エイリアンだって、ゲームしたい!   作:緑スライム

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プレイヤー視点

 

 

「テスト王国」という、やる気の無さ100%のネーミング、アルファ―テストの更に前段階だろう、というゲームが有る。

「夢実現社」という、これもそのまんまな名前の会社が提供しているゲームだ。

これだけ聞くとベンチャーっぽいが、実際ベンチャーだが、日本に10箇所、アメリカに2箇所も支社を置く大企業である。

 支社と言っても、専用のゲームセンターなのだが。

 VRゲームは数多く開発されたが、完全没入型というのはまだなく、コントローラーの軛から逃れられなかった現状を変えたのが、この「テスト王国」だった。

 このゲームは個室で、椅子に座って水晶に手を当てる式である。

 

 それだけで、視界が二重になり、ゲームの世界の住人となれる。

 目を閉じて集中すれば、ゲーム世界にトリップしたかのよう。

 そんな超画期的なゲームなのだ。

 

 MPとHPは同一。回復アイテムは見た目は色々な種類があるものの、実質効果が同じで一つ。レベルアップシステムはなし。魔物を倒すとMP兼HPが回復。

 NPCは王様と王妃様の2人だけ。建物は城と街がセットになった王都が一つだけ。

 後は全て魔物。

 これだけの機能だった。

 マジでこれだけの機能だった。

 まさに、テスト環境。舐めてんのかという仕様。

 電話やメールもガン無視で、掲示板を流し見る程度の運営。

 

 こんな舐めプレイでも大企業に成長できたのは、ひとえにその魔法を使い、縦横無尽に駆け巡る快感ゆえだ。ほんとそこだけは素晴らしかった。

 だから、ワンプレイ一時間一万円という超高額でも、プレイヤーが列をなすのだ。

 悔しいっ でも通っちゃう!!

 

 舐めプ全開なのにセレブや著名人も来たりするこのゲーム。

 ニートがこのゲームがサービス開始してから激減したとのニュースも出る程の、大人気ゲームだった。金久も、このゲームのために死ぬ気で努力して一流企業に入った口である。

 

 掲示板で出した要望数しれず。

 なんか試行錯誤して、ポシャったらしい回数も数しれず。

 

 革新技術を賢い人に譲ってはくれないかと、特許料で稼ぐ方法に切り替えてくれないかと何度願ったかしれない。

 

 そんなテスト王国だが、ついにサービス終了の時が来てしまった。

 予約していた時間がそれにピッタリかち合った事に、神に感謝する。

 

 早速ログインすると、舞台は大盛りあがりだった。

 

「敵が七に空が三! 敵が七に空が三!」

 

 喉も裂けよとばかりに叫ぶ、鳥人。

 いつもより10%増しで醜悪なる異形なる者達が、王都を囲んでいた。

 

「神よ……!」

「ここまでなのね……!」

 

 街を守る塀の上に立ち、大仰に悲しみの声を上げる、王と王妃。

 

「俺達は、まだ負けてねぇー! ヴォルフ騎士団、全員構えー!」

「おおー!」

「行くでござるよ、黒羽忍者団!」

「行くぜー!」「ござるござるぅ!」

「私達も、参りますよ」

「はーい!」「これで終わりか、さびしぃー」

 

 集団を形作っているのは、廃課金のセレブ達だ。

 一時間一万円のゲームに常駐して、団を結成できるのだからそりゃセレブである。

 俳優も多く、無駄に演技力たっぷり、威厳たっぷりに進んでいく。

 

 しかし、異形なる者達の地平線がぐわりと膨らんだ。

 見上げるほどの、大怪獣のような魔物が、今にもレーザーを撃たんとする。

 

「あれぞ、滅びの光よ!」

「貴方……最後は一緒よ」

 

 嘘だろ? 最後ぐらいまともに戦わせてくれよ。

 金久は絶望した。

 

「おわた」

「おわた」

「せめて最後はまともに相手してくれよ……」

「あーんっ 皆さよならー!」

「ええい、最後だ撃て撃てー!」

 

 王と王妃がそっと寄り添い、プレイヤーたちが錯乱したその時。

 

 一条の光が、大怪獣を貫いた!

 

「へ?」

 

 王と王妃は目を点にする。

 

『もう大丈夫だ! 救ってやるぞ、魔法使い殿!』

 

 現われたのは、大きな円盤だった。まさしく、UFOのような。

 これはもしや、次回作か!? えっ本当に? 初めて良いサプライズをくれたぞ!

 

「はぁ?」

 

 その言葉に、王と王妃は困惑する。迫真の演技だ。

 金久達プレイヤーは大喜びで固唾を呑んでイベントの推移を見守る。

 

「エイリアンだ! 俺、フラグ立てた!」

「私も!」

「これは次回作来たか!?」

 

 王は、困惑したままふわりと浮かんで、手をメガホンの形にして叫んだ。

 

「すみませーん! ここ、私有地で今、皆で演劇遊び中なんですけどー! どなたですかー!?」

『!?』

「!?」「!?」「!?」「!?」「!?」

 

 UFOは、ふよふよと留まる。

 先程まで地を埋め尽くしていた魔物は、ふっと消え去った。王妃もそれと共に消える。

 街も消えて、あとに残るのは薄っすらと苔の生えた殺風景な荒野だった。

 いや、荒野というのもおこがましい。地面は岩と僅かな苔で、殺伐とした風景に小さく人工的な丸い石が気持ち悪いほど大量に落ちていた。

 

「トラブル?」

「私有地って言った?」

「これ、ゲームじゃねぇの?」

 

 ざわざわざわと、ざわめきが走る。え、ここ、地球のどこかなのか?

 まさか、エイリアンって、本物!?

 

『……失礼致しました。このゲームはどこで参加募集してますか?』

「すみません、今日が最後なんです。うまくゲームシステムが構築できなくて」

 

 それは皆知ってる。

 

『技術情報は頂けますか? 改善のお手伝いなど出来るかもしれません』

「無理です」

『新たなゲームは予定していますか?』

「未定です」

 

 そ、そんな殺生な! 金久は崩れ落ちた。夢も希望もないのか。

 っていうか、投げ出すんならエイリアンから力を借りよう? 心から金久は願う。

 って、エイリアン? エイリアン!?

 

『類似のゲームはやっていますか?』

「我が社だけですね」

『もしかして、この星全体が私有地なのですか? 本拠地は別に?』

「もちろんです。この星は我が社の保有する遊技場です」

 

 地球じゃなかった。ここ、地球じゃなかった!

 更にざわめきが走り、プレイヤーたちは周囲を見回す。

 星座を見極めようとする人達もいた。詳しい者が混じっていたのだろうか。

 

『本拠地はどこですか?』

「初めて会った異星人には教えられません」

『素晴らしい技術ですね』

「ありがとうございます」

 

 そして、UFOのスピーカーから未知の言語で何事か口論する声が聞こえた。

 

『すみません。つい、話が逸れてしまいました。実は、私達は宇宙船が故障して困窮しているのです。助ければ、助けて貰えるなどと考えていました。できましたら、貴方方がお使いの宇宙船など貸して頂けますか?』

「ええ……。弱ったなぁ」

 

 王様は、頭をガリガリと掻く。えっ もしかして、運営って宇宙人だった!?

 

 人間離れした技術も、浮世から離れた運営の仕方も、言われてみればそうとしか思えない。地球オタクのエイリアンが、VRMMOの概念を知って真似事をする……凄い。そんな事がありえるのか。

 

「ちょっと相談します。何か、なくて困る物資とかありますか? 食料品とか、簡単な物なら融通しますが。口に合うかどうかは自己責任、と言う奴で」

『ありがとうございます。既に貴方方の食べ物や植物、液体を調べたのですが、食べられませんでした』

 

 王様は、また頭をガリガリと掻いた。

 

「全部偽物です。この惑星は本当は岩の塊ですから。食事と水ぐらいは……あー。一トン二トンの世界ですよね。なら、それも許可が必要です。期待せずに待っててください。どうせ今日で終わりですから、滞在は許されると思います」

 

 そうして、王様は……いや、運営は振り返った。

 

「そういうわけで、申し訳ありませんが。ゲームはこれにて終了!」

 

 王様がパンッと手を叩くと、プレイヤー達ははじき飛ばされた。

 

 ちょうど、ゲームの終了時間と重なっていた。

 金久達はお店から追い出され、興奮した様子で周囲のものと話したり、掲示板に書き込んだりしていた。

 スーツの人が走っている。

 

「総理! 総理! 大ニュースです!」

 

 総理に電話できる人が何やっとるねん。

 そう思いつつも、大事になってきたと金久もまた、早々に帰宅してパソコンにかじりついた。

 

 

 

 

278:勇者名無し 2025/4/30 14:36:01

 

「テスト王国」が宇宙人への食料代の寄付金を受け付け始めた!

 手数料が驚愕の50%www

 

 

315:勇者名無し 2025/4/30 14:55:01

 

「テスト王国」の巨大モニターに宇宙人が写ってるの見たか!?

 本物っぽいぞ!

 

 

350:勇者名無し 2025/4/30 15:14:33

 

 手数料が50%って暴利にも程があんだろwww

 

 

379:勇者名無し 2025/4/30 15:32:22

 

 こんな時でも平常運転でほっとした。

 

 

428:勇者名無し 2025/4/30 15:47:06

 

 すげえ。ニュースで宇宙人のことやってる。マジらしい。

 天文学者が行ってて、星座から「テスト王国の」座標特定したって。

 

 

442:勇者名無し 2025/4/30 15:57:23

 

 マジで!? すげーな!!

 

 

487:勇者名無し 2025/4/30 16:08:15

 

 子供達もいるみたいだな。なんとか力になりたいけど、地球のものって食べれるの?

 

 

537:勇者名無し 2025/4/30 16:27:55

 

 色々物資を要求しているみたいだな。寄付するしかなかろう。

 

 

552:勇者名無し 2025/4/30 16:42:02

 

 ちょwww日本政府が寄付してるwww

 

 

574:勇者名無し 2025/4/30 16:52:46

 

 社員なんだが、食料の箱に潜り込めば密航できるかな。

 

 

593:勇者名無し 2025/4/30 17:09:12

 

 絶対にやめろ。あの惑星、岩だって行ってたぞ。多分空気がない。

 だから宇宙服を来ていけ。

 

 

612:勇者名無し 2025/4/30 17:25:32

 

 宇宙服はどこで売ってますか?

 

 

642:勇者名無し 2025/4/30 17:42:37

 

 まさかファーストコンタクトがこんなんなるとは。

 

 

672:勇者名無し 2025/4/30 18:00:13

 

 政府が鬼電してるけど連絡取れないみたい。

 

 

712:勇者名無し 2025/4/30 18:10:45

 

 あそこ、基本的に電話線抜いてるから……。

 

 

 そこまで読んで、金久は動いた。

 金久にはある希望があった。

 だから、会社を翌日休んだ。充電バッチリの携帯と虎の子の5万円を握りしめ、ゲーセン前に向かう。

 既に、そこには沢山の人が待ち構えていた。

 

 ビルのモニターは、ビルの真下にいるため見ることは出来ないが、エイリアンが寄付を訴える声は聞こえる。

 その声を聞きながら、金久はうつらうつらと船を漕いだ。

 

 翌日。

 訓練されたプレイヤーたちが続々と集まってきていた。

 

 そして、翌日午後八時半。もう一日休みを取る決意を固めたその時。

 事態は動いた。

 

『我が社の備品を持っていかないでくれたまえ!』

『うおっ 驚いた。ここの所有者の方ですか? ええと、お名前を伺っても? 私はロドニス。艦長です』

『社長の創里だ! それは高価な物でゲームに不可欠の備品なんだ、全て戻したまえ!』

『こんなにあるのですから、少し貰っても……』『も・ど・し・た・ま・え! 食料を貰ってその態度かね!?』

『ありがとうございます。助かります。あの、帰還の為の相談をしたいのですが、貴方の惑星……宇宙同盟? とにかく、貴方の所属する所に人道支援組織はありますか? 貴方と話せば良いのですか?』

『私が聞こう。君達のためにいくらか寄付をくれた者がいる』

『それは有り難い。それは、宇宙船を頂けるぐらいありますか?』

『技術体系が違う。そちらの宇宙船ごとそちらの宙域に送り返すぐらいだな。後は拾って貰うと良い。準備と場所の特定に一ヶ月ほど掛かるだろうが』

 

 すげー。金久は素直に思う。さすがは地球に潜伏していたエイリアンである。

 

『回収ですか……技術的に難しいです。せめて惑星着陸まで面倒を見て頂けませんか?』

『面倒なことを言う。そこまでさせるなら、寄付者のためにお礼の言葉くらいは用意するのだぞ。時間も、下手すると半年掛かるかもしれん』

『もちろん。無事に帰ることが出来たら、謝礼をお渡しします。喜んで頂けるかはわかりませんが……』

『寄付者に分配するのが面倒だからいい』

 

「ええー!?」

「そこは、皆で楽しめるものとかさぁ!」

「お礼を辞退するなんて何考えてるんだ!!」

 

『……』

『お礼の会見だけしておいてくれればいい』

『なら、せめて直接改めてお礼を言わせて頂くことは可能ですか? 待っている間暇ですし、一緒にゲームもさせて頂きたいです』

 

 来た! キタキタキタ!

 

「がんばれー! エイリアンさんがんばれー!」

「ロドニスサイコー!」

「ゲーム再開お願いします!!」

 

『本当に面倒だな。……うーん。早々に終了したぐらいだから、つまらんぞ』

『おしゃべりできるだけでも嬉しいです。折角日本語、覚えたんですから』

『まあ、次の事業決まってないしな。半年のサービス再開くらい良いか。魔石とコアを宇宙船の外に出しておけよ。危険だからな』

 

「やった――――――!」

「いよっし! いよっし! いよっし!」

「祝! ゲーム再開!!」

 

『わかりました』

『ロドニス艦長、これは食べられそうです』

『創里さん、食事をご一緒しませんか?』

『ゴーレムは物を食えん』

『創里さん、食事を作って貰えませんか? 加工後の食品しか食べたことがないのです』

『本当に手が掛かるな。二時間まて。人を寄越す』

 

 二時間。金久はサイトを更新爆撃した。

 

 そして、ついに一時間半後。サイトが更新された。

 

『本日夜十時から朝まで特別ログインキャンペーン。クエスト内容はエイリアンのご飯の調理。 大特価五万円!』

 

 その言葉に崩れ落ちるもの、家へと鬼電するものが何人か。

 金久は心から神に感謝した。余分に持ってきてよかった!!

 そしてあの運営のことだ。必ずや食料品の運搬などをプレイヤーにさせると信じてよかった!! 金久は男のカレーぐらいは作れる。なんならシチューだって粉から作れる。

 この人数なら確実に入れる。やった―――――!!

 

 それからウキウキすること15分。黒服の者達がやってきた。

 

「順番を百万円で買い取ります!!」

 

 金久は、それを断ったことを生涯後悔しないだろう。

 更に5分後。やってきた店員さんが店の中へと誘導する。

 

 いつもどおり水晶を操作すると、そこは他惑星だった。

 

 食料品を吟味して、シチューを作る。

 いい匂い、と子供のエイリアンが寄ってきた。

 ピンク色の、サーカスの道化師が被るような二股のトンガリ帽子のような大きく垂れ下がった耳の可愛い子だった。

 

「■■■……ありがとう、お兄ちゃん!」

 

 その感謝には、まさに100万円の価値があった。

 夜遅くまで調理をして、その後片付けをして、宇宙人達に操作用の水晶の使い方を教え、一緒にゲームして、ボディランゲージで意思疎通して、沢山お喋りをした。

 隅っこでは、科学者や政府っぽい人が熱心に大人のエイリアンと話している。

 

 最高の一夜を終えて、真っ赤に充血した眼で出社すると、金久は社の人間に群がられて武勇伝を話すこととなった。

 最高の1日だった。

 仕事はボロボロだったのでくっそ叱責されたが、後悔はしていない。

 

 ちなみに。夢実現社はマジで半額手数料としてポッケナイナイした。

 

 

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