目が覚めた。
「だ~れだ?」
「胸の大きいいい女」
「正解だにゃ♪」
「それで、なんでこの状況なの?」
「それは君が望んだ世界だから」
僕が望んだ世界…。
「僕はマリさんの胸に顔を埋めて寝てる世界は望んでないけど」
「そんな冷たいこと言わないでほしいにゃ」
そう言いながら、マリさんは僕の顔に胸をグリグリしてきた。
すると、勢いよく扉が開いた。
「マリさん、何をやっているんですか?」
「やぁ、レイちゃん。おはよう」
「おはようじゃないですよ。兄さんも鼻の下を伸ばさないでください」
碇レイ。綾波レイはこの世界では、僕の双子の妹になった。
「マリおばさん、早く兄さんから離れてくれください」
「おばさんはヒドイにゃ。私まだ独身だよ」
「その語尾も痛いです」
真希波・マリ・イラストリアス。この世界では父さんと母さんの大学の後輩で同じ会社に勤めている。
「兄さんも早く起きて。遅刻するよ」
そして僕は中学生だ。
「おはよう。父さん、母さん」
「おはよう、シンジ」
「おはよう、シンジ。お味噌汁頼めるかしら」
「わかった」
父さん母さんが居る。
「マリ、貴女またシンジの布団に潜り込んでたんだって?」
「だって、可愛いんだもん。シンジ君が18歳になったら、お婿にもらうんだから」
「ダメよ。シンジにはいいひとがいるんだから。ね、シンジ」
「う、うん…」
「マリ君も結婚したらどうた?加持君のところも、もうすぐ生まれるんだろ?」
「ミサトさんにたまたま会ったけど、今月だって」
「葛城博士もおじいちゃんか。そうだ!渚君なんてどうだ?」
「え~、何考えてるかわかんないし、時々中二病っぽいこと言ってるから。それに結婚だけが人生じゃないよ、ゲンドウ君」
「それよりマリ、時間大丈夫なの?大学に寄ってから出社でしょ?」
「しまった!冬月先生の研究室に行かないといけないんだ!」
「マリさん、味噌汁だけでも飲んでいってください」
マリさんにお椀を差し出す。
「ありがとう、ワンコくん」
「いい加減、それやめてくださいよ」
あの時の呼び方。でも、今は意味が違う。
「小さい時、ユイさんの後ろにくっついて可愛かったんだから。ごちそうさま、いってきます」
慌ただしくマリさんが出かけた。
「マリさん、家に帰ってるのか不思議になるよ」
マリさんは、週3でウチに来ている。
「シンジ」
「何、父さん」
父さんが新聞を拡げながら声をかけてきた。少し緊張する。
「土曜日に釣りにでも行かないか?」
「ごめん、父さん。土曜日はケンスケとトウジと映画の約束してるんだ」
「あら、いいわね。何を見にいくの?」
母さんが台所から、聞いてきた。
「『シン・ゴジラ VS巨神兵 』だよ。ケンスケの趣味だけどね」
「じゃあ、日曜日は…」
「ごめん、父さん。日曜日も…」
「アナタ、食事の時は新聞たたんでください。日曜日は私と出かけましょう」
「日曜日は私と兄さんで…」
「レイ、アナタも一緒に出かけるのよ」
「私は兄さんと…」
「レイもお兄ちゃん離れしなさい」
前の世界の記憶のせいかレイはブラコン気味だ。
そんなことを言っていると、呼鈴が鳴った。
「アスカちゃん、おはよう。シンジ、早くしなさい」
母さんが出てくれた。
「は~い」
「アスカちゃん、お母さんは?」
「まだ寝てます」
「そう、あとで朝ごはん届けておくから」
「いつも、ありがとうございます」
アスカはお母さんと二人暮らしだ。アスカのお母さんは研究室に籠ってることが多いので、だいたいは寝坊している。
「レイ、先に行くからね」
「待って兄さん!」
アスカとレイと三人で登校。途中で委員長・トウジ・ケンスケが合流する。
そんな毎日…。使徒もエヴァもない世界。
そして、迎えた日曜日。
「そうそう、手を猫にして…」
「こう…かな?」
ウチでアスカに料理を教えている。
「違うよ、そうじゃなくて」
「うるさいわね!」
「ご、ごめん…」
こんな日常が続いていくのだろう。
「アスカ」
「…なに?」
「好きだよ」
「な、な、何を急に言ってるのよ!」
こんなこと言うつもりはなかったのだが、口から出てしまった。
「あ、いや、あの、違うんだ!」
「違うの?」
「違わない…」
「そう…。私も…」
消え入りそうな声だ。
「え?」
「私も好きだって言ってるのよ!バカシンジ!!」
「あ、ありがとう…」
見つめあい、目を閉じてどちらともなくキスをする。
こんな優しい世界があってもいいと思う。