世界各国で魔法少女のグループ化が推し進められていた。
狙いは二つ。魔法少女の個人間での争いを阻止すること。
そして、大人たちが彼女たちを一括管理できるようにするため。
風見野市やホオズキ市では失敗したが、それ以外の場所では順調に進みつつあった。
神浜市において結成された神浜マギアユニオンもその一つである。
ただし、マギアユニオンに関しては日本の管轄下にあるとはいえない。
魔法少女の数があまりに多すぎて、日本だけに独占させるわけにはいかなかった。
そういうわけで、名目上ではあるが、マギアユニオンは国連の管轄下に置かれた。
マギアユニオン以外にも、多数の魔法少女が属するグループも同じ道をたどった。
「・・・うう、私に務まるのかな」
環いろはは里見メディカルセンターの庭園で一人悩んでいた。
彼女は一番ふさわしいという理由でリーダーに抜擢されたのだ。
どういうわけか各国代表はほぼ満場一致だったが、理由はわからなかった。
本当に、理由がわからないのだ。どうして自分が選ばれたのか・・・?
ふさわしいという理由なら、やちよや十七夜でもよかったはずだ。
ベンチにもたれかかって黙考するも、まるで理由がわからなかった。
その時、一人の男性が近づいてきた。
「お嬢さん、隣いいか?」
その男性はヨーロッパ系で、右袖は空っぽだった。
右腕がないこの外国人は、どこかの国の連絡員だろう。
前より連絡員は減っていた。
最初、興奮状態にあった各国も冷静になったのだ。
どうして極東の島国に連絡員なんて派遣していたのだろうか?
確かに神浜はインキュベーターブラインドエリアと呼ばれるほどの場所だ。
インキュベーターに本気で聞かれたくない会議には使えるだろう。
でも、そこにいる魔法少女にどうして関わる必要がある?
所詮は、執剣者と智子が関わっていただけではないか!
それよりも、まずは自国の魔法少女の支援が最優先だ・・・。
または、精神的な苦痛で辞めた者もいた。
ポーランドから来たノヴォルコフは辞表を出して以来、行方不明だった。
その消息は智子が掴んでいるが、彼女はどういうわけか教えてくれなかった。
この男性は数少ない残った連絡員の一人であろう。
「あの、お名前は・・・」
「トマス・ウェイドだ」
ウェイドはどかっとベンチに座ってきた。
「・・・ふむ、やっぱり執剣者に似ているな」
玄谷と似ている、というのはよく言われる言葉だった。
やちよ、達志、十七夜、衣美里・・・あらゆる彼の知人からそう言われた。
実際、ワルプルギスの戦いの後も、玄谷と言葉を交わした。
達志や衣美里がトトロというように、彼は本当に心優しい青年だった。
「よく言われますけど・・・でも、あの人ほど強くはありません」
唯一の違いは、強さだろう。
それは腕っぷしの強さではない。精神の強さだ。
玄谷は今この瞬間も、インキュベーター文明と対峙している。
彼の手によって、両文明は均衡を保っているのだ。
竜城明日香は彼の仕事を一撃必殺の日本の剣術に例えていた。
宇宙という闘技場で、生死をわける一撃を加えなくてはいけないのだ。
斬り合いが始まった後には、必ずどちらかが血の海に倒れている。
その張り詰めた糸の上に、玄谷は立っているというのだ。
「お嬢さん、いいアドバイスをしてやろう。
執剣者がしていて、君がしていないこと・・・
それは、敵の眼を睨むということだ」
「敵の眼を・・・睨む?」
「そうだ。彼は執剣者になる前からそうしてきた。
智子を暗殺しに来た魔法少女を睨んで追い返したくらいだ。
威嚇するというのは、とっても重要なことだ。
まず敵に会った時にすることは和解の呼びかけじゃない。
睨み返すことなんだ。相手に対して、痛い目に遭わすぞと伝えるんだ。
そうすれば、相手もこちらに手を出すことの意味をもう一度考えるはずだ。
その後でゆっくりと話し合えばいい」
「それは・・・」
「確かに平和な現代日本で育った君には馴染みがないかもな。
でも、冷戦における核抑止の効力はこうやって生まれたんだ。
その結果、代理戦争こそ起こったが、それ以上には発展しなかった。
誰かの異常な愛情に翻弄されることもなく、冷戦は終了した」
「・・・」
ウェイドは話し終わると、葉巻を三本差し出した。
「あ、ありがとうございます。でも・・・」
「いいんだ。誰か別の奴にあげるのもいいし、
それは宇宙が終わる時が来るまでは長持ちするから。
君が大人になったときに、また吸えばいいさ。
・・・君は本当におれの昔の知り合いに似ているな。
また会おう、環いろは。一つアドバイスをやろう。
お前だけじゃなく、この時代の全員に向けてだ。
十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない」
それだけ言い残すと、男は光の粒となって消えてしまった。
今の邂逅は夢だったのだろうか?
だが、手元に残った三本の葉巻が現実だと教えてくれていた。
「やあ、環さん。今、誰と話をしていたんだい?」
後ろから声をかけてきたのは理論物理学者の延祐輔だ。
ワルプルギス戦以前から自衛隊の対星系外文明対策室に所属していたという。
日系中国人ではあったが、能力の高さから重用されていたらしい。
ワルプルギス戦後はよく里見メディカルセンターを訪れ、灯花と議論を交わしている。
華奢で、今にも儚く消えそうな雰囲気から、本当に自衛隊所属か疑わしくなる。
「・・・見えてたんですか、延さん」
「見えるわけないだろう?さなさんですら眼鏡なしでは見えないってのに。
その眼鏡でさえも、君が話していた誰かを捉えることはできなかった」
彼はいつもヴィクトリア風の眼鏡をかけていた。
その優雅な眼鏡のかけ方は、英国貴族を思わせるくらいだ。
さて、その眼鏡は智子、インキュベーターからの技術提供をもとに作られた代物だ。
これにより、姿の見えない魔女や魔法少女でさえも見えるようになったのだ。
とにかく、これで一般人でもさなを見ることが可能になった。
そして、延とさなはよく二人きりで話すことが多かった。
「ただ・・・空中に突然現れた葉巻でわかったんだ。
君が何か本当にそこにいる誰かと会話していたんだなって。
なあ、ちょっと吸わせてみてくれないか、その葉巻。
もしかすると、何か危険なものだという可能性は捨てきれない」
いろははそれが葉巻を取り上げるための口実ではないと知っていた。
延は彼女のことを本気で心配して言っているのだ。
まあ、吸いたいという気持ちがあるのもわかってはいたが。
彼はこれでも喫煙家なのだ。ただし、日に一本とかそのレベルだ。
なお、さなが近くにいたら、絶対に吸おうとはしない。
上司である海斗准将(最近昇進した)の前では遠慮なく吸うのだが。
延は少し距離を取って、葉巻に火をつけて、吸い始めた。
それさえも十八世紀の貴族が嗅ぎ煙草を吸う仕草を思い起こさせる。
だが、どういうわけか彼は貴族のように見られることは快く思わないようだ。
彼はしばらく葉巻を満喫していた。よほど質が良かったらしい。
華麗で重厚な匂いが、いろはのいるところにまで伝わってきた。
しばらく吸い続けていると、彼はあることに気付き、危うくそれを落としそうになった。
葉巻の火が消えるまで待ってから、彼は駆けつけた。
「なんてことだ。このハバナ、まったく量が減らないんだ」
「・・・えっ」
いろはは改めてもらった葉巻を確かめてみた。
確かに、どこか不思議な感覚が手に伝わってくる。
この葉巻は時間から疎外されているようだ。
「まるで・・・時が止まっているみたいです」
「時が止まっている、か・・・面白いたとえだね。
この一本のハバナ、少し借りていいかい?」
去り際に彼は言った。
「もしかすると、この世の喫煙者全員が、君が会った誰かさんに感謝するだろうね」
三体好きかい?
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うん、大好きSA!
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まあまあSA!
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あたしゃ知りませんよ
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(よくもそんなこと)聞いたなコイツ!!
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全滅してやるぞ(嫌い)
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劉慈欣先生お許しください(すごく嫌い)