まばゆい陽光射し込む宇宙へ   作:ryanzi

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暗い宇宙

暖色系の光に照らされた臨海公園は玄谷の心を癒してくれた。

公園は深夜でも人が訪れるらしいが、達志によると護衛が人払いをしてくれたらしい。

だから、こうして二人でゆっくりと散策することができた。

今は宇宙社会学のことなど頭からすっかり追い出されてしまっていた。

こうしていると、宇宙の真理なんて大したことじゃないような気がする。

 

「やっぱり外に出て良かったろ?」

 

「ええ、そうですね」

 

だが、すぐに宇宙社会学に思考は引き戻された。

砂浜の方にいくと、少し明かりが弱まって、星空が綺麗に見えたからだ。

玄谷は自分と同じように星空を見上げている異星人を思い浮かべた。

人間と同じ見た目なのか?人類に幼年期の終わりを告げた種族と同じ見た目なのか?

どんな種族であろうと、星空を見上げて、何かに思いを馳せることだろう。

こんな綺麗な星空に、あの方やみふゆはどんな暗い真実を見出したというのか?

星といえば、里見灯花のことを思い出した。

彼女は病弱だったが、宇宙に関する知識は人一倍あった。

いや、人一倍というレベルでない。その分野の第一人者と話せるレベルだ。

そういえば、彼女は宇宙社会学を知っているだろうか?

神浜市に来たばかりのころに、彼女の父親に話したことはある。

智子が発案したということは着目していたが、それでもサブカルの域を出ないと言っていた。

もし彼が灯花に話していたら、賢明な彼女はすぐに宇宙の真理とやらに辿り着いただろう。

いつの間にか達志は裸足になって、足を波につけていた。

玄谷もそれに習って、靴と靴下をできるだけ安全な場所において、裸足になった。

海水のひんやりとした心地よさが実に素晴らしかった。

夜風と海水のもたらす冷たさが、ますます玄谷の思考を冴えわたらせた。

彼の頭上の星は、ますます純化されて独立していくようだった。

すぐ近くにあるように見えて、実際は生きているうちには手が届きそうにないものだ。

そして、その手の届かない光の一つ一つの周りを惑星が回っている。

その惑星のいくつかには生命が宿り、さらには進化した生命が文明を築くだろう。

文明は地球と似た、または少し違った歴史を辿っていくかもしれない。

でも、いつか直近の天体、たとえば地球でいえば月のような衛星に着陸するだろう。

そして、彼らはこう考える。宇宙というのはなんて広大すぎるんだ!

こうして地球と同じように宇宙開発は長い停滞期に入るのかもしれない。

1光年を越えるのにも、多大な努力と年月を代償にする必要がある。

こうした思考が数十秒間展開されたことで、玄谷はあることに気が付いた。

 

宇宙文明も、魔法少女も、孤独だ。

 

宇宙文明は他の宇宙文明に会えるかどうかは、まさに天文学的確率だ。

魔法少女は契約した途端に、新しい世界に孤独に生きることになる。

このことが、思考を新たな段階に導いた。

文明は他の文明と会った時、本当に平和的な交流を始めるのか?

 

生存は文明の第一欲求である。

 

いや、それは第一公理に反している。相手は敵意を持っているかもしれない。

ならば、沈黙すべきか。否、こちらが見つけた以上、相手もこちらを見つける。

では、相手が弱い文明だった場合、放っておくべきか?

 

技術爆発

 

駄目だ。数千年放っておくだけで、相手は神のごとき文明に成長しているだろう。

地球の歴史は45億年。そして人類はこれまでにおよそ25万年もの歴史を歩んできた。

さらに特筆すべきはその末端の4000年で、さらにその末端の200年で技術は爆発的に進歩した。

200年など、宇宙的に見ればあっという間だ。まさに爆発といったほうがよい。

しかし、金持ち喧嘩せず、という言葉がある。文明もそうはできないのだろうか?

 

文明はたえず成長し拡張するが、宇宙における物質量の総量は常に一定である。

 

いいや、それも駄目だ。宇宙は大きいが、生命はもっと大きい!

数百万年のうちに、もしかすると人類は銀河系全体に広がるかもしれない。

そうでなくても、他の文明も同じように広がっていくだろう。

その時、資源はどうなる?答えは簡単、不足する!

だが、こちらも争う気はないし、相手も争う気は・・・まて、どうしてわかる?

玄谷は思考を進めるうちに、大きな波を浴びて、倒れたのにも気付かなかった。

しかも、少し深いところまで流されてしまった。だが、それが思考を促進した。

彼は真の暗闇を体験した。それは、宇宙の暗闇だった。

 

猜疑連鎖

 

相手がこちらをどう考えているかわからない。相手もこちらがどう考えているかわからない。

さらにこちらは相手がその状況をどう考えているかわからず、相手も・・・。

これは地球では決して発生しない。なぜなら、地球は光年に隔てられていないからだ。

だが、宇宙は隔てられている。コミュニケートは基本的に何かない限り不可能だ。

そもそも、コミュニケートは生存の危機だし、沈黙も同じだ。

文明が民主主義であろうと全体主義であろうと、生存は第一欲求だ。

ならば、どうする?どうすればいい?どうすれば生き残れる。

コミュニケートも沈黙も、役に立たない。

 

だったら、方法は一つじゃないか。

 

魔法少女はお互いがお互いを認知してから攻撃に入る。

しかし、宇宙文明ではそれは自殺行為に等しい。

だから、決して相互攻撃にはならない。先制攻撃だ。

玄谷は沈黙したまま、砂浜に這い上がった。もはや星空は見上げていなかった。

もう見上げる勇気もなかった。玄谷もまた星空恐怖症に罹患した。

だが、持ち前の楽天性からか、彼のそれは非常に軽度だった。

それでも達志は玄谷が何か変わったことに気付き、そして察した。

彼はついに宇宙の真理に辿り着いたのだ。

 

「達志先輩、院長に連絡してください。宇宙に詳しい子が必要です」

 

「お、おーけい・・・大丈夫か?」

 

「ああ、僕は大丈夫ですよ。それより、早く戻らないと」

 

そして、視界にある文字が表示された。

 

KIC8462852 これがインキュベーターの母星の座標

 

そういえば、院長も視界に智子からのメッセージが表示されたと言っていた。

色々と詳しい白羽根の何人かから聞いたが、キュゥべえは異星文明の端末らしい。

そして、本当の名前はインキュベーターであるとも。

智子と玄谷は相手の座標を知っているし、インキュベーターも地球の座標を知っている。

理由はわからないが、インキュベーターは地球を攻撃しない。

この宇宙の暗さにまさか気付いていないのか?だが、それは好都合だ。

彼らの生存権は、今まさに玄谷が握っているのだから。

・・・彼は知らないが、水滴インキュベーターもまたこの様子を確認していた。

三体好きかい?

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