その時、君に.....   作:ワッタン2906

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どうも、ワッタンです。
こっちも更新です。
徐々に伸びてきて嬉しいです。

それでは、どうぞ!!


第四話 裏切り

「今度ライブあるから来てね」

 

そんなことを言われたのは、リサがバンドを組んだと言われた一週間後だった。

リサからライブのチケットと思わしき紙を受け取る。

 

「ライブするの早くない?」

 

「うーん、それはそうなんだけど、バンドを初めたてでも参加できるライブがあったから、それに参加したんだ」

 

「ふーん、そうなんだ....分かった時間開けとく」

 

という宣言通り、今俺は「CiRCLE」というライブハウスに居る。

会場の中は途轍もない熱気で包まれていた。

このライブイベントは、バンドを初めたてでも出られるとリサから聞いていたので、

そんなに人が来ないと思っていたのだが、予想は外れたようだ。

 

いや、それでも多いんだけど。

 

なぜ、こんなに多いのか。

そんなことを考えていると、俺の耳にある共通の名前が聞こえてきた。

 

孤高の歌姫がバンドを組んだらしい。

 

その名前に聞き覚えはない。

どうやらこの異常な客の集まりは、その孤高の歌姫のものによるらしい。

どんな人物か、歌姫という事ならば女性なのだろうか。

そんなことを考えているうちに照明が落とされた。

 

「....始まる」

 

そう呟いた瞬間、ステージ上のスピーカーから爆音が鳴り響く。

そしてトップバッターのバンドが出てくる。

プロのバンドがでもないのに、会場の雰囲気はすでに出来上がっていた。

出てきたバンドが挨拶を終えたその直後、魂を載せた音が会場へと鳴り響き、

俺たち観客を音の奔流へと飲み込んでいった。

 

──────────────────────

 

『───でした、ありがとうございました!!』

 

最初のバンドから五つのバンドが演奏し終えた。

キグルミ?が居たバンドも居たが、

どのバンドも凄くいい演奏だったと思う。

ステージから次のバンドの準備の為、光が消える。

 

そして次はいよいよ、リサの出番だ。

───Roselia、それがリサのバンド名だ。

 

リサ曰く、リーダーの人がこの名前を決めたそうだ。

薔薇のRoseと、椿のCamellia。

その二つを合わせてRoselia。

 

意味は青薔薇。

花言葉は不可能を成し遂げる。

きっと、そのバンドで不可能を成し遂げたいのだろう。

このバンドのリーダーは。

 

「....なら俺は差しずめ枯れた青薔薇だな」

 

俺は不可能を成し遂げようとして、散った者。

そしてそのまま、この世界からいなくなろうとした。

臆病者。

だけど、心の中では.....。

 

 

そう一人心地していると、ステージ上に明かりが戻る。

どうやら、Roseliaの準備ができたらしい。

いつのまにか落としていた目線をステージ上へ戻す。

そして、舞台袖からリサ達が出てくる---そう思った時だった。

 

 

俺は裏切られた。

 

 

「なん.....で....?」

 

舞台袖から最初に出てきた人。

見覚えのある顔だった。

特徴的な銀髪の髪を揺らしながら、その彼女がステージ上へと向かっていく。

とそんな中周りから聞こえてくる声がある。

 

──遂に、孤高の歌姫が出てきた。

 

それが耳に入ると同時に悟る。

あの彼女が......俺の姉が、リサのバンドのリーダーなのか。

 

 

「――――――”Roselia”です。私達の音楽、聴いてください」

 

 

──────────────────────

 

気がつけば、地下の会場から走って逃げ出していた。

ロビーにたどり着くと、そこは閑散としていた。

それもそうだろう。

今地下では、ライブイベントをやっているのだから。

そして、今そのステージ上で演奏しているのは.....。

 

「っ......」

 

姉が居た。

俺を見捨てた姉が。

そして、そのことを知っている筈のリサが、その隣に居た。

だから、思ってしまった、

 

──裏切られたと。

 

吐き気が込み上げてくる。

それを何とか抑え込む。

自分の中でとても黒い感情が呻うめき回っている。

リサにも裏切られた。結局は友希那だった。

俺なんかじゃ無かった。あの優しさは情けによるものだった。

そんな事しか考えられなくなっていった。

 

「....帰ろう」

 

そう思った矢先だった。

俺の耳に、ある音が聞こえてくる。

 

「これは....ギター? でもこれは...」

 

ギターの音はエレキ特有の音じゃない、アコースティックの音だった。

その音は、スタジオの方から聞こえてくる。

本来の俺だったら、音漏れかなとしか思わないはずだった。

 

だけど、なまじ音楽をやっていた耳が告げていた。

これを演奏している人は、相当ギターを弾いてきた人をということを。

 

「......」

 

その音に釣られるまま、俺は音のする方向へと、

歩いていった。

まるで何かに導かれるように.....。

 

──────────────────────

 

「ほれ、スポドリ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「君、本当に顔色大丈夫か?」

 

「だ、大丈夫です.....」

 

スポドリを受け取り、口へと流し込む。

それだけで、先程考えていた暗い感情は和らいだような気がした。

今、俺のいる場所は、このライブハウスの倉庫みたいな場所だった。

 

さっき響いてた音は、この場所から聞こえていた。

しかも扉全開で。

 

そして、その部屋の中には、このライブハウスの貸し出し品と思われるギターと、

スタッフと思われる人物がその内のひとつでギターを弾いていた。

見たところ、ここのスタッフのようだった。

おそらく年齢も大差ないだろう。

 

そして、この人の演奏はやっぱりレベルが高かった。

音楽を多少かじっていた俺でさえ、感嘆してしまう程の音。

気が付けば、俺はその部屋の中へと入っていた。

 

「で、どうしてここに居るんだ? 」

 

「あ、えっと、ギターの音が聞こえてました」

「うん?......あー、それはごめん。ちょと暑かったから、扉開けたままにしてたよ。実は貸出品のギターの音をチェックしないといけなくてね」

 

スタッフさんが、バツの悪そうな顔を浮かべながらそう呟いた。

とすぐに思い出したように、その人は俺に尋ねてきた。

 

「ところで、君は下のライブイベントに行かなくていいのか?」

 

「っ......!!」

 

その問いに体が少し強ばる。

と同時に、先程の出来事を思い出してしまい、唇をかみしめた。

「あれ? もしかしてそもそもチケットが無かった?」

 

しかし、スタッフさんはそんな俺の微妙な変化に気づくことなく

少しだけ安心する。

こんな負の感情は気づかれたくない。

 

「......いえ、さっきまで居ました。」

 

「さっきまで?」

 

「はい...でも気分悪くなって抜け出しちゃいました」

 

「ああ、だから顔色が悪かったのか」

 

納得したように、スタッフさんが頷く。

そしてそのまま立て掛けていたギターに手を伸ばす。

 

「まあ、この場所は普段使われてないから休んでてもいいよ。多分、ロビーにいるよりこの場所の方が休めるだろうから.....まあ、ギターを弾くからちょっとうるさいかもだけど」

 

「あ、ありがとうございます、大丈夫です」

 

そう言うと、俺はそのままこの部屋で休むことにした。

ギターの奏でる音が、休んでいる俺の子守唄となり、

ゆっくりと俺の意識を沈ませていった。

 

──────────────────────

 

「まさか、閉店時間まで寝てるとは.....」

 

ぼやきつつ、暗くなった帰り道を一人でゆっくりと帰る。

 

ライブのイベントが終わってから、一時間は経過していた。

イベントが終わった時に、あのスタッフさんが俺を起こそうと声をかけたり、体を揺さぶったりしたのだが、

もうそれは俺の眠りが深かったらしく、起きる気配はゼロ。

ということで今に至る。

 

「....あの人の演奏上手だったな、それに....」

 

楽しそうだった。

ギターを弾くのが楽しくてしょうがない、そんな風に見えた。

そしてその感情は以前、自分も持っていた感情。

だけど.....。

いつの間にか、目線は俺の足元を移していた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

先程、あのスタッフさんと二人きりの時は大丈夫だった。

あの人の楽しそうに奏でるギターの音が俺の暗い感情を和らげていた。

 

一人になった瞬間、俺の負の感情が持ち上がってくる。

そうだ、俺はリサに裏切られたんだ。

きっと俺を助けてくれたのも、俺に対して優しさくしてくれたのも、

偽りの愛。

そして俺より友希那を選んだ。

 

俺なんか、俺なんか......

 

「俺なんか.....やっぱり」

 

そう呟いた時だった、

 

 

 

 

「翔也!!」

 

 

ある一人の叫び声が俺の鼓膜を鳴らした。

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