超高校級の希望と超高校級のゲーマーの輪廻転生先が魔法界だったら   作:グローサリー部

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だいたい週一投稿です。


賢者の石ーダイアゴン横丁ー

1991年9月1日。

 地下鉄の改札口を難なく通る。電車の座り心地はよかった。

 

「やはり、ロンドンは人が多いですね」

 

言って歩き回り、「漏れ鍋」という店名のパブを探す。

 

「ふわぁ…寝みぃ」

 

隣を歩く七海はぼやく。郊外の家から来たので少し時間がかかったのと、人の多さに疲れたのか鼻提灯を大きく膨らませ、よだれをたらし、今にも寝てしまいそうだ。また、イーガン夫妻はこの日のために予定を空けてくれていてのだが、急な仕事の用事が入ってしまい来れなくなってしまった。二人ともとても悔しがっていたが、これから短くない時間、顔を見れなくなるのに別れの挨拶がこれではと、最後は明るく見送ってくれた。

 なにはともあれ、ホグワーツ魔法魔術学校の入学式は今日。時間を無駄にはできない。あらためて、必要なものリストを見る(前回参照)。

 

「こんなものがロンドンで全て揃うとなると、やはりマクゴナガル先生の言っていたダイアゴン横丁とは、魔法使いのための商店街といったところでしょうか」

 

 言いながらポケットのとある鍵を取り出す。あの日、マクゴナガルは一通り説明を終えた後、また一瞬で消えてしまった。副校長という役柄、とても忙しい身なのだろう。その数日後に僕と七海の銀行の鍵だといって渡された。マグルの貨幣をついでに必要な分、魔法界の貨幣に交換してきてくれたらしい。とりあえず彼女のおかげで今後の予定に特に疑問は無い。とはいえ、基盤となる魔法界の知識がないので、不確定要素の見落としはあるかもしれない。まあ、幸運の才能があるので、不測の事態がおきても僕はなんとかなるだろうが、隣で寝ながらも器用に歩く七海はそうもいかないだろう。

 

「しかたありませんね…」

 

七海の手を引いて歩く。完全に寝てしまい、その拍子に転びそうになったら背負うしかない。目立つのは面倒だが、置いていくわけにもいかない。

 とりあえずさっさと「漏れ鍋」を見つけなければならない。あたりを見渡す。超高校級の分析家の才能があるため、初めて見る人でもある程度人柄や意図が把握できる。人口密度が高かろうと僕には関係ない。更に併せて、超高校級の軽音楽部や超高校級のピアニストなど、音楽に関する才能の力で、さながら聖徳太子の逸話のごとく分離集音する。

 

「ここだ」

「『漏れ鍋』――有名なところだ」

 

大人3人分程の大きさの大男が隣のみすぼらしい服装の眼鏡をかけた小柄な男の子に話している。見つけた。

 

「すみません」

 

「ん?…お、おぉ?お前さんは?」

 

大男は話しかけた僕のほうに視線を向けてくれたが、一瞬僕に気付かなかった。背が高すぎるのも不便そうだ。隣の男の子は多少警戒はしているものの、好奇心がそれに勝っているのか身を乗り出してこちらをうかがっている。というか僕よりも寝ながら歩てきた七海が気になるようだ。無理もないですね…。

 

「僕はカムクライズルです。隣の…寝ている子は七海千秋と言います。姓は違いますが、兄妹です」

「ルビウス・ハグリッド。ホグワーツで森番をしておる」

 

ホグワーツ…僕はまだ僕たちがホグワーツ入学のために準備しているとは言ってない。うっかりなのか、魔力的な力でも感じ取っているのか。この場合は前者のようだが…。

 

「よろしくおねがいします」

 

僕はそのままハグリッドの隣の男の子を見る。僕の赤い虹彩が放つ視線を向けられても彼は特に身じろぎもせず、自分も自己紹介をしようと口を開いた。どうやら、コミュニケーション能力に問題はないし、どころか人よりも勇敢な性格みたいだ。

 

「僕はハリー。ハリー・ポッター」

「よろしくおねがいします」

「自己紹介は済んだみてぇだな。そいじゃお前さん、いったい何の用だ?」

 

ハグリッドはさっきの通りうっかりした性格だが、それを差し引いても人当たりがいいようだ。おそらく、ホグワーツではかなり人気があるだろう。

 

「はい、僕たちはホグワーツ入学のために今まで、『漏れ鍋』を探していました。ですが、僕らの両親は、マグルでしたので僕らにも魔法界の見聞がありません。『漏れ鍋』もこうしてハグリッドさんがいなければ、見つけるのにそれなりの時間がかかったでしょう」

 

僕の言葉を聞いてるハリーの目が変わる。彼も僕らと似た口なのだろう。嬉しそうだ。

 

「要するに、ダイアゴン横丁まで一緒に行きたいんだね?」

 

仲間を見つけた!…そう思っているみたいだ。彼もハグリット同様、人当たりがいい。

 

「はい。同行させてください」

「もちろんええぞ!なんならハリーと一緒に入学に必要ななんだかんだをそろえてくるとええ」

 

ハグリッドは大きな手でハリーの肩をバンバンたたきながらそう言った。年の割に小柄なハリーは膝がカクンとなった。

 

「時間もねえ。とっとと行っちまおう」

 

親指で背後の「漏れ鍋」を指してハグリッドが催促してきた。

 小さく、ところどころ汚れの目立つパブだった。入る前に気付いたが、おそらくマグルと思われる多くの歩行者にこの「漏れ鍋」は見えていない。パブ内は薄暗くみすぼらしい。客も店に合った様相だ。ハグリッドはそんな彼らに気軽に話しかけられている。

 

「ハグリッド、いつものやつかい?」

「今日はダメなんだ、ホグワーツの仕事でな、ハリー達のホグワーツ入学のためにじゅんびしなくちゃいけねえ」

 

ハグリッドが「ハリー」と口にした瞬間、店の空気が変わり、賑やかだったのも静まり返った。

 

「やれ嬉しや!」

 

バーテンの老人がささやくように言った。続くように客がハリーのもとに集まってくる。さっきとは違った賑わいようだ。…こんな状況でさすがの七海も目を覚ました。

 

「おはよう…うん。カムクラくんのおかげで安心してよく眠れたよ」

「…これから買い物です。その間は、寝ないでくださいよ」

「分かった。ところで、これは何事?かな」

 

首を傾けて七海は聞いてくる。人工知能の再現した七海千秋とは仕草や喋り方などに差が出ている。

 

「どうやらハリー・ポッターはこちらの世界でかなりの有名人のようですよ」

「ハリー・ポッター?」

「七海が寝ている間に出会いました。あの、小柄で眼鏡をかけた男の子ですよ。彼もホグワーツ入学予定だそうです。その隣の一際大きい方がルビウス・ハグリッド、ホグワーツで森の番人をしているそうです。彼らのおかげでここに来れたんですよ」

「そうなの?なら後でお礼しないとだね」

 

ハリーはよほどの英雄扱いのせいか、今度は握手会になっている。その横で相変わらずハグリッドは誇らしげににっこりしている。何人か握手したハリーは次に進み出てきたターバンを巻いた男性を見た。

 

「クィレル教授!」

 

ハリーが握手しようとして、ハグリッドの嬉しそうな大声に驚いて止まる。

 

「お前さんらもこっちに来い」

 

店の端にいた僕たちをハグリッドが呼ぶ。ハリーは申し訳なさそうにこちらを見ている。

 

「ごめん、待たせたね」

「いえ、気にしません」

「ポッターくんのせいじゃないよ」

 

ハリーは七海をチラチラ見ている。さっきまで寝ていてこれがほんとの初対面、それに異性ということもあり人当たりがいい彼も緊張している。

 

「みんな集まったな。こちらはクィレル先生だ。ホグワーツで闇の魔術に対する防衛術を教えとる」

「み、みなさん、よ、よ、よろしく」

 

クィレル先生は、どもりながらニコッと笑って言った。人と話すのと笑うのも苦手らしい。

 

 

「あの、よろしく!」

 

ハリーがあまり見たことのない性質の人だったのだろう。距離感を焦って握手を求めた。

 

「なんとも…いえ、君には、ひ、必要ないかも」

 

クィレルはハリーの握手に応じなかったが、ハリーも多少クィレルのような人に理解したのか、もうそれ以上の話もしなかった。

 

「さて、もういかんとな…みんな、こっちにおいで」

 

 僕たちはパブを通り抜け、レンガの壁に囲まれた狭い中庭に出た。あるものと言えばゴミ箱と雑草くらいだ。

 

「どうだ、お前さんは有名だっただろ?」

 

ハグリッドはハリーに話しかける。当のハリーはさっきから困惑気味だった。

 

「でもハグリッド、どうして僕は有名なの?」

「…俺の口から言うにはちと荷が重すぎる」

 

ハグリッドはそう言っておもむろに傘を取り出した。傘の先端で壁のレンガブロックを三か所たたく。すると、たたかれたレンガブロックを筆頭にブロックがくねくね動き、次第に形を新たに整え、ハグリッドさえ通れるアーチ型の入口になって止まった。入口の向こうには石畳の通りが曲がりくねって先が見えないくらい遠くまで続いている。

 

「ダイアゴン横丁へようこそ」

 

ハリーも七海も、顔には出していないが僕も驚いているのを見て、ハグリッドは二カッと笑った。アーチをくぐるとアーチは縮んで壁に戻ってしまった。

 

「さ、まずは金をとってこんとな。おおっとそうだ、ハリーはいいとして、お前さん方、こっちの金はあるのか?」

「はい、為替がわからないのでほとんどマクゴナガル先生にまかせっきりでしたが、一応十分な額はグリンゴッツという銀行に口座を作ってもらって、そこに預金してあります」

 

僕と七海はポケットからそれぞれ鍵を見せる。

 

「マクゴナガル先生にお世話になったのか!ふむ、ならいい!あそこほど安全な場所はねえぞぉ!ま、ホグワーツの次にだがな」

 

 道中、僕や七海、ハリーと同年代の男の子が数人、箒のショーウィンドウに鼻をくっつけて眺めている。その中でも小さな男の子が何か言っている。

 

「見ろよ。ニンバス2000新型だ!」

「スピード最高なんだよ!」

 

続くようにして、他の男が興奮して言っている。

 フクロウ百貨店、マントの店、望遠鏡の店、見たこともない銀の道具を扱っている店。蝙蝠の脾臓やウナギの目玉を樽で売ってる店もある。今にも崩れそうな呪文の本の山。羽ペンや羊皮紙、薬瓶、月球儀…。

 

「ほれ見ろお前さんら、グリンゴッツだ」ハグリッドの声がした。

 

ひときわ高くそびえた真っ白な建物。ブロンズの観音開きは日の光をよく反射していて、隣の七海は眩しそうにしている。

 グリンゴッツの内装は広々とした大理石のホールだ。そこでは見たこともない生物が働いていた。小柄なハリーよりさらに頭1つ分小さい。きちっとしたスーツを着ていて、何か事務仕事をこなしているものが多い。ざっと100人(?)は超えている。どうやらこちらの世界では人間のほかにも知性生命体がいるらしい。

 

「ハグリッド、彼らは何?」

 

ハリーが僕より先に聞きたいことを聞いてくれた。

 

小鬼(ゴブリン)だ。頭はええが…あまり気のいい連中じゃねえ。みんな俺から離れるな」

「おおー、ダンジョンRPGゲームのイメージが強すぎて意外だよ」

 

七海は興奮気味に言うが、ハグリッドには通じなかった。不思議そうな顔をしたがすぐ元に戻る。

 ハグリッドについて行って広間の奥のカウンターに近づいた。そこに座るゴブリンの前でハグリッドは咳払いした。

 

「ハリー・ポッターさんの金庫から金をとりに来たんだが」

「ああ…鍵はお持ちでいらっしゃいますか?」

「どっかにあるはずだ」

 

ハグリッドはいくつもあるポケットをまさぐる。4つ目でやっと見つけたようだ。その後、後ろの僕たちのほうを向いた。

 

「俺がやったようにお前さんらもやるとええ、手続きだなんだは、まあなんとかなる」

「はい」

「ん!…それと、ダンブルドア教授から手紙を預かってる」

 

僕の返事に満足したハグリッドはゴブリンのほうに向きなおり、先ほどとは別のポケットから手紙を取り出した。そして、僕らに聞こえないようゴブリンに重々しく耳打ちしている。…しかし、残念ながら本人はそのつもりでも隠せてない。ハリーにも七海にも普通に聞こえる声量だ。

 

「713番金庫にある、例のものについてだが」

 

「了解しました」ゴブリンは手紙を受け取ると中身を見ずに返事した。

 その後、ハリーたちはグリップフックと呼ばれたゴブリンに案内され無数の扉のうちの1つに連れていかれた。

 

「またね」

「うん、また」

 

七海が声をかけ、ハリーも名残惜しそうに返事する。

 

「あなたがたも、引出しですね」

 

カウンターのゴブリンは僕らに問う。僕と七海は懐からマクゴナガル先生に頂いた鍵を取り出す。

 

「案内させます。ゴルヌック!」

 

ゴルヌックと呼ばれたゴブリンが近づいてお辞儀した。

 

「ご案内いたします」

 

先ほどハリー達がくぐった扉とはまた別の扉に案内された。そこは大理石でできた広いホールと違って、松明に照らされた狭い通路だった。小さな線路もある。狭く薄暗いせいか七海は少し不安そうだ。ゴルヌックが口笛をふくと小さなトロッコが独りでにやってきた。3人が乗り込むとトロッコは発車した。

 冷たい空気のなか、ビュンビュンと駆け抜けるトロッコのせいで七海は寒そうに身を縮こませている。線路はくねくね曲がっているので乗り物酔いしてしまったらまずい。僕は七海の背中と肩に手をまわして彼女の体幹を支えた。七海は微笑んで何か言おうとしたが、喋れば酔ってしまうかもしれないと思ったのかやめた。しばらくしてトロッコが小さな扉の前で止まった。

 

「ふう、やっと着いたー」

「体調は問題なさそうですね」

「うん。おかげさまで。ありがとう」

「先ずは七海様。鍵を拝借」

 

七海はゴルヌックに鍵を渡す。ゴルヌックはその鍵を使って扉を開けた。煙が中から吹き出し、それが消えたところで七海がわあっと息をのんだ。金貨に銀貨、銅貨の山。それは、マグルの映画などでよくみられる光景だった。実際に目にすると()()が違う。僕は七海がバッグにお金を詰めるのを手伝った。詰め終えたのを確認してゴルヌックが扉を閉める。

 

「お次はカムクラ様。鍵を」

「はい」

 

ゴルヌックは同じ金庫の扉に今度は僕の鍵を差し込んだ。ゴゴっと扉が少し揺れた後で開いた。そこには七海の金庫と同じようにお金の山ができていた。どうやら、ここでは金庫より鍵が重要らしい。

 バッグにお金を詰める。今度は七海が僕を手伝ってくれた。終わったのを確認してゴルヌックが扉を閉めた。帰り道でとうとう七海が酔ってしまった…。

 グリンゴッツの外でハリー達と合流する。トロッコから解放されて七海の酔いも少しは改善した。

 

「よし!そろったな。おおう、お前さんダイジョブか?俺もあのトロッコには何度も吐かされとる」

「うん。大丈夫。でも、今はまだ話しかけないで…」

 

七海は口に手を当てて、まだ吐き気が残っているようだ。

 

「そうか、ま、じき治るさ。おおっと、そういやお前さんらもマグル出身だったな。さっきハリーには説明したんだ。いいか?七海にゃあとで教えてやれ。まず、金貨はガリオンだ」

 

ふむ、通貨の仕組みのようだ。たしかにとても重要なことだった。

 

「そんで銀貨がシックルで、17シックルが1ガリオン、1シックルはええと…」

「29クヌートでしょ?ハグリッド」

「おぉおぉそうだった。ま、とにかくしっかり覚えとけ。こっちで生きてくにはな」

 

やはり、彼はうっかり性のようだ。

 

「そのバッグいっぱいにあんなら、まあ2、3学期は大丈夫だろう」

「それで、ハグリッド、まずは何から買えばいいと思う?」

 

ハリーに質問され少し考えると、ハグリッドはある店を指さした。ハリーは自分のバッグを意識してウキウキしている。僕や七海以上にたくさんのお金が詰まっているようだ。

 

「まずはあそこで制服を買ったほうがいいな」

 

店名は看板で確認した。『マダムマルキンの洋装店―普段着から式服まで』

 

「なあ、ハリー。それにお前さんら。『漏れ鍋』でちょいと元気薬をひっかけてきてもいいかな?あのトロッコにはわしもまいった」

 

まだ苦しそうな七海をチラッと見たハグリッド。少し七海に罪悪感があるようだ。しかし彼も今は七海に負けず劣らず青い顔をしている。

 

「私のことは気にせず、行ってきなよ。いざとなったらカムクラくんがいるから、私のことは大丈夫だよ」

「そ、そうか。すまんな」

 

 ハグリッドとはいったんそこで別れ僕らはマダム・マルキンの店に入った。

 マダム・マルキンは、藤色ずくめの服を着た愛想のよい、ずんぐりした魔女だった。

 

「坊やたちに、可愛いお嬢ちゃん。みんなホグワーツなの?」

 

 ハリーが話しかけようと口を開きかけたとたん、声をかけてきた。

 

「全部ここでそろいますよ……もう1人お若い方が丈を合わせているところなの」

 

 店の奥を見れば、青白く、あごのとがった男の子が踏み台の上に立ち、別の魔女に黒いローブをピンで留められていた。僕らはその隣にそれぞれ招かれ、踏み台に立たされる。魔女がさらに2人でてきて、マダム・マルキンはハリーの、他の2人が僕と七海にローブを着せかける。ハリーが彼の丈でピンを留められたところで、さっきの男の子が話しかけてきた。

 

「やあ、君たちもホグワーツかい?」

 

「うん」と答えたハリーに続き僕と七海も頷く。

 

「僕の父は隣で教科書を買っている。母はどこかその先で杖を見てる」

 

気だるそうに、()()()()()話し方だ。

 

「これから、2人を引っ張って競技用の箒を見に行くんだ。1年生が自分用の箒を持っちゃいけないなんて、理由がわからないね。君たちもそう思うだろう?父を脅して1本買わせて、こっそり持ち込んでやる」

 

彼を見るハリーの様子からは軽蔑の色が伺える。お構いなしに男の子は続ける。

 

「で、君たちは自分の箒を持っているのかい?」

 

僕たちは揃って横に首を振る。

 

「クディッチはやるの?」

「ううん」

 

ハリーは何のことかわかってないが、返事している。クディッチ……文脈的におそらくさっきこの男の子が語ってた競技用の箒を使う競技名なのだろう。

 

「僕はやるよ――父は僕が代表選手に選ばれなかったらそれこそ犯罪だって言うんだ。僕もそう思うね。君はどの寮に入るかもう知ってるの?」

「ううん」

 

どうやら男の子は僕らに興味をなくしたらしい。隣のハリーだけに話をしている。といってもハリーの返事は空返事ばかりだった。ついでにいうと七海は寝かけている。

 

「まあ、行ってみないとわからないけど。そうだろう?まあ僕はスリザリンに決まってるよ。僕の家系はみんなそうだったからね……もしハッフルパフにでも入れられてみろ。僕なら退学するな。そうだろう?」

「ウーン」

 

ハリーは情けなくなってきたみたいだ。

 

「ほら、あの男をみてごらん!」

 

男の子が顎で指した窓の向こうにハグリッドが立っていた。僕たちを見てにっこりしながら4本のアイスクリームを指さしている。当然それらを持ったままで店には入れないので僕らを待っている。

 

「彼、ハグリッドだよ」

 

ハリーからちょっとした優越感がうかがえた。

 

「彼、ホグワーツで働いてるんだ」

 

男の子に説明するハリーは嬉しそうだ。

 

「ああ、聞いたことがある。一種の召使いだろう?」

「森の番人だよ」

 

ハリーは本格的に男の子を嫌いになってきたみたいだ。声が少し低くなった。しかし男の子は気付かなかった。

 

「そう、それだ。言うなれば野蛮人だって聞いたよ……学校の領地内のほったて小屋に住んでいて、しょっちゅう酔っぱらって、魔法を使おうとして、自分のベッドに火をつけるんだそうだ」

 

ハリーは完全に嫌いになっている。さっきまで寝かけていた七海もムスッとしている。

 

「彼って最高だと思うよ」

 

冷たく言い放つハリーや忘れてたとばかりに僕と七海を見て、男の子は鼻で笑った。

 

「君たち、両親はどうしたんだい?あんなのと一緒にいるなんてさ」

「死んだよ」

 

ハリーが食い気味に言った。

 

「おや、ごめんなさい」

 

謝罪の念は無い。

 

「でも、君の両親も僕らと同族なんだろう?」

「魔法使いと魔女だよ。そういう意味で聞いているならね」

「君たちは?」

「僕と彼女は兄妹です。両親ともマグルで、仕事の都合で来れませんでした」

 

「マグル」そうぼくが言ったとたん彼の僕と七海を見る目が軽蔑の色に変わった。

 

「ふぅん……じゃあ、手紙を受け取ってさぞうれしかっただろうね。でも、出鼻をくじくようで悪いけど、僕らと君らは同じじゃないんだ。まず育ち方が違う。それにどうせ、手紙をもらうまではホグワーツの名前すら知らなかったんだろう?」

 

僕か七海が答えようとする前にハリーがとうとう怒った。しかし、何か言う前にマダム・マルキンが「さあ、終わりましたよ、坊ちゃん」と言ったためその場は収まった。

 

「ふん、じゃまたホグワーツで会おう」

 

男の子はハリーにむけてだけ言って店を出ていった。

 店を出て、ハグリッドが持ってきたアイスクリームを食べた。七海はもう気にしてないようだったがハリーはしばらく不機嫌だった。

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