龍の刻印の入った帽子をかぶる紅美鈴は、紅魔館の門前で柱を背にすやすやと眠る。ところで彼女の役割は紅魔館の門番である。
紅魔館の侍従長である十六夜咲夜は、時空を操る能力を持っている。
彼女は突然紅美鈴の横に出現し、それでも、紅美鈴をやさしく起こしバスケットを渡す
うれしい紅美鈴
「後でお嬢様が催し物をなさるらしいから、おやつの時間に広間に来て」と十六夜咲夜は飲み物をコップに注ぎつつ、紅美鈴にそう告げた。
「ひゃい、ひきまひゅ」さっそくばすけっとから取り出したハンバーガーを口に入れながら美鈴はおそらく「はい、行きます」と答えた。
きたるおやつの時間、紅魔館恒例の怪しい昔話が始まる。
「昔の紅美鈴はあんなんじゃなかったわ、」と紅魔館の主である永遠の紅い月、齢500歳の吸血鬼、それでいて幼い見た目のレミリア・スカーレットは切り出した。
「もっとストイックな武術家で門の前でも鍛錬するような子だった。」
鍛錬もしていたが昼寝も遊びもしていた、とレミリア・スカーレットの妹フランドール・スカーレットは知っていたが朗らかに笑ったまま黙っている。
「咲夜のせいよ」とレミリア・スカーレットお嬢様、通称おぜうは不意に咲夜に切り込んでみせ、そうして回想が始まった。
中華風の銅鑼が鳴り、疾風一陣。枯葉が脆く押し流される。
紅美鈴と咲夜の手合わせがはじまるわ。
「咲夜は乗り気では無いが勝負と言われればつきあうのよ、」とおぜうは隣のパチェを見る。突然のご指名にも驚かず、紅魔館の図書館の主、賢者パチュリー・ノーレッジは黙ってうなずく。
「拳法勝負では紅美鈴が圧倒に勝つわ、でも、倒されないだけでも咲夜は人間として規格外の強さを持ってるの。だけど、とがっていた頃の紅美鈴はそれだけでは済まさないのよ」とおぜう。釣り込まれる一同。
「ザワールドを使え。」そのころの美鈴は丁寧語もつかわないの。とおぜうは解説する。
「自分は強者だから能力無しでもお前のザワールドを受けきれる。人間風情よ」とメイリンは自信たっぷりにこう言うわ。
咲夜は困った顔をするけど、すぐにうなずき再び打ち合うわ。
先ほどより圧倒的に強くなった。これがザワールド。だがしかし、噂には隠された真の能力があると聞く、まだ本気では無い。
紅美鈴は戦いながら考える。まだ自分に分がある。そのうえ私の能力、気を操る程度の能力も使っていない。能力無しで分があるのなら相手が能力を使っても怪我をさせず打ち負かせるだろう。
紅美鈴は咲夜に勧告する「本当のザワールドを使って見せろ。」と。
「咲夜は黙って首を振るわ」おぜうが顔を上げると、十六夜咲夜は黙ってにっこり笑いつつ、テーブルの上にある人数分のティーカップに御茶を注いでいた。
「自分は全く本気を出していないから大丈夫だ」と美鈴
帰ろうとする咲夜に通せんぼする美鈴は、思いつきでお嬢様の最後の砦である侍従長が弱いのは問題があるなぁと言ったのよ。そしたらね、咲夜の目に感心と怒りの表情が宿るわ。
感心しているのはそれが思いつきの挑発だと知っているからなの。
ザワールドの能力を使え。
「本当にいいのか。」咲夜の顔に影がかかり表情が見えなくなるわ
「くどい。」いらいらしたように美鈴は返答するわ
「まぬけが……知るがいい。ザワールドの真の能力は、まさに世界を支配する能力だということを……ザワールド!!!!!!!!」
紅美鈴は空間がゆがむのを感じた。そして次の瞬間地面に激突する。また空間がゆがみ、空に落ちてゆく。空には大地があるわ。
巨大なひび割れを見せる白塀と青空を見て気がつく。
空間がゆがんだのでは無く、自分が塀に向かって吹き飛ばされしたたかに体を打ち付けた後地面に落ちたのよ。しかし、なぜ?
日が陰になるり、仰げばそこには咲夜がいた。
美鈴はその顔に向かって拳を立てる。
その瞬間咲夜が消える。見覚えの無い景色がめまぐるしく過ぎ去り、背中に激痛が走る。衝撃で呼吸ができない。そしてまたもやそこは地面ではなく、遅くやってきた重力の影響で黄色い土の上に落ちる。背中だけでは無く右頬もずきずき痛む。さわるとざっくりときれていて手にはべっとりと血がついていた。
なにをされている?サイコキネシスか。紅美鈴は解らない。
何かいいながら無防備によってくる咲夜に対して構え、本気を出す。気が体内から満ちあふれ七色のオーラを身に纏う。本気を出したからには先ほど程度の攻撃なら数発は耐えられる。驚いて後ずさろうと足を後ろへおくる咲夜。その一歩よりも早い閃光の如き蹴りが七色の奇跡を描きながら咲夜の首筋へと放たれる!とレミリアは目をキラキラ輝かせながら語った。偶然か必然か目を向けられたパチュリー・ノーレッジははっとして手にしたクッキーをゆらゆら揺らし、隠すように口の中へと入れてはにかんで見せた。
すさまじい砂埃が舞い、紅魔館の塀の高さの半分まで砂が畝を作る。
しまった。人間に対して全力の蹴りをはなってしまった。
跡形も無く消滅させてしまった。
残機が残っているといいが、なんと言って謝ろう
パチパチパチと乾いた音がするわ。
「すごいわね、さすが門番さん」
後ろから拍手とささやき声が聞こえるの。とレミリアもささやき声になりながら語る
すぐ後ろに、背中合わせにみっちゃくして十六夜咲夜は居た。全く気がつかなかった。
ぞっとする紅美鈴は先の反省も何処へやらがむしゃらになって本気の一撃を背後に見舞う。
大砲を撃ち込まれたように粉々になる竹林の竹。
「殺す気なの、紅美鈴?」
声の方を向けば咲夜はなにか武器を手にぶら下げており、かすり傷一つ無くにっこり。
ラストスペルしかないと思い、目をつむり気を集中させると背中に違和感がある。
触ると湿布と包帯。見れば体のあちこちに包帯が巻かれている。
攻撃かと疑い包帯をほどこうとすると痛い。そしてその中から消毒液のにおい、頬を触ると先ほどの傷口が丁寧に縫われている。
ぼうぜんとして咲夜を見ると、ぶら下げているものは武器で無く救急箱。
咲夜が治療してくれたの?とメイリンは聞くわ
ええ。
この傷は
私がやったわ。
この傷も治療もあなたが?
そうよ。
いつのまに。気がつかない間に治療をされていたとは。全く気がつかなかったが数十分昏倒していたのだろうか
いずれにせよ
手も足も出ない。
次元が違う。
どうあがいても勝てる気がしない。
いや、暗殺や防御できないほどの素早さで攻撃すればいけるのかもしれないが、
戦闘中に治療してくれる人を殺したくは無い。
悔しさより驚きが勝る。
そこから飢えた狼のような紅美鈴は丸くなりはじめ、咲夜への信頼と交流によってすっかり警戒体制を解いてしまった。
その結果が居眠り。
というわけなのよ。ね、咲夜とおぜうは語り追える
満座息をついておのおの感想を述べ始める。
「さすがでございます。お嬢様」と咲夜
「いつもながら、よく即興でそんなほら話をこけるわね、レミィ」とパチュリー・ノーレッジ
「ほら話では無く真実よ。記憶力がいいからね」
「運命を操る前の真実だったりするのでしょうか」と美鈴
「その設定もいいわね」とレミリア・スカーレットは半開きの唇に人差し指をそっとあてる。
「設定って言った?レミィ」とパチュリー・ノーレッジ
「せっせっせーのよいよいよい。うー☆」おぜうは手を細やかに動かし最後に満面の笑みで両手を上に上げた。
「可愛いです、お嬢様、かわいいです」と十六夜咲夜は鼻血を垂らす。
「飢えた狼だった私がぽやぽやしているのはお嬢様の能力の仕業なのでしょうか?」と美鈴。
「美鈴。ぽやぽやなあなたが好きよ」とおぜうは要点をずらして答える。
「紅美鈴。自分の記憶をもっと信じなさい」とパチェ
「ザワールド使ったら時を止めなくてもどつきあいで咲夜が勝つよ」とフランは静かに言った。
「そうでしたね。十メートル圏内に居るだけで見えない何かにボコ殴りにされるんでした。」と紅美鈴
「咲夜ってそんなに強いの?」とレミィはテーブルに手をつき椅子を足で押しながら立ち上がる。
「今、誰が誰の話をしていたのよ」とパチェ
「こんどはこの咲夜めが、不埒にもお嬢様に戦いを挑み、無様に敗れながらも、お嬢様の慈悲で侍従長に命じたれた話をしてくださいませ」と咲夜は胸に手をつきながら鼻息を荒くする。
フランドール・スカーレットが手を上げる。
「フランも!フランが光の力に目覚め妖怪ハンターになるも、おねちゃんに敗北し光の力が破壊の力に変わった話をして!!」
「むきゅ、レ、レミィがえーと、私が作りし狂王に試練場として使われていた迷宮を踏破して友達になる話し…いや、やっぱり魔神咲夜とどうやってか出会った本当のところ教えて。あと私より年上くさい咲夜の年齢を。」と真面目になるパチェ
「それよりもさっ、パチェの本を小脇にかかえた泥棒が咲夜のお茶を飲みながらフランの頭の上に座ってる話しは聞きたくない?」とレミリア
「聞かなくてもみられるぜ」と答えるのは描写されたままの泥棒魔理沙
「フランは見えない。」とフラン
「頭の上に座ってもびくともしないんだな」魔理沙はフランの首の強さに感嘆した。