俺の中の天使と悪魔が幼女なことは俺はまだ知らない。   作:胡椒こしょこしょ

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ヤバい奴にしか会わねぇ......

「マジで君が必要なの!ウチと契約して契約者になって!ウチは色欲を司る明日母デウスって言うんだ!ほらっ、色欲って聞いたら何か想起したりしないっ!?」

 

「えーと、とにかく帰ってくれませんかぁ?そのっ、俺宗教とか御免なんで。」

 

気持ち良くなるくらい晴れた昼下がり。

だというのに関わらず、俺は玄関の前で立ち往生を喰らっていた。

目の前に立っている同い年か少し上くらいの黒ギャル。

それがなにやら宗教勧誘してきたのだった。

 

「宗教じゃないんだって!君はまだ気づいてないだけだって!ねっ?お願い!君素質あるから!ウチを助けると思って!ウチも結構ヤバいんだって!!」

 

そう必死に俺に頼み込む明日母デウスという女。

褐色の肌が照らされ、汗に濡れた制服が妙に艶めかしい。

....が、それはそれ。

これはこれだ。

 

「お前がヤバいのは同意するわ。どう聞いても宗教だもんな、なんだよ七つの大罪って。仏教系とかキリスト系とかならまだしも、悪魔崇拝とか一回聞くだけでヤバいって分かるわ。」

 

そう言うと、彼女を押して無理やり扉から離れさせる。

しかし尚もしつこく追いすがるデウスという女。

 

「ちょっ、待ってって!私と契約したら願いが叶うんだよ!?いやこれマジでホントだから!なんならホテルで話聞いてくれるだけでも良いし!!てか黒ギャルダメなら清楚系でも....」

 

「うーす、分かった分かった。はいはいそうですね~。じゃ、さっさと消えてもらっていいですかね?まだ家の前に居るようなら警察呼びますからね。」

 

そう言うと、彼女を無理やり押し出して、扉を勢いよく閉める。

そして鍵を閉める。

その瞬間、複数回鳴り響くインターフォン。

こわぁ....。

最近の宗教勧誘はここまで常軌を逸しているのか。

警察への通報も視野に入れないとな。

 

そう思い、手元に携帯を用意して暫く待機しているとインターフォンが鳴らなくなる。

静まり返る家の中。

しかし、流石にここで何も確認せずに外に出るような不用意な真似はしない。

もしかすれば、俺が開けるのを待ち伏せしているかもしれない。

 

そう思うと、覗き穴から外の様子を眺める。

....多分、誰も居ないよな。

そう思うと、家のドアを開ける。

...誰も居ない。

 

「....はぁ、なんで家に居るのに疲れなきゃいけないんだ。」

 

奴が居ないことに気づくと、急にどっと疲れた。

見た目は良くてもカルトはなぁ....。

てか普通に黒ギャルが好みじゃないっていうかさぁ....。

やっぱ女の子は貞淑で小綺麗で清潔感があって,,,,なんというか大和撫子的な子が一番良いよな。

まぁ、そんな女の子今の時期で居やしないということは分かってるんだけどさ。

それでも、黒ギャルはないわ。

それにしても、勧誘するにしたってもっといい感じの言葉使えよと思ってしまった。

なんだよ契約って。

俺は女子中学生じゃないんだから、ボクと契約して信者になってよと言われても鼻で笑い飛ばすくらいの人生設計はあるぞ。

 

心の中で、さっき来たカルトギャルをこき下ろしながらも、時計を確認する。

今ので軽く2~30分無駄にしたのだ。

度し難いな。

早く行かないと。

そう思うと、俺は家の外へと走り出そうとする。

しかし、その前に振り返ると誰もいない家に言葉をかける。

 

「...いってきます。」

 

そう言って、鍵を閉めると遂に走り出した。

 

 

 

 

 

 

上機嫌で、大切な物を抱え込むように袋を胸の前で抱える。

予約してたプラモデル。

それを手に入れることが出来たのだ。

 

「っぱ、完成度たけぇなぁ。ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲。」

 

そのプラモデルの箱を見ながらも、歩いていると目の前から誰かが来る。

なんかふわふわとした雰囲気の女の子。

ちょうどタイプな感じの女の子だ。

可愛いなぁ。

しかし、その隣には長身で目つきの悪く筋肉質な身体をしたハーフ風の男が腕を組んで歩いていた。

 

やっぱりな。

そういういい子ってのは得てしてカッコよかったり、DQNっぽい奴に先に手を付けられている物だからな。

はいはい、俺みたいな陰キャには遠い世界のお話ですよ。

ケッ、箪笥の角とかに指ぶつけて倒れた拍子に豆腐の角に頭ぶつけて知能指数クソ低く成らねぇかなぁ。

アルジャーノンにならねぇかなぁ!

 

そう思っていると、ハーフ風の男と目があった。

やべっ!

目を即座に逸らす。

こういうDQNっぽいのと目が合うと碌なことがないんだ!

そして、何事もないように通り過ぎようとした、その瞬間。

 

「...待ちな。」

 

ハーフ風の男が言葉を掛けてきた。

し、知らない!

僕じゃない!多分僕じゃないでしょ!

懸念が現実になる。

因縁付けられたか?

 

「待て。そこのお前に言ってるんだぜ。」

 

「...?どうしたの、ラース?」

 

男は無視して歩みを進めようとした俺に再度待つように言ってくる。

するとハーフ風男の隣の女が彼に心配そうな表情で聞いてくる。

そ、そうだよ。

いくらなんでも彼女の前で人に因縁なんか付けないよね?

そんな見苦しい真似しないよね。

そうは思ってはいるものの、身体はまるで金縛りにあったかのように動かない。

怖いからね、多少はね?

あ~....殴られるのかなぁ。

嫌だなぁ....。

 

男は歩いて俺の前に回り込むと俺の顔にガンつけ始める。

わぁ、凄いお顔が整っていらっしゃいますね。

イケメンにガンつけられるとここまで怖いんだなぁ。

漠然とそう思っていると、ラースと呼ばれた男は口を開き始める。

 

「...まだ罪業も定められちゃいないのか。早く、結びつくんだな。死にたくないのであれば....。」

 

「....はぁ?」

 

な、なんだ。

コイツもちょっと頭ヤバい奴なのか?

ちょっと勘弁してよぉ....ヤバいのと話した後なのに、出先でもヤバいのに会うとかさ。

ほら見ろよ、隣の彼女さんもキョトンとしているでしょうが。

なんだお前、意味分かんねぇこと言いやがって、ビジュアル系か?

 

戸惑っていると、奴は俺の肩をポンポンと叩く。

そして、俺とは反対側に歩き始めた。

 

「あ、待ってよラース!」

 

彼女は健気にもそんな彼氏について行っていた。

あんな電波男にも彼女が居るのに、俺と来れば....。

世の中見た目か?見た目なのか?

....ま、まぁとにかくプラモだプラモ。

早く帰って狂四郎になろう。

この世の不条理に喘ぎながらも、そう思うと帰路へと再度つく。

 

 

 

 

 

 

 

「貴方は神はいらっしゃると思いますか?....どうしたのですかガブリエル?聞いているのですか?」

 

「あー、えーと。」

 

帰宅後。

何故か家の前に金髪の外国人女性が居るので不思議に思っていると、彼女が話しかけてきた。

と思ったらこのザマだ。

なんだ今日は。

全ての宗教団体においてノルマ締め切りが近いのか?

 

「えーと、一体何のことを言っているのか....?」

 

困惑しつつも、なんとか対応しようとする。

すると、彼女は真顔で俺を見て、口を開いた。

 

「いや、私は貴方には用はないのです。私が話しかけているのはガブリエルなのですから。」

 

えっ...こわ。

コイツ、誰と話しているんだよ.....。

ガブリエルとか設定としては痛すぎだろ....設定だよね?本気じゃないよね?

もしくはガブリエルさんって人が近隣に居るのだろうか?

きっとそうだ!

多分、家を間違えたんじゃないか?

 

「そのっ、多分...家を間違えていると思いますよ。うん。」

 

俺がそう言うと、その人は暫く考えた後に、溜息を吐く。

 

「勤勉なあの子がここまで呼んで返事しないわけがない...か。それもそうですね、すみません。迷惑をおかけしました。まったく、どこに居るのやら...聖別の日は近いというのに.....。」

 

「はぁ....。」

 

どうやらそういうことだったらしい。

俺の家の周りってもしかしてそういう団体の建物が知らないだけであるのだろうか?

それにしても聖別の日ってなんだよ。

終末論者か?

カルトで終末論者とかヤバスギでしょ、二度と会いたくないわ。

そう思いながら、彼女が歩き去ったことを確認して、家の中に入る。

そして、鍵を閉めると溜息を吐きながらも言葉を力なく口にした。

 

「今日はすげぇ変なのに絡まれるなぁ....、春だからか?」

 

そう思いながらも、靴を脱いで家の中へと上がる。

すると、不意に電話が鳴った。

画面を見ると、見覚えのない電話番号。

一体なんだろうか?

受話器を取る。

 

『もしもし....遠藤拓人君はいらっしゃいますか?』

 

すると、向こう側から女の声がする。

見覚えのない声だ。

だが、電話の声なんて厳密に言えば本人の声ではないのだからもしかしたら知っている人なのかもしれない。

俺の名前まで知っているからな。

 

「...遠藤拓人は俺ですが、何か用ですか?」

 

そう言うと、一瞬間があった後に電話の主は声を上げる。

 

『そう...なんだ。見違えた。声も低くなったんだ。...私の事、覚えている?私...胡桃だよ。杜宮胡桃。』

 

「杜宮....胡桃.....?」

 

はて....誰だっけ?

なんか聞き覚えはあるが、具体的には思い出せない。

うーん、でも多分知り合いなんだろうなぁ。

 

「...小学生半ばくらいまで隣の家に住んでて、よく遊んだ...。」

 

小学生半ばくらい....あぁっ!

俺が引っ越すまで、よく遊んだりしていた隣の女の子か。

なんか...ほら、髪が長くて....うん、髪が長かった気がする。

それと可愛かったんじゃないか?うん、多分。

しかし、正直そんな昔の事覚えているなんてすげぇなこの子。

俺なんて、そんなこと完全に忘れていたよ。

でも考えてみたらあの時代が一番楽しかったなぁ。

何気に地元は自然豊かで、しかも女の子とも仲が良かったし...。

 

そう思ってハッと、あることに気づく。

小学校でしかも引っ越した男の子のことを覚えている女の子。

そして態々電話する。

これはもしかして....ラブコメ的なフラグばりばりじゃないか?

だって、そうじゃないとそんな昔の遊んだ友達のことなんか覚えちゃいないだろう。

長い間思い続けた男の子、しかし引っ越してどこに居るのか分からない。

そして高校生になってもまだ思いは続く中、ふと彼がどこに居るのか古い知り合いか何かから聞いてたまらず電話してしまう。

 

うん、あらすじに起こしてみても中々期待値高い典型的なラブコメじゃないか!

まさか俺にも春が来るって奴か?

週末はプラモ作って、淫夢見てゲヘゲヘ笑ってAV見てシコってるようなこの俺に?

マジかよ....神様ありがと!

この好機....逃す手はなし!!

 

「あぁ。覚えているよ。久しぶりだね杜宮さん。」

 

本当は漠然としか覚えてないけど、そんなことを窺わせないようにはっきりと言い切る。

心なしか声もイケボ気味にする....いや、自分の中ではだから実際はどうかは知らないけど。

なんかカッコつけて下の名前で呼ぶか迷ったけどよくよく考えたらキモいし、そんな度胸ないので苗字を呼ぶ。

よく遊んでいた子だし、もしかしたら渾名とかあったかもしれないけど、覚えていないしね。

 

『そう..!良かった...こうして話すの、久しぶりだね。』

 

「あぁっ、引っ越してからはまったく交流することもなかったしな。」

 

そう考えると、あの日から俺の人生にケチ付き始めたのかもしれない。

知らない土地に来て、男友達は出来ても女と話すことは出来ず。

周りの友達が童貞卒業する中、俺だけ童貞。

男女関係なく話せていたあの日が懐かしい。

もし、あの時あのままあそこに留まっていれば、或いは彼女とか出来てたかもなァ。

 

そう思っていると、彼女が口を開く。

 

『あの時....拓人が居なくなるって聞いて、凄く悲しかった。....拓人も同じ気持ちだった...?』

 

彼女はどこかしめやかに俺にそう聞いてくる。

正直、覚えていない。

覚えていないので、多分そんな風には思っていないのは確かだ。

ほらっ、俺とか多分小学生くらいは遊ぶことしか考えていなかったアホだろうし。

覚えていないが、女の子は早熟だしそういう感情も早いのだろう。

 

でもこれはガチで俺の見立てが合ってるんじゃないか?

どうしよ...もしかしたら今どこに居るのか聞かれたりとかするのかな?

遠距離恋愛になっちゃったりして....。

だってあなたが居なくて寂しかった、貴方はどう?とかそれ以外ないもんな!

いや、クールになれ。

あくまで紳士的に対応するんだ。

久しぶりに会った子だ。

電話してみたらなんか幻滅したわみたいなそんな事態は断固避けなければならない。

出会い厨感を、下心を感じさせてはいけない!

間違っても、どしたん?話聞こうか?みたいな感じに思われてはいけないのである。

 

「あぁ、俺も引っ越しの時は、離れ離れになるって分かって...悲しかった。だから、電話してきてくれて嬉しかったよ。ありがとう。」

 

どうだ!

返答としては多分百点満点じゃないか!?

本当はその時のことなんて微塵も覚えていないけど、嘘は方便。

これは優しい嘘ってはっきりわかんだね。

 

『そう...なんだ。私も....。』

 

おっ、返答的にかなり期待度が高いな。

これは良いんじゃないか!

今は亡き母さん、見ていますか?

息子に今、春が来ようとしていますよ。

 

『それで...拓人も気づいているかな。最近、カルマの活動が活発になってる....』

 

「...ん?なんの話ですか?」

 

カルマって何ですか?

逃れられぬカルマ?

なんかまた嫌な予感がしてきたんだけど....。

首を傾げるも、向こうにはそんなこと分かるわけなく、彼女は話を真面目なトーンで続けた。

 

『そっか....、拓人は村を出たから.....。大丈夫、例え分からなくても、私が一から教えるから...。私達、勇者は今戦いを迫られている。少しでも戦力が必要なの...。だからお願い。村に戻って来て!』

 

「えっ,,,、ん?は?」

 

えっ、何々?なんの話?

勇者????

どういうことだろう?

悪戯電話ですかこれ?

 

「えっと...勇者とはどういう....?」

 

そう聞くと、彼女は真面目なトーンでゆっくりと答えた。

 

「落ち着いて聞いて...勇張村生まれは皆、勇者の末裔。今では伐罪者って名前だけど、勇者なの。私もそうだし...拓人もそう。引っ越しだって色々あったのは分かる。でも、今はそうも言ってられない状況なんだよ?」

 

「へ、へー...そうなんだ~。」

 

なんか質の悪いラノベの設定を聞かされているような気分だった。

ちょっとヤバいねこの子。

こんなことだろうと思ったよ、ファッキンゴッド!!

恋の始まりだと胸躍らせた俺の純情を返して欲しい。

多分、何かに勧誘されているのか?

戻って来てとか面白い勧誘の仕方だな....いや、まったく面白くない!

なんか他の所も勧誘のノルマ背負ってそうだし、もしかしたら昔の知り合いで今の自分を知らない相手を誘い込もうとしたんだろうな。

だとしたら何気にショックだな...昔仲が良かったであろう女友達がこうなっているとは....。

 

『それで...今、拓人はどこに住んでるの?』

 

「あっ!と、父さんが帰ってきたみたい。またあとで電話するよ。ハハハ....!」

 

彼女にそう笑いかける。

住所とか教えるわけないだろ間抜けが。

しかし、急に切るのもこの女を刺激してしまうかもしれない。

だからこそ、父が帰ってきたと嘘を吐いたのだ。

 

『そう...。それなら、またあとでかけなおす。私が...』

 

「うん、頼むよ。またね~。」

 

被せるようにそう言うと、電話を切る。

まぁ、後なんかないんですけどね。

まるで流れるような動作で彼女の番号を着信拒否にぶち込んでやるぜ!!

 

...これで一安心だな。

そう思い、溜息を吐く。

それにしたって、家を出る前も出先でも、家に入る時や家の中でさえ変なのに絡まれるなんて....。

 

「今日は厄日だなぁ....。」

 

そう呟くと項垂れながら、誰もいない家の中でプラモをそこらに放るのであった。

 

 

 

 

 

 

とある部屋の中。

まるで一人暮らしの一室のような場所で、二人の幼女が向き合っている。

 

「では、今日話すことは我らが宿主である遠藤拓人の周りがどうにもきな臭くなってきたという件だ。貴様の同僚とは家の前と出先で会っているんだ。どうするんだ!」

 

金髪ショートで、羽衣のような物を来て背中に翼を生やして頭に輪っかが乗っている幼女。

その姿はまるで天使のようであった。

彼女は向かいにぐったりと横になっている女性に語気を荒くして尋ねる。

すると、その女性は彼女の問いに答える。

 

「...そんなこと言われてもぉ、どうしようもなくない?というか、それを言うなら、貴方の所の同僚も会いに来てたよねぇ~。しかもアンタの名前モロだしで。あれ、この子が頭おかしい奴だって思わなかったら結構危なかったんじゃないのぉ?」

 

足の蹄でポリポリと足を掻きながらもそういう黒髪パーカー幼女。

フードの中には艶やかな黒髪と共に、小さな角が少し見える。

それは一方的に詰めてくる金髪幼女に対する抗議の意味もあった。

 

「ぐっ、悪魔が....痛い所突いて来るじゃないか....。ならばどうするかと聞いてるんだ!そこまで言うなら策だって考えているはずだよなぁ!?」

 

怒鳴るようにそう尋ねる彼女。

しかし、悪魔と呼ばれた女性は笑って答える。

 

「そんなの考えているわけないじゃ~ん。怠惰の悪魔に何言ってんのアンタ?」

 

「くそ....役目とはいえ、なんでこんな奴と一つ屋根の下なんだ....。」

 

金髪の女性は頭を抱える。

そんな様子を見て、怠惰の悪魔は笑った。

 

「もう10年以上一緒なのに今更何言ってんの?それに、そんなこと言いながら、だいぶ私に毒されてない?今の貴方はあの子が見ている淫夢動画を一緒に見て、ぐーたらしてるだけじゃん。これで勤勉の天使って名乗れるのかねぇ?ガブリエルちゃ~~ん。」

 

怠惰の悪魔の言葉を聞いて、顔を歪めるガブリエル。

痛い所を突かれたのだ。

そして、咄嗟に取り繕う。

 

「ち、違う!これは貴様をここに閉じ込めていることと同じく、私の役目だ!!変わりゆく現世について勉強しているんだ!!お前と一緒にするでない!!」

 

「ふーん、あっそ。でも、天使の輪っかなんか黒くなってない?」

 

「えっ、嘘!?嘘でしょ!!!?」

 

必死に鏡を覗き込むガブリエル。

しかし、彼女の天使の輪っかは綺麗に光り輝いている。

それを見て、向かいの女が嘘を吐いたことが分かる。

ガブリエルは彼女を睨みつけながら、声をとどろかせた。

 

「ベルフェゴールゥゥゥゥ!!!!」

 

そんな彼女を見て、ただ笑うだけのベルフェゴール。

そして、彼女は不意に切り出した。

 

「まぁ、私の同僚もアンタの同僚も。結局私達がこの子の中に居ることには気づいてなかったみたいだし、イイじゃん。正直、家にまで来た色欲の姿はお笑いだったけど。」

 

「...貴様と私の力が打ち消し合ってニュートラルになっているんだ。分からなくて当然だ。しかし、それ以上に厄介なのは、勇張村の勇者の一人が拓人とコンタクトを取れたということだ。何をするつもりかは知らないけど、もしかすれば奴らは拓人の家に来てしまうかもしれない。勇者は話を聞かないし、大体常識ないからな....。それに、杜宮胡桃と言えばあの.....。」

 

まるで覚えがあるように吐き捨てる彼女。

それに同意するかのように笑うベルフェゴール。

 

「私としては、杜宮ちゃんは知り合いを思い出すから嫌いではないけどねぇ。まぁ、なにはともあれもし勇者勢力に接触されれば、今まで普通に暮らしていた拓人ちゃんが勇者として戦わないといけなくなるかもねいけなくなるかもねぇ。それは流石に避けないと....。」

 

ベルフェゴールの言葉を聞いてガブリエルは頷く。

 

「あぁ。拓人にはまったく勇者としての力がないからな。そうなれば死ぬか辛い目に遭うだけだ。それはなんとしても防がなくては。」

 

引っ越しと言う名の追放処置。

拓人、彼らの宿主には勇者としての力がない。

それは拓人を寄る辺としている二人だから知っていることだった。

そんな彼を戦わせるわけにはいかないのだ。

それは二人とも共通していた。

 

「でも、巻き込まれるかどうかは拓人ちゃんの中に居る私達にはどうしようもなくない?なら、もし巻き込まれた時の為になんか抵抗する為の術くらいは作ってやったら?ほら、勇者が来るみたいだからアイツらの使っていたなんだっけ、...あの伐器だっけ?...なんか眠くなってきたわ。」

 

「...それも一理ある。貴様と同じ意見ということは癪だがな。...おい、寝るな。それなら、私達で伐器っぽく見えるように作ってやる必要があるだろう。一応一度伐器を見たことがあるからな。形を真似るくらいなら....寝るなっ!!」

 

考え込むガブリエルを他所にうとうとし始めるベルフェゴール。

それを見て、耐えきれずに怒鳴るガブリエル。

すると、ベルフェゴールは目を開ける。

 

「ん...?あぁ。私も確か...一度、見た.....かな。うん、多分....めいびー.....。」

 

「おい!しっかりしろ!!今からどういうの作ってやるか考えるんだから!お前も考えろ!!貴様の力も使うんだぞ!!」

 

「んえっ?...なんでぇ.....?」

 

「聖か悪かのどちらかに偏っていたら、明らかに伐器じゃないってバレるからだろうが!!」

 

ガブリエルは意識も絶え絶えのベルフェゴールに苛立ちを隠せない。

しかし、ベルフェゴールもそんな彼女など慣れたものらしく、そのまま頭を床に押し付けてしまう。

 

「あぁ~そっかぁ....それなら、勝手につかっていいから.....うん、作ってて....ほら、拓人...男の子だし、カッコイイの好きだろうから、そんな感じで......」

 

えらくふわふわな要求を言い残すと、彼女は完全に眠りに就いてしまう。

ガブリエルは座布団から立ち上がると、横たわる彼女をゲシゲシと蹴りつける。

しかし一向に目覚める気配がない為、深く溜息を吐く。

 

「あぁ~~!!もういい...いつもこうだ。私ばっかり面倒な事ばかり....私だけの手柄にするからなっ!!あとで文句言うなよ!!!」

 

そう言うと、彼女は席に座って図面を引き始める。

そして一度見た伐器を思い出そうとする。

参考にするなら、今まで見た中で一番強いもの...だが。

 

「...よく考えたら下々の伐器なんかよく見てなかったわ。...どうしよう.....。」

 

茫然と彼女はそう呟く。

そして机に突っ伏したのだった。




保護者面幼女流行らせコラ!!!
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