俺の中の天使と悪魔が幼女なことは俺はまだ知らない。   作:胡椒こしょこしょ

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ヤンデレ回


いつから電話の女が一番マシだと錯覚していた?

とある平日。

自然豊かな風景に馴染むかのようにある小学校。

その教室の一つで、一人の男の子と女の子が隣り合っていた。

 

「今日も....放課後、私の家に来て。あそぼ.....。」

 

少女は自分から少年の腕に腕を絡ませて、そう口にする。

すると、少年は困った顔で笑った。

 

「いや、それが,,,今日は祐太も連れて、南条さんの家に遊びに行くみたいだから....。」

 

「ふぅーん、南条....さん....。」

 

少年がそう言うと、少女は目を細める。

しかし、少年はそんなことに気づくこともなく声を上げた。

 

「そうだ!それなら、胡桃も来たら良いじゃん!いっぱい居た方が、楽しいし!」

 

少年が笑顔を向けると、絆されるように彼女も笑顔を浮かべた。

しかし、組んでいた腕を放す。

 

「ううん、私は遠慮...する。」

 

「えんりょ...?...あぁ、行かないってことか。おーけー、じゃあまた今度遊ぼう。」

 

そう言う少年。

すると少女はそんな少年に満面の笑みを浮かべて、言葉を口にした。

 

「うん...“また今度”.....。」

 

 

放課後。

帰り道。

一人の少年が浮かない顔で歩いている。

すると、後ろから一人の少女が隣に歩み寄ってきた。

 

「どうしたの...?南条さんと遊ぶんじゃなかったの....?」

 

彼女がそう聞くと、少年は彼女の問いに答える。

 

「いや、なんかいきなり遊ぶのやめるとか言ってて..俺は駄目なんだって....。」

 

そう言うと、彼女も悲しそうに顔を歪める。

 

「そう....なんだ...可哀想....あんなに、楽しみにしてたのにね....。酷いね、南条さん....。」

 

彼女はそう言うと、不意に少年に目を合わせて口を言葉を続けた。

 

「それなら...私とあそぼ。...私と、拓人の...二人きりで....。」

 

少女がどことなく歳不相応の妖艶さすら感じさせるような上目遣いで少年の腕を取る。

すると、少年は首を傾げながらも笑顔を浮かべた。

 

「じゃあそうするか!ありがと、胡桃!それで、家で何をするんだ?」

 

少年は不意にそう彼女に尋ねる。

すると、彼女は少し考え込むかのような仕草をして、返答した。

 

「そ、その...笑わないで...?お医者さんごっこ....。」

 

「なにそれ?おままごとのお医者さんバージョン的な奴か?」

 

少年が首を傾げると、彼女は頷く。

そして俯く。

 

「私、お医者さんになりたいから....その...、いや....子供っぽいよね、忘れて....。」

 

「そうかぁ?ごっこ遊びなんかいくらでもやってるし、それなら中休みとかに教室中駆け回っている俺の方が多分子供だと思うぞ?それに、凄いじゃんお医者さんになりたいって!付き合ってやる!胡桃がお医者さんなら、俺は患者さん?」

 

「うん....ありがとう、拓人。」

 

「良いって!友達じゃん!じゃ、早く行こうぜ!」

 

彼はそう言って胡桃の手を引いた。

胡桃の前を先行する彼。

だからこそ、彼女が俯きながらも浮かべた笑みの意味を純粋な少年が気づくことはない。

 

(...うわぁ、この歳でなんだこの女....。厳重注意しなければ.....。)

 

ただ一人、彼の内に秘めたる天使を除いて。

 

 

 

 

 

 

 

連続的変人邂逅体験をして、数日。

あの日とは打って変わって、俺は平穏な日常を謳歌していた。

ていうか毎日カルトやあたおかに会う確率自体低いだろうし、それは当然なのだが。

とはいっても、俺の住む地域にもあんな連中が居る。

それは日常に潜む闇に触れたような気分だった。

 

「...やっぱネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲があるかないかでリビングの雰囲気が全然違うな。」

 

俺はこの数日で作ったプラモをリビングに飾って、離れた所からの内観を見ていた。

やっぱり完成度が違うだけあって、置くだけでまるで部屋の中が違いが分かる男の部屋といった様相になる。

まさかプラモ一つ置くだけでダンディズムに入門することが出来るなんて....。

背伸びがしたいティーンにはお勧めのプラモだな。

 

父が居ると、こんな所にプラモを置いたことについて何か言うかもしれないが、どうせあまり帰ってこないのだからそこら辺については考える必要もないか。

居ない者には選択権はないのだ。

居ない者の話は止すとして、今日のご飯をどうするか考えないと....。

今日は色々授業があったし、考えるのは面倒くさいな....。

出前でも頼むか....。

 

そう思っていると、不意にインターフォンが鳴った。

今は夕方。

こんな時間に家に訪ねてくる知り合いは居ない。

というか俺はあんまり友達は居ない。

友達は作らない、人間強度が下がるから...というわけでもないが、人付き合いはあまり得意な方ではない。

正直、面倒くさい。

 

ということは、まさか出前か....?

俺は既に未来を掴んでいたのか.....。

そんなバカなことを考えながらも、玄関まで向かって覗き穴を覗き見る。

すると、そこにはセーラー服を身に纏ったショートヘアーの少女が一人立っている。

見た目は...可愛いというより綺麗系だ。

...正直、見覚えがない。

誰だ....?

前の宗教勧誘の件も相まって知らない奴が家の前に立っていると警戒してしまうのだ。

取り敢えずチェーンを掛けて対応することにしよう。

 

扉にチェーンを掛けて、鍵を開ける。

そして扉をゆっくりと開き、間から顔を覗かせる。

覗かせた顔を彼女はジッと見返している。

じかに見ると怖くなるほど整った顔立ちしてんな、コイツ。

 

「どちら様でしょうか?」

 

俺が尋ねると、彼女は小さく笑みを浮かべた。

 

「その声....多分、遠藤拓人...君、ですよね?」

 

「...だとしたらなんすか。」

 

俺がそう尋ねると、彼女はにっこりと笑う。

 

「やっぱり、私....胡桃だよ....、杜宮胡桃....。」

 

胡桃....杜宮胡桃?

はて、なんか最近どっかで聞いたような....。

アッ!!勇者がどうのこうの言っていたヤバい昔馴染みか!?

正直あの日色んなヤバいのに会っているせいで、電話越しだった分危険度が一番低かった子を忘れていたのだ。

...てか、待てよ。

 

「私、あの後電話してくれるって聞いたのに....着信拒否になってて、なんでなんだろう..って。」

 

....なんで住所教えてないのに家の前に居るんだ?

正直、俺はSNSでも自分の家を上げてないし、そもそも故郷の方でも今の俺の家を知っている人は少ないはずだ。

てかそもそも電話の時点で、住所喋ってないしな!

となると、俺の住所を突き止める術が本格的にないのである。

 

考えながらも目の前の存在に戦慄する俺。

しかしそんなことは露知らず、彼女はずっとくっちゃべっている。

 

「それで...私、気づいたの。話したければ会いに来いってことかなっ...て。」

 

「いや、なんで来たのかは正直どうでもいいわ。どうやって来たの?いや、マジでそれを詳しく知りたいわ。」

 

俺がそう言うと、彼女はニコリと笑った。

 

「会いたくて会いたくて震えたから....かな?」

 

「お前面白いな。じゃあ帰ってくれ。」

 

会いたいと思っただけで会えるのであれば世の中探偵は必要ねぇんだよ!

それが許されるのは世界的な歌姫だけなんだよ!!

どうにもまともに答える気がないようなので、ドアを閉めようとする。

すると、コイツは急にドアの間に手を差し込んでくる。

 

「あぶなっ...!何してんだッ!!!」

 

咄嗟に扉を閉めるのを止めると、彼女に怒鳴る。

それもそのはず、あやうく俺は彼女の指を勢いよく挟みそうになったのだ。

逆に言えば彼女は自分の指がとんでもないことになるかもしれないのに、そのような行為に出たということになる。

控え目に言っておかしいよ....。

 

怒鳴る俺を見て、彼女はにっこりと笑う。

 

「心配してくれるんだ...やっぱり優しいね、拓人。背も伸びたし、身体も筋肉質になったんだね。」

 

「いや、もう本当に勘弁してもらえませんか?帰ってくださいよ。」

 

何食わぬ顔で会話しようとする胡桃に必死に頼み込む。

すると、彼女はなんだか泣きそうな顔で俺の顔を上目遣いで見る。

 

「な...なんで帰そうとするの?わ、私....何かしちゃった....?」

 

いや、可愛いとは思います。

顔立ち整ってるからな。

でも、流石に顔の良さだけでこの状況をなんとかしようとするのは流石に無理があるだろ。

 

「何かって...住所も教えてないのに家に来て、どうやってここを突き止めたのか聞いても真面目に答えないような不審者をホイホイ家に居れるわけないだろ。小学生じゃあるまいし....。もう、とにかく一旦帰って?ホント...言う事聞かないのであれば、警察を呼びますよ?」

 

そう言った瞬間、彼女が全然理解できないと言った表情で口を開く。

 

「なんで....?せっかく久しぶりに会えると思ったのに...拓人はもう、変わってしまったの?...ねぇ、拓人....。」

 

その後もなにやらうだうだと言っている胡桃。

コイツが居ると出前も頼めないし、腹も空いて来たし、閉めようと思ってもコイツすげぇ力で扉を持っているから閉められないし!!

もう、本当嫌!!

あの日だけならまだしも、今日も厄日かよいい加減にしろよ。

段々とイライラが募ってくる。

そして、なんかもう面倒くさくなってきた。

もう、なにもかも白状して、この子には帰ってもらおう。

もしかすれば、幻滅されるかもしれないがそれで帰ってくれるならそれで構わない。

そうと決めると、俺は彼女に語気強めにぶちまけたのだ。

 

「あのねぇ!本当のことを言うとさ、俺お前のことなんざ覚えてないんだわぁ!!」

 

「え.....?」

 

呆気にとられる彼女。

その顔を見ると、少し良心が痛んだが、それでもこの子がヤバい事には変わりない。

効いているのであれば、続けるまでだ。

 

「あの時、俺彼女とか欲しかったから地元だった所の女の子が良い感じの雰囲気で話しかけてきたから合わせただけで、本当はお前の事なんてあんまり覚えてないの!それに、そうと思えばいきなり勇者だの村に帰れだのバカげたこと抜かし始めるから、うわっコイツやベぇなって、話したくないなって思って着信拒否にしてたんだ。それなのに...こんな所にまで来られても迷惑なんだよ!!」

 

正直、これはないですね。

女の子にこんなこと言うとか他人であればぶっ飛ばされて然るべきだと思う。

それでも、この子が怖いのだ。

恨むのなら恨んでもらっても良いし、別に正当化するつもりもない。

ただなんか勇者云々変な事言う奴が何故か俺の家を突き止めた事実が怖いので...帰って欲しい。

 

俺がそう言うと、彼女は顔を俯かせる。

そしてポタポタと家の前の石段に水滴が落ちる。

 

「そんな...酷いよ...拓人....。」

 

彼女はぽつりぽつりと涙を流して、立ち尽くしている。

....泣かせてしまった。

言い過ぎだったか....。

でも、住所バレてる時点で俺も被害者な気がするが.....。

だけど泣かせてしまったのはあまり良くないとは思う。

 

「...いや、その...言い過ぎた。でも、迷惑なのは事実なんだ。その、ほら。遠くまで来たならこれで帰って、なんなら多分余るから飯でも食べれば良いじゃん。」

 

そう言って財布から一万円を出して彼女に渡す。

これでなんとか勘弁してもらえませんかね....。

そう思うも、彼女はそれを受け取ると俺を見る。

 

「こんなの要らない....。私は、拓人!君と....!」

 

涙ながらに言ってくる胡桃。

だが、ここで絆されるわけにはいかない。

扉を閉めようとすると、彼女は扉を強く掴む。

そして膝を地面に着いた。

 

「不快に思ったなら謝るから....お願い...入れてください...ごめんなさい....許してください...許して...ごめんなさい.....許してください..!迷惑かけないし、言われたことなんでもしますから....!」

 

「ちょっ、声がデカい....、あっ.....!」

 

扉の隙間から周りの住民が何事かと外に出て、こちらを覗き見ていることが分かった。

そしてこちらを見て、こそこそと話している。

今、他人から見ればどのように見えているか。

泣き崩れて必死に扉に追いすがる少女に必死に扉を閉めようとする男。

どちらが悪者に見えるかなんて一目瞭然だ。

近所の人たちの目が俺に刺さる。

 

くそっ....このままじゃあらぬ誤解を招いてしまう.....!

そう思った俺はチェーンを外して、扉を開ける。

 

「ちょっ、周りの人に見られているから泣くの止めてくれ!お願い!本当に頼むから!マジで!!」

 

「入れて....入れてください....入れて.....」

 

顔を伏せてそう懇願する彼女。

このままだとまた泣き出してしまいそうだ。

これではまた同じことの繰り返しだ。

家に入れることに少し躊躇う。

...だが、入れねばこの騒ぎは更に広がるだけだろう。

しょうがない....腹を括るか....。

 

「分かった!分かったから取り敢えず家に入って良いから!!....うおっ!」

 

そう言った瞬間、彼女は弾かれるようにこちらの胸に飛び込んでくる。

咄嗟に受け止める。

手を離す為に、自ずと扉が閉じた。

尻もちを突く中、腕の中では彼女が胸に顔を埋めている。

そして、彼女はゆっくりと顔を上げて俺の顔を見た。

その目は、どこか濁っていた。

 

「やっぱり...昔と同じだね...。私が泣いていたら、いつも絶対に手を差し伸べてくれるの.....。」

 

彼女は濁った眼のまま、笑みを浮かべる。

一目見て分かった、コイツ....ヤバい。

この前は他の連中がヤバいと思って、電話だけだったこの子のことなど頭からすっぽ抜けていた。

でも....今分かった。

この女が...俺にとってはぶっちぎりでヤバい。

...なんだ?俺は化物とでも相対しているのか?

そう思う程の戦慄が走り、身体が震える。

だが、その怯えを抑えながらも俺は言葉を口にした。

 

「だから....昔のことなんか言われてもあんまり覚えてないんだって.....。」

 

名前も覚えてないし、そんな誰かを助けた覚えなんかない。

だからこそ諭すようにそう口にする。

しかし、彼女は俺の言葉に答えず顔を再度胸に埋めてくるだけだった。

 

 

 

 

 

 

時刻は既に9時。

家にコイツが居るのは諦めて出前の電話をした後、件のヤバい女が目の前の机に座る。

彼女は楽しそうに家の中を見回しているが、俺は微塵も気が休まらない。

なんでこんなことになってしまったのか......。

まさか泣き落としだったなんて.....。

女が信じられなくなりそうだった。

 

「....なぁ、アンタ。髪切ったのか?」

 

話すことが見つからず、俺はどうでもいいようなことを口にする

てかそもそも髪型変わったも何も、俺にとってはコイツの印象が朧気に可愛くて髪長かったよな程度の認識だからこういう話題しか振れないのだ。

そもそも小学生時代の髪型なんだから変わってるに決まってるだろ。

ずっと同じ髪型の奴なんか居ねぇよ、馬鹿か?

自分の発言にほとほと呆れかえっているが、彼女は窺うような目つきで俺に聞いた。

 

「えっと...結構前に...長い方が良かった....?」

 

「いや、その会話のムードは無理でしょ。お前、曲がりなりにも俺騙してこの家に入ってきたんだから。なんなら警察呼んでも良い事案のはずだしな。」

 

まぁ呼ばないのだが。

呼べばまた同じようなことされるはずだ。

近所の人でもまずいのに、警察だと洒落にならない。

そもそも昔はさておき、今は長い方がよかったとか和やかに話す間柄ではないのだ。

 

すると、彼女は悪びれる様子もなく笑う。

 

「ごめんね....でも、私気づいたから。欲しい物がある時は、手段を選んでられないって....。」

 

「怖い」

 

こんなのとどうやって話せばいいんですか?

お母さん助けて!親父でも妥協する!!

助けを求めるも、誰も来やしない。

せめて出前の兄ちゃんでも来てくれればいいのに、どうやら俺には悪運がないようだ。

 

いや、別に話題を選ぶ必要はないじゃないか。

聞く必要のあることを聞くだけだ。

そう、最も聞くべきことを俺はまだ聞いていないのだ。

まぁ、この前の電話から大体内容は察してはいるが。

 

「....それで、アンタはどうしてここに来た?どうやって来たのかも知りたいが、まともに教えてくれないみたいだしな。」

 

俺が言うと、彼女は少し表情を曇らせる。

 

「そのっ....呼び捨てでいい。...昔はそうだし....。」

 

「でも、それは昔だ。今じゃない。第一、あんまりアンタのこと覚えてないって言っただろ。」

 

正直、呼び名なんて今更どうでも良いだろ。

そもそも小学生時代の幼馴染ならまだしも疎遠になっている女の子だぞ?

それにここまでのヤバさを見せつけられたらアンタ呼びになっても仕方ないだろ。

呼び捨てというのはそこそこの親しさがなければ使われないって一つ勉強になりましたね!

自分の恐怖を緩和する為に、こっそり心の中でマウントを取ると俺は話を続ける。

 

「で、なんでここに来た。それすら話さないなら最早俺はアンタと話すことはないな。」

 

「待って...分かった...話す、話すから。」

 

どうやら話してくれるようだ。

ここでまた冗談なんか言いやがったら今日は俺がネカフェで寝ることにしよう。

彼女を出すのは難しくても、俺が出るのは簡単だ。

 

「前に電話で言ったこと、覚えている。」

 

「あぁ。」

 

およそ正気とは思えないような出来の悪いラノベの設定群みたいな話だろ?

俺は内心、馬鹿にしながらも彼女の話を聞く。

 

「私は...君を勇張村に連れ戻しに来た。勇者の末裔である君を。これは、私達の戦力増加もあるけど、もう一つは君の安全の確保でもあるんだよ?」

 

おい、コイツ俺の身の安全についての話までし始めたよ。

今一番俺の身の安全を脅かしている奴が何言ってんだよ。

鏡じっくりと見てこいよ、その小綺麗な顔をよぉ!!

 

「それで?俺は何に狙われているんだ?なんだ?そのカルマとかいう活発になってる何かか?」

 

まぁ今の状況こそ逃れられぬカルマなんだが。

僕を死刑にしてください!(やけくそ)

はぁ~、早く出前の兄ちゃん来ないかなぁ....。

ちゃんと話振ってあげてる俺偉くない?

こんなん、数分で聞く気なくすわ。

 

しかしそんな俺とは対照的に彼女は真面目な顔で話を続ける。

 

「それもあるけど....一番最悪なのは七つの大罪の悪魔どもだよ...。アイツらは、私達が邪魔だから私達末裔の魂を検知すればすぐ襲いに来る.....。って、どうしたの!?」

 

不思議そうな顔をする彼女。

その原因はただ一つ。

話の途中で俺が耐えきれずに噴き出してしまったからだ。

話の荒唐無稽さもそうだが、なにせ七つの大罪だよ?

コイツの電話が来た日の朝に出くわした奴じゃんwww

変な所で繋がって笑ってしまったのだ。

それにしてもまさか宗教間抗争でも起きるってこと?

...だとしたら、笑いごとじゃないなぁ。

コイツはつまりその抗争に巻き込もうとしているんだろ?

ヤバスギでしょ、今すぐ追い出したいわこんな危険人物。

 

「ぷふっ...wいや、あのなぁ...wそんなカルトに入るわけにも、宗教抗争に巻き込まれるわけにはいかないっていうか...ククッww」

 

「んえっ!?わ、私...宗教の話なんかしてない.....。」

 

なんか可愛い声を上げる彼女。

でも今更宗教じゃないよムーブされても遅いよぉ~。

そこまで俺は馬鹿じゃない、舐めないで欲しい。

見た目が良いからって男がみんな思い通りになると思うなよ!

...そうだ、コイツは見た目が良い!

要するにもしかすれば美人局的なサムシングで、本来はコイツに釣られた俺をカルトが囲う気なのかもしれない

そんなことされて堪るか!!

 

「いや、流石にさぁ。それは無理はあるでしょ。つまりお前はその勇者?とかなんとか言ってるが要するにカルトに俺を誘おうとしていた。しかも前に一回来た七つの大罪とかいう悪魔崇拝のやべー奴よりも先に俺を獲得しようとして。どうせ昔馴染み全員に話をしてるんだろ?てか勇者教ってなんだよ。メ〇テンのメシア教みたいな物か?なんにせよ、俺は宗教なんか興味ねーんだよ。二度と来るんじゃねぇよ。」

 

どうだ、はっきりと断ってやったぞ。

俺はノーと言える日本人なんだ。

お前らのカモになんかならねぇ。

俺が心の中で勝ち誇っていると、彼女は呆気にとられた顔になる。

...が、その後すぐにむくれた。

 

「宗教なんかじゃない。それに....私は、拓人しか見えてないから....。」

 

「はいはい、見苦しい言い訳だなぁ....。」

 

そう言うと、彼女はムキになったのか真っ直ぐに俺の目を見つめる。

さっきの濁った眼とは違った真摯な目線。

な、なんだよ.....。

戸惑う俺を他所に彼女は言葉を口にした。

 

「それなら...証拠を見せる。」

 

「証拠....?なんだぁ?空中浮遊でもするってか?」

 

俺は揶揄うように彼女に言った。

しかし彼女は表情一つ変えない。

ただ口を開いた。

 

「....<ライラプス>。」

 

そう言うと、手元には犬の犬歯のように二股に分かれた鋭利な切っ先を持つ槍が現れる。

足元には半透明上ではあるもののシェパードくらいの大きさの猟犬が彼女の足に擦り寄っている。

そして、身体を胸当てや籠手を身に纏いその風貌はいかにも軽装の騎士と言った様子だった。

 

「...これで、どうかな?勇者は宗教なんかじゃない、実際に居るんだよ。」

 

「....どういう手品だ。早着替えか?」

 

目の前の出来事を信じられない。

そりゃ光に包まれたかと思えば、目の前の女が騎士みたいになってて凶器を手にして透明な犬連れてるんだぞ?

もう色々詰め込み過ぎで処理できないんですけど....。

ただ、手品としても無理があると言うことは分かる。

てか、そもそも早着替えにしても早すぎる。

こんなことはクロックアップするか時間止めないと無理だ。

だとすれば....マジなのか......。

えぇ.....でもなぁ......そんなマンガみたいなこと.....。

 

困惑する俺を見て、彼女は口を開く。

 

「すぐには信じられないかもしれない。...でも、れっきとした事実。貴方の居場所を探し当てたのもこの力によるものなんだよ?」

 

「は....?なんだそれ、どういうことだよ。」

 

俺が聞くと、彼女は屈んで犬を撫で始める。

 

「この子は、私が顔と名前を記憶している獲物も探し当てて決して逃がさない....。」

 

「えっ!?俺獲物!?獲物なの!!?」

 

何...?その猟犬的な感じ。

そうだとしたら獲物扱いの俺って今結構危ないんんじゃ....。

怯える俺。

そんな俺を見て、彼女は微笑した。

何わろてんねん。

 

「アハハ...大丈夫。探すことを命令していたから、襲ったりしないよ。獲物っていうのは言葉の綾...っていうか。」

 

「命令したら襲うってことじゃないか.....たまげたなぁ。」

 

言外に脅されてるんですが。

てか、その前に俺も勇者とかコイツ言ってるけど....。

 

「...まぁ、この目で見たことだし、勇者云々は一旦信じてやる。でも俺、そんな出鱈目早着替えも出来なければ武器も出ないし、ワンちゃんも出てこないぞ。勇者末裔云々はお前の勘違いじゃないか?」

 

俺はそんな面白体質ではない。

そんなものホイホイ出せるんだったらマジシャンになってるわ。

てか身体から武器が出るって滅茶苦茶危険じゃねぇか。

さっきとは別の意味で危険人物だよ。

 

そんな俺に彼女は優しく微笑んだ。

なんか、出来の悪い子供を微笑まし気に見る親みたいな目線だった。

まぁ、そんな目線は長らく味わっちゃいないが。

 

「それは勇張村での鍛錬が行われる前に拓人が引っ越したから、まだ目覚めてないだけだと私は思ってる。大丈夫、今からでも村に戻れば....。それにしても...さっき七つの大罪が来たって言っていたのはどういう....。」

 

彼女は俺に詰め寄る。

そう彼女が言いかけた瞬間、着信音が鳴り響く。

これは俺の携帯の物でも、自宅電話の物でもない。

つか運命は流石に笑ってしまうからやめろ。

すると、彼女は逡巡しながらも携帯を耳に当てた。

 

「...えぇ。分かった。...今?どうしても私じゃなきゃダメなの?....分かった、分かったから。....御免、もっと話したかったけどちょっと急用が入っちゃって...。その話は今度また聞くから...今日は家から出ない方が良いよ。」

 

そう言うと、彼女は窓の方へと歩み寄る。

そして鍵を開錠した。

 

「ちょっ、お前何を....!」

 

「またね。」

 

そう言い残すと窓を開け放つ。

冷たい外気が家の中に吹き込む。

そして、その瞬間彼女は凄い勢いで窓からどこかへと飛び去って行った。

強風が吹き荒び、家の中が少し荒れる。

棚に飾っていたネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲が落ちた...ってか、折れたァ!?

 

「俺のアームストロング砲がぁ!!...なんだこれ、無茶苦茶だろ。」

 

アームストロング砲に駆け寄りながらも、窓の方を見て呟く。

あんな跳躍力およそ人間では出し得ない物だ。

今見て来たもの全て夢だったと言われても受け入れる程の摩訶不思議。

常識はずれな光景だ。

だが、実際に目の前で起きたことなのだ。

 

プラモをゆっくりと棚に戻すと、自分の手を見つめる。

彼女は俺が目覚めていないだけと言った。

もし、そうだとしたら...。

 

「俺に...あんな力が.....?」

 

それに、彼女は七つの大罪と言った時に血相を変えていた。

そしてあの時の黒ギャル。

もしかして俺は.....。

 

「かなり不味い物に巻きこまれつつあるのか.....?」

 

杜宮胡桃。

アレと対立関係にあるのが七つの大罪。

あんな身体能力や特異体質がデフォで相手もそれに拮抗するような奴らとしたら....。

巻き込まれた時、俺はどうなってしまうんだ。

そう少し考える。

....だが、結論なんて出ない。

そもそも一旦信じると言ったが、今でもさっき見たのは夢だと言われた方が頷けるのだ。

リアリティに欠如している。

それに.....。

 

「...このままずっと考えれば、その内中二病とか再発しそうだ。わかんねぇし、あんな能力みたいな物俺にはないんだから、考えてもしょうがないだろ.....。」

 

真実か幻かさておき、俺にあんなことは出来ない。

だとすれば出来ないことや知らないことをずっと考えても仕方ないし、それはとっても煩わしい。

そんなことに頭を占められることが面倒だ。

だから、俺は思考を放棄した。

目にした現実離れした光景を取り敢えず一度頭の隅に置いといたのだ。

それにしても....。

 

「アイツ、また来るのかよ.....。」

 

今度は絶対居留守しよう。

そう決断すると、インターフォンが鳴る。

なんだ?

玄関に向かって覗き穴を見れば、出前の兄ちゃんだった。

扉を開ける。

 

「遅くなってすみません!餃子チャーハンセット二人前で2千800円になります。」

 

「....あ。」

 

そう言えば....どうせ夜遅いし飯食わせたらなんか満足して帰ってくんないかなって思って奴の分の飯も用意したんだ。

....いや、アイツもう居ないんだけど。

...えっ?俺これ二人前食わないといけないの?

そんでもって二人前分の金払わないといけないの?

...マジかよぉ.......。

 

「あぁ...はい。」

 

肩を落としながら金を支払う。

そして受け取った出前を見て、溜息を吐いた。

大盛と普通。

うん、どう考えても腹に全部は入らないな。

払う必要のない金を払うハメになった......。

 

 

 

 

 

 

「....コイツ、本当これ好きだな。どこが良いんだ?これ。」

 

「完成度が高い~とか言ってたでしょぉ~。つまりはそういうことなんだよぉ!」

 

拓人の心中。

一つの部屋で相も変わらず二人の幼女は宿主の動向を見ていた。

宿主の少年はおよそ部屋の内観には合っていないようなプラモデルを居間に飾って悦に浸っている。

それを見て、ガブリエルは純粋な疑問から首を傾げ、ベルフェゴールはそういう物だと思考を放棄する。

 

いつも通りの二人の日常。

しかし、そんな日常を揺るがす出来事が起こる。

宿主の少年が玄関に赴く。

そしてそこに居たのは、一人の少女だ。

その少女を見た瞬間、ガブリエルは血相を変えた。

 

「うわぁ....懸念していた奴がまさかこんな早く.....家まで突き止めるなんておかしいだろ....。」

 

「あっ、杜宮ちゃんだぁ~。おっすおっすぅ~!」

 

ベルフェゴールは呑気に手を挙げている。

それを睨みつけるガブリエル。

 

「貴様、何を呑気に....っ!あの、杜宮胡桃が来たんだぞ!あの!およそ私が今まで見た勇者の血族共の中でもぶっちぎりでイカレてるあの女が!私達の拓人にコンタクトを取ってきた!!」

 

「何を騒いでるのか知らないけど、女の子が会いに来ただけでしょぉ~?も~、うるさいんだから。娘を持った父親じゃないんだからいちいち目くじらを立てなくて良いじゃ~ん。あと私達の拓人ちゃんと言うより拓人ちゃんの私達じゃないかなぁ?拓人 in 私達じゃなくて、私達 in 拓人ちゃんなんだから。」

 

頭を抱えて取り乱しているガブリエルを見て、苦笑いを浮かべつつ冷静に突っ込む。

しかし、ガブリエルはそんな彼女の言葉には聞き耳を持たない。

 

「何を呑気なことを....、幼稚園時代から拓人周りを牽制し、小学生で拓人患者にお医者さんごっこしていたような女だぞ...。早熟なんてレベルじゃない、なんておぞましさ....。」

 

「えー、別に早熟じゃないと思うけどなぁ~。嫉妬や色欲だってキチンと年齢によって強弱があれど人間が最初から持っている欲望だよ。怠惰の私が言うんだから間違いないよ。それに、私は嫉妬のあの子を思い出すから嫌いじゃないんだよねぇ、杜宮ちゃん。それにしても綺麗になったもんだねぇ。」

 

「悪魔に知り合いの悪魔に似ているとか言われる人間ってどうなんだ.....?」

 

昔の知り合いを思い出すベルフェゴールを呆れた顔で見るガブリエル。

やたらと胡桃を擁護するベルフェゴールの言葉に溜息を吐く。

そしてまた声を上げた。

 

「ほら見ろ!泣き落としだ!汚い!流石杜宮汚いなぁ!成長して性悪さに磨きがかかっているよ!これを見てもまだ気にする必要がないとでも言うのか貴様はぁ!?」

 

「ほら、拓人ちゃんの見てたアニメの女の子が言ってたじゃん。恋と戦争では手段を選ばないって。」

 

「それはイギリス人はっていう格言だ!奴は日本人だ!!...いや、人種云々じゃなくて!どうすんだ!?このまま行けばもしかすれば拓人が勇者の末裔の力を知ることになるぞ!そうなれば将棋で言う王手、チェスで言うチェックメイト!戦いに巻き込まれるのも時間の問題だ!ただでさえ家に貴様の同僚が押し掛ける程なんだからなっ!!!」

 

胡桃を指さしながらベルフェゴールに対して悲痛にそう叫ぶ彼女。

すると、ベルフェゴールは横になってだらけながら返答する。

 

「その時はその時だよ....。ふぁぁ~、私は拓人ちゃんを信じてま~す。だからそこら辺一任するねぇ~。」

 

「...貴様のそれはただの怠け心だ...痴れ者め......。いいかっ!戦いというのは元来悲しみを生み出す物だ!そして拓人には明らかに勇者の素質はない!そんな男が巻き込まれてみろ!!つよい感情で魔力は暴走するだろうし、ここらへんは涙の雨で水浸しになるんだぞ!!」

 

「...それは嫌だなぁ。ここ居心地良いもん。」

 

ガブリエルの必死の訴えに同意するベルフェゴール。

そしてすかさず、言葉を口にするベルフェゴール。

 

「まぁ、それなら私達がなんとか支えて行けばいいんじゃない?こういう時はどうしようもないんだからさ。....あ。」

 

「なんだ.....あっ。」

 

二人は話ながらも再び拓人の様子に目を向ける。

そして素っ頓狂な声を上げた。

それは、杜宮胡桃が勇者としての装甲を身に纏い、自身の力を拓人に見せていたいのだ。

 

「あぁっーー!!私の懸念が....懸念が現実になっちゃったよ!!どうするんだこれは...どうすればいいのだ!!?拓人が魂装見ちゃったぞ!!!」

 

「へーワンちゃん連れてるんだぁ。それとも魂が犬の形でもしてるのかなぁ?とんだイヌ娘だね。」

 

頭を抱えるガブリエルに、笑顔を浮かべながらも彼女を揶揄するベルフェゴール。

彼女は村に戻るように口にし、犬の力の説明し始める。

すると、拓人は彼女の言葉に戸惑いながらも返した。

 

『...まぁ、この目で見たことだし、勇者云々は一旦信じてやる。でも俺、そんな出鱈目早着替えも出来なければ武器も出ないし、ワンちゃんも出てこないぞ。勇者末裔云々はお前の勘違いじゃないか?』

 

「そう!偉い!偉いぞ拓人!!本当は勘違いじゃないけど、そっちの方が都合が良いからその認識でいいぞ!なんなら目に見えたことも信じるな!!」

 

「いや、流石に目の前で見たことは信じるしかないんじゃない?まぁ、でも慎重だねぇ。」

 

ガブリエルは拳を握りしめて熱心に宿主である少年を褒める。

そんな彼女を横目で見ながら頬杖をついて、少年を見つめるベルフェゴール。

すると、そんな拓人の言葉に彼女は返答する。

 

『それは勇張村での鍛錬が行われる前に拓人が引っ越したから、まだ目覚めてないだけだと私は思ってる。大丈夫、今からでも村に戻れば....。それにしても...さっき七つの大罪が来たって言っていたのはどういう....。』

 

「だからぁ!拓人には勇者としての才能はないの!!!村に戻っても何の意味もないんだってばぁ!!てか、七つの大罪がどうとか言うなら、その一人ここに居るしなぁ!!!」

 

「は~い、怠惰で~す!なにもしたくないし、外にも出たくありませぇ~ん!」

 

地団駄を踏みながらも写る胡桃の顔に指を突きつけるガブリエル。

そして、ベルフェゴールにも指を突きつける。

それを見て、にっこりと笑顔を浮かべて寝そべりながら手を振るベルフェゴール。

 

「はぁ....そもそも私みたいな大天使とあそこの白痴のような悪魔が内に居るような人間のことなんて、赤の他人になんか分かるわけないのだ...、私たちのように内に居る者以外にな....。」

 

「まぁ、私達の存在が分かったとしても普通は対立している物と考えるから適切な指導なんか出来ないよねぇ。実際には二人してここで腐ってるんだからさぁ。」

 

「私は貴様を抑制するのが仕事だ。つまり、仕事を今もしているんだ、貴様と一緒にするな!」

 

「はいはい。」

 

肩を竦めるガブリエルに同調するベルフェゴール。

しかし、悪魔なんかに一緒にされたことに気に喰わないガブリエルは彼女を睨みつける。

そしてそんなことにも慣れているかのようにベルフェゴールもそんな彼女の視線を流す。

 

そして急用とやらで窓から出て行く胡桃。

強風が起きて、棚のプラモが落ちた。

それを見て、悲痛な声を上げる拓人。

そして、彼は自分の手を見て、呟く。

 

『俺に...あんな力が.....?』

 

「(そんな力)ないです。素質ないからあんな芸当無理なんだよ....。クソッ、杜宮め....もし拓人が本気にしちゃったらどうするんだ....。責任取ってくれるって言うのかたわけが.....。」

 

忌々し気に歯を食いしばるガブリエル。

そんな彼女を見て、苦笑いを浮かべるベルフェゴール。

 

「まぁ、多分大丈夫だと思うよ。だって....」

 

『...このままずっと考えれば、その内中二病とか再発しそうだ。わかんねぇし、あんな能力みたいな物俺にはないんだから、考えてもしょうがないだろ.....。』

 

拓人はそう言うと思考を放棄した。

それを見越したかのようにベルフェゴールは笑みを浮かべる。

 

「ねっ?私達の影響で理解の追いつかないことに対してすぐに思考を放棄するでしょ?だから勇者とかどうとか言われても結局頭の片隅に追いやっちゃうんだよぉ。ねっ?私のお陰で本気にしなかったでしょ?」

 

「...確かにそうだが、私にしてみれば弊害にしか思えないがな。貴様のせいで諦め早い男になってしまった。」

 

さっきのような掛け合いの比ではない程に咎めるような鋭い視線がベルフェゴールに向けられる。

そんな視線にベルフェゴールは笑顔のまま言葉を続けた。

 

「まぁでも、ガブちゃんの影響でやるべきこととか興味ある事には勤勉でしょ拓人ちゃん?私だったらプラモも途中で飽きるし、学校だって三日で行かなくなるし、そもそも家から出なくなってるだろうしぃ。だったらそれで良いじゃん。」

 

「....だが、私達が発達に影響を与えてしまっている事がどうかと思った。それだけだ。私の個人的な私情だから貴様は気にしなくて良い。」

 

「真面目すぎぃ~。もっと気楽に構えても良いだろうにねぇ?それと拓人ちゃんは居留守にするくらいなら塩でも撒けば良いんじゃないかなぁ?」

 

表情を沈ませるガブリエルを見て、笑顔を崩さないベルフェゴール。

そして拓人が居留守しようと決めたのを見て、塩をまくことを進める。

擁護はしていたものの、ベルフェゴールなりに胡桃の行動に思う所があったのだろう。

 

拓人は玄関で二人分の出前を受け取って項垂れている。

そんな中、二人は話し合いを始める。

 

「...どうする。ぼちぼち案を考えていたのに時間があまりなくなってきてるぞ....。どんな武器にすれば良いのかも決まってないのに.....。しかも服も決めないといけないんだぞ!どうする....どうしよう......。」

 

同じく項垂れるガブリエル。

そんな彼女を見ながらも、ベルフェゴールは口を開く。

 

「それなら武器は無難に剣で良くない?そっちの方がカッコいいし振るだけで良いんだから受け入れられるでしょ。」

 

「貴様はぁ!勇者の素質がない普通の高校生の拓人にぃ!近距離で斬り合えっていうのかぁ!!危ないだろうがぁ!!!」

 

「えぇ....過保護かよぉ.....。」

 

凄い剣幕でベルフェゴールに吼えるガブリエル。

ベルフェゴールはそんなガブリエルを見てドン引いていた。

そんな彼女を無視してガブリエルはうわ言のように呟く。

 

「やるなら断然遠距離だ....私と前の馬鹿、天使と悪魔の力があるのだからヒットアンドアウェイで適当に撃ちまくってれば削った後に距離を詰めてきた奴にブッパでハメ殺せるのが一番安全だ...そうだ、戦法として取るとすれば待ちガイル戦法。これなら傷ついて悲しむこともない....。」

 

「滅茶苦茶塩試合じゃん....。それ、カッコイイ?」

 

渋い顔でそう聞くガブリエル。

しかし、ガブリエルは呆れた顔で彼女に答える。

 

「カッコよさなど....拓人が無事ならどうでもいいだろう。そうだ、それなら服もそのまんまで良いじゃないか....武器さへ揃えば後は服など....」

 

「あーあー、もしそれ使わないといけない状況になったら他の勇者とも遭遇するかもしれないのに、カッコよさがなかったら馬鹿にされるんだろうなぁ。ガブちゃんのせいで可哀想だなぁ拓人ちゃん。てか、武器についての考え方はある程度同意してやっても良いけど、服までとかそれで本当に良いの?君、勤勉なんじゃないの?そんなことで妥協するの?」

 

珍しくベルフェゴールが真面目な顔でガブリエルに問いかける。

すると、ガブリエルも黙りこくって考え込む。

そして重々しく口を開く。

 

「それも....そうだな。少し、軽率だった。....良いだろう、妥協はしない。納期ギリギリまで働くのは天界に居た頃から慣れてるんだ....私達が勇者の末裔ども足元に及ばない程にカッコイイ装備を作ってやる.....!貴様も言ったんだから絶対に手伝え!いいか!!」

 

「まぁ焚きつけたのは私だしぃ、しょうがないね。いいよ、なんか面白そうだから。」

 

昔の自分に思いを馳せながらも、決意を新たにするガブリエル。

そんな彼女は手を貸すようにベルフェゴールに指を突きつけた。

そしてベルフェゴールはヘラヘラと笑いながら承諾した。

 

こうして幼女二人はいつ来るかも定かではなく、明日にでも訪れるかもしれない少年の気づきという締め切りに向けて少年を守る為の力を作り始めたのだった。

 

「それじゃ服はこれとかどお?逆バニー!!」

 

「お前、話聞いてた?」

 

 




嫉妬の悪魔に似てるとか言われる女ヤバスギでしょwww

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