まばゆい陽光射し込む宇宙へ   作:ryanzi

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夜は明けた

気象の変化そのものは観測されていた。

そのため、突如出された避難勧告に誰も違和感を抱かなかった。

だが、その避難勧告は智子の手引きによるものだった。

 

「・・・智子さんってやっぱすげえな」

 

「その気になれば総理大臣も動かせるんじゃないかって、

僕のおじいちゃんは言っていましたね。まあ、さすがにありえないでしょうけど」

 

玄谷と達志は臨海公園内の東屋から海を眺めていた。

ここは決戦を見届けるのに、一番いい場所だった。

少し高い場所にある東屋からは、集まっている魔法少女の様子も確認できた。

衣美里が東屋にいる玄谷に気づいて、手を振ってくれた。

他の魔法少女たちも玄谷に気づいたが、その表情には不安と不信が入り混じっていた。

魔女化が起こらなくなったことも驚愕に値した(魔女化を知らなかった者は魔女化自体が)。

だが、一番彼女たちを驚かせたのはこの世界がいつの間にかチップなっていたことだった。

玄谷はインキュベーター文明と宇宙という名のポーカーテーブルで対峙していた。

このことが、どうしても魔法少女たちに不信感を与える結果となってしまった。

誰の許可も取ることなく、この世界を危機に曝したというのだから。

なんて無責任なんだ、と一部の魔法少女は憤りすら感じているかもしれない。

・・・ななかと遊佐葉月のチームはそこまで気にしてもいなかったようだが。

彼女たちは、もうすぐ姿を現すワルプルギス戦について話し合っていた。

そして、事前に謝罪をもらっていた衣美里も玄谷の勝手な行動を咎めることはなかった。

 

「すっごいじゃん!トトロってすっごくかっこいいギャンブラーじゃん!」

 

むしろ、意外と好反応であった。

それでも、玄谷は心のどこかで自分を責めていた。

優しいだけで、責任感がない。みふゆの言っていることは正しかった。

いや、それどころか、あのギャンブル行為には優しさすらなかった。

優しさも、責任感も、ない。それが自分だ。

 

「達志さん、玄谷さん!この人があなたたちに会いたいって!」

 

東屋に桜色の髪をいくつも束ねた少女、環ういが近づいてきた。

彼女こそが、つい先程までエンブリオ・イブであった魔法少女だ。

智子曰く、彼女はキュゥべえに封印され、因果が途切れた状態だったという。

唯一、それを認識していた彼女は小さなキュゥべえをイブに投げ込むことを提案した。

なぜか智子だけが知っていたのも驚きだった。

だが、今、玄谷を驚かせたのは彼女に腕を引っ張られている男性だ。

 

「兄さん?兄さんじゃないか!」

 

兄だ。海上自衛隊に入隊した星ノ森海斗だ!

 

「えっ、あの海上自衛隊の制服着てるのお前の兄貴なの?」

 

「ええ、そうですよ。優秀だから、あっという間に佐官になってるんです!」

 

玄谷も彼らのもとに駆け付けた。

 

「兄さん、久しぶり!」

 

海斗は玄谷に向かって微笑んだ。

 

「久しぶり、玄谷。ずいぶんと面構えが変わったな」

 

「ええ、色々とあったもので」

 

「ぼかさなくても知ってるさ。智子さんから聞いた。

すまんな、来るのが遅くなってしまって」

 

「兄さんは悪くありませんよ。悪いのはとも・・・」

 

その時、さらにもう一人の女性が、その場に現れた。

ふわっとした梅の花の匂いが東屋の周囲に漂う。

玄谷は即座に口をつぐんだ。

腰に刀を差しているこの和装の女性こそが智子だったからだ。

 

「・・・誰も悪くありませんね、ええ」

 

「いえ、私も悪いですよ。何しろ、根回しが必要だったので。

しかし、それも済みました。今日から、人類にとって新しい日々の始まりです。

そろそろ時間が迫っています。海斗、作戦本部に戻りなさい。

ういさん、私にしっかり掴まってください」

 

智子はういを抱きかかえて走り出して、跳び上がった。

そして、すらりと魔法少女たちのいるところに飛び降りた。

 

「相変わらず人間やめてるな、智子さんは・・・。

さて、俺は作戦本部に戻らなくてはならん」

 

「作戦本部って何ですか?」

 

「・・・まさか、そこだけ聞かされてないのか?」

 

「ええ、智子さんはとっておきの仲間を連れてくると言っただけで・・・」

 

「俺たちがそのとっておきの仲間らしい。

まあ、楽しみに見ていてくれ。きっと驚くぞ」

 

彼は微笑みを浮かべながら、そのまま去っていった。

 

「・・・なあ、玄谷。とんでもないことになってないか?」

 

「ええ、もしかすると、智子さんは本気で決戦を挑もうとしているのかもしれません」

 

「本気にも程がありすぎるだろ・・・自衛隊まで動員かよ」

 

一気に空色が変わった。始まりつつあるのだ。

地球文明の行く末を決める戦いを見届ける。それが玄谷の最後の使命だ。

そのとき、達志が口を開いた。

 

「・・・なあ、もしものために聞いておきたいんだ」

 

「そのもしもは起こってほしくないんですけどね」

 

「まあいいじゃないか。冥土の土産くらいくれたって。

もう何が何だかわからんが、低次元なんとかってのはいったい何なんだ?」

 

「低次元智子(ソフォン)式浄化システムですね。

聞いて驚かないでください・・・僕にもわかりませんよ

 

「まあ、そう言うだろうと思ってたさ。

俺と同じ一般人のお前が、こんなことできるわけがないもんな」

 

達志は空を指差した。

現在、地球は智子(ソフォン)の膜に包まれている。

この膜の下では、ソウルジェムの穢れは自動的にエネルギーに昇華される。

玄谷も達志と同じように空を指差した。

 

「僕は文系なので詳しいことはわかりません。頭も痛くなりますし。

ただ、智子(ソフォン)というのは陽子一個分のコンピューターらしいです。

そのコンピューターは普段は十一次元状態らしいのですが、

低次元展開すれば、地球くらいは余裕で膜で包むことができるそうです」

 

「へえ、わからん。わかりたくもない」

 

「智子さん曰く、地球を低次元膜で包むことにより、

あることが可能になったそうなんです。僕も理解できませんが」

 

「何が可能になったって?」

 

「それは、この地球自体を一個の智子(ソフォン)にすることらしいです。

それで、地球上の全てのソウルジェムに同時に干渉が可能になったそうなんです。

低次元展開された智子(ソフォン)にとっては、内部の物体なので余裕だと。意味がわからないでしょう?」

 

「ああ、まったくだ」

 

達志は煙草を一本取り出して、吸い始めた。

 

「それで、どうして智子さんはそれをもっと早くやらなかったんだ?

これを最初からやってりゃ、アイツは苦しまずに済んだんだぞ?」

 

今度は魔法少女たちを指差した。

正確に言えば、その中の一人であるやちよを。

まったくもって、彼の言う通りだった。

智子がもっと早く、この浄化システムを展開すれば、

魔法少女システムの犠牲者はもっと減らせたはずなのである。

 

「僕も智子さんに聞きましたよ。

今までの犠牲者が報われないじゃないかって。

ですが、彼女は待っていたそうなんです。

全てのピースが揃うのを」

 

「ようやく揃ったってか。けっ、遅すぎるぜ。

今までの犠牲は何だったってんだ」

 

「・・・」

 

玄谷は智子を擁護したかった。でも、何も言葉が出ない。

達志の言うことはまったくもって、正論だ。

智子曰く、インキュベーターは人類史の最初から介入していたという。

もし、彼女がそのころからいたのなら、その時展開すべきだったのだ。

それなのに、彼女はそれをしなかった。むしろ、放置していた。

そして、今頃、浄化システムを全世界に展開したのだ。

おそらく、何か考えがあってのことだろうが・・・それは教えてくれなかった。

達志と同じように、他の魔法少女たちもそう思ってるだろう。

事実、数人ぐらいは不信に満ちた目で智子のことを見つめていた。

 

「・・・でも、これでようやく終わりですよ。

これが終わりさえすれば、僕はようやく学生に戻れる」

 

「おいおい、フラグ立てんなって」

 

その時、雷鳴が轟く。海はさらに荒れる。

そして、海上に巨大な物体が現われた。

あれこそがワルプルギスの夜に違いない。

二人の視界の右下に、以下の文字が表示された。

 

あなたたちにも魔女が見えるようにしてあげたわ

 

その姿は、二人に原始的な恐怖を与えた。

顔の上半分がなく、残された下半分からは角が生えているようだ。

そして、白い縁取りの青いドレスを纏った姿はまさに魔女に相応しかった。

 

「・・・勝てるか不安になりましたね」

 

「信じろって・・・といわれても無理だよな。俺だったらお手上げだ」

 

ワルプルギスの夜はゆっくりと陸に近づいてきた。

そして、智子は何かのタイミングを見計らったかのように号令を出した。

 

「魔法少女の皆さん、攻撃を開始してください!

現在、浄化システム下において、あなた方は十分な力を発揮できます!」

 

何百発もの色とりどりに輝く弾丸がワルプルギスに命中した。

最初は何のかすり傷も与えられていなかった。だが、何人かの魔法少女が固有能力を使用した。

それにより、ワルプルギスに着実にダメージが与えられていった。

さらに多くの魔法少女が固有能力を用い、戦いを有利に進めた。

最初、この世の全てをあざ笑うかのような声を出していたワルプルギスも、

だんだんと悲鳴に近い叫び声を上げるようになっていった。

 

「攻撃をいったん中止してください!今度は彼の番です!

念のために、何らかの防御魔法を展開することを忘れないで」

 

魔法少女たちは言われたとおりにしたが、理解はしていなかった。

彼の番?いったい、彼とは何なのだ?

玄谷は彼女の意図は知っていたが、口にしなかった。

はるか上空にあったそれの存在に気づいたのは、達志だった。

 

「お、おい・・・あの水滴っぽいのは何だよ?」

 

それはまさに地上に滴り落ちる水滴のようだった。

だが、次の瞬間、それは滴り落ちるなんてレベルではないスピードで落下した。

そう、ワルプルギスに向かってである。

 

「あ、あのたぬきちもどき、まさかやりやがるつもりですか⁉」

 

「あれがあなたの言ってた水滴型キュゥべえですのね。

まさか、惚れた少女のために馳せ参じてくるとは・・・漢ですわね」

 

玄谷も智子から水滴インキュベーターが来ることを聞かされていた。

彼女曰く、水滴インキュベーターは絶対に自主的に来るとのことだった。

先程の魔法少女の攻撃は、ワルプルギスの注意をこちらに逸らすためでもあったのだ。

 

「あの水滴、特攻する気か⁉」

 

達志がそう叫ぶ。確かにそう見えるだろう。

だが、それは決して特攻なんかではなかった。

水滴インキュベーターの体は強い相互作用で構成されていた。

中性子星のように、ほぼ絶対的な滑らかさがあるのだ。

そんな水滴インキュベーターは、地球上のあらゆる物体よりも硬かった。

その気になれば、地球を貫くことくらいは簡単であった。

そして、ワルプルギスの夜は岩盤よりかは硬くなかった。

水滴インキュベーターの尾に青い光輪が出現した。

光は水滴を包み込み、やがて光の輪は急激に大きくなる。

その光輪が赤くなって消えるたびに、加速度は上がっていった。

なお、第一の光輪の温度は太陽コアの温度にも匹敵した。

そして、水滴インキュベーターはそのままワルプルギスを貫通した。

水滴インキュベーターは海に着水し、その波しぶきは東屋にも降り注いだ。

なお、これは余談だが、もし玄谷が交渉に失敗していた場合、

水滴インキュベーターは今の攻撃をホテルフェントホープに実行するつもりであった。

恋は盲目というが、まったくその通りである。

こうしている間にも、ワルプルギスは呻き声を上げていた。

 

「よしよし、後はまたアイツらに攻撃させりゃ・・・」

 

「いえ、それはいけません。終止符を打つのは地球文明でなければなりません」

 

いつの間にか、智子が東屋に戻っていた。

 

「おいおい、智子さんよ?そりゃどういうことだ?」

 

「この状況は既に映像としてインキュベーター文明にも転送しています。

彼らの地球文明に対する見方を変えるには、地球の底力を見せる必要があるのです。

回りくどいかもしれませんが、最後の攻撃は地球文明が担当します」

 

魔法少女も水滴インキュベーターも、インキュベーター文明の産物だ。

 

「そうは言ってもよお、地球人にあれが倒せるとでも?」

 

「ええ、倒せますよ。地球は既にその段階にあります。

あなた方にアレが見えているように、彼らにも見えるようにしました。

攻撃対象さえ見えれば、後は余裕でしょう」

 

その時、巨大な音が轟いた。

音速で戦闘機がワルプルギスに向かっているのだ。

実に奇妙な編隊であった。記号であらわすと、以下のようになるだろう。

 

 

 ●    ●

 

 ●    ●

 

 ●    ●

 

 ●    ●

 

 

黒い丸は戦闘機であるが、実際には左右の間隔がかなり空いていた。

まるで、その間に何か大事なものがあるかのようであった。

そのまま八機の戦闘機はワルプルギスの夜の横を通り過ぎて行った。

ワルプルギスはそれすら対処できないほど、ダメージを負っていた。

・・・最初、何も起こらなかったかのように思えた。

だが、呻き声はすぐに笑い声に変わった。

だが、それは最初の不快な笑い声ではなかった。

まるで、永遠に続くと思われた苦しみから解放されたかのような歓喜であった。

すると、徐々にワルプルギスの体がずれ始めていた。

最初は錯覚かと思ったが、実際にずれつつあるのだ。

まるで、何かに切断されたかのように・・・。

 

「・・・ワイヤートリックの応用か!

戦闘機と戦闘機の間に、ピアノ線みたいなのがあったのか!」

 

達志がそう叫ぶと、智子も頷いた。

 

「ええ、あれは地球各国で研究されていた飛刃(フライング・ブレード)というものです。

もっと専門的な言葉で言うのであれば、ナノ・マテリアルです。

さすがに水滴インキュベーターには硬度で負けますが、それでも硬い物質でしょうね」

 

「そうか・・・ん?なんかさっきの、航空自衛隊だけじゃなかったような気がするんだが?

なんかアメリカとか中国とかの戦闘機もあった気が・・・」

 

「地球文明が担当するって言ったでしょ?」

 

達志は腰が抜けたようにへたり込んだ。

この女性の影響力は日本だけじゃない。

全世界に、影響力を持っていたのだ。

数百年も生きていれば、これくらいは余裕だろう。

彼女が姿を消す度に、世界のどこかで重要な会議が行われるのだから。

 

「アンタ・・・本当に何者なんだよ?」

 

「それはまだしばらく秘密よ。それより、夜明けを楽しみましょう」

 

そう、夜明けが来ていた。

本当の時刻はまだ真昼間なのだが、関係ない。

これは地球の夜明けなのだから。

ワルプルギスの夜は歓喜しながら消滅していった。

玄谷が万歳と叫んだ。すると、衣美里もバンザーイと叫ぶ。

すると、他の何人かの魔法少女も同じように真似した。

彼女たちは今、本当に心の底から笑っていた。

玄谷もようやくほっとすることができた。これでおしまいだ。

 

「ありがとう、星ノ森玄谷くん」

 

東屋に水滴インキュベーターが現われていた。

 

「これこそ、ボクが望んでいた光景だった。

ありがとう。かつて、あの文明の構成員だったことが恥ずかしいよ」

 

玄谷もお辞儀して、答えた。

 

「恥じることはありませんよ。生存は文明の第一欲求ですから。

あなたたちは、ただそれに従ったのみです。確かに地球に犠牲を強いましたが。

ですが、もう誰も犠牲になる必要はないんですからね。

・・・しかし、一つ気になることがあります。どうして、あなたは協力してくれたんですか?

智子さんはなぜかそこを語ってくれなかったのですが」

 

すると、智子は刀を抜いた。

 

「おっと、今の質問はなかったことにしましょう。

僕はあなたに何の質問もしなかった。いいですね?」

 

「ああ、その方が君の命のためだろうね」

 

だが、それはすぐに無駄になった。

 

「たぬきちもどき!何そこで駄弁ってやがるですか!こっちに来るですよ!

おめー、惚れた女を放っておくバカがどこの惑星にいやがるですか!」

 

「あ、あの・・・少しだけでも、話をしませんか?」

 

まなかと・・・夏目かこが水滴インキュベーターを呼んでしまったのだ。

かこの顔は少しだけ赤くなっていて、ななかたちは少し怖い顔をしていた。

 

「・・・ははーん、なるほど」

 

達志はついニヤけてしまった。

 

「達志さん、峰打ちの利点は人を殺さないということです」

 

智子はその切先を彼に向けた。

 

「おっと、それじゃあ玄谷、また会おう!」

 

彼は即座に走り出した。

だが、智子の方が少し早かった。

いずれ、達志の断末魔が響くことであろう。

智子は水滴インキュベーターに最大限の気遣いをしていたのだ。

水滴インキュベーターの動きは急にカクカクとしたものになった。

もし、彼に肌というものがあったら、すっかり赤くなっていたことだろう。

 

「行ってやってください、水滴さん」

 

この時以降、水滴インキュベーターは水滴と呼ばれることになった。

水滴は勇気を振り絞って、かこのもとに向かった。

一人きりになった玄谷はようやく東屋のベンチにもたれかかることができた。

 

「お疲れ様です、玄谷さん」

 

隣に座ってきたのは梓みふゆであった。

彼女の顔の傷はすっかり治っていた。

さすがは魔法少女、というべきだろうか?

 

「・・・みふゆさん、僕には責任感どころか優しさもありませんでした。

無責任に、無慈悲に、この世界を勝手にギャンブルのチップにしてしまった。

それどころか、灯花を止めようとしたのもマズかったでしょうね。

智子さんの浄化システムがなければ、状況が維持されるだけだったと思います。

多くの人命を優先するだけで、結局、やれることは変わらなかったと思う。

自動浄化システムの維持と、インキュベーターとの共存。

灯花と同じ考えを、結局は受け継がなくてはいけないところだった。

結局、僕は選択しただけで、その後のことをやったのは智子さんでしたし」

 

「いいんですよ、もう済んだことですから。

それに、ワタシだって同じ立場に立たされたら、選択すらできないと思います。

玄谷さんは立派に選択したじゃないですか。それでいいんです」

 

彼女はそう言いながら、ハンカチを渡した。

それはかつて、床に叩きつけられた彼女の傍に置いたものだった。

洗濯してあったものの、それでも血の跡がうっすらと見えた。

 

「ワタシには玄谷さんのことをとやかく言う資格は本当はないんです。

あなたを殺そうとしたのに、あなたはそれでもワタシのためにハンカチを置いてくれた」

 

眼下では水滴がゴロゴロと転がっていた。

恥ずかしさでのたうち回っているようだ。

それを見て、玄谷は呟いた。

 

「・・・僕には夢が一つ生まれました。

優しいだけで、まったく責任のない夢が。

それは、この暗い宇宙をどうにかして変えるという夢です」

 

灯花だったら、こう答えるに違いない。

変えれるわけないよ!だって、宇宙は無慈悲だもん!

だが、みふゆはこう答えた。

 

「確かに優しいだけで、責任はありませんね。

・・・でも、危険をおかすだけの価値はあると思います」

 

空は青く輝き、海は太陽の光を反射していた。

闇などまるで見当たらなかった。

とりあえず、ひとまずこれで玄谷の仕事は終わりだ。

だが、まだいくつかのごたごたが残ってるのも確かだ。

それで、何か呼び出されるかもしれないが、その時はその時だ。

今はただ、ゆっくりと休むことに・・・

 

「トトロー!一緒に写真撮ろうよ!」

 

そういうわけにもいかなかった。

衣美里は決して、玄谷のことを忘れていなかった。

魔法少女と水滴はとっくに位置についていた。

あと、達志と智子もいったん休戦したようである。

まあ、撮り終わったら、また追いかけっこが始まるだろうが。

 

「行きましょう、みふゆさん」

 

「ええ、そうしましょう」

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