転生したら男の娘でしたので女装にハマりました 作:性癖をさらしていけ
前世の記憶を思い出してから7年が経った。別に今更どうでもいいことだ。転生してから色々あったが、今思えば大した問題じゃない。今最も大きな問題は—————————俺が女装にハマったことだ。
昔からそういう傾向はあった。容姿は悪くない方だったし、体格もどちらかと言えば女性に寄っている。ただ、前世の影響もあり女装にはすごく抵抗があった。何度も仲間たちに進められたが、断ってきた。しかし、任務の都合上どうしても女装をしなければいけないことが一度だけあった。
命には代えられないと判断した俺は渋々女装した。そして驚愕し、感動し、興奮した。
そこにいたのはどこからどう見ても美少女だった。
自ら光を発しているかのような薄い紫色の髪。それと同じ色の睫毛は長く、少し目を伏せれば琥珀色の瞳を覆い隠してしまう。すっと通った鼻筋は幼さを残しながらも、しっかりと顔の中心で全体のバランスをとっている。
僅かに上気した肌に吸い込まれそうな魔性を持っている琥珀色の瞳。目を奪われてしまう程の艶のある髪。もはや造り物じみた美しさを孕んだ姿だった。
自身の女装時の破壊力を知る。これだけでも怪しかったがダメ押しで俺は自身の容姿で他人を誑かす楽しさを覚えてしまったのだ。もうダメだった。戻れない。素性が割れることを嫌う仕事であるためともっともらしい理由を添えて、仕事の時は常に女装をしたままだ。ストレスが溜まれば、女装をして街に繰り出している。どこかでやめなければならない、そう思いつつも辞めることができなかった。
仕事で女装をするのはまだいい。どうせ相手に素性をバレてはいけない仕事だし、職場の人間は俺の女装のことを変装の一種だと思っている。ただ、それ以外の人にばれるのはまずい。プライベートが死ぬ。女装をしているときは気分が上がってハイになっているが冷静になるとかなり恥ずかしいのだ。
正直、同居人兼理解者である彼女以外にはプライベートでも女装をしていることは知られたくなかった。
さて、やっと本題に入れる。何故俺がこんなに長い回想を頭の中でしているいるのかと言えば、直属の上司に女装趣味がばれたからである。
「別に責めはしないよ。趣味は人それぞれさ、私は人の趣味を否定できるほど高尚な人間ではないからね?」
俯くことしかできなかった。自分がどんな顔をしているのかすらよく分からない。最悪の相手にばれたと思う。なぜなら
「だけど、正直面白いなぁと思ってるよ」
この女は————テフェリーは俺の知る限り
「それにしても完成度が高い。もうどこからどう見ても女の子じゃないか。変装スキルを磨いたのってこのため?」
「そんなわけないでしょう!」
「だよね。知ってる。やってるうちにハマっちゃった感じだ」
ビンゴだこの野郎。何でこんなことだけ鋭いのか。この女の厄介なところは怪物じみた読心術だ。
「…私としては言いふらすつもりはないんだけど、でも頼みたいことができちゃったなぁ」
愉しげに悪い笑みを浮かべている女上司を見ながら、内心溜息を吐いた。
「ほんと腐った性格してますね」
「ハハハハ…頼み事聞いてくれる?」
「………」
満面の笑みでそう問いかけるテフェリーの目は笑っていないかった。面倒な案件で適任者があまりいなかったのだろう。是が非でも俺に任せたいようだ。そして残念ながら俺はこの女に借りを作ってしまっている。拒否権はほぼない。
「聞くだけ聞きます」
「よろしい」
渋々、頷く俺に邪悪な笑みを浮かべるテフェリー。
「ざっくりというと潜入捜査だ。場所は帝都から少し離れた場所にある国の最高教育機関、バレッタ学園」
その学園は知っている。帝国にある国立の教育機関のうちの一つだ。バレッタ、アルメリダ、セレーナレは最も質の高い教育機関と言われている。
「テロの予告が学園にあったらしくてね。バレッタ学園は、帝国の皇族から平民、他国の王族留学生まで幅広い人材を育成する場所だ。テロに屈するのはなしだが万一にも生徒に被害があると困る。というわけで」
「俺に潜入してことが起こる前に何とかしろとそう言いたいわけですか?」
「せぇーかぁーい。正解者には私の身体を自由に見る権利をあげましょう!お年頃の男の子にはたまらないだろう?あ、女装趣味の君にはご褒美にならない?」
「ぶっ飛ばしますよ?」
断じて男には興味ない。反応を楽しんだりはするが、恋愛は絶世の金髪美少女とすると決めている。確かに目の前の女は可愛いというか美人だ。鮮烈の目を焼く豪奢と言えるであろう銀色の髪、もはやぞっとするほどの静謐で造り物じみた魔性の貌。軍服に身を包んでいてもわかる艶美過ぎる肢体。ただし、中身を知っている身からすればちょっしかし惹かれない。ちょっとは惹かれるけど。魅力的だけど。
「つれないなー。こんな美女のなにが不満なんだい?」
「いつの間にか傀儡にされてそうなところですね」
「そんなことがしないのにー」
「俺を脅して部下にした時点で信用はないです」
その言葉を聞いてテフェリーはつまらなそうな顔をしながら反論する。
「昔のことを掘り返して突きつける男は嫌われるよ。まあ、過去に捕らわれきっている君に言うのは酷かもだけど」
「…話続けてもらえません?」
「そうだったね」
思い出したようにテフェリーは任務の内容の続きを話し始める。
「もちろん外部の警戒もするけど内部に協力者がいるっていう情報が密偵から届いてね?」
「ちょ、ちょっと待ってください!密偵って………犯行グループは何処なんですか?」
「グレンが潜入しているところ」
ってことは
「グレンも内部の協力者が誰かまではわからないらしくてね。ただ、内部に協力者がいる以上学園は安全とは言い難い。あそこの守りは外部に対してのみ有効で内側からの干渉には脆弱だからね」
「なるほど。随分と重い任務ですね」
「そうだね、だからうちに回ってきたんだけどさ」
ここまで厄介な任務だと誰もやりたがらないだろう。というか適任者を探すのが大変だ。学園に潜入ということは年齢に制限がかかる。決まった年齢じゃないと生徒になれないわけではないが、かけ離れた年齢の人間は目立つ。
教師として潜入するのはありかもしれないが生徒に干渉しづらいデメリットは痛い。
「報酬、あるんですよね?」
俺の質問にテフェリーは今日一番の邪悪な笑みを浮かべて、俺の質問に対して肯定の意を示した。
「もちろん。失敗すれば国の一大事だからね。絶句するほどの金額が用意されているし、かなりの褒章が授けられるだろう。愛しのお姫様のさらなる安全も保障しよう。どうかな?アイザック・グレイバー少尉………いや、ルークス・シトナイ君」
俺の本名を呼んだその女の貌は絵本に出てくる女王様よりも美しく、魔王よりも邪悪なまさしく魔女の貌だった。
「潜入はいつからですか?」
「ん?明日からだけど?」
「は?」