遊戯王世界でテスタロッサとアリスとアウトレイジ   作:不知火勇翔

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「信じらんなーい!」

「信じらんなーい!」

 ネオ童実野シティに、姫の怒声が響きわたる。

 彼女の名前は『プリン』。テスタロッサやアリス達アウトレイジのご先祖様だ。また、テスタロッサと同じく切札勝太に力を貸す、デュエマ世界のお姫様でもある。

 テスタロッサが朝いた駅前で喚くプリンに、通り過ぎる人の多くが冷たい目で彼女を見ていた。

 それを見咎めた青年が、通行者を睨み返す。彼のプリンに対する忠誠あっての行動だが、それが事態を悪化させていた。

 その青年の名前は、『ドラゴン龍』。デュエマ世界では姫の従者としてプリンを助け続け、また切札勝太の星では勝太のライバルでありパン屋さんもやって姫の相手までやっていた、地味に凄い人物だ。

「姫!とにかくこの場所は人目につきます!移動しましょうムービング!」「うるさいうるさいうるさい!姫に指図するな!」「姫!」「大体何なのよ、どこなのよココ!」「姫、分からないからこそ、姫に危険が及ぶかもしれないんですデンジャラス!」

 姫と家来が段々ヒートアップし、更に周囲の目が冷ややかになる。カップルは水をさされたと不満そうな顔をし、子供も泣き出し始めた。

 結構な大騒ぎをしている2人を遠目に見る通行人の中に、2人が誰か分かる人物がいた。

 水文明のデータベースで数回彼らの写真を見ていたアリスは、驚き過ぎて頭が真っ白になっていた。

「アリス?どうしたんだよ…」

 隣にいたテスタロッサはアリスの肩を叩くが、アリスは現実を受け止めることで精一杯だった。

「アリス!」、と叫んだテスタロッサが強引にアリスの肩を引き寄せ、ようやくアリスは自分が呆けていたことに気づいた。

「あ、あぁゴメンなさい」

「ホントどうしたんだよ」

 テスタロッサが聞くと、アリスは駅前で騒ぐプリンとドラゴン龍を指差し、言った。

「古の時代、ハンターとエイリアンが殺し合ってたことは知ってる?」

 歴史は自信がないテスタロッサは、少し言葉に詰まる。戦いがあったことは知っているが、それ以上は知らなかった。

「え、そりゃぁ、一応、知ってるぞ?それが?」

 はぁ、とため息をついたアリスだが、再度真剣な顔をすると、言った。

「あの方、特に女の子の方。あの方は、その戦乱を終結させた英雄の1人よ。父親の部下に殺されかけても生き残り、エイリアンの姫でありながらハンターとエイリアンの架け橋として活躍なされ、時には最前線でもご活躍された、大英雄なのよ!」

 いつもよりテンション高めのアリスがテスタロッサに力説し、テスタロッサは「そ、そうなのか…」しか言えなかった。

「ちなみに、私達アウトレイジのご先祖様よ。アウトレイジ特有の体を武器にする能力も、あの方々の能力が由来なのよ?」

「マジか…」

「とりあえず挨拶しに行くわよ!」

「あ、あぁ」

 アリスに引っ張られるまま、テスタロッサはプリンとドラゴン龍の前まで移動した。近寄ってくるスーツ姿の2人に、プリンが反応した。

「アンタ達、確か切札勝太のカードね」

「は、はい!テスタロッサといいます!」「アリスといいます!」

「そ。それで、アンタ達も私達と同じなの?」

 ドラゴン龍以外の部下には気品をもって接する所が、彼女が王族であることを物語っていた。「た、多分そうだと思います!」

 切札勝太の世界で言う所の織田信長レベルで凄い人の前で恐縮しきってしまっているアリスは、プリンの一挙手一投足に注目していた。

 言動から子供っぽく見えるが、彼女は道半ばで表舞台から消えたテスタロッサやアリスなどとは比べ物にならないくらいの、マジの大物なのだ。

 

 

 

 テスタロッサとアリスが産まれるより遥か前、エイリアンの王に1人の娘が産まれた。名前は『プリン』。父親の名前は『エイリアン・ファーザー』、母は『エイリアン・マザー』。『鬼丸』と『修羅丸』という弟も産まれ、順風満帆な生活を送るはずだったが、裏切り者に殺されかけ、プリンの父はプリンがハンターに殺されたと勘違いしてクリーチャーのいる世界に進行を開始。血みどろの戦いが始まるが、そこからプリンはクリーチャー達とエイリアンとの融和を成し遂げ、本当の敵に対抗する連合軍を立ち上げ組織し、幾度となく本当の敵と前線で戦い続けた。

 地縛神との戦いでテスタロッサが使った『狩人秘伝 ハンターファイア』を作ったのも彼女。

 エイリアンの産まれながらハンターとエイリアンの両方の力を持ち、敵であるゼニスの力すら利用し、英雄達を導いた。

 何度も言うが、とてつもなく凄い人なのだ。

 

 

 

「それから、後ろの人はアナタ達の知り合い?」

 覚えのないことを言われ、テスタロッサとアリスは後ろを振り向く。

「すまない。急に君達が走りだしたから、追いかけてしまった」

 人混みをかき分けて、不動遊星が現れた。

「アナタ、この世界の住人ね?この世界どうなってるのよ。グチャグチャじゃない。このままじゃ、じきに破裂するわよ?」

 プリンが何の気なしに言った言葉に、不動遊星は真剣な顔をする。

「どういうことだ?」

「その顔は、知らないのね。いいわ。説明してあげる。まず、私達別の世界の人間が入るのを許容できる程世界は頑丈じゃないの。私達の世界で暴れまわったゼニスとかが一匹でも入ってきたら、アナタ達は皆殺しにされるわ」

「ゼニス……」

「どこかのお馬鹿さんが、世界を混ぜてるのね。このままじゃ、別の世界の人間が自覚なく入ってきて帰れなくなるわ」

 不動遊星は真剣な顔で考え込むが、何か思いつく訳でもなかった。それを見かねたプリンは、言った。

「取り敢えず、私達まだ来たばかりなの。色々とこの世界について教えなさい」

 

 

 

 

 

 

 説明が上手で、ある程度デュエマ世界も知っているアリスがプリン達に説明し終える頃には、日も沈み、辺りは暗くなっていた。

「つまり、この女の子はお姫様ってこと?凄いじゃん!初めて見た!」

 龍亜が無邪気にはしゃぐが、ジャックやクロウなどは、事態がよく飲み込めていなかった。

 いきなり異世界のお姫様が現れ、他の世界と融合がどうとか言われても、実感もない大人には理解しずらいことだった。テスタロッサも、いまいちピンときていなかった。

「あの…アリスさん…つまりどういうことでしょうか…」

 申し訳なさそうに聞くテスタロッサに、アリスが鼻で笑う。

「テスタには難しかったわね。お馬鹿さんには後で教えてあげるから、今は黙ってなさい」

「ちょテメっ、人が下手に出れば…!アリスもプリン様が気づくまで世界の融合とか分かってなかったじゃねぇか!」

「テスタは説明されても分かってないじゃない」

「そうだけど!ちょっとぐらい易しく説明してくれてもいいだろ!」

「そのまんまよ。これ以上噛み砕いたら、こっちがバカになるじゃない」

「ならねえよ!?それに、バカバカ言うな!俺はそこまでバカじゃないだろ!」

「確かにクロスみたいに何の生産性もないことはしてないけど、テスタもしっかりバカよ」

「どの辺りが…!」

「ウッサイわよ!喧嘩ならよそでやりなさい!」

 プリンの一喝がテスタロッサとアリスの喧嘩を止めさせ、一度場の空気が静まり返る。

 ここは不動遊星達が住む家で、普段から不動遊星などがバイクをいじったりしていて周囲の住民も騒音には寛容だ。テスタロッサとアリスがいくら騒いでも近所の人がすっ飛んでくることはないが、それでも聞いてる人からすればうるさいものはうるさい。それにプリンが止めなかったら、テスタロッサとアリスの口喧嘩は更にヒートアップしていた。なんだかんだ、予測できる姫なのであった。

「とにかく、状況は分かったわ。なら、龍!」

 プリンに名前を呼ばれ、ドラゴン龍はさっきとはうってかわって真剣な表情に切り替えた。

「はい!姫!」

「私達もWRGPに出るわよ。アンタは明日の夜までにバイクを3台用意しなさい」

 ぶっ飛んだ命令だった。不動遊星達も顔をしかめ、テスタロッサとアリスも若干引いていた。

 何もない状況からバイクを3台も調達してこいとは、敵から矢を調達した諸葛亮でも考え込むだろう。

「姫の命令なら、不可能を可能にしなさいよ」

 そんなムチャな…、とこの場にいる誰もが思った。だがドラゴン龍という男の場合、姫の言葉は全て使命となる。

「わ、分かりました、姫!ここにいる中で、この世界のバイクに詳しい人はいるかフーアンドウェアー!」

「お、俺なら…」

 気迫に押され、不動遊星がおずおず手を挙げる。

「分かったオーケー!俺に力を貸してくれヘルプ!」

 不動遊星を抱え上げたドラゴン龍は、そのまま走ってこの家から出ていった。

 呆然とする、プリン以外の一同。

 今の光景を見慣れているのか、プリンは表情一つ変えず、次にテスタロッサとアリスを見た。

「アウトレイジ組は、街を巡って私達と同じように迷い込んできた人がいないか探してきなさい」

「「は、はい!」」

 2人が逆らえる空気ではなかった。

 もう日が暮れているが、プリンにとってそれは些事だった。

 

 

 

テスタロッサとアリスが慌てながら出て行き、ジャックやクロウもどこかへ行った後のこと。暇な龍亜と龍可が、スナック菓子を食べるプリンに話しかけた。

「なぁ、世界が混ざり合うって、そんなに大変なことなのか?」

 龍亜が聞いた。それにプリンは頷いた。

「そうよ。例えば、最高神といえば誰が頭に思い浮かぶ?」

「…ゼウスかな」

「日本人なら天照大神を言いなさいよね…。じゃあ、ゼウスと同じ最高神オーディンとゼウスが鉢合わせしたらどうなると思う?」

「???」

「戦争よ。世界に2柱の最高神は必要ない、とか言ってね。最高神と言っても、ゼウスもオーディンも簒奪者よ。同格がいたら、目障りに思う筈だわ。子孫達では太刀打ちできないから、直々にやっつけようってね」

「神様なんている訳ないじゃん」

「なら、地縛神がゴミカード扱いされるカードバランスが崩壊してインフレ状態の世界から敵が来たらどうするのよ。魔法カード1枚で地縛神を連続召喚する相手に、アナタは勝てるの?」

「うげぇ……」

「世界と世界を切り離す方法はないの?」

 今度は龍可が聞いた。

「あるわ。世界を繋げてるお馬鹿さんから、世界を繋げてる何かを奪って止めさせればいいのよ。簡単だわ」

「どうやって探すの?」

「そうね。別の世界から来た強い人でも使おうかしら」

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