すぐに告白した。思い立ったが吉日、チャンス逃したら二度目はないからな。
OKはすぐに出たね。この時ほどディープ・ワンで良かったと思ったことはない。
我らがクトゥルフに祈りを捧げたよ。いあ!いあ!くとぅるふ ふたぐん!
ん?口からよだれ垂れてるぞ。げぇ、チョコのせいでタールみたいに黒い。きったねぇ。
ほら、ティッシュ。いいってことよ。
彼女さん?ああ、それから金曜の夜に毎週会うことになったんだ。一緒に泳いだり、神殿で礼拝したりしてね。
彼女ってさ、一つ特徴的な所があってさ、深海に潜ると額がぼんやり光るんだ。家系の特徴だとさ。俺もその光を見ると吸い寄せられて頭同士をぶつける失態をしちゃったよ。笑って許してくれたけど。
どうしたんだ?顔を曇らせて。
わざわざ電話掛けて呼び出したのはさ、ほらお前にはいろいろ世話になったからお礼もかねて別れの挨拶をしようと思って……。
うん、そう。彼女と一緒に深海で暮らすつもりだ。へへっ、しんみりしちまったな。
え?提灯アンコウ?いきなりどうした。
彼女が アンコウ? なわけないだろ……。
彼女の親?母親なら見たけど。口の凄い大きい、鋭い牙が生えてて……。結構な年で大きかったな。額に触角ぅ?……あったけど……。
なんだよ。怖い顔して。
彼女もそうなるって?そんな……、俺たちの姿は結構個人さが……。
将来のことは分からない。確かに。だけど、そうはならないかもしれない!俺は決めたんだ。
なんだよ、深呼吸なんかして。ショックを受けるなって、今の話でも結構キてるだけど……。
提灯アンコウの生態
雄はペンチのような口で雌にかじりつき、口の皮膚を融合させヒモ生活もとい寄生する。
雌はそんな雄を体の大きさもあってものともせず何匹もぶらさげる。食べ物など生きるため体の機関は雌に依存する。
待てよ。俺はそんな事をしねーぞ。彼女が望むかもって?まさか~……。彼女のお父さんの所在を聞いとけって?分かったよ……。そんなに真剣な顔すんなよ。……また口からよだれ垂れてんぞ。
どうだったって。そうだな。別れたよ。
親父さん?母親にくっついてんだって。年がら年中母親の体に吸い付いて時折尾鰭動かしてるの見たことあるってさ。彼女?いつでもくいついてOKよ、だってさ。気が変わったらいつでも歓迎するって。
曾野……、どうやら俺はお前に一生の借りができちまったようだな……。