Fateシリーズの岡田以蔵がメンヘラ女子大生を更正させる話 作:河内三比呂
とあるマンションの一室、ユリアの部屋。
足を踏み入れた瞬間、以蔵は思わず声を上げた。
「な、なんじゃぁぁぁぁ!?」
彼が驚くのも無理はない。なぜなら、その室内は……。
壁一面に若い男の写真がズラリと貼られ、部屋のあちこちにその男を意識したらしい、手作りの人形やぬいぐるみが置かれ、ベッドには等身大とおもしき抱き枕があったのだ。
生前、『人斬り』として畏れられた男、岡田以蔵は、その狂気に思わず……ドン引きした。なんなら、ちょっと怖くて涙目になっていた。
「? 以蔵さん、どうしたんですか?」
あっけらかんと言うユリアに、以蔵は、
「……その、おまんの願い事の男っちゅうのは……」
その言葉を待ってましたとばかりに、ユリアが頬を染めながら早口で語り出した。
「彼が『たっくん』です! 年齢28歳、身長174cm、体重65kgで血液型はA型で、商社マンです! で、性格は穏やかで人当たりの良い天然さんで、好きな食べ物はパイナップルで嫌いな食べ物はにんじんで、毎日朝8時に起床、最初にする事は顔を洗うことで……」
「ちょ、ちょい待ち!!」
ユリアの言葉を慌てて遮ると、以蔵はあえて話題を変える。
「その男の事は……まぁ、その、わしゃ言われてもわからんきに! とにかく願いは叶えちゃるから、着るもんよこし! 酒じゃ酒!」
「確かに、以蔵さんに願い事を叶えてもらえれさえすればいいですもんね! ユリア、ちょっとテンション上がっちゃいました! すみません! 今、持って来ますね!」
そう言うと、ユリアはクローゼットを開ける。その様子を見て、以蔵はホッと胸を撫で下ろした。
(しっかし、この部屋……。どう考えても普通じゃないじゃろ……?)
「……こりゃとんでもない事になったのう……」
「? なんですか? 以蔵さん?」
「なんでもないきに。それよか、マスター。あったがか?」
そう訊くと、ユリアがクローゼットから男物の服を出して来た。
「これ、サイズが合うといいんですけど……」
少し不安そうに、かつちょっと不満げに言うユリアに気づきながらも、以蔵はあえて気にしないふりをし、
「着替えてくるきに、どっか借りるぞ?」
「あ、はい。じゃあ、お風呂場でお願いします!」
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「……サイズが合うにも程があるじゃろ……」
一通り着替え終わった以蔵は、自分の格好を見ながら愚痴る。その服装は、白ワイシャツに黒のベストとパンツ姿だった。
本当はユリアが『たっくん』の個人情報を語っていた時に気づいていた。彼と自分の身長と体重が同じであった事に。
(まさかとは思うが……これ、その男の……いや、考えたらアカン気がするきに……)
とりあえず着替え終わった以蔵は、風呂場から出るのだった。