その時、君に.....   作:ワッタン2906

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どうも、ワッタンです。
お待たせしました、第五話です。
今回短めですけど、お読みいただけますと幸いです。

それでは、第五話をどうぞ!!


※今週はこの作品だけの更新です。ごめんね。


第五話 Rerise

自分が帰ってきた道を逆走していく。

すでに日は静まり、女の子が一人で出歩くに時間ではない。

だけど必死に足を動かす。

スニーカーの紐が解けても構わずに。

 

(どこ、どこにいるの.....翔也)

 

愛おしい人の名前を思いながら。

 

今日のライブに翔也を呼んだのはある意味賭けだった。

 

翔也を呼んだ理由。

 

それは、翔也にまた音楽に向き合って欲しい、友希那と一緒に......三人で笑いながらセッションがしたい。

その為に、

自分に心がないと思われてでも、翔也を呼びたかった。

もう一度、前を向いて貰いたいが為に。

アタシも再び、友希那の隣を歩け始めたから。

 

──だけど。

そんな考えとは裏腹に、翔也は途中でライブ会場を抜け出すのをステージの上から見えてしまった。

 

その様子を見た時、アタシはライブを放ったらかしてでも、ステージの上から飛び降りて抱き締めに行きたかった。

その男の子にしては華奢な体をアタシで包み込んであげたかった。

でも行けなかった。

それほどまでに、観客席とステージ上の溝は深かった。

 

だから、アタシはライブが終わった時、直ぐに家へと直行した。

翔也に謝る為に、抱きしめる為に。

けど、

 

 

翔也は帰ってなかった。

 

それを母親から聞いた時、

アタシに最悪な考えが脳裏によぎった。

 

また居なくなろうとしてるのではないか。

あの時みたいに......

 

と。

そう考えた瞬間、アタシは荷物を家へと投げて走り出していた。

 

 

いつの間にか暖かいものが頬を流れていた。

だけど、アタシはそれを拭うこともせずにただ走り続ける。

考えていたことはただ一つ。

 

翔也を抱きしめること。

 

だから、あの場所で思わず見つけた時には叫んでしまっていた。

 

────────────────────

 

「リ.....サ?」

 

顔を上げると、そこには肩で息をしている彼女の姿が見えた。

 

──どうしてここに?

 

そう告げようと口を開きかけた、その瞬間。

俺の鼻先にくすぐる大好きな彼女の香り。

そして背中に手が回されていた。

何が起きたのかは直ぐには理解できなかった。

 

だけど、耳もとから聞こえる、「ごめんね」と聞こえる声。

そして、背中に回された手がまるで俺を離さないと言わんばかりに、

力が込まれるのを感じる。

そこでようやく俺は、リサに抱きしめられるということを理解した。

 

何で?とリサに尋ねようとした時、泣きながらリサが口を開いた。

 

「ごめんね、翔也。翔也に、.....翔也にライブに来て欲しいって言って、友希那の事を黙っててゴメンね.....」

 

 

「っ.....」

 

俺の口から声ならぬ声が上がる。

そして、また俺の醜い心が持ち上がる。

それはゆっくりと俺の脳内を支配する。

 

──どうせ、その言葉も嘘ナンダロ?

 

 

「アタシはね....友希那も翔也も同じくらい大好き。だからね、翔也。アタシは.....「....うるせえよ」っ.....!!」

 

言葉に出してしまうともう止められなくなる。

抱きしめられていた腕を無理やり解く。

そんなきれいごとをまくしたてて、ここ数年に対する俺への気持ちはすべて嘘ダッタンダロ?

 

「どうせ、どうせ!! リサは俺の事なんか....俺の事なんかどうでもいいんだろ!!」

 

その言葉を皮切りに、黒い感情があふれ出す。

それは、まるでダムが決壊してしまったかのように。

もう止まれない。

 

「リサは俺より友希那の方が好きだから友希那を選んだんだろ!!」

 

俺の叫び声が辺りに響く。

 

「俺を助けたのだって、友希那が悲しむかもしれないから.....『可哀想だから』とかいうお節介なんだろ。これまで俺が感じてきた数年間の愛は嘘の愛だったんだろ!!」

叫びながら泣いてしまう。

 

 

「俺を....俺を使って友希那と仲良くなって、自分だけ幸せになりたいんだろ!! 」

 

本来なら、それは閉じ込めておく感情。

他人に八つ当たりをするなんてもっての外。

そんな行為を俺は.....愛する人にやってしまっていた。

そんな罪悪感からリサの顔を見れず、視線を落としてしまう。

 

「俺なんか、俺なんかもう生きてる価値なん....「そんな事、言わないで」」

えっ.....?

 

不意に耳元でリサの声が聞こえ、暖かさに包まれる。

そして先ほども嗅いだ、大好きな匂い。

 

「.....なんで、そんな事が出来るんだよ、あんな事を言ったのにさ....」

流石に二度目となれば俺でも、直ぐに状況は把握できる。

俺はまたしても、リサに抱きしめられていた。

あんな事を言ったというのに。

 

「...........だから」

 

「えっ.....?」

 

「翔也の事が大事だから、あの時言ったでしょ? 翔也の事を守るって」

そう呟きながら彼女に背中を撫でられる。

まるで、俺を安心させるかのように。

 

「さっきも言ったけど、アタシは友希那も翔也も同じくらい大好き。 だから二人共に仲良くして欲しいんだ。.....そしていつかは翔也に音楽をまたしてもらいたいの。 だからアタシはまたベースを始めたんだ」

 

リサが言葉を発するたびに、俺の心が少しずつ軽くなるように感じる。

安心、希望、安堵。

そんな感情が俺の体を駆け巡り、俺の黒い心は消えてなくなる。

だからだろう、リサにも言ったことが無かった、俺の本心を呟いてしまったのは。

 

「......怖いんだ」

ぽつりそう呟く。

 

「何が?」

 

「....本当は、姉ちゃんと仲良くしたい」

するりと腕を持ち上げ、リサの首に回す。

 

「でも、姉ちゃん、──友希那が俺の事をどう思ってるのか分からなくて怖いんだ。 また昔みたいに仲良くしたいという感情は....俺だけが感じてて、友希那は俺のことが嫌いで憎いのかもしれないって思うと、怖くなるんだ」

 

あの親には今更自分から歩み寄りたいとは思わない。

だけど友希那だけは、たとえ周りから比べられても、見捨てられても、歩み寄りたい。

だって、たった一人の姉弟なのだから。

 

「出来るよ、翔也なら」

リサから抱きしめられる力が強くなる。

 

「きっと、友希那と仲直りできるよ。アタシが保障するよ」

 

「.....だといいいな」

 

「うん」

そう呟いた後も、俺とリサは暫く抱きしめ合っていた。

 

────────────────────

 

「もうあんな事言っちゃだめだからね!! というかこんなに遅くなるなら連絡して!! 」

 

「ひたい、ひたいって。 りひゃあ、はにゃして」

慰められたと思ったら、リサに頬っぺたをつねられて怒られている。

でも今回の件は、百対ゼロで俺が悪い。

 

「本当に分かってる!?」

 

「はっかてるから、もうひません」

 

「.....なら許してあげる」

 

と言われ、リサが俺のほっぺたから手を離す。

 

「いててリサ、力強すぎるよ」

 

「翔也が悪いんだからね?」

 

「....うん、ゴメン。リサをいっぱい傷つけた、ほんとゴメン」

 

感情をコントロール出来なくて、思ってしまったことをすべてリサにぶつけてしまった。

きっと、リサに幻滅されただろう。

そんな感じでさっきとは別ベクトルで自己嫌悪している時だった。

 

「.....ん」

 

そんな言葉と共に手が差し出された。

 

「えと....これは?」

 

「あー、翔也に傷つけられちゃったからなー、慰めてもらわないとなー」

 

そんな事を言われ、ピンとくる。

リサがどうしてほしいかと。

ちらりとリサの表情をうかがう。

あの表情は、まだかまだかと待っているような期待してる目だ。

そんな光景に微笑む。

 

「....うん、分かった」

俺はその手をしっかりと握る。

 

「リサの手、あったかいね」

 

「翔也の手は冷たいね.....よし、帰ろうか。 お母さんも心配してるだろうし」

 

「うん、そうだな」

そして手をつないだままリサの隣を歩く。

 

 

「ねぇ、リサ」

 

「何?」

 

リサが首を傾げてくる。

 

「俺、音楽に向き合って見るよ、だって....」

あの時スタッフさんのギターを聞いて思った。

辛いこともあったけど、比べられたこともあったけど、

俺はそれ以上に、

 

 

──音楽が好きだからさ。好きなものはやっぱり嫌いになれない。

 

 

その俺の言葉にリサは、陽だまりのような温かさの笑顔を浮かべてくれた。

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