ハリー・ポッターと魔術王の継承者 作:スティグリッツ
昔投稿した作品の手直し版です。以下の注意点にご留意下さい。
※Fate/Grand Orderの第一部終章のネタバレがございます。
※FGOのキャラは数名のみ登場予定ですが、元々ハリー・ポッターの世界にいたという設定です。それに伴い性格の相違がある可能性があります。
※主人公は徐々に微チートと化します。
※基本的には原作展開をなぞっていきますが、独自展開もあります。
苦手な方はブラウザバックを推奨致します。
────悲劇を見た。
善のために世界を支配しようと考えた男がいた。男はその傲慢のために妹を失い、最愛の友人と敵対する道を選んだ。
────悲劇を見た。
親から捨てられ、誰からも愛されることなく育った男がいた。男は誰よりも深い闇に堕ち、狂った信念の下に絶望を世界に振り撒いた。
────悲劇を見た。
ただ友を愛し、夫を愛し、子を愛した女がいた。女は信じた友に裏切られ、子の命乞いを叫びながら虫けらのように殺された。
────悲劇を見た。
己のせいで唯一愛した女性を亡くした男がいた。男は自らの選択を悔やみ、絶望と自戒に苛まれながら虚無の人生を歩んだ。
────悲劇を見た。
生の為に友を売り、死なせてしまった男がいた。男は復讐に怯えて逃げ回り、人としての尊厳すら忘れてしまった。
────悲劇を見た。
信じていた親友に裏切られ、友を亡ない、ありもしない罪を被せられた男がいた。男は誰からも信じられることなく、昏い檻の中に閉じ込められた。
────悲劇を見た。
人には見えないモノが見える女がいた。女はそれ故にその身を
多くの悲しみを見た。数多の涙を見てきた。星の数ほどの悲劇を目の当たりにしてきた。
彼らは同じ過ちを何度も、何度も何度も何度も、数えきれぬほどに繰り返してきた。同じものをつくっては崩す、その繰り返し。何千年経っても全く進歩しようとしない。余りにも愚かな生き物──それがヒトだ。
人間という生命体は疑いようもなく失敗作だ。根本から致命的な欠陥を含んでいる。
私は、いや、『我々』は。それを見過ごすことなどできなかった。この仕打ちに黙って耐えることなどできなかった。
故に、我々は『王』に問うた。
「貴方は何も感じないのですか。この悲劇を正そうとは思わないのですか」
王は笑って答えた。
「特に何も。
他人が悲しもうが己に実害はない。人間とは皆、そのように判断する生き物だ」
─────この男を。許してはならないと、私たちの誰もが感じた。
変えねばならない。終わらせねばならない。正さねばならない。
現在から断ち切るのではない。過去から、一から────否。『無』から全てをやり直さなければならない。
愚かしく、冷酷で、残虐極まるあの王では駄目だ。アレに代わる誰かが、その〝偉業〟を成し遂げねばならない。
「魔術の王でも魔神の王でも無い。人の王こそが、それを成すに相応しい」
────美しくも悍ましい琥珀の双眸が、私を射竦めた。
「ぅ、ぁあああ──────ッ⁉︎」
全身を打ち据える強烈な痛みに、少女は呻くように細い声を上げながら目を開いた。 視界を埋めるのはシックなフローリングだ。
どうやら悪夢に魘されているうちにベッドから転げ落ちてしまったらしい。寝汗でじっとりと重くなった身体を気怠げに起こし、部屋を見渡す。
半ば予想はついていたことだが、自室は惨憺たる有様だった。
ベッドの側に置いた水差しは粉々に砕け、テーブルや椅子はまるで怪物にでも引き裂かれたかのような無残な姿で床に転がっている。姿見や本棚もバラバラに壊れていて、窓ガラスに至っては窓枠ごと巨大な風穴が空いてしまっていている。
まるで部屋全体がミキサーにでもかけられたようだ。あるいは、大型のハリケーンが襲来したかの如き様だ。何にせよ酷く現実離れした痛ましい光景である。
しかし、床に転がった少女はそんな惨劇に顔色一つ変えることもなく、ふらふらと身体を揺らしながら立ち上がる。
大きく深呼吸をし、目を瞑り記憶を辿る。イメージするのは、昨夜電気を消す前の部屋の様子。
すると、奇跡が起こった。
少女の輪郭が薄紅色にぼやけ出したのだ。さらには、粉々に砕けたガラスが、机が、椅子が、姿見が、まるでビデオの巻き戻しのようにあるべきところに収まっていく。
数秒と経ち、彼女が目を開けると、そこにはいつもと変わらぬ面白みのない殺風景な自室が広がっていた。まるで先程までの惨状が夢であったようだ。
少女は乱れた髪を梳きながら水差しに口をつけ、喉を潤す。
こうした出来事は初めてではない。少女────ソニア・スターリングの周りでは、物心ついた頃から摩訶不思議な現象がよく起こった。特に、悪夢────起きる頃にはすっかり内容を忘れてしまっている────を見た日には、決まってこうした破壊現象が発生するのである。
あまりにも非現実的な光景に、最初のうちは恐怖で寝付きが悪かったものだ。とはいえ、何十回何百回と続けば流石に慣れてくるというもの。悪夢による悪心だけは如何ともし難いが。
悪夢と真夏の暑さのダブルコンボでたっぷりと汗をかいたせいか、全身がベタついていて酷く不快だ。今すぐにでもシャワーを浴びたい気分だった。
家具の配置が記憶と寸分違わぬことを確認し、ソニアは覚束ない足取りで部屋を後にした。
ぬるま湯でしっかりと汗を洗い流してサッパリしたソニアは、ジャージ姿でリビングで寛いでいた。
ふかふかのソファに横になり、網戸から入り込む心地いい涼風を受けながらバラエティ番組をボーっと眺める。両親は共働きで家にいないので、ソニアは悠々自適に振る舞うことができた。なんとも怠惰な夏休みの過ごし方だが、同時に何にも勝る至福の贅沢であった。
ガムシロップを大量に投入したアイスコーヒーを飲みつつ無為に時間を浪費していると、不意に空腹を覚えた。視線を巡らせると、時計の短針は既に頂天を過ぎている。
母からは適当に外で食べてくるようにとお小遣いをもらっていたが、この炎天直下に身を晒すのは憚られた。
「⋯⋯パスタでもあるかな?」
ソニアは極度の物臭であった。
冷蔵庫を漁りにキッチンにやってくると、長テーブルには何通か自分宛の封筒が置かれていた。大方、学習塾や教材とかの誘いの手紙だろう。それなりに裕福な家庭の娘であるソニアの元には、定期的にこういった類のものが届くことがあった。
「⋯⋯⋯⋯?」
その束の中で一際目を引く手紙があった。
分厚い手紙だ。しかも時代錯誤な羊皮紙製。何となく手に取って裏返してみると、差し出し人の代わりに特徴的な紋章の封蝋が押されていた。宗教勧誘の手紙と言われても納得してしまう程に奇妙で怪しい手紙だ。
しかし、ソニアはまるで何かに誘われるようにペリペリと小気味のいい音を立てて紫色の蝋を解いていく。
「──────は?」
思わず間の抜けた声を漏らす。というのも、その内容があまりにも馬鹿馬鹿しいものだったのだ。
なぜか無意識のうちに肩に入っていた力が抜けていく。どうやら、ただの悪戯だったようだ。ソニアは興味を失ったように手紙をゴミ箱に投げ捨てると、冷蔵庫の捜索に取り掛かった。冷凍のパスタとソーセージを見つけ出す頃には、手紙の事なんて忘却の彼方に消えてしまっていた。
ソニアがその手紙のことを思い出したのは、それから一週間後のことだった。
日曜日。ソニアは5000ピース超えのジグゾーパズルに悪戦苦闘していた。
度々発生する異常現象のこともあってか、ソニアと親との仲はお世辞にも良好とは言えない。故に、休日は両親に遠慮してこうして部屋に篭っているのだ。下に降りるのは食事の時だけである。
不意に、ノック音が部屋に響いた。ソニアは思わず飛び上がるように肩を跳ねさせた。学習机の上に置かれた時計を見ると時刻はまだ夕食には程遠い。何の用かと内心首を傾げた。
「ソニア、今大丈夫?」
母の声だ。どこか戸惑っているような雰囲気を感じた。
「う、うん。何?」
「貴女にお客様よ。ホグワーツ⋯⋯とか言っていたけど。なんでも、学校の先生らしいわ。知ってる人?」
思わず首を傾げる。どこかで聞き覚えのある単語だったからだ。
しかし、一体どこで聞いた単語だっただろうか。暫く唸りながら記憶を辿っていると、やっとソニアは例の手紙に思い至った。
「あ、そういえば、あの手紙の⋯⋯⋯⋯」
確か、〝ホグワーツ魔法魔術学校〟だったか。あまりにも胡散臭いネーミングだったからか、記憶の端に残っていたらしい。
⋯⋯⋯しかし、どうしたものか。
技術進化著しいこの現代社会において、〝魔法〟だなんてあまりにも馬鹿げている。普通であれば即座にお帰りいただくところだが⋯⋯。
「⋯⋯⋯⋯すぐ行く。ちょっと待ってて」
脳裏に過ったのは、先日の部屋の惨状。
もし。
もしもあれが〝魔法〟なるものに起因するのであれば⋯⋯⋯⋯。
鼻先まで覆う前髪の向こう側で琥珀の瞳を輝かせ、ソニアはドアノブを捻った。
此処とは異なる位相の、虚なる玉座。
全能なる王は、悪辣に頬を歪めた。
見切り発車です。備蓄がありますので、とりあえずそれを吐き出してから反響を見て更新ペースを決めようと思います。
因みにちょっとネタバレですけど、主人公は養子です。マグル育ちですが、マグル生まれではありません。