アリナ・グレイは耐えられなかった。
あんな一瞬で、自らの夢が崩れ落ちるなんて。
彼女は魔女化のない世界を灯花やねむと創り上げようとした。
だが、その目標は一瞬で見知らぬ誰かに打ち壊された。
普通の魔法少女だったら、そこで諦めて受け入れるだろう。
どうせ魔女にならなくなったのは変わらないんだ。人生を楽しもう、と。
だが、アリナはそうは思えない人種だった。
ただ生きているだけの人生は人生とは思わないタイプだったのだ。
そして、ねむに負けてしまったというところまでは覚えていた。
しかし、宇宙空間に放り出された覚えはない。
「・・・ここドコ?」
アリナのいる空間には、三つの恒星があった。
その三つの恒星の一つを、青く豊かな惑星が回っていた。
彼女は意識するだけで、その惑星に向かうことができた。
惑星のいくつかの大きな街には、ピラミッド型の建造物が必ずあった。
アリナはそういった街の一つを選んで、折り合った。
しかし、住んでいる住民は靄がかかっていて、アリナには見えなかった。
ぼんやりとたたずんでいると、彼らの会話が何となく耳に入ってくる。
地球上のどの言語とも違うのに、どういうわけか理解できた。
「次の収穫までに乱紀が来なけりゃいいけどな」
「あの学者さんはもう少し恒紀が続くって言ってたけどよ・・・」
「役所では政治力学に気を遣ったほうがいい。
あれは恒紀と乱紀の予想よりもはるかに困難だ」
「だから言ったでしょ?東の国の毛織物は駄目だって。
少し値が張るけど、南の国のものだったらすぐ近くで売ってるし・・・」
少し前ならくだらないと思っていた会話。
でも、今はどういうわけか愛おしく思えた。
見知らぬ惑星だからなのか?
だが、それを打ち破る怒声が街に響いた。
「乱紀だ!乱紀がやってきたぞ!脱水しろ!」
その声と共に、住民たちは一斉に全身から水を放出した。
だが、それは無意味に終わった。
三つの太陽が、一気に空に現れたからだ。
干物状になった住民も、建物も、何もかもが灰になった。
アリナはそれを見て、恍惚の表情を浮かべた。
ああ、これこそが自らの求めていた・・・。
「・・・アリナ先輩、どんな夢見てるの?」
現実において、アリナはずっと植物人間状態であった。
ねむも下半身不随という代償は負ったのだが。
ともかくとして、彼女の病室は厳重に警護された状態だ。
なお、彼女が目を覚ました後の処遇は未だに決まっていない。
これは非常にデリケートな問題だったからだ。
何しろ、日本において魔法少女に対する法律はまだ作成段階でしかなかったからだ。
法律ができる前のことを追求することもできないのは当然だ。
それに、そもそもの話、大人たちは大人たちで別の問題を抱えていた。
神浜市にばかり構う余裕はなかった。色々な街で問題があった。
たとえば、魔法少女というのは必ずしも清廉潔白な人間ではない。
だが、大人というのは子供を純粋なものだと思いがちなものである。
それにより、風見野市で優木沙々という少女に新人が翻弄されたという事件も起こった。
あすなろ市では、とある魔法少女の一グループが執剣者に反対の意を表明した。
彼女たちにとって、インキュベーター文明とも共存しようとする彼は敵でしかなかった。
ホオズキ市には今の浄化システムに危機感を訴える魔法少女がいた。
彼女曰く、今の人類は結局誰かの掌の上で踊らされているだけにすぎないとのこと。
それに、もっと面倒な存在があった。霧峰村だ。
智子はご丁寧にインキュベーター文明に霧峰村との契約行為を禁じたのだ。
あと、最近では二木市の魔法少女との接触もごたごたとしていた。
こういうこともあって、大人たちはアリナを気にしていられなかった。
ただ一人、星ノ森海斗を除いては。
「まだ目覚めないようだな・・・」
「うん・・・でも、幸せそうな夢を見てるみたいなの」
「幸せ、か・・・」
ずいぶんと不気味な笑みだった。
本当は起きているんではないかと疑いたくなるくらいに。
「俺としては早く起きてほしい」
「・・・アリナ先輩をどうするつもりなの?」
「どうもしないさ。ただ、こちらのお抱えの物理学者に協力してもらう。
彼女の結界生成能力は国防上、いや、太陽系防衛に寄与するかもしれない。
その能力を、こちらが複製できるようになったら、逃亡計画は必要なくなる」
海斗が思いっきりカーテンを開けて、陽光を取り入れた。
「遥かなる星計画は凍結された。玄谷の思い切った提案のおかげでな。
まあ、恨んではないさ。それどころか、嬉しいくらいだ。
まさか弟があそこまで成長していたなんてな・・・。
だが、太陽系が危険だということは未だに変わっていないんだ。
そこで、彼女の空間生成能力が非常に役立つ。
彼女の魔力とやらの動きを、物理学者たちに観測させる。
それをもとに複製した技術で太陽系をすっぽりと覆う。
そうすれば、他の文明は星が消えたと勝手に思ってくれるはずさ」
「・・・でも、それだと他の星に行けなくなるの」
「ああ、それはわかってる・・・これは智子さんのおとぎ話から着想を得た計画だ。
そのおとぎ話でも、似たようなことになってしまっている。
でも、この計画の一番のメリットは、安全ってことなんだよ」
「・・・アリナ先輩はすごく嫌がるかもなの」
そのアリナは、大きな振り子の前に立っていた。
夢の中では幾星霜が過ぎ去っていた。
文明の興亡が繰り返され、やがて、彼らはあるモニュメントを建造した。
それは巨大な振り子であった。
その迫力のある運動を見ながら、アリナは自問した。
これは秩序に対する渇望か、それとも混沌への屈服を表しているのか?
振り子は巨大な金属の拳のようにも見えた。
なにも感じない宇宙に向かって、永遠にふるいつづける拳。
三体文明(アリナが勝手に名付けた)の不屈の雄叫びを、音もなく発している・・・。
「・・・かかっているのは文明の存亡なんだ。
個人の自由や権利も、それの前にはたいした価値をもたない」
海斗は窓の外の景色を見ながら、かりんに聞こえないように呟いた。
彼の瞳にもまた、三体文明と同じ不屈の意志が宿っていた。
三体好きかい?
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うん、大好きSA!
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まあまあSA!
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あたしゃ知りませんよ
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(よくもそんなこと)聞いたなコイツ!!
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全滅してやるぞ(嫌い)
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劉慈欣先生お許しください(すごく嫌い)