遊戯王世界でテスタロッサとアリスとアウトレイジ 作:不知火勇翔
謎の老人にデュエルをふっかけられるも圧勝した彼らに襲いかかったのは、空腹だった。
まさか別の世界からやって来たなんて誰かに言えるはずもなく、怪しまれて厄介なことになる。
だが幸いなことに、この世界ではデュエルの強さが全てらしい。なんでも、デュエルで世界の命運が左右されたこともあるらしい。
そんな訳で、賭けデュエルでどこかに泊めてもらうことにした2人だったが、デュエルをふっかける相手は慎重に選んだ。
条件はまず、変な奴じゃないこと。これの理由は言わずもがな。それから、強そうな人。もしくはプライドが高そうな人。世に言うデュエル脳の人だ。負けたら勝った方に食べ物と寝る所を提供する賭けデュエルなんて、普通じゃない考え方の持ち主でなければ普通やらないだろう。そしてテスタロッサは長年の経験から、なんとなくでも強者かどうかを嗅ぎ分けることができた。
2人が辿り着いたのは、街の外れにあるガレージだった。
街中で見かけたカニの頭をした青年にテスタロッサが反応し、2人はこっそり後をつけた。そしてカニ頭の青年が入っていった建物が、この錆びれた建物だったのだ。
「ごめんくださーい」
そう言ってズカズカと中に入っていくテスタロッサとアリスに、中にいた3人の男達が驚き、固まる。
一人は、カニのような髪型をし、青い上着と左頬のマークが印象的な青年。テスタロッサが反応した強者だ。名前は不動遊星。幾度となくこのネオ童実野シティをデュエルで救ってきた、英雄だった。
それから金髪にピアスの、いかにも気が強そうな男が1人。名前はジャック・アトラス。不動遊星のライバルであり、不動遊星が現れる前までキングとしてこの街のデュエル界隈で君臨し続けた男だ。
そして頭にバンダナを巻く、オレンジ髪の青年が1人いた。名前はクロウ・ホーガン。孤児院に寄付し続ける、心優しい男だ。孤児院の子供からも、クロウ兄ちゃん、と呼ばれ、慕われている。
固まる3人に、テスタロッサは堂々とした態度で言った。
「賭けデュエルをしてくれないか?俺達が勝ったら、今日の昼と夜と明日の朝飯、それから寝る所をくれ」
元々切った張ったの世界で生きてきて、まだこの世界に来て数時間しか経っていないテスタロッサには、自分が普通じゃないことを言っている自覚など皆無だった。いくらデュエル脳の奴が多いとはいえ、そんなことを言うのは流石に異常すぎる。なのにテスタは、これが普通だろ?みたいな顔で言ってのけていた。
アリスの方は、分かっていて成り行きを見守っている風だった。その腹には、どうせ勝つだろう、という根拠のない推察もあった。
戸惑い固まる3人の中で、カニ頭の青年だけが深刻そうな表情をした。
「どうしてだ?誰かから逃げてきたのか?」
テスタロッサは首を横に振った。
「違うけど、色々あってな。今は話せない。話すとしても、デュエルで説明する。それで、受けてくれるか?」
テスタロッサの真剣な表情に、1人の男が感化された。クロウ・ホーガンである。
「いいぜ。そこまで自信があるなら、俺が相手してやるよ餓鬼共。表にでろ」
「クロウ…」
「気をつけろ。奴らは、少なくとも弱くはない」
チームメイトの心配する言葉に「分かった」と告げたクロウは、2人と向き合った。
「さぁ、どっちがデュエルするんだ?それとも、タッグデュエルか?」
あの変な老人がくれたデュエルディスクが1つ、そして老人が使っていたデュエルディスクがもう1つ、その2つを2人はケースに入れず裸で持ち歩いていたため、クロウは2人がタッグデュエルをするつもりかと聞いたのだ。
だがアリスは首を横に振った。
「今回は私がやるわ」
「分かった。それじゃあ、表に出ろ」
クロウの言葉で、クロウ達3人とテスタロッサとアリスの2人が一旦外に出ると、アリスとクロウは向き合って、構えた。
アリスがデュエルディスクを腕につけ、デッキを入れた。テスタロッサはアリスから少し距離をとり、遊星とジャックの隣へ移動した。
「「デュエル!!」」
「私が先行をもらうわ!」
まずアリスが、先行をとった。
「エマージェンシータイフーンを3枚発動」
「3枚!?」
《エマージェンシータイフーン》
カードを2枚まで引く。その後、自分の手札を1枚捨てる。
「効果で、2枚引いて1枚捨てるのを3回繰り返す」
いきなり、有り得ないようなことを始めたアリスに、クロウは素で驚き、声を上げた。そして、アリスが仕組んだのではないか、という疑いの目でクロウはアリスを見た。
「…ふんっ。つまらぬことをしたな、貴様のツレは」
ジャックが隣に立つテスタロッサを軽蔑した目で見るが、テスタロッサは「そう思うか?」と不敵に笑った。
「私は『命水百仙(ウォーターバイト)しずく』を通常召喚。さらに手札から魔法カード『ヒラメキ・プログラム』発動。自分のクリーチャー一体を破壊し、その破壊したクリーチャーよりレベルの1つ高いクリーチャーを、デッキから特殊召喚する」
《命水百仙しずく》エグザイル・クリーチャー
星3/水属性/魔法使い族/攻1000/守1000
ドロン・ゴー:このクリーチャーが破壊された時、名前に「百仙」とあるエグザイル・クリーチャーを1体、自分の手札からバトルゾーンに出してもよい。
自分の他の、名前に「しずく」とあるエグザイル・クリーチャーをバトルゾーンに出すことはできない。
《ヒラメキ・プログラム》通常魔法
自分のクリーチャーを1体破壊する。その後、自分の山札の上から、その破壊されたクリーチャーよりレベルが1多いクリーチャーが出るまで、カードをすべてのプレイヤーに見せる。そのクリーチャーをモンスターゾーンに出してもよい。その後、山札をシャッフルする。
「破壊するのは、しずくちゃん!そしてしずくちゃんのドロンゴー発動!手札から『百仙閣魔(バイトヘル)マジックマ瀧』を守備表示で特殊召喚!ヒラメキ・プログラムの効果で、山札からしずくちゃんよりレベルが1つ高いレベル4クリーチャー『無法の(アウト)レイジ・エッグ』を守備表示で特殊召喚。カードを2枚伏せて、ターンエンド」
{アリスの手札5→2→8→5→4→2→0
《百仙閻魔 マジックマ瀧》エグザイル・クリーチャー
星7/水属性/魔法使い族/攻2200/守2500
このクリーチャーが攻撃する時、相手の手札を2枚見ないで選び、捨てさせる。
ドロン・ゴー:このクリーチャーが破壊された時、名前に「百仙」または「閻魔」とあるエグザイル・クリーチャーを1体、自分の手札からバトルゾーンに出してもよい。
自分の他の、名前に「マジックマ瀧」とあるエグザイル・クリーチャーをモンスターゾーンに出すことはできない。
《無法の(アウト)レイジ・エッグ》クリーチャー:エッグ
星4/水属性/ドラゴン族/攻500/守500
自分のターンのはじめに、自分の山札の上から1枚目を墓地に置く。そのカードがエグザイルでないクリーチャーであれば、このクリーチャーを破壊してそのアウトレイジをバトルゾーンに出す。
このクリーチャーは攻撃することができない。
不正した奴の割には割と普通な展開だったことに、クロウは顔をしかめる。本当にアリスが不正したか、分からなくなっているのだ。また、クリーチャーという初めて聞くカードにも困惑していた。
アリスとテスタロッサは説明する気はなさそうだし、考えても仕方がないと割り切ったクロウは、デッキからカードを引いた。
「俺のターン、ドローォ!俺は手札の『BF-毒風のシムーン』の効果を発動!手札のBFを1枚除外して、デッキから永続魔法『黒い旋風』を発動する!」
《BF-毒風のシムーン》効果モンスター
星 6 / 闇属性 / 鳥獣族 / 攻1600 / 守2000
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドにモンスターが存在しない場合、手札からこのカード以外の「BF」モンスター1体を除外して発動できる。デッキから「黒い旋風」1枚を自分の魔法&罠ゾーンに表側表示で置く。その後、手札のこのカードをリリースなしで召喚するか、墓地へ送る。この効果で置いた「黒い旋風」はエンドフェイズに墓地へ送られ、自分は1000ダメージを受ける。この効果の発動後、ターン終了時まで自分は闇属性モンスターしかEXデッキから特殊召喚できない。
《黒い旋風》永続魔法
①:自分フィールドに「BF」モンスターが召喚された時にこの効果を発動できる。そのモンスターより低い攻撃力を持つ「BF」モンスター1体をデッキから手札に加える。
「さらに、自身の効果で『BF-毒風のシムーン』を特殊召喚!『黒い旋風』の効果発動!召喚されたシムーンより攻撃力の低いBFを1枚手札に!」
{クロウの手札5→4→3→4
「そしてフィールドにBFがいるとき、このモンスターは特殊召喚できる!現れろ、『BF-疾風のゲイル』!ゲイルの効果発動!テメェのマジックマ瀧の攻撃力と守備力を半減させる!再び『黒い旋風』の効果発動!ゲイルより攻撃力の低いBFを1枚手札に加える!」
{マジックマ瀧 攻2200/守2500→攻1100/守1250
{クロウの手札4→3→4
《BF-疾風のゲイル》チューナー・効果モンスター
星3/闇属性/鳥獣族/攻1300/守 400
①:自分フィールドに「BF-疾風のゲイル」以外の「BF」モンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
②:1ターンに1度、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。その相手モンスターの攻撃力・守備力を半分にする。
ずっと叫んでいるクロウに、アリスは若干引いていた。テスタロッサとアリスの主人である切札勝太でも、あそこまで絶えず叫ぶように召喚はしていない。
ネオ童実野シティの住人だからずっとバイクでデュエルしていて声を張り上げる習慣がついているのか、クロウ個人の理由なのか、アリスには分からなかった。
「俺は『BF-突風のオロシ』の効果発動!特殊召喚!」
{クロウの手札4→3
《BF-突風のオロシ》チューナーモンスター
星 1 / 闇属性 / 鳥獣族 / 攻400 / 守600
「BF-突風のオロシ」の①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできない。
①:自分フィールドに「BF-突風のオロシ」以外の「BF」モンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
②:このカードがS素材として墓地へ送られた場合フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの表示形式を変更する。
「手札の『BF-精鋭のゼピュロス』を通常召喚!再び『黒い旋風』の効果発動!BFを手札に加える!」
{クロウの手札3→2
《BF-精鋭のゼピュロス》効果モンスター
星4/闇属性/鳥獣族/攻1600/守1000
このカード名の効果はデュエル中に1度しか使用できない。
①:このカードが墓地に存在する場合、自分フィールドの表側表示のカード1枚を持ち主の手札に戻して発動できる。このカードを墓地から特殊召喚し、自分は400ダメージを受ける。
「俺はレベル4の『精鋭のゼピュロス』とレベル1の『突風のオロシ』に、レベル3の『疾風のゲイル』をチューニング!黒き疾風よ 秘めたる思いをその翼に 現出せよ!シンクロ召喚!舞い上がれ、ブラックフェザードラゴン!!」
『ブラックフェザードラゴン』
星8闇属性ドラゴン族攻2800守1600
召喚条件:チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
①:自分が効果ダメージを受ける場合、代わりにこのカードに黒羽カウンターを1つ置く。
②:このカードの攻撃力は、このカードの黒羽カウンターの数×700ダウンする。
③:1ターンに1度、このカードの黒羽カウンターを全て取り除き、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。その相手モンスターの攻撃力は取り除いた黒羽カウンターの数×700ダウンし、ダウンした数値分のダメージを相手に与える。
フィールドに、巨大な黒い竜が出現し、ジャックがほくそ笑む。
「ふんっ。存外、早く片がつきそうだな」
遊星もテスタロッサとアリスから目は離さず警戒はしているが、少し安堵した様子だった。
テスタロッサも少し驚いた表情をし、「5000GTぐらいの迫力はあるな」、と感心した風に呟いた。
「S素材となった『突風のオロシ』の効果発動!『無法の(アウト)レイジエッグ』を攻撃表示にする!」
クロウが孵化したばかりのドラゴンのようなクリーチャーを指差し、言った。
「バトル!ブラックフェザードラゴンで、『無法の(アウト)レイジエッグ』を攻撃!」
ブラックフェザードラゴンがその大きな口を開け、ブレスを吐く寸前、アリスの声が割り込む。
「トラップ発動!『スーパースパーク』!相手モンスターは全て、攻撃したことになる!」
《スーパースパーク』トラップカード
相手モンスターは全て、攻撃したことになる。
ブラックフェザードラゴンがブレスを吐くのを止め、固まる。
クロウはチッっと舌打ちをすると、カードを1枚伏せて、ターンエンドだ!」と言った。
「そして『黒い旋風』は墓地へ送られ、クロウは1000Pのダメージを受ける」
不動遊星の声が響く。無傷で佇むアウトレイジエッグが、ピョコンっと跳ねるのだった。
{クロウの手札2→1