遊戯王世界でテスタロッサとアリスとアウトレイジ 作:不知火勇翔
引き運、という言葉がある。
読んで字の如く、引きたいカードを引く運勢のことだ。そして引き運が悪くてどんずまりになることを、手札事故と言うらしい。
そして手札事故は、デッキのカードがバラバラなとき、起こり易いらしい。ボク達のデッキはアウトレイジのみんなだけでできているが、皆が皆入っているため、相当バラつきがあると思う。手札事故だって、起こらない方がおかしいレベルだ。だが、この2回の戦いで手札事故は起きていない。むしろ、勝てるカードしか引いていない。先輩のエマージェンシータイフーン三連打が分かり易い例だろう。
ボク達の主人である切札勝太みたいに、「ドロドロドロドロドロー!」とか言って、気合いで切り札を引いている訳でもない。
恐らく、そういうことなのだろう。
「私のターン。まずフィールドにいる『無法の(アウト)レイジ・エッグ』の効果発動。デッキトップを確認し、それがエグザイルでないクリーチャーであれば、エッグを破壊し引いたクリーチャーを特殊召喚する。ドンっ。デッキトップのカードは……」
アリスがドローしたカードを見るが、大して驚きもせず、そのままクロウに見せた。
デュエルしていないテスタロッサでもアリスが引いたカードが『アクアサーファー』だろうと、予想できてしまった。最早2人のデュエルに、運勢は関わってこないのだから。
「デッキトップのカードは、『アクアサーファー』。よって『無法の(アウト)レイジ・エッグ』を破壊し、アクアサーファーを特殊召喚」
《アクアサーファー》クリーチャー
星6/水属性/水族/攻2000/守2000
召喚したとき、フィールドのカード1枚を手札に戻す。
「『アクアサーファー』の効果発動。クロウさんの伏せカードを手札に戻す」
クロウの伏せカードが、クロウの手元に戻ってくる。
「ブラックフェザードラゴンを戻さないということは、」
「除去できる算段があるということか。だがブラックフェザードラゴンは攻撃力2800のモンスター。そう簡単ではないぞ」
不動遊星とジャック・アトラスが、重々しく言った。テスタロッサはこのターンでキルできるカードのコンボがあったなそういえば、と人事のように考えていた。人事であって欲しかったからだ。
「私はアクアサーファーとマジックマ瀧をリリースし、このモンスターをアドバンス召喚」
そう言ったアリスは、手札にあった白紙のカードをクロウに見せた。
そのカードに、テスタロッサ以外の3人が首を傾げ、テスタロッサは嫌そうな表情をした
「テスタ。出番よ」
アリスがテスタロッサを見たが、テスタロッサは明後日の方向を見て目を合わせようとしなかった。
「テスタ。アナタいい度胸ね。覚悟は、」
「分かったから!やればいいんだろ!?分かったから!その代わり、俺も先輩を召喚するときは、ちゃんと召喚されてくれよ!」
「え?嫌よ面倒だし…」
「はぁ!?」
テスタロッサはアリスとガミガミ喧嘩しながらモンスターのいる中を突っ切り、アクアサーファーの横を素通りし、アリスの隣まで来ると、アリスの握っていた白紙のカードに手で触れた。すると白紙のカードがみるみる赤く染まり、テスタロッサが描かれたカードになった。
「私はこのバカを召喚」
「うっせぇよ。それほどバカじゃねぇだろ、俺」
「自覚ないのね、テスタは。知ってたけど」
《灼熱の斬撃 テスタ・ロッサ》クリーチャー
星7/アウトレイジMAX / 戦士族 / 攻2000/守2500
このクリーチャーが攻撃する時、自分の山札の上から1枚目を墓地に置く。それが魔法カードであれば、このクリーチャーは攻撃力を1000ポイントプラスし、もう1度攻撃できる。
「仕方ねぇなぁ…」と言って、モンスターゾーンに入っていくテスタロッサに、遊星達3人は絶句する。「は?」「なに?」「…?」と、同じような表情をしていた。
「私のターン、ドロー。バトル。テスタで『BF-毒風のシムーン』を攻撃」
テスタロッサが静かに、BF-毒風のシムーンに歩み寄る。ぱっと見いつものテスタロッサと同じだが、その雰囲気だけで、シムーンは後ずさりを始めた。
相手が悪すぎた。
シムーンに触れられるぐらい近くまで歩み寄ったテスタロッサは、シムーンをパンチ一発で消し飛ばした。
「テスタの効果発動。デッキトップを見てそれが魔法カードなら、テスタは攻撃力が1000上がりもう一度攻撃できる。どんっ。魔法カード。テスタでブラックフェザードラゴンを攻撃」
「へいへい。おりゃっ」
またもパンチ一発で、ブラックフェザードラゴンが消滅する。
焦りも相まってか、またクロウは吐き捨てた。
「クッソ!次引いたのが魔法カードなら、俺の負けか」
クロウが吐き捨てるが、アリスは天使のような笑顔でクロウに言った。
「まさか、次魔法カードが出ないかもしれないとか思ってる?それなら諦めて。このデッキのカードは全て、私とテスタの仲間だから。その皆が、全力でデッキトップを魔法カードにしてくれるわ」
クロウにとって、アリスの笑顔は逆に恐ろしく見えた。
「……」
「どんっ。はい、魔法カード。テスタの攻撃力は4000に。テスタ、次はダイレクトアタック」
相棒が破壊されてもまだ固まっていたクロウだが、結局できることなんてなかった。手札は2枚。どちらも手札誘爆の効果はない。そして、もうフィールドにモンスターは残っていなかった。
{クロウのライフ3000→2600→2400→0