遊戯王世界でテスタロッサとアリスとアウトレイジ   作:不知火勇翔

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1回戦

「ホントごめん!」

「よい。万に一つとも、我が負ける可能性などありはしない」

「本当か?よろしく頼むぜ!」

「…本当に行くのか?行く価値はないと思うぞ?」

「そうかもな。けどさ、逃げたくねぇんだ」

「……そうか。ならば行ってくるがいい。後は我に任せよ」

 

 

[[さぁぁぁっ!!ついに始まったWRGP1回戦第1試合!あの時の奇跡に感動した者もいるのではないかぁぁぁ!まずは前大会で優勝チームとのデュエル中に『眠れる巨人ズシン』を召喚するという奇跡を成し遂げた、チーム『太陽』だあぁぁぁぁぁぁぁ!!!』

 高速道路のサービスエリアとでもいうべきか、万が一Dホイールが故障した時のために直せる人が待機するスペースがこの大会ではデュエルレーンの横に設置されていて、そこからチーム『太陽』の3人が姿を現した。

 地鳴りのような歓声。会場が嵐のような熱気に包まれる。

[[対するは、WRGP初参加という無名の新人、チーム『アリス』だあぁぁぁぁぁぁぁ!!]]

 無名の新人というか、そもそも数日前にはこの世界に存在すらしていなかった3人なので、実況の人も話すことがなくて困っただろう。結局名前を紹介するだけで入場アナウンスは終わった。

[[おおっと、これはどういうことだぁぁぁ!!?1人しかいないぞぉおお!!!]]

「テメェ、後の2人はどうした!」

 この会場を代表して、チーム『太陽』の先鋒『林吉蔵』が聞いた。そして帰ってきた返答は、想像の斜め上だった。

「騒ぐな羽虫が。後の2人は用事だ。だが安心しろ。貴様ら羽虫程度、我1人で十分だ」

「はぁぁぁぁ!!??て、テメェ」

「ヨシ!!ちょっと落ち着け!」

 今にも殴りかかろうとした林吉蔵を、ラストホイーラーでチーム『太陽』のリーダー『山下太郎』が止めた。

 その間に、カチンときていたチーム『太陽』の次鋒『谷川甚兵衛』が問いただす。

「お前、名前は」

 仮面の男はフンっと鼻で笑うと、羽織っていたマントを翻し、言った。

「我は第六天魔王。この世界でも天下を統一し、この腐りきった世界を変革する者だ。覚えておけ、羽虫」

「テメェ!!」

「ジン!!!…決着は、デュエルでつけるぞ」

 またもや山下太郎が止めに入り、乱闘騒ぎは起きなかったが、チーム『太陽』にとっては最悪のスタートとなった。

 彼らは前回のWRGPで偉業を成し遂げた。優勝こそしなかったが、彼らを見る周囲の目は変わった。彼らの父親も息子を認めるようになり、人生がガラリと変わり始めていた。その最中に、いい記憶しかないWRGPのスタートで冷水をぶちまけてくるような奴とあたったのだ。3人とも、少なからず気持ちがダウンした。

 バイクを押してデュエルレーンに入った林吉蔵は、第六天魔王とかいう仮面の男がまだバイクを持ってきていないまま佇んでいるのを目にした。

「テメェ、どういうつもりだ」

「慌てるな、羽虫が」

 第六天魔王は自分のデッキケースを取り出すと、呼んだ。

「光臨せよ、テンリンオウ!」

 呼びかけとほぼ同時に、空から小型の飛行機が飛んできて、空中でホバリングして変形し、テーブル付きの空飛ぶ足場となった。そしてそれに、第六天魔王は飛び乗った。

 いきなりのカルチャーショックに、林吉蔵は言葉を失った。観客も「え?バイクは?」とか「いいのソレ…」とか、「ヘルメットしてないし、むしろバイクより危険じゃないの?」と口々に呟き始める。実況の人も上からの回答を待つため、一時的に無言となった。

「い、いいのかよソレ」

「ふん。何か問題があるのなら言ってみるがいい」

 勿論、林吉蔵が何も言えないと分かっていての言葉だった。そもそもWRGPのルールに、Dホイールじゃないといけないルールなど、当たり前すぎて書かれていない。中にはバイクかも怪しい乗り物と合体する人までいたぐらいだ。今更ホバークラフトに動じるWRGPではない。

[[そ、それでは、デュエルスタートだぁぁぁぁ!!]]

「「スピードワールド2、セット、ライディングデュエル、アクセラレーション!!」」

 信号が点滅し、そして青一色となる。

 スタートダッシュで勝ったのは、林吉蔵の方だった。彼はホバーを抜き去ると、そのまま第1コーナーをとった。

「俺の先行だ!俺のターン、俺は手札の『嵐征竜ーテンペスト』の効果発動!手札の『巌征竜-レドックス』2枚を除外し、攻撃表示で特殊召喚!」

 

 

《嵐征竜-テンペスト》

風属性レベル7種族ドラゴン族ATK2400DEF2200

このカード名の(1)~(4)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。

(1):手札からこのカードと風属性モンスター1体を墓地へ捨てて発動できる。デッキからドラゴン族モンスター1体を手札に加える。

(2):ドラゴン族か風属性のモンスターを自分の手札・墓地から2体除外して発動できる。このカードを手札・墓地から特殊召喚する。

(3):このカードが特殊召喚されている場合、相手エンドフェイズに発動する。このカードを手札に戻す。

(4):このカードが除外された場合に発動できる。デッキからドラゴン族・風属性モンスター1体を手札に加える。

 

 

《巌征竜-レドックス》

地属性レベル7ドラゴン族効果 ATK1600DEF3000

「巌征竜-レドックス」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分の手札・墓地からこのカード以外のドラゴン族または地属性のモンスターを合計2体除外して発動できる。このカードを手札・墓地から特殊召喚する。特殊召喚したこのカードは相手のエンドフェイズ時に持ち主の手札に戻る。

(2):また、このカードと地属性モンスター1体を手札から墓地へ捨てる事で、自分の墓地のモンスター1体を選択して特殊召喚する。

(3):このカードが除外された場合、デッキからドラゴン族・地属性モンスター1体を手札に加える事ができる。

 

 

[[おおっとお!!今回はレベル1ではなく、レベル7のドラゴン族を特殊召喚したぞぉぉ。一体どんな戦略なんだぁぁぁぁ!]]

「戦略なんてねぇよ、俺はカードを二枚伏せて、ターンエンド」

 このターンだけで、第六天魔王は見抜いていた。相対するこの男が本当のデュエルを知らないということに。

「我のターン、ドロー」

   第六天魔王SP1→2

     林吉蔵SP1→2

地獄の始まりだった。

「カードを2枚伏せる。スピードカウンターを1つ使い、手札から『イチバンスピアー』を召喚」

 

 

《イチバンスピアー 》スピリット

星4/白属性/戦士族

カウンター(1つ)→Lv1 攻守1500 (2つ)→Lv2 攻守2000

(1): Lv1・Lv2  このスピリットの色とシンボルは赤としても扱う。

(2): Lv1・Lv2  自分の手札にあるカード名「天魔王ゴッド・ゼクス」すべてのレベルを6にする。

(3): Lv2【超装甲:赤/白/青】このスピリットは、相手の赤/白/青のスピリット/アルティメット/ネクサス/マジックの効果を受けない。

 

 

「す、スピリット?」

[[こ、これはどういうことなんだぁぁぁ!!モンスターではない、スピリットが召喚されたぞぉぉぉぉ!!???]]

 ざわつく観客、チーム『太陽』のメンバー、誰も彼もがこの先を予想できていなかった。

「スピリットとは、フィールドのカウンターを消費して召喚される。我は手札から永続魔法(ネクサス)『オワリノセカイ』を配置」

 

 

《オワリノセカイ》永続魔法(ネクサス)

カウンター(1つ)→Lv1

(1):Lv1『自分のバトルフェイズ』

カード名に「ゴッド・ゼクス」と入っている自分のスピリットすべてを、そのスピリットが持つ最高Lvとして扱う。

シンボル:緑青

 

 

 

「低級スピリットは、召喚権を使わない。ただし上級スピリットにはリリースが必要。『イチバンスピアー』をリリース。レベル6となったこのスピリットを召喚」

 第六天魔王が力強く、手札にあったカードを机に叩きつけた。

 

 

「天意に光臨せよ、万能なる魔界の使者、『天魔王ゴッドゼクス』!」

 

 

 上空に黄金の滝が現れ、その中から黄金の騎士が現れた。背部には光輪のような黄金の輪があり、その一つ目が怪しく光る。それはあまりに巨大で、圧倒的な王者の風格を持っていた。

 

 

《天魔王ゴッドゼクス》スピリット

星8/赤・紫・緑・白・黄・青属性/戦士族

カウンター(1つ)→Lv1 2500 (2つ)→Lv2 3000 (10個)→Lv3 10000

(1):このスピリットは、相手のカードの対象とならない。

(2):【六天連鎖:条件《シンボル3色》】

自分のシンボルが3色以上ある間、相手のモンスター/スピリット/アルティメットすべては攻撃できない。

(3):Lv2・Lv3『自分のアタックステップ』

このスピリットに[ソウルカウンター]が置かれている間、自分の2色以上のスピリットがアタックしたとき、相手のモンスター /スピリット/アルティメットのコア2個をトラッシュに置くか攻撃力を1000下げる。

シンボル:白

 

 

     第六天魔王SP1→0

「六天連鎖、発揮!我がフィールドに三色以上のシンボルがある間、お前のスピリットは攻撃できない。そしてネクサス『オワリノセカイ』の効果により、『天魔王ゴッドゼクス』は最大レベルとなっている」

「攻撃力10000!!??」

「『天魔王ゴッドゼクス』でアタックだ」

 

 

 

 

 

 第六天魔王が忙しくしていた時、チームメイトのテスタロッサとアリスはというと、「黒幕」と名乗る男に呼び出されていた。

 試合と時間を被せてきた「黒幕」の狙いは見え見えだったが、2人はアウトレイジ。呼び出しに対して尻尾を巻いて逃げたとあってはアウトレイジの名折れだ。

 そういう訳で2人は試合を第六天魔王に任せて指定場所の自然公園に来た訳だが、時間になっても「黒幕」が現れることはなかった。

「ったく、ただのイタズラかよ」「戻るわよ。今から走れば間に合うだろうし」

[いや、その必要はないよ]

「「!!」」

 テスタロッサの足元、捨てられていた古いラジオから声がした。そしてその声は、2人にとって忘れられない相手のものだった。

[ここまで遥々ご苦労様。どうやら君達も死んでこっちに来たみたいだね」

「……………イズモ………」

 テスタロッサはアウトレイジとなる前までは、オラクル教徒の1人として最高司祭と次期後継者であるイズモの背中を見てきた。そしてクロスファイアというアホと出会い、アウトレイジとなってからはイズモの悔しさや嘆きや悲しみで歪んだ顔を見てきた。

 だからこそ分かる。今のイズモがいきいきしているのを。

「また何か企んでいるのか?だったら止めとけ。俺達がまた沈めるぞ」

 今までになく冷たい表情で、テスタロッサが言った。しかし音声だけのイズモは、動じていなかった。

「やってみるといいよ。アリス、君の力も含めてね。僕の計画は、もう君達では止められない。だからこうして昔馴染みとお喋りする余裕すらあるんだ」

「ほー、随分とアウトレイジを見くびってくれたもんだぜ」

「事実だよ」

「……………」

 イズモの声は、何かの確信を獲ているようだった。もしくは、何か切り札でもあるのか。

「それで?俺達を呼びつけた理由は何だ?」

 テスタロッサが聞くと、ラジオの奥からクスクスと笑い声が聞こえてきた。

「そんな大層なことじゃないよ。ただ足止めして、チーム『太陽』に負けてくれないかな、程度の嫌がらせだよ」

 そこでアリスが割って入った。

「私たちの残り1人が三タテするかもしれないわよ?」

「だから強いカードをあげたんだ。素人でも勝てるような」

 アリスはクスッと笑った。

「第六天魔王のデュエル、見たことないのね」

[なに?]

 イズモから満足のいく反応が返ってきたので、アリスはたたみかけた。

「そうよね、テスタ。第六天魔王はただ強いのではない」「、あぁ、なんというか、強いんだ」「強いとは何かを理解しているのよ。ちょっとひん曲がっているけどね」

 言語化できなかったテスタロッサに代わり、結局アリスが最後まで言った。

[友情とか、そういうのかい?それなら飽きる程知って…]

「違う。どう強いか分かっている。だから強いのよ」

 煽る。

[なに?]

「ただ強いカードを集めれば強くなるなら、大会が盛り上がることはないわ。必ず、強さには理由があるの。もしかして、本当に強いカードをあげただけなの?」

 煽る煽る。

[……]

「戻るわよ、テスタ」「あ、アリスさん?どうなされたん…」「いいから」「…はい」

[行かせはしないよ]

 

 

 

「くっそ!!!」

「いくら嘆いた所で、何も変わらないぞ?」

「分かってる!俺のターン、ドロー!」

    谷川甚兵衛SP2→3

     第六天魔王SP0→1

 すでに林吉蔵は『天魔王ゴッドゼクス』の一撃を受け敗北。続く次鋒『谷川甚兵衛』は苦悶の表情でフィールドを眺めた。

 手札は6枚。伏せカード無し。対する相手は、フィールドに『天魔王ゴッドゼクス』とかいう化け物の一体のみ。最初に伏せた2枚のカードが気になるが、まずこのターンで『天魔王ゴッドゼクス』をどうにかしなければ、攻撃力10000のパンチが飛んでくる。

 『天魔王ゴッドゼクス』は対象をとられないカード。しかし知らない人からもらった谷川のデッキに対象をとらない除去カードは入っていない。つまり、詰みだった。

「確かに征竜は強力なカードだ。だが弱者が使えば、ただ打点の高い量産型バニラとなるだけだ」

 言動はいちいち腹が立つが、事実だった。谷川甚兵衛は今まで使ってきたカードを横に置き、もらった強いカードだけで考えずにデッキを組んでいた。そして前使っていたデッキには、対象をとらない除去カードがあった。

 そこで谷川は、昨日リーダーの太郎と話したことを思い出した。

 確か弱いカードでデュエルするのではなく、強いカードでデュエルがしたいと、谷川は太郎に言った。あの時の谷川の表情を、谷川は再び思い出した。

「ちくしょう、チクショォォォォォォ」

 ズシンなら、『ゴッドゼクス』にすら勝てたかもしれない。相手は1人。『ゴッドゼクス』も恐らく出てくるのは1枚。ターンを稼ぐことは容易だっただろう。

 谷川甚兵衛はこの瞬間、後悔した。

「ターンエンドしろ」

 第六天魔王の言葉に、ハッとする。

「ターンエンドしろ、虫けら」

 まだ谷川はドローしただけ。だが、ここから勝つビジョンなど一切見えなかった。どう足掻いても、勝つ自信はなかった。

 ならば、このままサレンダーして何が悪いのだろうか。むしろお互いに面倒がなくて、いいのではないのか。

「ジンンンンンンン!!!!!!!」

 仲間の声が聞こえた。顔を上げると、チーム『太陽』の仲間達が見えた。

 ………………、そうだ。俺はチーム『太陽』。何度だって太陽のように昇る、それが俺達。そしてチーム『太陽』のデュエルは、繋ぐデュエル。

「俺はカードを1枚伏せ、『キーメイス』を守備表示で召喚!!!!!」

 

 

《キーメイス》通常モンスター

星1/光属性/天使族/攻 400/守 300

とても小さな天使。

かわいらしさに負け、誰でも心を開いてしまう。

 

 

 キーメイス、俺達の絆。

 最初はコイツもデッキから抜こうとした。しかし、それはできなかった。何となくだが、デュエリストとしての芯をなくしたくなかったのかもしれない。

「俺はこれで、ターンエンド!!」

 今伏せたのは『アストラルバリア』。これはモンスターへの攻撃を自分に向けさせ、モンスターを守るトラップ。これで谷川は太郎に繋ぐつもりだった。

「確かにお前は俺より強い。だが、これはチーム戦だ!例え俺がやられても、太郎がいる!太郎なら、あと19ターンぐらいなんとかする!チーム『太陽』は、諦めねぇ!!!」

 谷川が気持ちよく言い切るが、それに水を指すのが第六天魔王だ。

「まだ分からんようだな」

「何!?」

「貴様ら羽虫が何匹群れた所で、我にかすり傷1つ与えられないということだ。我のターン」

   第六天魔王SP1→2

    谷川甚兵衛SP3→4

「バースト(カードを)セット。そして手札からマジック(魔法カード)『ハンマーインパクト』を発動」

 

 

《ハンマーインパクト 》速攻魔法(マジック)

 自分のモンスター一体を選択する。そのカード以外の属性の相手のスピリット/モンスター1体と相手フィールドのカード1枚を破壊する。この効果で破壊したスピリット/ネクサス/モンスターすべての効果すべては発揮されない。

 

 

「『天魔王ゴッドゼクス』を選択。よって羽虫の『キーメイス』と伏せカードを破壊だ」

「何!?」

「残念だったな。どうやら貴様は次に繋げることもできない低能のようだぞ」

「…………クソッ」

「『天魔王ゴッドゼクス』でアタック。ネクサス『オワリノセカイ』の効果で、ゴッドゼクスは攻撃力10000だ」

 ゴッドゼクスがその巨体に見合わぬ動きで谷川甚兵衛に近づくと、手に持っていた曲刀を振り下ろした。

 谷川のDホイールから煙が上がる。

[決まったぁぁぁぁぁぁ!!!なんとなんと、チーム『アリス』は1人で2人も倒し、未だにダメージを負っていないぞぉぉ!?これはどういうことだぁぁぁぁ!!]

 チームの所に戻った谷川は、Dホイールに乗ったままリーダーの太郎に頭を下げた。

「すまねぇ太郎!あんなバケモノ、ズシンでしか勝てないのに、俺は!」

「俺も、本当にすまねぇ!」

 先鋒の林吉蔵も頭を下げた。今まで全く顔色を変えなかった太郎は笑顔を作ると、言い放った。

「大丈夫だ。俺1人でズシンを召喚する」

 その笑顔に悲しみが含まれていることに気づいた谷川と林吉蔵は悔しそうな顔をしたが、何も言えず、無言で太郎を見送った。

 少し走って第六天魔王に追いついた太郎は、第六天魔王を指差し、言った。

「確かにアンタは強いかもしれない。だがな、俺達にだって負けられない理由があるんだ!!!絶対にズシンを召喚し、お前を倒す!」

 勇気と元気だけで言い放った言葉。この大会に参加する多くの人が言う言葉。

 それに対しても、第六天魔王は鼻で笑った。

「ズシンしか頼る仲間のいない羽虫が、我から20ターン逃げきる、か。まともな状況判断もできないとは。残念を通り越して憐れみすら覚えるぞ」

「うるせぇ!」

「ふん。貴様も起こしてみるのか?奇跡とやらを」

「はっ。テメェこそ、ずっと立ちっぱでしんどいんじゃないか?疲れてるように見えるぞ。俺のターン!」

 第六天魔王の煽りが終わりそうにないため、太郎は勝手にデュエルを始めた。どこか焦っているように、第六天魔王は感じるのだった。

「再び現れろ、『キーメイス』!」

 キーメイスが出るには出たが、誰一人喜ぶ人などいなかった。

 前のWRGPのことは、チーム『太陽』がズシンを狙っているとチーム『5d's』が知らなかったからこそ起きた奇跡でもある。今は誰もが、太郎がズシンを狙っていると知っている。そしてチーム『アリス』も1人だが、その1人が無傷で征竜2人を倒した第六天魔王。

 観客の目には、ほぼ望みがないように見えていた。むしろ、早く負けて次を見たいと思うような不届き者までいた。

「俺はカードを2枚伏せて、ターンエンド」

「我のターン」

    第六天魔王SP3→4

     山下太郎SP5→6

「バトルだ。行け、ゴッドゼクス」

 ゴッドゼクスがゆっくりと動く。それに太郎は不敵な顔をすると、手を自身の横に伸ばした。

「トラップ発動、『安全地帯』!俺はキーメイスを選択。よって『安全地帯』のカードがある限り、キーメイスは無敵だ!」

 

 

 

《安全地帯》永続罠

フィールドの表側攻撃表示モンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。

(1):このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、その表側表示モンスターは、相手の効果の対象にならず、戦闘及び相手の効果では破壊されず、相手に直接攻撃できない。このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは破壊される。そのモンスターがフィールドから離れた時にこのカードは破壊される。

 

 

「ならば我は手札から、2枚目の『ハンマーインパクト』を発動。キーメイスと『安全地帯』を破壊。やれ、ゴッドゼクス、ダイレクトアタック」

「………………」

  山下太郎LP4000→0

[決まったぁぁぁぁぁぁ!!!なんと、なんと、チーム『アリス』の第六天魔王選手がチーム『太陽』の3人を1人で倒したぞぉぉぉ!?なんという力、なんという圧倒的なプレイ、そしてゴッドゼクス。全てでチーム『太陽』を圧倒、2回戦に進出だぁぁぁぁぁぁ!]

 完全なる、チーム『太陽』の敗北だった。

 

 

 

 

「太郎………」

 うなだれ、動かない太郎に谷川が話しかけた。

「俺達が悪かった。太郎は悪くねぇよ。俺が、レアカードに浮かれて、何も考えなかったから…」

「俺も、レアカードを使えば勝てるとか思ってた。ホント、ゴメン!!」

 林吉蔵が頭を下げる。

 ゆっくりと頭を上げた太郎。その目には、涙があった。

「俺さ、今度はいけると思ったんだ。今度こそ、ズシンで優勝できるって………」

「太郎!」

 谷川が太郎の両肩をつかみ、目を合わせた。

「俺とヨシに、償いのチャンスをくれ」

 その目は真剣だった。だが、既に裏切られた太郎は何も反応しない。

「俺を殴ってくれたって構わない。それぐらいのことを、俺達はお前にしたんだ。だけど、それでも、また俺達とデュエルしてくれ!一緒にチーム『太陽』として、また一緒に考えよう。一緒にズシンを召喚しよう!!俺は、まだお前とデュエルがしたいんだ!」

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