どうも、ワッタンです。
こっちも更新です。
徐々に伸びてきて嬉しいです。
それでは、どうぞ!!
「今度ライブあるから来てね」
そんなことを言われたのは、リサがバンドを組んだと言われた一週間後だった。
リサからライブのチケットと思わしき紙を受け取る。
「ライブするの早くない?」
「うーん、それはそうなんだけど、バンドを初めたてでも参加できるライブがあったから、それに参加したんだ」
「ふーん、そうなんだ....分かった時間開けとく」
という宣言通り、今俺は「CiRCLE」というライブハウスに居る。
会場の中は途轍もない熱気で包まれていた。
このライブイベントは、バンドを初めたてでも出られるとリサから聞いていたので、
そんなに人が来ないと思っていたのだが、予想は外れたようだ。
いや、それでも多いんだけど。
なぜ、こんなに多いのか。
そんなことを考えていると、俺の耳にある共通の名前が聞こえてきた。
孤高の歌姫がバンドを組んだらしい。
その名前に聞き覚えはない。
どうやらこの異常な客の集まりは、その孤高の歌姫のものによるらしい。
どんな人物か、歌姫という事ならば女性なのだろうか。
そんなことを考えているうちに照明が落とされた。
「....始まる」
そう呟いた瞬間、ステージ上のスピーカーから爆音が鳴り響く。
そしてトップバッターのバンドが出てくる。
プロのバンドがでもないのに、会場の雰囲気はすでに出来上がっていた。
出てきたバンドが挨拶を終えたその直後、魂を載せた音が会場へと鳴り響き、
俺たち観客を音の奔流へと飲み込んでいった。
──────────────────────
『───でした、ありがとうございました!!』
最初のバンドから五つのバンドが演奏し終えた。
キグルミ?が居たバンドも居たが、
どのバンドも凄くいい演奏だったと思う。
ステージから次のバンドの準備の為、光が消える。
そして次はいよいよ、リサの出番だ。
───Roselia、それがリサのバンド名だ。
リサ曰く、リーダーの人がこの名前を決めたそうだ。
薔薇のRoseと、椿のCamellia。
その二つを合わせてRoselia。
意味は青薔薇。
花言葉は不可能を成し遂げる。
きっと、そのバンドで不可能を成し遂げたいのだろう。
このバンドのリーダーは。
「....なら俺は差しずめ枯れた青薔薇だな」
俺は不可能を成し遂げようとして、散った者。
そしてそのまま、この世界からいなくなろうとした。
臆病者。
だけど、心の中では.....。
そう一人心地していると、ステージ上に明かりが戻る。
どうやら、Roseliaの準備ができたらしい。
いつのまにか落としていた目線をステージ上へ戻す。
そして、舞台袖からリサ達が出てくる---そう思った時だった。
俺は裏切られた。
「なん.....で....?」
舞台袖から最初に出てきた人。
見覚えのある顔だった。
特徴的な銀髪の髪を揺らしながら、その彼女がステージ上へと向かっていく。
とそんな中周りから聞こえてくる声がある。
──遂に、孤高の歌姫が出てきた。
それが耳に入ると同時に悟る。
あの彼女が......俺の姉が、リサのバンドのリーダーなのか。
「――――――”Roselia”です。私達の音楽、聴いてください」
──────────────────────
気がつけば、地下の会場から走って逃げ出していた。
ロビーにたどり着くと、そこは閑散としていた。
それもそうだろう。
今地下では、ライブイベントをやっているのだから。
そして、今そのステージ上で演奏しているのは.....。
「っ......」
姉が居た。
俺を見捨てた姉が。
そして、そのことを知っている筈のリサが、その隣に居た。
だから、思ってしまった、
──裏切られたと。
吐き気が込み上げてくる。
それを何とか抑え込む。
自分の中でとても黒い感情が呻うめき回っている。
リサにも裏切られた。結局は友希那だった。
俺なんかじゃ無かった。あの優しさは情けによるものだった。
そんな事しか考えられなくなっていった。
「....帰ろう」
そう思った矢先だった。
俺の耳に、ある音が聞こえてくる。
「これは....ギター? でもこれは...」
ギターの音はエレキ特有の音じゃない、アコースティックの音だった。
その音は、スタジオの方から聞こえてくる。
本来の俺だったら、音漏れかなとしか思わないはずだった。
だけど、なまじ音楽をやっていた耳が告げていた。
これを演奏している人は、相当ギターを弾いてきた人をということを。
「......」
その音に釣られるまま、俺は音のする方向へと、
歩いていった。
まるで何かに導かれるように.....。
──────────────────────
「ほれ、スポドリ」
「あ、ありがとうございます」
「君、本当に顔色大丈夫か?」
「だ、大丈夫です.....」
スポドリを受け取り、口へと流し込む。
それだけで、先程考えていた暗い感情は和らいだような気がした。
今、俺のいる場所は、このライブハウスの倉庫みたいな場所だった。
さっき響いてた音は、この場所から聞こえていた。
しかも扉全開で。
そして、その部屋の中には、このライブハウスの貸し出し品と思われるギターと、
スタッフと思われる人物がその内のひとつでギターを弾いていた。
見たところ、ここのスタッフのようだった。
おそらく年齢も大差ないだろう。
そして、この人の演奏はやっぱりレベルが高かった。
音楽を多少かじっていた俺でさえ、感嘆してしまう程の音。
気が付けば、俺はその部屋の中へと入っていた。
「で、どうしてここに居るんだ? 」
「あ、えっと、ギターの音が聞こえてました」
「うん?......あー、それはごめん。ちょと暑かったから、扉開けたままにしてたよ。実は貸出品のギターの音をチェックしないといけなくてね」
スタッフさんが、バツの悪そうな顔を浮かべながらそう呟いた。
とすぐに思い出したように、その人は俺に尋ねてきた。
「ところで、君は下のライブイベントに行かなくていいのか?」
「っ......!!」
その問いに体が少し強ばる。
と同時に、先程の出来事を思い出してしまい、唇をかみしめた。
「あれ? もしかしてそもそもチケットが無かった?」
しかし、スタッフさんはそんな俺の微妙な変化に気づくことなく
少しだけ安心する。
こんな負の感情は気づかれたくない。
「......いえ、さっきまで居ました。」
「さっきまで?」
「はい...でも気分悪くなって抜け出しちゃいました」
「ああ、だから顔色が悪かったのか」
納得したように、スタッフさんが頷く。
そしてそのまま立て掛けていたギターに手を伸ばす。
「まあ、この場所は普段使われてないから休んでてもいいよ。多分、ロビーにいるよりこの場所の方が休めるだろうから.....まあ、ギターを弾くからちょっとうるさいかもだけど」
「あ、ありがとうございます、大丈夫です」
そう言うと、俺はそのままこの部屋で休むことにした。
ギターの奏でる音が、休んでいる俺の子守唄となり、
ゆっくりと俺の意識を沈ませていった。
──────────────────────
「まさか、閉店時間まで寝てるとは.....」
ぼやきつつ、暗くなった帰り道を一人でゆっくりと帰る。
ライブのイベントが終わってから、一時間は経過していた。
イベントが終わった時に、あのスタッフさんが俺を起こそうと声をかけたり、体を揺さぶったりしたのだが、
もうそれは俺の眠りが深かったらしく、起きる気配はゼロ。
ということで今に至る。
「....あの人の演奏上手だったな、それに....」
楽しそうだった。
ギターを弾くのが楽しくてしょうがない、そんな風に見えた。
そしてその感情は以前、自分も持っていた感情。
だけど.....。
いつの間にか、目線は俺の足元を移していた。
先程、あのスタッフさんと二人きりの時は大丈夫だった。
あの人の楽しそうに奏でるギターの音が俺の暗い感情を和らげていた。
一人になった瞬間、俺の負の感情が持ち上がってくる。
そうだ、俺はリサに裏切られたんだ。
きっと俺を助けてくれたのも、俺に対して優しさくしてくれたのも、
偽りの愛。
そして俺より友希那を選んだ。
俺なんか、俺なんか......
「俺なんか.....やっぱり」
そう呟いた時だった、
「翔也!!」
ある一人の叫び声が俺の鼓膜を鳴らした。