遊戯王世界でテスタロッサとアリスとアウトレイジ 作:不知火勇翔
クロウに勝ったテスタロッサとアリスは、不動遊星達からジュースと栄養バーをせしめ、外で一息ついていた。
というか、さっと出せるのがジュースと栄養バーとは、あの3人の食生活が伺い知れる。
ガレージの外で隣り合うように座り込んだ2人は、ようやく今の状況整理を始めた。
「まず、此処にいる理由すら不明なのよね」
「そうだな。犯人は神様っていうのより、俺達が知らないクリーチャーって線の方があり得るけど、それも含めて全っ然何も分からないよな」
「もしくは、私達が知らないあの世界の法則の1つ、とか」
「あり得なくはないだろうな。ま、そんなこといいじゃねぇか。こうして五体満足でいるんだしよ」
「…そうね」
「……」「……」
自然と、2人が黙る。
昔のように話すのは楽だったが、そうもいかない。
「…アリスが死んだ時、俺は本当に悲しかった」
「………」
「言っちゃ悪いが、パルサーが死んだ時より…」
途中で、テスタロッサの言葉が切れる。
さっきまでは知らない世界に怯え、動き続けてないと不安でいっぱいだった。だから動き続けて、情報を集めた。だが少しずつだがこの世界のことが分かってきて、ちゃんと座って落ち着く余裕が生まれると、彼の心に湧き上がるものがあった。
隣に座るアリスの顔を近くでちゃんと見て、今自分がアリスといる、という現実をテスタロッサがようやく受け止めた瞬間だった。
アリスはテスタロッサの呆けた表情に、首を傾げる。
「どうしたのよ、テスタ」
テスタロッサの目から、涙が溢れる。
「ちょっ、テスタ!?」
クールビューティーで人気だったアリスが、珍しく狼狽する。
「ちょっ、テスタ、どうしたのよ」
分かりきっている質問。これが彼女の精一杯だった。
「………、、」
アリスの目からも、涙が溢れる。
好きな人を守ろうとして死んだのだから、アリスにとっては本望だった。だが、好きな人ともっといたいという願いは、デュエマ世界では終ぞ叶わなかった。
駅前でテスタロッサを見た時から、こうして2人でいられることが、嬉しくてたまらなかった。ただあの時は気が動転していたし恐怖心もあったしで、マトモにテスタロッサのことを考えてはいなかった。
こうして2人で座って、安心し、ようやく心に溜め込んでいた感情が、溢れてきたのだ。
喜びを噛み締めるように泣く2人を影から見ている人達がいた。
不動遊星とジャック・アトラス、そしてクロス・ホーガンの3人だった。
いきなり現れ、賭けデュエルを挑んできた2人を怪しまない人などいない。その2人の内1人が、カードとなったりもしたのだ。
だが2人の様子を見て、不動遊星達3人は安心した。少なくとも2人が悪人でないことは、見ていたら分かったからだ。
自分達より年下の少年と少女が泣く光景は、3人の心をうった。
「なぁ先輩、これからはアリスって呼んでいいか?」
存分に泣き、少し落ち着いたテスタロッサは、アリスに聞いた。アリスは少し考え、言った。
「…いいわよ。歳も同じくらいだし。でも、どうして?」
「…もっと仲良くなれる気がしたんだ」
ストレートな物言いに、アリスがたじろぐ。
「…、ふーん」