まばゆい陽光射し込む宇宙へ   作:ryanzi

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プロローグ3:繰り返される惑星

太陽系から四光年離れた恒星系、三重星系と知られるケンタウルス座アルファ星系(アルファ・ケンタウリ)

その星系に存在する唯一の惑星の表面上には荒野と遺跡しか存在しなかった。

煌びやかな高層建築物の廃墟と、ピラミッドと、巨大な振り子・・・。

そこに一匹の感情なき白い獣・・・インキュベーターが現れた。

 

「・・・太陽に催眠術をかけようなんて、わけがわからないよ」

 

彼は巨大振り子のモニュメントの前に立って呟いた。

電力を供給するはずの文明が滅亡したことで、振り子は停止していた。

この惑星の文明・・・三体世界はかれこれ200回ぐらい興亡を繰り返していた。

どれもこれも、三太陽によって引き起こされる混沌とした軌道が原因だ。

ある時は太陽すれすれを、あるときはどの太陽からも離れ・・・。

 

「恒紀と乱紀を繰り返す君たちもいつかはその時を迎えるんだろうね」

 

インキュベーターは夜空に浮かぶ星々の一つをじっと見つめた。

それこそが、ここから四光年先に存在する太陽系だ。

そして、それが三体世界にとって唯一のチャンスでもあった。

 

「前宇宙の君たちはそのチャンスを掴み、そして滅亡した」

 

今は恒紀に分類される比較的平穏な時期だった。

だが、それも生物がいなければ無駄なこと。

 

「君たちは地球人よりかは冷静で、正しい手段を取ることができた。

でも、ボクたちからすれば、それでも君たちを理解できないよ」

 

何百もの流星が夜空に降り注いだ。

おそらく、以前に存在した惑星の欠片だろう。

 

「君たちの中には、まだ愛というものがあったんだから」

 

その愛によって、いかに文明生存を掲げていた三体世界といえども滅亡した。

そもそも、今回滅亡した文明も愛を基盤にした文明であった。

彼らは民主的で自由な社会を築き、豊かな文化遺産を残した。

滅亡後にほとんどの遺産はインキュベーターの文明によって解析され、戻された。

三体文明の中で、このようなタイプの文明がもっとも脆弱で、短命だった。

もし、太陽が一つだけであったら長い繁栄を謳歌したことだろう。

地球と違って、インキュベーターの妨害を受けないその文明は宇宙の支配者となったはずだ。

 

「この前、ボクたちに珍しく賛同した魔法少女に前の宇宙の君たちのことを話したんだ」

 

インキュベーターはまったく動かない振り子に語り続けた。

いまは乱紀の夜だ。大地は冷え固まった金属のようだった。

インキュベーターはふと気づいた。もう植物が生えている。

乱紀であるから脱水しており、生命のない感想繊維の束と化しているが。

 

「あの子のような存在は珍しかったね。

未来の地球文明を導くのはあの子のようなタイプであると信じたいよ。

・・・前の宇宙の地球文明はそういったタイプがいなくて滅亡してしまった。

前の宇宙の君たちの方がまだ上手くやれただろうね・・・」

 

その時、巨大な月が昇り始めた。

いつかまた、この星にも再び生命の繁栄が訪れるだろう。

次はどのような文明が興るのか。それはインキュベーターにも知る由がない。

 

「・・・次はもっと上手くやってくれることを祈るよ」

 

そしてインキュベーターの姿は消えていった。






これでプロローグは終了です

三体好きかい?

  • うん、大好きSA!
  • まあまあSA!
  • あたしゃ知りませんよ
  • (よくもそんなこと)聞いたなコイツ!!
  • 全滅してやるぞ(嫌い)
  • 劉慈欣先生お許しください(すごく嫌い)

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