遊戯王世界でテスタロッサとアリスとアウトレイジ 作:不知火勇翔
何だこの世界は。
悪党は打点1900のバニラによるごり押ししかせず、セキュリティーは『モンタージュドラゴン』によるパワーを使って、これまたごり押しをしている。
確かにパワーデッキと戦うなら、それ以上のパワーを用意できると楽だろう。だが、出して攻撃するだけのデュエルに何の意味があるのか。こんなにカードを持つ者持たざる者が分かたれた世界など、あっていいのだろうか。
いや、そんなことは断じてない。
これならまだ、アッチのぬるま湯の方がまだマシだ。
「き、貴様、何もだ……」
さっき倒したゴミが足元でうめいているが、我は無視して歩きだした。
こんな所でゴミと時間を浪費する余裕など我にはない。今すぐにでも天下統一をし、この世界を変革させなければいけないのだ。
「いったぁぁぁぁ!やぁぁっと見つけたぜ!」
「テスタ、うるさいわよ。近所迷惑でしょ」
「だってよ、ちゃんと見つけたんだぜ!これで姫様に胸張って会えるだろ!」
「それもそうだけど、今は夜なのよ」
「あぁ、わりぃ。それで、そこの仮面の人!ちょっと俺達についてきてもらおうか!」
黒いスーツを着込んだ男女が、我に話しかけてきた。
(またゴミ………………、か?)
いや、違う。この2人は、今までの奴とは段違いに強い。
「貴様ら、何者だ」
我の問いに、女の方が答えた。
「私達もあなた達と同じ、この世界に迷い込んできた部類の人間なんだけど、今私達と同じように迷い込んできた人を探してて、それで偶然あなたを見つけたの」
「何故探しているのだ?」
「長居したら世界がおかしくなるらしいのよ。だから早々に帰ってもらうためにもね」
つまり、彼らは我の敵というわけか。
「ならば、我に勝つがよい」
我はデッキケースを2人に見せ、言った。
「我はこの世界でやることがある。何もせず返されるのは、なんとしてでも防がせてもらう」
「この世界は今、色々な世界と融合してグチャグチャになっているわ」
お姫様(?)が話を切り出したが、ハッキリ言って俺はよく飲み込めなかった。
「世界を混ぜている奴がいるってことよ。そして混ざった世界に紛れ込んできたのが、あなた達」
俺はまだよく理解できていなかった。
「プレイメイカーがデュエルしてる所、リンクブレインズだったわよね」
いきなり話が飛んできて、俺は一拍遅れて答えた。
「あ、ああ」
「電脳世界、つまり仮想世界らしいわ。ブルーエンジェル以外で電脳世界に行ったことある人、手を挙げなさい」
「仮想現実なら、我が海馬コーポレーションでも開発が続けられて」
「意思を持ったAIが誕生しているらしいわ。プレイメイカー、Aiを出して見せなさい」
本当に、彼女はどこまで知っているのだろうか。
俺は肩に下げていたカバンからデュエルディスクを取り出した。するとAiが勝手に出てきて、何か喋り始めた。
「い」
「ほらね、つまり他のメンバーより少し未来から来たのよ」
「喋らせてくれないの!?」
うん。まぁ喋らないでもらえると助かるが。
「遊作もなんか酷いこと考えてるでしょ!!もう、ゆ」
「その世界を融合させている奴は誰だ」
「…………」
アインが何も喋らせてもらえないまま、話は次に進んだ。どうやらほぼ全員(九十九遊馬以外)が、アインがお喋りだと気づいているようだ。
「さぁ?それは私も知らないわ」
「貴様…」
「というか、もう話すの疲れたわ。龍、代わって」
「は?え、はぁ、分かりました」
プリンの相手に慣れたドラゴン龍は、この重要なメンツでの集まりでこれ以上姫からの親切な説明がされないと悟り、説明を代わることにした。甘やかしているかな、とも思ったドラゴン龍だった。
「オホンッ。つまり、その悪い奴が危険なことをしているから、皆で止めようと姫は言っているのだデンジャラス」
駄目だコレ…。
遊作は思った。
「つまり…………」
今まで黙っていた九十九遊馬が、口を開いた。
「つまり、どういうことだ?」
聞いてたか?」、と思わずツッコミそうな、ずっこけが必要なセリフ。遊作は周りがずっこけるだろうと準備していたが、結局動けなかった。ゴーグルの人はずっこけたが、財前葵と海馬さんはそいういキャラじゃないらしく動かない。お姫様(?)はやり取り自体に興味がないらしい。お姫様と一緒にいる長身の男も動かなかった。赤い人は、そもそも話についてこれていないらしく難しい顔で首を捻っていた。
つまり、お笑いの形式通りにこけたのはゴーグルの人1人だけだった。
海馬さんに至っては、何をしている、みたいな侮蔑の眼差しでゴーグルの人を見ていた。
何というか、かわいそうだ………。
そして、ここにはツッコミがいない。うわ…。
「言いたいことはそれだけか」
ゴーグルの人によって作り出された謎の空気の中、俺がどうしようかと考えている間に海馬さんが口を開いた。
「ならば、本題に入るとしよう」
まだ本題じゃなかったのか…。
サポート無しでこのメンツという謎状況。いい加減俺の精神力が限界に近かった。
「貴様ら全員、WRGPに出場しろ。エントリーはモクバが全てやる。寝泊まりの場所と食費は我が海馬コーポレーションが払う。棄権、もしくはそれに該当することは認めん。これは決定事項だ」
テスタロッサと謎の仮面を付けた大男のデュエルは、からくもテスタロッサの勝利で終わった。
あまりにギリギリのバトルだった。アウトレイジの総力を上げた戦略と引き運、どちらかが欠けていれば完全敗北もあり得ただろう。
それだけ、この仮面の男は強かった。
正直アリスは舐めていた。
2回のデュエルは余裕で終わり、アウトレイジに敵などいないと慢心していた。
引き運というのは、遊戯王にとっては勝つ可能性すら左右する。それが完璧なのだから、多種多様な戦略や戦術を扱うことも現状可能になっている。それすら上回りかけた、仮面の男の力。
言うべきだった。
「あなた、私達とチーム組まない?」