まばゆい陽光射し込む宇宙へ   作:ryanzi

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プロローグ:ある魔法少女の最期

とある魔法少女に最期が訪れようとしていた。

だが、彼女はまるで恐れを抱いていなかった。

ソウルジェムは極限まで濁り、体はまったくと言っていいほど動かない。

青い空の草原の下で、彼女は仰向けになっていた。

 

「君もやっぱり魔女になるんだね」

 

少女の敬愛する存在がそう言うと、彼女は笑った。

 

「インキュベーター・・・そうじゃないと意味がないじゃない。

宇宙を救うために、私は魔法少女になったんだよ?」

 

これから訪れる運命を少女は完全に受け入れていた。

少女は愛したことも愛されたこともなかった。

そんな彼女に手を差し伸べてくれたのがインキュベーターだった。

彼の語る思想、彼の瞳・・・彼女はそういったものに惹かれた。

少女は自らの運命を宇宙に対する高邁なる献身と捉えていた。

 

「それにしても、いつまでたっても魔女になれないね。早くなりたいんだけど」

 

濁りきったソウルジェムは未だに魔女化を引き起こさなかった。

 

「そりゃ君は特異例だからね。魔女になるのが遅くても不思議じゃない。

ボクたちの活動に賛同の意を示した魔法少女なんて今までいなかったし」

 

「ははは・・・結局は自分だけが大切なんだよ。

口では皆を救うとか言っておきながら、いざその時がくれば、

死にたくないだの騙されただの・・・ははは!」

 

しばらく彼女は笑っていたが、急にそれを止めた。

 

「・・・ねえ、インキュベーター。

この前、魔女にしようとした奴からこう言われたんだ。

宇宙の終わりなんて数百億年先なのに、どうして延命する必要があるんだって。

悔しいことに、私、それに答えられなかったんだ・・・。

本当に今さらだけどさ、どうしてあなたはそこまで宇宙の延命にこだわるの?」

 

インキュベーターはしばし黙っていた。

だが、ゆっくりと話し始めた。

 

「・・・終わりなき日を生きる種族にとって、遥か未来の問題は明日の問題なんだよ。

それが千年先だろうと、一万年先だろうと、数千億年先だろうと、変わらないんだ。

ボクたちはいずれそれに対処しなくちゃいけないんだよ」

 

「・・・別の質問をしていい?」

 

「いいよ、時間はたっぷりとあるから」

 

「また別の奴に聞かれたんだけど、この方法以外に宇宙は延命させられなかったのかって」

 

「ないことはないけど・・・それは封じられてしまったも同然だ」

 

「封じられた?誰かに禁止されたの?」

 

「禁止されたんじゃなくて、誰もが封じたんだよ」

 

キュゥべえは少女にもわかりやすいように説明を始めた。

 

「この宇宙以外にも、たくさんの宇宙があるんだ。

それは平行宇宙というものじゃなくて、実体としての宇宙なんだよ。

うーん・・・海の上に浮かぶ諸島をイメージしてくれるかな。

島の一つ一つが宇宙だと思ってくれればいい。

平行宇宙というのは別の歴史を辿った諸島って言う感じだね」

 

「わからなくもないけど・・・それがどうしたの?」

 

「本来なら、宇宙と宇宙の重力の相互作用が外部エネルギーになるはずなんだ。

その理論に従えば、どの宇宙も永遠に存続することが可能になる」

 

「じゃあ、そっちも使えばいいのに・・・」

 

”そっちも”と言うことから、彼女が魔女化システムに疑問を持ってないことがうかがえる。

 

「封じたんだよ。他の宇宙に重力が作用しないようにしたんだ。

正確に言えば、どの宇宙の文明も宇宙全体に防御フィールドを展開したんだ」

 

「・・・どうして?」

 

「そうだね・・・ちょっと長い話になるけどいいかい?」

 

「大丈夫。途中で魔女になっちゃっても聞いてあげるから」

 

「それじゃあ、まずは前提条件から話すとしようか。

君は社会学については知っているよね?」

 

「・・・どこの馬の骨かもわからない奴らの戯言のこと?」

 

「ボクが話すのは戯言じゃないほうさ。

まあ、今から話す宇宙社会学を世間に広めたのはそんな男だったらしいけど」

 

「宇宙社会学?」

 

「そう、宇宙文明の集合体たる宇宙社会を研究する学問さ。

そして、その宇宙社会学は二つの公理から成立しているんだ。

公理その一、生存は、文明の第一欲求である」

 

「インキュベーターもそうだもんね」

 

「公理その二、文明はたえず成長し拡張するが、宇宙における物質の総量は常に一定である。

・・・今から話す物語を理解するには、この二つを知っておく必要がある」

 

青い草原に夕日が射し込もうとしていた。

 

「・・・遠い昔、誰かが夕日を見て言った。これは人類の落日と。

そして、その二百年後に社会学者が言った。あしたも太陽が昇ってくると」

 

「突然、何を言い出すんだい?インキュベーター」

 

「これは遥か遠い昔の出来事だ。

この宇宙が始まる前の宇宙の物語だ。

・・・君はかなり驚くと思うよ」

 

「十分驚いているよ。早く話してよ」

 

長い長い物語を語り終えたときには、すでに朝日が昇っていた。

全てを知った魔法少女は、静かに目を閉じて、魔女化を受け入れた。

これが針の魔女の誕生だった。

 

「・・・この話をしたのは君が最初だ。でも、どうしてだろうね?

なんだか、またこの話を別の誰かにすることになる気がするんだ」

 

そして、去り際にインキュベーターは言った。

 

「そうそう、君くらいの因果じゃ宇宙の延命には足りないよ。

まあ、君のことだからそれでも気にせずに身を捧げただろうね。

わけがわからないよ・・・君たち地球文明はいつもそうだった」







2021年5月26日以降から本格的に連載を始めるつもりです。

三体好きかい?

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