その時、君に.....   作:ワッタン2906

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どうも、ワッタンです。
どうにか週一投稿続けられてます。
だけどその分ほかの作品の更新が滞っているこの状況。
どうにかしたいですね。

それでは第六話をどうぞ!!

ホントは更新したかった...
頑張ったけど、四割しか完成しなかったよ....



第六話 再び手にするとき

リサを起こさないようにベットからそっと抜け出す。

Roseliaのライブが終わった翌日。

 

よほど昨日のライブとその後の出来事で疲れていたようだ、

ぐっすりと眠っている。

 

ベットから抜けだし、寝ている彼女に布団をかけ直し、

彼女の頭を起こさないように撫でる。

そして一言。

 

「行ってくるね、リサ」

 

寝ているリサにそう呟き、ゆっくりと部屋を出た。

善は急げだ。

 

────────────────────

 

商店街の奥。

そこにその店はある。

 

そこは古びた楽器屋。

初めてその店に来たのは小学生の頃。

まだ姉ちゃんと俺を比べられてなかった時、父親に連れられてだ。

初めて来た時は棚に置かれているギターを目を輝かせながら見たものだ。

 

懐かしい記憶に包まれながら、古びた店のドアを開ける。

店のカウンターにいた店員さんが俺に気づき、挨拶を返す。

 

「いらっしゃい.....ってお前、もしかして....湊んとこのガキか? 」

 

ああ、この喋り方変わってない。

最後に来たのは三年前、俺が中学一年の時だった。

 

三年もあれば人は変わるものだが、この人は....

この店の店長は、最後に会った時から変わっていなかった。

 

「お久しぶりです、店長」

 

「あ、ああ、しかっし本当に翔也なのか? 大きくなったな」

 

「ええ、三年振りですから」

 

「そうか、もう三年か....ちょっと待ってな」

 

そう言いながら、レジの外へと出てくる。

俺の記憶が正しければ、今年で還暦だったはずだが、

そんな事を感じさせないほど、体は衰えていないと思う。

 

何をするのだろうか。

そんな事を思っていると、店長は店のドアへと近づき、

ある物を手に取る。

それはドアに掛けられているお店の看板。

 

それをclose側へと店長はひっくり返す。

 

「立ち話もなんだ、中で話そうや」

 

その様子は、

ほんと、こんな大人になってみたい。

そう思わすのに十分だった。

 

────────────────────

 

「ちょっと待ってろ」そう言った店長は、

店の奥にある休憩室に俺を通した後、何処へと行ってしまった。

出されたお茶を飲みながら、数刻ほど待ってると、店長はある物を持ってきた。

それはまさしく俺が今日ここに来た目的のもの。

 

「お前が今日三年振りに来たのはコイツの事だろ?」

 

「はい、そうです」

 

店長が持ってきたもの。

それは黒いギターケース。

店長がギターケースを俺の目の前の机に置き、

自分は机を挟んで、俺と向かい合うように座る。

 

「....開けてもいいですか?」

 

「構わねえ、手入れはしてある....三年間毎日な」

 

ゆっくりとギターケースを開ける。

まず目に入ったのは、真っ白なボディ。

店長の言った通り、しっかりと手入れされていたのだろう。

そのボヂィには塗装落ち一つも見当たらない。

 

ケースからギターをゆっくりと持ち上げ、演奏するようにギターを構える。

三年振りにさわる相棒は、しっかりと手に馴染んだ。

 

「....このギターを売りに来た時はびっくりした」

 

店長がぽつり呟く。

いつの間にか、店長は煙草を吸っていた。

吸ってる時の目は、懐かしいものを見ているように俺は感じた。

 

「動機はどうであれ、自分の半身ともいえるギターを売るってのは、相当辛いはずだ。しかもあの頃のお前は音楽に全てを掛けてた....いや、違うな。()()()()()()()()()()()()()俺は少なくともそう感じたな」

 

 

何も言葉を返せない。

店長は煙草を咥えたまま大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。

吐き出すと同時に、たばこ特有の匂いが休憩室に充満する。

 

店長の言った事は当たっている。

あの時の俺は、ただひたすらに狂っていたと思う。

 

姉と比べれれないように、追いつかせないようにひたすらギターを弾いていた。

来る日も来る日も。

だけど、結局のところ姉には敵わなかった。

全てに絶望した。

だから、あの時の俺は、ギターをもう見たくはなかった。

 

「それで、これは何か訳アリだってな。....湊とお前の歪な関係は聞いてたからな。....だからあの時こう言ったのさ」

 

──ギターはひとまず預かってやる。いつかまた絶対取りに来い。

煙草を灰皿へと押し付けられた。

 

「それにこんな俺でも、元ギタリストだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ってのもあるな」

 

「っ....」

 

その言葉に目頭が熱くなる。

この人は、俺をちゃんと見てくれる。

 

俺は、一度音楽を辞めた人だ。

全てに絶望し、大事な半身を一度は手放した。

周囲から見捨てられ、家族にも、たった一人の姉にも。

最近でこそ、リサに助けられてそんな劣等感は消えていた。

 

だけど、俺の本質は救いようがない男、そんな自分。

けど、そんな俺にもこうして、俺という存在──湊翔也を見てくれる。

リサ以外に、こんな俺に....どうしようもない俺に手を差し伸べてくれている。

それがどうしようにも、嬉しかった。

 

「....ありがとうございます」

その言葉は、頬を伝わる涙と共に吐き出された。

 

「ありがとうございます....ねぇ。 翔也からそんな言葉を聞けるとは。天と地がひっくり返ったんじゃないかねぇ」

 

そんな俺の言葉に、店長は人の良さそうな笑顔を浮かべた。

 

────────────────────

 

「ほんとに、お金いらないんですか?」

 

ギターケースを背負い、お店を出る前に最後の確認をする。

正直、お金は払わないといけないと思う。

三年間も預けっぱなしにして、尚且ついつ取りに来るか分からないギターをメンテナンスし続けてくれたのだから。

 

「当たり前だろ、そこまで俺は鬼じゃねえよ。....まあ、保管料くらいなら請求してもいいかもな」

 

「やっぱり、取るんじゃないですか」

 

「ふっ、冗談だよ」

 

そう言いながら店長は笑う。

やっぱりこの人には、敵わない。

 

「それじゃあ、俺はこれで」

 

「おう、早く感覚を取り戻して、俺に聞かせてくれ。 俺はお前の音が好きなんだ」

 

「....ええ、度肝を抜かせてあげますよ」

 

「ふっ、そういう所アイツにそっくりだよ」

 

「じゃあ、僕はこれで」

 

そう言うと、店を後にするために扉に手を掛ける。

 

「ああ、また来いよ」

 

そんな声が背中から聞こえる。

その言葉に俺は、店長の方へと振り向く。

もう俺は逃げない、そんな決意と共に。

 

「はい、必ず」

 

しっかりと言葉を返すために。

ちなみに、家に帰ったら拗ねたリサが居たのは内緒だ。

朝起きたら俺が居なくて、またあの時みたいに居なくなったのかと思ったらしい。

なのでこの後、ギターを弾けず、ひたすらにリサの機嫌を取ることとなった。

 

────────────────────

 

「ったく、一丁前に格好つけやがって」

 

湊んとこのガキの背中を見ながら一人心地つく。

三年前、あいつは見るに堪えない表情をしていた。

出会った時は、ギターを見る目はキラキラしていた。

だけど、それが日に日にやつれていった。

 

そんな状況を打破しようと、湊に話をつけにいったが、アイツは俺の話に聞く耳を持たなかった。

長いこと生きていたが、あの時は久々に恐怖した。

実の息子をあんな目で見ることが出来るのかと。

 

「....まあでも、仕方ないことなのかもしれないな」

 

アイツも音楽に裏切られたから。

その点に関しては、悪いかもしれないが、似た者同士な親子と思ってしまう。

アイツらの関係がああなってしまったのはもう止められない。

だから、周りの人達が出来ることは、

 

 

翔也をアイツと同じと道に歩ませないように導く。

それが俺に出来る、唯一の罪滅ぼしだ。

 

「っと、もうこんな時間か。そろそろ行かねーとな....ほんと一週間に一回調律をしに行かないといけないとはね....誰がそんなに駅前のピアノで弾いてるんだか.....」

 

そんな一人事を呟いた。

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