僕は今日も駅に来ている。しばらく待てばマリがやってくる。そして、いつものように後ろから目隠しをしてくるのであろう。
いつものようにマリが来るまでは向かいのホームの一人女性を見ている。
…アスカ。
いつも、マリが来る少し前にケンスケが迎えに来ている。
この世界では、ケンスケと幸せにやっているのだろうか。
「だ~れだ?」
「胸の大きいいいおんな」
「んふふ~。正解♪たまには違う答えも欲しいかにゃ」
「わかった。眼鏡が似合ういいおんな」
「それも正解♪」
「じゃあ、行こうか」
彼女の手を取り歩き出す。
こんな世界も嫌いじゃない。
「ねぇシンジ。ホテル行こうか」
「まぁ、いいけど…」
急にマリがそんなこと言い出すなんて珍しい。今まで、そういう行為がない訳ではないが…。アスカを見てたのがバレたかな。
今日も駅で待ち合わせ。向かいのホームにはアスカは居ない。そういう日もあるだろう。
「あの…」
突然、声をかけられて驚いた。アスカだ。いつもは向かいのホームに居るのに…。
「なんでしょうか?」
平静を装い返事をした。
「どこかでお会いしたことありませんか?」
彼女には、エヴァに乗ったり使徒と戦ったり、ましてや僕と会った記憶はないはず。この記憶を持っているのは、僕とマリだけだ。
「えぇ、ありますよ。いつも線路を挟んでお見掛けしますから」
当たり障りのない答え。
「いえ、そうではなくて、以前どこかで…というか、一緒に居たというか…」
「き、気のせいですよ」
何故だ。記憶はないはずなのに。
「お待たせ。あら?貴女、私の彼になにかご用意?」
マリ…。正直、助かった。なんで答えればいいか困っていたところだ。
「い、いえ…」
「じゃあ、連れが来たので失礼しますね。貴女も彼氏?旦那さんかな?迎えに来るんじゃないですか?」
「あ、はい。すいませんでした」
彼女のもとを離れる。
「マリ、助かったよ」
「姫に話し掛けられて、嬉しかったんじゃないのかにゃ?」
「そんなことより、驚きしかないよ」
「ふ~ん。今夜は泊まっていっていい?」
「もちろんだよ」
食事も終え、ふたりでベッドに横たわる。
「マリ、あそこで待ち合わせするの、やめないか?」
「電車の都合もあるから便利なんだけとな。姫に会うと昔の感情が出てきそう?私にこんなことしておいて」
使い終わった避妊具を見せてくる。
「そうじゃないよ、アスカに『どこかで、会ったことないか?』って言われたんだ」
「う~ん、わかった。待ち合わせ場所変えよう」
待ち合わせ場所を変えて数週間たったころ。
その日、マリは友人と出かけているので、一人で喫茶店で時間を潰していた。
本を読みながらコーヒーをすすっていると、出会ってしまった。というか、見つけられた。
「やっと会えました」
アスカ…。
「ご一緒してもいいですか?」
「え、ええ、どうぞ」
断るのも不自然だと思い、了承する。
アスカが注文した飲み物が届き、一口飲むと話を始めた。
「よかった。ケガとか病気じゃなかったんですね」
「えぇ、まぁ」
会話が途切れる。気まずい雰囲気…。
沈黙を破ったのはアスカだった。
「私、夢を見るんです」
「夢?」
「はい。貴方を反対側のホームで見つけた日から…」
俯きながら、アスカは続ける。
「見たこともない制服を着た私と貴方が出てくるんです。たぶん中学生ぐらいだと思います」
「そう…」
うまく答えることが出来ない。
「貴方のことをバカにして突っかかったりして…」
アスカは苦笑いをする。
「一緒の部屋に住んでるなんて夢もありました。それに…貴方と…キスするなんてことも…」
「あはは…。大胆な夢だね」
「そうですね」
アスカの顔が赤くなるのがわかる。
「もっと、不思議な夢もあるんです。赤いツナギみたい服を着てロボットに乗って戦うんですよ。可笑しいですよね」
あはは、と笑ったかと思うと急に顔が暗くなった。
「貴方に会えなくなってからは、違う夢を見ました。みんなに認めてほしい、私を見てほしいって…。特に貴方に…」
背中に汗が流れるのがわかる。
「そして、昨日の夜に見た夢は、ボロボロになったツナギを着ている私に貴方は『好きだった』と言ってくれたんです」
手が震える。
「あ、もう、こんな時間!」
アスカが時計を見て叫んだ。僕も腕時計を見ると帰らなくてはならない時間になっていた。
「ぼ、僕もそろそろ帰らないと…」
伝票を取り会計を済ませて店の外へ出る。
「すいません。ご馳走になってしまって」
「いえ、このくらい。では…」
帰ろとすると…。
「アスカ!私、式波アスカっていいます」
「ぼ、僕は…」
名前を名乗ろうとすると、それを遮り言った。
「碇シンジさん。いいえ…」
そして、満面の笑みで…。
「バカシンジ!!」
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アスカ派です。