超高校級の希望と超高校級のゲーマーの輪廻転生先が魔法界だったら 作:グローサリー部
基本は原作と映画に忠実に書いています。
投稿時間は安定するまで安定しません。
挿絵はパパっと描いた僕の想像をメモしたものです。
「それで、ハグリッド、クディッチって?」
「俺たちのスポーツだ。魔法族のスポーツだよ。マグルの世界で言ったら、そう、サッカーだな――誰もがクディッチの試合に夢中だ。箒に乗って空中でゲームをやる。ボールは4つあって……ルールを説明するのはちと難しいな」
「じゃ、スリザリンとハッフルパフって?」
「学校の寮の名前だ。4つあってな。ハッフルパフには劣等生が多いとみんないっちょるが、しかし……」
「僕きっとハッフルパフだ」ハリーは落ち込んだ。何も知らないからこその不安だった。
「スリザリンよりはハッフルパフのがましだ」ハグリッドの表情が暗くなった。
「悪の道に走った魔法使いや魔女は、みんなスリザリン出身だ。『例のあの人』もそうだ」
「だれ?」
「いけねぇ…ハリー、それにお前さんらにも伝えとかにゃならんことがある」
「それは『例のあの人』と称される人物のことですね」
「ああ、だが、この話は買い物が済んでからのほうがいい。ここじゃ場所も悪いしな」
余裕が足りない。相当、な人物だったのだろう。ハグリッドが口にした「例のあの人」の呼び名を耳にした周りの人たちがおびえていた。
制服の次に教科書を買った。「フリーシュ・アンド・ブロッツ書店」の棚は天井まで本が積み上げられていた。奇妙な見た目の本が数多くあった、前世での僕にとって、読書は不必要なものであった。僕に解けない心理も、哲学もなく、絶世の作家たちが紡いだ完璧に近い詩は、好奇心を抱く間もなくほどけてしまったからだ。本は知識の蓄えとしての機能もあったが、僕ならば自分で実際に試すほうが早い。それゆえの既知であったのだが――あぁ、もし今、この世界の、この店にある本の中から1冊手に取って、そこに書かれている内容を僕は読み解けるだろうか。できたとしても、全て理解できるわけがない。あくまで推測できる程度だ。要するに、「僕にはまだ不可能」1冊々々の本のタイトルは僕にはそうにも見えた。
「嬉しそうだね」
「七海、僕は今、このバックのお金でありったけここの本を買いたい気持ちでいっぱいです」
「む、義母さんと義父さんに怒られるよ。たぶんマクゴナガル先生にも、無駄遣いしないようにって言われたしさ」
「…そうでしたね」
心の中で反省する。僕はこういうところに隙があると、あの絶望に思い知らされたのだったからだ。……ふむ、ハリーとハグリッドはあちらでなにやら話をしている。未成年はマグルの世界で魔法を行使してはいけないらしい。
僕も七海も必要な教科書は買い終えていたがハリーはまだだ。待つ間、ちょっと読んでみようか……と考えたところでハリーが購入し終えてしまった。
薬問屋から出て、ハグリッドがリストを見直した。
「後はお前さんら、杖だけだな……それと、ハリーには誕生日プレゼントを買ってやらにゃあな」
ハリーは恥ずかしそうに顔を赤くした。
「そんなこと、いいのに……」
「しなくていいのはわかっとるさ。そうだ、動物をやろう。ふむ、フクロウを買ってやろう。なんたって役に立つ。郵便とかを運んでくれる」
僕もリストを再確認する。郵便ということは、手紙も送れそうだ。七海もきっと重宝するだろう。イーガン夫妻も動物が好きだから問題ないはずだ。
「ハグリッドさん、お金を預けるので僕や七海のフクロウもみてきてもらえませんか?」
「あ、いいかも。手紙が送れるなら、義母さんや義父さんに心配かけないだろうし」
「ええぞ、まかせとけ!みんないいやつを選んでやろう」
ハグリッドとはそういうことで一旦別行動だ。教えてもらった「オリバンダーの店」に入る。看板には紀元前382年創業の高級杖メーカーとも書かれていた。
扉を開けるとチリンチリンとベルが鳴った。かなり埃っぽい。棚には天井まで何千もの細長く黒色の箱が山を作っていた。明らかに外とは違う空気に、七海もハリーも緊張している。
「いらっしゃいませ」
ハリーは跳び上がった。七海もびくっとした。可動式の梯子をスライドさせて近づいた老人は僕たちの前に降りた。
「いつ会えるやと、楽しみにしておりましたよポッターさん。あなたのご両親に杖を売った日がまるで昨日のようじゃ」
「オリバンダーさんですか?」
「いかにも。それではまずポッターさん。拝見します。杖腕はどちらですかな?」
オリバンダー老人は銀色のメモリが入った巻き尺をポケットから取り出した。
「あ、あの、僕、右利きです」
「腕を伸ばして。そうそう」
老人はハリーの肩から指先、手首から肘、肩から床、膝から脇の下、頭の周り、と寸法を測った。僕にもその意味はさっぱりだ。
オリバンダー老人はまた梯子に乗って、おそらく杖を探しに向かった。
「まずはこれを、ぶなの木にドラゴンの心臓の琴線。23センチ、良質でしなりがよい」
ハリーはその杖を受け取って困惑していた。何をしてよいのか分からないみたいだ。
「ほれ振ってみ!」
ハリーが杖を振ると店の奥の棚がはじけ、杖の箱が勢いよく放り出されてしまった。
「いかん」
オリバンダー老人はまた梯子に乗って杖を探しに向かった。その後何度も杖をとっかえひっかえし、その度に店の備品が壊れてしまった。七海がそろそろ寝てしまいそうだ。ハリーも飽きてきている。そんな僕たちをよそに、また杖を探しに向かったオリバンダー老人はある杖の前で何かに気付いた。
「もしや……」
オリバンダー老人はそれまでよりもさらに慎重にその杖を持ってきた。
「めったにない組み合わせじゃが、柊と不死鳥の羽根、28センチ、良質でしなやか」
ハリーが杖を手に取った。するとハリーを纏うように空気が暖かく変わり、炎が燃え盛るようなメラメラとした光りが輝いているように見えた。
「不思議じゃ!……実に、不思議じゃ」
「あの……なにがそんなに不思議なんですか?」
オリバンダー老人は淡い色の目でハリーをジッと見た。
「わしは自分の売った杖はすべて覚えてる。あなたの杖に使われている不死鳥の羽根と同じ尾羽根を使った兄弟杖がこの世にもう一本だけある……その傷を負わせた杖じゃ」
ハリーは息をのんだ。たしかにハリーの額には特徴的な稲妻型の傷跡がある。今まで特に気にしてなかったが、オリバンダー老人の口ぶりから察するに魔法界ではハリーや「例のあの人」と共に有名らしい。
「さよう。34センチのイチイの木じゃった。不思議なもんじゃ。杖は持ち主を選ぶ。ポッターさん、あなたはきっと偉大なことを成し遂げるだろう……ある意味では、『名前を言ってはいけないあの人』もまた、偉大なことを成し遂げた。恐ろしい!……じゃが、偉大なことだった」
ハリーは身震いしている。彼にとって、オリバンダー老人からはいい印象を受けなかったらしい。いそいそと代金を支払って僕たちの背後にまわった。
「さて、お次はお嬢さん。お名前は?」
寝かけていた七海が目を覚ました。
「…七海です、えっと杖腕?は、たぶん右だと思います」
「ふむ、では腕を伸ばして」
そこからはハリーとほとんど変わらない。七海を主と認める杖探しだ。
「……ではこれはどうか、イトスギの木に
七海が杖を手にしたとたん先のハリーの時と似て空気が暖かに変わった。七海も嬉しそうにしている。
「決まりのようじゃな。その杖がおぬしを選んだようじゃ」
七海も代金を払い、後ろのハリーのところに並んだ。とうとう僕の番が来た。
「……最後に坊やの番じゃの。お名前は?」
「カムクラです。杖腕は右です」
ハリーや七海のように一通り測り終え、オリバンダー老人が杖を探しに向かったところで急に立ち止まった。
「……これは、なんと…これまた不思議じゃ、ポッターさんとはまた違う。こんなことは初めてじゃ…」
「どうかしましたか?」
「杖たちが怯えている」オリバンダー老人は振り返って僕をジッと見た。
「杖というのは、原理はわからんが持ち主を選ぶ。つまり自分の力を余すところなく発揮してくれる最適な人物を常に求めておるのじゃ。じゃが…こんな杖たちは初めて見た。うーむ、恐らくは、カムクラさん、あなたの使い手としての素質がありすぎるのやもしれん」
「それはつまり、僕に合った杖はないということですか?」
「そういうわけではないんじゃ、不安にさせたやもしれぬが、これは言い換えれば…」
オリバンダー老人は言いながら僕の前に1本の杖を差し出した。
「言い換えれば、それほどの素質を持ったあなたにも臆さなかったこの杖こそ、共にふさわしいということになりますじゃ。アカシアの木にドラゴンの心臓の琴線。31センチ。驚くほど振りやすい」
僕はその杖を手に取った。途端に世界が真に変わった感覚がした。これが魔法、そう実感した初めての感覚だった。ハリーや七海も僕と僕の杖のその光景を見て嬉しそうにしている。
「ありがとうございます。オリバンダーさん」
「こちらこそ、今日という日はわしにとって嬉しいことばかりでした」
代金を支払い、店を出た。
僕たちが外に出たときちょうどハグリッドが3羽のフクロウを抱えてきた。約束通り選んできてくれたようだ。僕のブリーダーの才能から見ても、賢く、忠実な性格のフクロウたちだった。
ダイアゴン横丁を後にした僕たちは再び「漏れ鍋」に来た。そこでハグリッドが後回しにしていた話をしたいらしく、僕たちはなるべく周りに人がいないテーブルに座った。
「みんなが僕のことを特別だって思ってる。オリバンダーさんが言ってたんだ。この傷をつけた人は『例のあの人』だったって…そいつなんだね?そいつがパパとママを殺したやつなんだね?…ハグリッド、そいつを知ってるね?」
ハリーの質問攻めは無理もなかった。ハグリッドは少し辛そうだったが答える決心はできたらしい。
「……ああ、ハリー、それにイズルや千秋もだ。ええか?魔法使いには、いい奴もいるが、そういうやつばかりとは限らねえ、悪い奴もいる。昔ある魔法使いが悪の道に堕ちてな、そいつは手当たり次第、魔法使い達を勧誘して断った者は全員殺された。ハリーの両親――リリーとジェームズもそうだ。だが、そんな奴が唯一殺せなかった子がたった1人だけいた。それがハリーお前さんなんだ。だからハリーは魔法界で有名なんだ」
「……そいつの名前はなんていうの?」
「ああ……そいつはなあ、ふう、ええか、言うぞ……」
ハグリッドは見るからに辛そうだった。ハリーも心配そうにしている。
「口に出すのが嫌だったら、紙に書いたら?」
「綴りがわからねえ、言うぞ…ヴォルデモート……」
「ヴォルデモート?」
「シッ、大声で言うな」
「ごめん……で、ハグリッド、そのヴォル……いや、『例のあの人』は今どうなったの?」
「わからねえ。ハリーが生き残った日に、
ハリーはハグリッドの言葉を受けて少しおびえていた。
「みんな心配するこたぁねえ。ホグワーツは魔法界で1番安全なところだ。なによりダンブルドア教授が校長を務めとるからな。たとえ『例のあの人』と言えども、手は出せねえさ」
魔法界についてまだほとんど知らない僕たちにとってはあまり意味のない励ましだったが、ハグリッドの人柄のおかげかハリーはすぐに元気を取り戻した。
「おおっといけねえ、そろそろ汽車が出ちまう時間だ。みんな急ごう」
「ねえハグリッド、僕、ホグワーツでうまくやっていけるかなあ?」
「それも心配するこたぁねえ。ここいらのどんな魔法使いも魔女も、みんながホグワーツで1から学んだんだ。大丈夫。ありのままでええ。そりゃあ大変だろうが、ホグワーツは楽しい。俺も楽しかった。実は今も楽しいよ」
キングズ・クロス駅に着くとハグリッドは切符をどこからか買って来てハリーにそれが入った封筒を手渡した。
「すまんがここからは私用でおくれねえ、だがここに全部書いてあるから大丈夫さ。無くすなよ?みんなの分が入ってるからな」
「……9と4分の3番線?イズルに千秋も見てよ、そんなプラットホーム、あったっけ?」
僕も七海もハリーの持つ封筒を見て首を横に振った。たしかに「9と4分の3番線」と書いてあったが、そんなところは存在しないはずだった。マクゴナガル先生にも聞いていない話だった。
「やっぱりそうだよね、ねえハグリッド……って」
気付けばハグリッドの姿はそこになかった。マクゴナガル先生のおかげで慣れたものだが魔法族はこの芸当が好きなのだろうか。
なにはともあれ、僕たちはハグリッドのうっかり性に最後まで悩まされるみたいだ。
「とりあえず、僕が魔法族らしき人物を探してみます。9番線あたりから10番線までの間を探ってみましょう」
「ありがとう。でも、そんなことできるなんて凄いね」
「いえ。今はとにかく急ぎましょう」
ホームは人の波でごった返していたが、荷物を載せたカートが通るくらいは隙間があった。9番線についた僕は集中してみる。するとこんな言葉が耳に飛び込んできた。
「……まったくここは毎年々々マグルだらけね!」
「マグル」そう確かに言った。
「見つけました。ハリー、七海、ついてきてください」
「おおー、ありがとうカムクラくん。入学式から遅刻なんて目には合わないで済みそうかな」
「……礼は入学式に間に合ってからですよ」
声の主が見えてきた。ふっくらしたおばさんだった。揃いも揃って燃えるような赤毛の4人の男の子に話しかけていた。
「それじゃパーシー、先に行ってね」
すらっとした青年らしい男の子がプラットホームの「9」と「10」の間に向かってカートを押して走り出した。そして、彼が柱に勢いよくぶつかるかと思いきや、スッとすり抜けていなくなってしまった。柱の反対側からも気配は無かった。文字通り
驚愕の光景に僕たちは立ち尽くしてしまった。
……本当に、ここは滅茶苦茶なところですね。
「フレッド次はあなたよ」
「僕フレッドじゃないよ、ジョージだよ」
「わかんないの?それでも僕らのママ?」
「あらごめんなさい、ジョージちゃん」
「冗談だよ、僕がフレッド」
と言って、男の子がまた、走り出した。それに続いて双子のもう片方が逃げるように走り出した。双子は一瞬でいなくなってしまった。
「まったくもう。さ、ロン次はあ……」
「すみません」
ハリーは待ちきれなかったとばかりに、おばさんに声を掛けた。
「あら、こんにちは、坊や。ひょっとして、ホグワーツは初めて?うちのロンもそうなの」
おばさんは最後に残った男の子を指した。背が高く、ハリーに似て痩せていて、ひょろっとした子で、そばかすだらけで、手足が大きく、鼻が高かった。
「はい。でも、あの……僕ら、わからなくて、どうやって……」
「どうやってプラットホームに行くかってことね」
なだめるように優しくおばさんが汲み取ってくれたことで、ハリーもだんだんと落ち着きを取り戻した。
「心配しなくていいのよ。9番線と10番線の間の柱に向かってまっすぐに歩けばいいの。怖かったら小走りで行くといいわ」
おばさんがハリーの背中をポンポンと叩いた。
ハリーは決意したようで、カートを押して走り出した。見事にまっすぐだった。次の瞬間、ハリーもぶつかると思ったら消えていた。
「無事に行けたみたいね。さ、お次はあなたたちよ。頑張って」
「うーん……ちょっと怖いかも」
「七海、先ほどの双子を見いていましたか?」
「うん。どうして?」
「僕が先に走ります。七海はすぐ後ろをついてきてください」
「……うん、それなら平気かも」
僕は合図して走り出した――もうカートは止まらない――どんどん加速していく――ぶつかる!
ぶつかったと思った瞬間、緩やかな空気にゆっくりと運ばれるような感触に包まれて、気づいたら先ほどまでいたのとは違うプラットホームの柱の前に出ていた。
ハリーが少し先で待っていてくれたので向かう。柱の前から僕がどいた後で、七海がスッと柱から現れた。
紅色の蒸気機関車が、乗客でごった返すプラットホームに停車していた。柱の上に『ホグワーツ特急11時発』と書いてある。改札口の鉄のアーチには9と4分の3番線と書いてある。
「どうやら、たどり着けたようですね」
「ハリーとカムクラくんのおかげだよ!2人ともありがとう」
感謝の笑顔を向けられたハリーは顔を赤くしている。
「2人とも行きますよ。もうあまり時間がありません」
人ごみをかき分けながらカートを押す。時間ギリギリだったせいか最後尾の車両でやっと空いてるコンパートメントを見つけた。僕たちは協力してそれぞれ荷物をカートから運び出し、重いトランクも運び終わったところで本日ようやく一息つくことができた。
疲れがたまっていたこともあって、七海は僕の隣の席に座って早々に眠ってしまった。
汽笛が鳴り響き、汽車が滑り出した。窓際の僕と、僕の向かいに座るハリーは窓の外の景色を見た。緑が一面に広がっていた。でも、僕もハリーも本当はそんな景色を見ていない。これから、待ち受けているであろう何か……ただそれだけに、今は見とれていた。
コンパートメントの扉が開いて、1番下の赤毛の男の子が顔をのぞかせてきた。
「ここ、空いてる?もうどこもいっぱいなんだ」
「うん、いいよ」とハリーが答えた。
男の子はハリーの横に腰かけた。チラリとハリーと僕と、七海を見た。
「僕はロン。ロン・ウいィーズリ―」
「僕はカムクライズルです。隣で寝てるこの子は、七海千秋。一応兄妹です」
「僕はハリー。ハリー・ポッター」
ハリーの自己紹介を受けたとたん、ロンの表情が変わった。やはりハリーの名は有名なのだ。
「それじゃあ、ホントなんだね?ホントにその……あるんだね?」
「なにが?」
「……傷跡」
「ああ、ほら」
ハリーが前髪をめくりあげる。特徴的な稲妻型の傷があらわになる。
「すっげー!」
ハリーはどうやら年頃の魔法族にとってヒーローのような印象を持たれているらしかった。それはきっと『例のあの人』が魔法界きっての汚点だったから、魔法界にもきっとある
ロンが来てすぐに車内販売が回ってきた。ロンも僕も買わなかったが、ハリーは大胆にも全て購入した。ハリーの提案でみんなで分けることになった。
魔法界はお菓子も未知にあふれていた。バーティ・ボッツの百味ビーンズだの、ドルーブルの風船ガムだの、
ロンだけがどれも知っていたので、それぞれのお菓子について教えてくれた。ちょっとした講義に思えた。
「バーティ・ボッツの百味ビーンズ?」
「いろんな味があるんだ。チョコにペパーミント、ええっとそれから、臓物味」
僕は青リンゴ味だった。ハリーは……ダメだったようだ。
「ジョージは鼻くそ味に当たったことがあるよ」
「これは何だい?」
ハリーが蛙チョコの包みを取り出した。
「まさか、本物のカエルじゃないよね?」
「まさか、でも気を付けて……」
ロンが注意したとたんに包みを開けたハリーの手元から茶色のカエルが飛び出して、あっという間に窓から外に逃げてしまった。
「あーあ、ついてないね。あいつらすぐ逃げちゃうんだ」
ハリーはあまり気にしていないようだった。その手には1枚のカードが握られていた。
「ダンブルドアだ!」
「僕6枚も持ってる」
ハリーがもう一度カードを見直すとまた驚いた。
「消えちゃった!」
「そりゃ1日中そこにいるわけないだろ?当り前じゃないか」
僕はハリーに頼んでダンブルドアのカードを見せてもらった。
『 アルバス・ダンブルドア
現在ホグワーツ校 校長。近代の魔法使いの中で最も偉大な魔法使いと言われている。特に、1945年、闇の魔法使い、グリンデルバルドを破ったこと、ドラゴンの血液の12種類の利用法の発見、パートナーであるニコラス・フラメルとの錬金術の共同研究などで有名。趣味は、室内楽とマグルのスポーツでボウリング』
ハグリッドの言葉を思い出す。数ある功績だけじゃない。おそらくその人柄も偉大な人物なのだろう。
ガサガサと音がしたので見ると、ロンの膝で大きなネズミがお菓子をあさっていた。ハリーも気づいた。
僕たちの視線に気づいて、ロンはバツが悪そうになった。
「こいつはスキャバース。かっこ悪いだろ?」
「ちょっぴりね」
「…フレッドとジョージにこいつを黄色に変える呪文習った。見たい?」
「本当?」
「お願いします」
ロンが咳払いして、息を整えた。
「お日……」
「ヒキガエルをみなかった?ネビルのカエルがどこかに逃げたの」
ちょうどのところにコンパートメントの戸が開かれて、女の子が入ってきた。女の子は既に制服のローブに着替えていた。
僕たちの代わりにロンが首を横に振った。
「あら、魔法をかけるの?それじゃ、見せてもらうわ」
女の子はコンパートメントに入ってきて寝ている七海の隣に座った。
今度は首を縦に振ったロンは再び咳払いして息を整えた。
「お陽さま、雛菊、溶ろけたバター。このドブネズミを黄色に変えよ!」
ロンが杖を振っても何も起こらなかった。
「その呪文あってる?」女の子が言った。
「私はまだ簡単な魔法しか試したことないけど、すべてうまくいったわ」
今度は女の子が杖を取り出して、ハリーの前に立った。
「例えばこれね…オキュラス・レパロ。眼鏡よ、直れ!」
女の子が唱えたとたんに杖の先から火花が飛び出し、ハリーの眼鏡に飛び移った。するとさっきまで年季の入ったおんぼろなハリーの眼鏡が、なんと新品同様の輝きを取り戻した。
僕もハリーも驚いて眼鏡を見つめていた。ハリーが眼鏡を外したことで顔がよく見えたのか、女の子はハリーの正体に気付いた。
「あら驚いた!あなた、ハリー・ポッターね?私はハーマイオニー。ハーマイオニー・グレンジャー。私、あなたのこと全部知ってるわ。参考書を読んだの。『近代魔法史』『黒魔術の栄枯盛衰』『21世紀の魔法大事件』なんかに出てるわ」
ハリーは困惑していた。ロンも女の子の勢いに圧倒されていた。七海は相変わらず寝ていた。しかたありませんね……。
「あなたは、ヒキガエルを探しに来たんですよね?」
「あっそうだったわ。えっと、あなたは?」
「カムクライズルです。隣に寝てるのは七海千秋で、妹です」
「そう、よろしくね。それと、七海さんは早く起こしてあげたほうがいいわ。そろそろ着くらしいの……それと、あなたは?」
僕やハリーに向けた表情とは打って変わって怪訝そうな表情をロンに向けてハーマイオニーは聞いた。
「あ、僕ロン・ウィーズリ―」
「……そう、よろしく」
ハーマイオニーはそのままコンパートメントの戸を開けまた僕らのほうに振り返った。
「それじゃあ私はネビルの手伝いに戻るけど、さっきも言った通り着替えは急ぐことね。それとあなた、鼻に泥がついてるわよ。知ってた?ここよ」
最後にロンに告げて女の子はどこかに行った。当のロンは不愉快極まりないといった表情だった。