エイリアンだって、ゲームしたい!   作:緑スライム

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クエスト:エイリアンにお食事を提供せよ

 VRMMORPG。

 小説などで、よく使われる設定だ。

 しかし、実際の装置はそれとはほど遠い。実際にVRMMORPGで遊んでみたいと思い立ったのはいつだったか。

 王様ことGMこと創里 作造は、神の位階まで上り詰めた力のある魔法使いだ。

 何度も転生し、深い魔導知識と浅い科学知識も持っていた創里は、他惑星を使ってゲームをすることを思いついた。

 個室に置いたコアからゴーレムを操らせるという物で、MPとHPとスタミナは同一。

 魔石から魔物を創り、魔物を倒すと魔力を吸い取ってMPが回復する仕様とした。

 魔法を操り、縦横無尽に駆け巡る感覚を味わえる。味わえるの、だが。

 しかし、それは科学によるVR装置と変わらなかった。

 

 創里の創ったゲームは、生産が出来ないのだ。それをするには、面倒すぎた。

 出来るのは簡単な戦闘だけ。アイテムのたぐいは回復アイテムが一種類。

 

 それでもプレイヤーは喜んでくれたが、要望もまた多かった。

 どれも、必要性は理解できるものの、実装するのは果てしなく面倒くさい。

 現状を保つだけでももう大変で、折れるのは早かった。

 

 ゲームはやはり、プレイヤーになってこそだとつくづく思う。運営なんてなるもんじゃない。

 

 そんな出来損ないのゲームでも、応援してくれる人は驚くほど多かった。

 日本に10カ所、アメリカに2カ所の大きなビルを持つ大会社となってしまったので、社員の為に他の事業の立ち上げこそ必要だが、ゲームはもうやめることとした。

 まさか、最後の最後でエイリアンが乱入とは!

 

「あー。どうしようかね」

「社長。掲示板が凄まじい速度で書き込まれています」

「いつものことだろ?」

「それもそうでした」

 

 この会社は、電話もメールもまともに稼働していない。

 使われるのはもっぱら掲示板だ。

 ぴしっとしたスーツ姿の桂木 律は、余計なことを聞かない出来た秘書で重宝している。

 この会社、夢実現社は、実質創里1人の会社だ。

 事務員やゲームセンターの店員などはいるが、様々な物を準備、作成しているのは創里だ。株も、創里が全てを所有している。

 持ち帰って検討すると表向きは言ったが、実質は創里の意思が全てだ。

 実を言うと、彼らを元いた場所に送り返すぐらいは出来る。

 食料を転送することも、逆に地球に招待することも可能だ。

 ただ、手間が掛かるし、触媒その他諸々が必要になる。ただ働きはごめんだ。

 創里はしばし考えた。

 

「宇宙人への寄付を募ろうじゃないか。手数料として我が社が半分貰おう」

「ビックリするほど利己的な発言が素敵です、社長」

「褒めるな褒めるな。貯めた資金で、我が社の新しい事業を立ち上げようではないか。ゲームはちょっと無理があったようだからな」

「素敵です、社長」

 

 そんな会話をしつつ、口座を開設してホームページで寄付を募る事とする。

 幸い、時刻は昼。まだ銀行は開いている。

 

「……さて、冗談はさておいて、さすがに見殺しはね。食料だけは届けるか。そうだな……。野菜、果物、肉、穀物と油、水。念のため薪と野外調理セットもかな? あそこは、私がメンテナンスに行った時のために空気だけは整えてあるから、火は問題なく燃えるはずだ。とりあえずそれで良かろう。料理は複数の食べ物が混じるから、検査がしにくい。よって無しだ。イラストだけで出来たレシピブックだけ付けてあげなさい。物は全てパッケージにして、借りていた倉庫に放り投げておいてくれ。床にはシートを引いておくこと」

「畏まりました」

 

 さらっと面倒な注文をした創里だが、律はこともなげに頷き、部屋を出て行った。

 掲示板で宇宙人を真面目に心配する声が相次いでいた為、ゲームセンターのビルについている巨大モニターに、宇宙船の映像を流すことにする。もちろん、寄付の口座と共に。

 

 翌朝。

 出社してすぐ、創里は律から入金の連絡を受けた。大量の入金の知らせに目を白黒させる。どうやら、予算は足りないどころか余りそうだ。本当に半額着服出来るかもしれない。

 

「まさか、本当に入金があるとはな」

「モニターを写していることは伝えていたため、宇宙人の方から色々とアピールしているようです。歌ったり、技術の説明をしたり、言葉を教えたり、文化を伝えたり……交代で。子供も出ているようです。それと、追加で物資をお願いされたので、可能な物は用意しておきました」

「なるほど。有能な部下を持って助かるよ。準備はどの程度進んでいるかね?」

「社員総出で動いていますから、今日の夕方には倉庫が埋まると思います」

「期限を夜八時とする。その時までに準備を終えて、必ず倉庫の外に出るように」

「畏まりました」

「明細はプレイヤーの皆様に公開したまえ。こういうのはきっちりしないとな。私は夜に備えて寝るので、夕方六時に起こしてくれ。それと、八時半から全社でバーベキューを行う。ゲーム終了の打ち上げを終えてないからね」

「畏まりました」

 

 準備をしてたっぷりと休み、夕方六時に起こされてからはお風呂に入ってゆったりとリフレシュする。栄養ドリンクを飲み、目を覚ますと八時に倉庫へと向かった。

 生命体がいないのを確認し、転移魔法を行う。

 そして、本社のバーベキュー会場へと向かった。

 

「皆さん、今まで私を支えてきてくれてありがとうございます。ゲーム業界からは撤退しますが、新たな事業は腰を据えて掛かりたいと思います。さて、宇宙人の皆さんと一緒にバーベキューと行きますか。律くん、写してくれ。皆さんの善意に歓喜する宇宙人の皆さんをね」

「はい、社長」

 

 映像がついて、創里は驚いた。

 

「なっ……!」

 

 宇宙人は、ちょうど物資の山が届いてビックリしているところだった。

 それはともかく、魔石やゴーレムコアが集められている。

 

「我が社の財産に何をしているのだね!」

 

 創里は即座にコアにアクセスして、ゴーレムコアを遠隔操作する。

 すぐにゴーレムコアから王の姿が形作られ、宇宙人にもの申した。

 

『我が社の備品を持っていかないでくれたまえ!』

『うおっ 驚いた。ここの所有者の方ですか? ええと、お名前を伺っても? 私はロドニス。艦長です』

『社長の創里だ! それは高価な物でゲームに不可欠の備品なんだ、全て戻したまえ!』

『こんなにあるのですから、少し貰っても……』『も・ど・し・た・ま・え! 食料を貰ってその態度かね!?』

『ありがとうございます。助かります。あの、帰還の為の相談をしたいのですが、貴方の惑星……宇宙同盟? とにかく、貴方の所属する所に人道支援組織はありますか? 貴方と話せば良いのですか?』

『私が聞こう。君達のためにいくらか寄付をくれた者がいる』

『それは有り難い。それは、宇宙船を頂けるぐらいありますか?』

『技術体系が違う。そちらの宇宙船ごとそちらの宙域に送り返すぐらいだな。後は拾って貰うと良い。準備と場所の特定に一ヶ月ほど掛かるだろうが』

『回収ですか……技術的に難しいです。せめて惑星着陸まで面倒を見て頂けませんか?』

『面倒なことを言う。そこまでさせるなら、寄付者のためにお礼の言葉くらいは用意するのだぞ。時間も、下手すると半年掛かるかもしれん』

『もちろん。無事に帰ることが出来たら、謝礼をお渡しします。喜んで頂けるかはわかりませんが……』

『寄付者に分配するのが面倒だからいい』

『……』

『お礼の会見だけしておいてくれればいい』

『なら、せめて直接改めてお礼を言わせて頂くことは可能ですか? 待っている間暇ですし、一緒にゲームもさせて頂きたいです』

『本当に面倒だな。……うーん。早々に終了したぐらいだから、つまらんぞ』

『おしゃべりできるだけでも嬉しいです。折角日本語、覚えたんですから』

『まあ、次の事業決まってないしな。半年のサービス再開くらい良いか。魔石とコアを宇宙船の外に出しておけよ。危険だからな』

『わかりました』

『ロドニス艦長、これは食べられそうです』

『創里さん、食事をご一緒しませんか?』

『ゴーレムは物を食えん』

『創里さん、食事を作って貰えませんか? 加工後の食品しか食べたことがないのです』

『本当に手が掛かるな。二時間まて。人を寄越す』

 

 そして、創里はバーベキュー会場へと意識を戻す。

 

「さっさと食べて、店を開けるぞ。二時間後にゲーム再開だ」

 

 その言葉に、社員達は慌てて食べ出した。

 社員を向かわせる? いいえ。店を再開します。

 夜十時開店という暴挙に応えるプレイヤー達。そしてそれをサポートする店員達。ミッションはエイリアンの夕飯作成だ。

 プレイヤーは訓練されているのだ。クエストと言えば大抵何でもお金を払ってボランティアしてくれる。

 操作用のコアが転送され、キャッキャキャッキャと遊んだり、食事したりするエイリアンとプレイヤー。

 その間に、コアを介して宇宙船の中に案内される。

 目的はもちろん座標の説明を受けるためだ。

 

「ええい、異星の星図の見方がわからん!」

 

 座標の特定はもう少し時間がかかりそうだった。

 

 

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