もっと増やして!もっと!
最近、セイウンスカイの可愛さに気づきました。
書きたいとは思うんですが、難しそうだなぁ…
誤字脱字あればご指摘よろしくお願いします。
ひたすら走る。
ひたすら翔ける。
これまで担当してきた娘たちがナントカをカケルみたいな歌を歌っていたが今の俺の場合、命をかけている。
平日の昼下がり、多くの人は会社や学校が行っているため通りにはあまり人は多くはないが、俺はただ人混みに向かって走っていた。
「ぬおおおお!!」
行き交う人々が全力で走る俺を「なんだコイツ」みたいな目で見てきているが、なりふり構っていられない。
後ろを振り向くとーーー
ルドルフが全速力で追いかけて来ていた。
距離は100mくらい離れているものの、危険を察知した俺は人混みに突っ込んで撹乱させる作戦を変更し、とにかく細い道へと曲がりに曲がりまくった。
テキトーにトレーナーをしていた俺でも、ウマ娘の速さは約70km/hくらいということは知っている。鬼ごっこのようにまともに逃げてスタミナ切れを狙う事などウマ娘に通用するはずがない。
てか、ウマ娘が通りで全力で走るの禁止されてただろ!生徒会長なのに平気で破ってて大丈夫なのか…?
そうこうしているうちにかなりの路地裏に辿り着いた。
日が当たっていないこの路地裏は当然人は全くおらず、ジメジメとした雰囲気が漂っていた。
恐る恐るもう一度振り返って見たが、ルドルフの姿は見えない。
撹乱成功。思わずガッツポーズをする。さてこれからどうしたものかとバックからマナーモードに設定していたスマホを取り出してみてみると、ルドルフからの着信が73件来ていた。その他、他のウマ娘からの着信も合わせて1572件。
ついでにLINEも確認する。
「トレーナー♪ボクが今から迎えに行くね♪」
「(逃がして)あげません!!!」
「さーてとっ♪トレーナー君。今行くわね♪」
「グラスワンダー、参ります…」
「マヤから逃げられると思ってるのー?」
「お兄様…。ライスが助けてあげるね!」
「もう貴方を受け入れる準備は整いましたわ…トレーナーさん。」
「マスターにも『調整』が必要であると判断しました。これより実行に移ります。」
「モルモット君…キミは私の『実験対象』なんだぞ…?脱走とは困るじゃないか…」
「あらあら〜?これじゃあトレーナーさんに『よしよし』出来なくなっちゃうじゃないですか〜」
etc…etc…
はい、たくさんのメッセージありがとうございました。それでは大変失礼ながら、ウマ娘の皆さんの連絡先を全部消させていただきます。
foo!気持ちい〜!
スマホの動作が軽くなったところでこれからの行動を確認する。とりあえず、寝床の確保だな。出来ればビジネスホテルでもなんでもいいから泊まれるところが欲しいところだが…。
そうして考えていると、背後から声が聞こえた。
「トレーナーさん…こんな所にいたんですね…?」
後ろを思わず振り返るとそこには「最速の機能美」と称された彼女がいた。
自分でも顔が引きつったのが分かった。こんな路地裏に入ってくるとは思ってもみなかったからだ。今の彼女は、明らかに様子が変である。俺はその事を分かっていながらも鈍感系主人公を演じた。
「やぁ!サイレンススズカ。調子はどうだい?見ての通り、俺はトレセン学園を退職したんだ!みんなの応援もあるし、これからも頑張っていくよ!」
気さくに話しかけてみるが、
「……」
彼女は全く答えずに俺との距離を縮めていく。
不味い。全身の細胞が今すぐ逃げろというアラームを発する。
だがこの状況で逃げられるはずもない。ここは誰もいない路地裏であるからだ。
思わず一歩二歩、後ずさってしまう。
「…初めて会った時、私は絶望の真ん中にいました。」
え、何?なんか回想が始まったみたいですよ?
「何回レースに出ても負けばっかりで…自分には走る資格がないのかなとも思っていたんです。」
「でも貴方が言ってくれたんです。『お前に最高の景色をみせてやる』って。」
ウーン、覚えてないですねー…
「私はまだその景色を見てないですよ?なのにいきなりそんなこと言って…。冗談ですよね?」
ヤバいぞ、雲行きが怪しくなってきた。
「もし、冗談じゃないのなら…、分かりますよね?」
(分から)ないです。
いつの間に彼女との距離は手を伸ばせば触れられる距離になっていた。彼女の目は淀み、ただらならぬオーラが漂っている。
「…!!」
彼女はいきなり、俺の手をとてつもない握力で掴んで来た。
「スズカ…ッ!痛い!」
「ふふっ、可愛いトレーナーさん…。早く冗談でしたって言ってください?」
クッソ…ここで終わりなのか…
オワコンと思ったその時、快活そうな少女の声が聞こえた。
「トレーナー!約束通り、ボクが迎えに来たよ♪」
ええ…(絶望)