遊戯王世界でテスタロッサとアリスとアウトレイジ   作:不知火勇翔

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地縛神 リターンズ

 不動遊星は、嫌な予感がしていた。

 カードとなれるテスタロッサとアリスの登場や、朝早くに出現し忽然と姿を消した『地縛神』。どれも普通ではなかった。

 

 

 

 

 朝、不動遊星は早くに起きていて、ランニングがてら住処の近くを走っていた。するとシティの上空に突然『地縛神』が現れるのが見えた。そして出現してから1分もしない内に『地縛神』がバラバラになって消えるのも、少し遠くから見ていた。その時不動遊星は驚いたが、慌てず自分のDホイールに乗り込み、『地縛神』が出現した場所へ向かった。

 十数分で着いた不動遊星だが、『地縛神』のじ、の文字すらない駅前に驚愕した。何もなかったかのように駅前で人を待っていた男性に『地縛神』について聞いてみると、「最初は驚いたが、デュエルで召喚されたみたいだったし、ただ大きいモンスターだな、ぐらいにしか思わなかったね。すぐに消えたし、無視したよ」と答えられた。デュエルしていた人について聞いてみると、老人とスーツ姿の二人組だと教えられた。そしてデュエルが決着すると老人が倒れ、スーツ姿の男が老人を抱え、どこかへ運んでいったらしい。

 不動遊星はよく状況が飲み込めなかったが、とりあえず納得して家に戻った。そして、家にテスタロッサとアリスが現れた。スーツ姿の二人組とは彼らだと思った遊星だったが、状況を何も分かっていなかったため、黙ってクロウのデュエルを見守ることにした。

 デュエルでスーツ姿の二人組は、最後まで『地縛神』を使うことはなかった。しかも勝利したが痣を持つクロウを傷つけたりはしなかった。つまり、この二人組が『地縛神』を倒したのだと遊星は考えた。そして次に、初めて見るクリーチャーというモンスターが『地縛神』みたいに危険なものかもしれないと警戒した。

 だが、それも杞憂だった。涙を流す彼らは、純粋に再会を喜んでいた。あんな顔ができる人間が悪人だとは、遊星自身が思いたくなかった。

 結局2人のことはよく分からなかったが、不動遊星は2人を信頼した。

 

 

 

 

 5人ともが、同時に反応した。遊星、ジャック、クロウの3人は体にある痣が輝いたことで、テスタロッサとアリスは戦場で培った耳で気づいた。

 ピュロロロロロロ!!

 紛れもなく、『磁縛神』の声だった。

 ここからは少し遠いが、『地縛神』の巨体は遊星達がいる場所からも見えた。

「なっ、アイツはカーリーの!!」

 ジャックが隠れていたことも忘れ、声を荒げた。クロウも驚いているが、遊星は重い表情をしてシティの空に居座る『地縛神』を見ていた。テスタロッサとアリスは素直に面倒そうな表情をしたが、『地縛神』が人から何かを吸い上げ始めた辺りで、深刻な表情に変わる。

「人の魂を、吸ってるのか?」

 テスタロッサが独り言のように呟く。遊星は物陰から出てくると、頷いた。

「あぁ。『地縛神』は人の魂を糧とする。君達は朝、奴と戦っていたのだろう?その時は魂を吸っていなかったのか?」

 遊星の言葉に、テスタロッサは首を横に振る。

「ちょっと待て!貴様ら、『地縛神』と朝戦っていただと!?」

 ジャックが会話に割り込んでくるが、テスタロッサは魂を吸い続ける『地縛神』から目を離さず、ジャックの問いを無視した。それに憤慨したジャックはテスタロッサに詰め寄ろうとするが、アリスが徐に立ち上がったことで、ジャックの足が止まる。

「テスタ、アイツは止めるべきよ」

 短いが、とても力のこもった言葉だった。テスタロッサは、アリスの言葉に頷く。

「そうだな」

 テスタロッサも立ち上がると、トンっ、とジャンプし、遊星達が住む建物の外壁を蹴り、そのまま別の建物の屋上まで飛び移った。アリスもそれ続く。

 テスタロッサがさっきのデュエルでカードになったのを見ていた3人は、非現実的な2人の身のこなしに反応することもなくそのまま受け入れ、自分達のDホイールに乗り込んだ。

 

 

 

 

 『龍可』と『龍亜』という名前の兄妹は、デュエル・アカデミアからの帰り道でいきなり『地縛神』と出くわした。

 頭上に出現した巨大な黒い心臓が空を覆い、ただでさえビルと高速道路によって日射量が少ない道を歩いていた2人は、いきなり現れたモンスターの圧迫感に、まともな反応すらできずにその場で固まっていた。

 かつて倒した筈のモンスターの一体が、突然平和な日常に入ってきたのだ。切り替えられる人の方が少ない。

 突然現れた黒い心臓は、近くの人間の魂を吸い始めた。2人の体にある痣が反応し、兄妹だけは難を逃れたが、周囲にいた人達は皆魂が抜かれ、倒れ伏した。

 黒い心臓はある程度の人間を喰らうと光り始め、大きな鳥型のモンスターに姿を変えた。姿を変化させた『地縛神』は、まだ喰い足りないのか、遠くにいて無事だった人達の魂も嘴から吸い込み始めた。

「ふっ、フハハハハハ!」

 動いている人が殆どいなくなり静まり返ったネオ童実野シティに、老人の笑い声が響く。

「シグナーでもない奴に油断して負けるとは!我ながら失態、大失態じゃわい!」

 老人は大笑いをしていたが、龍亜と龍可を見つけると、彼等に対して言った。

「ほう。貴様ら、シグナーか。ならば、まずは貴様らから殺してやるわい。言っておくが、朝のように油断はせぬぞ」

「み、皆を解放しろ!」

 龍亜が勇気を振り絞り、言い放つ。老人は鼻で笑うと、近くにいた、デュエルの途中で魂を抜かれたのかデュエルディスクをつけたまま動かない男からデュエルディスクを奪い取ると、腕につけた。

「そういうことは、強くなってから言うべきじゃな。少なくとも、ワシは貴様らより強いぞ」

「なんだと!!」

「龍亜!」

 安い挑発にのった龍亜を、妹である龍可が制すが、すでに双子にはデュエルしない選択肢などなかった。

 誰かが割り込みさえしなければ。

「やっぱり朝の奴だな。テメェ死んだんじゃなかったのかよ」

「私達も迂闊だったわ。変な奴だとは思ってたけど、心臓が止まっても生きているなんて、考えもしなかった」

 空から落ちてきた少年と少女が、双子と老人の間に着地した。

 テスタロッサと、アリスである。

 そもそもクリーチャー世界の住人は、この世界の人間とは比べ物にならないくらい高い身体能力を持つ。2人はその中でも、小さくはあるが歴史に名前が残る活躍ができる強者なのだ。高速道路を車より速く走ることも、沢山あるデュエルレーンから高速道路に飛び移ってショートカットすることだって、2人にとっては造作もなかった。

「あなた達は…」

 龍可が聞くと、アリスは振り返って双子に言った。

「邪魔だから、少し離れて」

 邪魔、と言われた龍可は言葉を失って黙り込んだ。龍亜は「俺だって今はシグナーだ!」と男の子らしく言い張るが、アリスの一睨みで黙る。

 テスタロッサは朝よりシワが増えた老人を睨みつけた。

「魂を吸われた人達は、テメェが死ねば解放されるのか?」

 くっくっく、と笑った老人は、「そうかもしれないな」と言った。「そうか」と短く言い放ったテスタロッサは持っていたデュエルディスクを腕につけた。

「だったら…、」

「そのデュエル、俺がもらう!」

 テスタロッサが言い終わる前に、不動遊星の声が遮った。

 不動遊星は自身のDホイールをテスタロッサと老人の間に滑り込ませた。

「お前がダークシグナーか?」

「「遊星!!」」

 不動遊星の登場に、龍亞と龍可は息を吹き返し、年相応の元気な顔をした。

「ふんっ。カーリーに何かあったと思って来たが、誰だ貴様は」

「へっ。前に会ったダークシグナーよりは、全然弱そうじゃねぇか」

「「ジャック!!クロウ!!」」

 ジャックとクロウも遅れて登場した。彼らもまた、老人からテスタロッサとアリス、それから龍亜と龍可を守るように、間に滑り込んだ。

 守られる形になったテスタロッサとアリスは、回り込んで遊星達の前に立って戦おうとしたが、テスタロッサの肩をクロウが、アリスの肩を遊星がつかんだ。

「『地縛神』は、俺達の世界の問題だ。お前達は、戦わなくていい」

 遊星の言葉に、テスタロッサとアリスは驚く。

 デュエマ世界では、強い2人に「戦うな」と言うクリーチャーなどいなかった。守られることは何度か経験があるが、2人にとって「戦うな」は新鮮だった。

「ダークシグナー!俺とデュエルだ!」

 遊星が指を指して言い放ち、老人は笑う。

「仕方がないか。まずはシグナーを1人2人殺して、それから貴様らを殺そうぞ」

 テスタロッサとアリスを見て言う老人に、クロウが言った。

「コイツらは、まだガキだ。やるっていうなら、俺達3人を負かしてからだよ!」

 3人の、テスタロッサのアリスを庇う姿勢に、龍可は首を傾げた。龍亜も、只ならぬ雰囲気の2人に、興味を持ち始めていた。

 テスタロッサとアリスはこの状況に理解が追いつかず、ただ黙って成り行きを見守ることしかできなかった。

 

 




次回は、テスタロッサとアリスが遊星に1枚のカードを貸す予定です。
 それと調べてて知ったのですが、アウトレイジは絆の力で強くなるんですね。知りませんでした。遊星達シグナーと一緒ですね。
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