Re:ゼロから始めるベアトリス生活   作:初代TK

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こんにちは、或いはこんばんは。

随分とお久しぶりになってしまった事を、再び謝罪致します......(二度目)


失踪しない様に、頑張ります......



ナツキ・スバルと屋敷の銘々

双子姉妹の、創作物に出てくるかのような素晴らしいメイド服を堪能したスバルは、心配して様子を見に来てくれた銀髪の少女──エミリアの純粋無垢な思いを棒に振ってからしばらく経ち、庭へ誘い出した所まで話は進む。

 

 

 

 

わざわざ着替えさせてくれようとするメイド二人を振り切り、独力で着替えを断行したスバルは屋敷の庭に出て、広い庭を見渡しながら感嘆の息をこぼした。

 

 

「やっぱでっけぇなぁ。屋敷もそうだけど、庭も庭ってより原っぱだ」

 

 

お金持ちの屋敷の庭園──漫画やアニメでたびたび登場する、立食パーティなどが行われるような風景が広がっている。

だだっ広い庭の真ん中で、スバルはさっそくリハビリがてらに屈伸運動を始めた。

 

 

スバルの動きを見て、エミリアが不思議そうな顔をする。

 

 

 

「珍しい動きだけど、何してるの?」

 

 

 

「あれ、準備運動の概念ってないの? 本格的に体動かす前にあちこちほぐさねぇと...」

 

 

「ふーん、あんまり見たことないかも。でも、急に体を動かすと危ないのはわかるかな」

 

 

 

「この世界の人間は準備運動しねぇのか。んじゃ、仕方ない。教えてあげようじゃあーりませんか。俺の故郷に伝わる、由緒正しい準備運動をな!」

 

 

 

自信満々なスバルの気迫に呑まれたのか、エミリアはたじろぎながらも「そ、そう。じゃあ、ちょっとだけ」とスバルにならう。

スバルはエミリアに隣に並ぶよう指示すると、

 

 

「ラジオ体操第二~! 手を前に伸ばして、のびのび背伸びの運動~!」

 

 

「え、うそ、なに!?」

 

 

 

「俺の真似してやってみよう。ラジオ体操の真髄を叩き込んじゃるぜ!」

 

 

戸惑うエミリアを叱咤しつつ、スバルは全国的に有名なラジオ体操をアカペラ。

最初は困惑していたエミリアだったが、やり切る頃には完全に没頭していた。

 

 

 

二人、最後の深呼吸まで終わらせ、締めに両手を天に伸ばす。

 

 

 

 

「で、最後に両手を掲げて、ヴィクトリー!!」

 

 

 

「び、びくとりー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「......一体何をしているのかしら? アイツ...」

 

 

 

暇だったから、部屋から出てすぐの廊下の窓から見える、異世界特有の壮大に広がる庭でも眺めて黄昏ようかと思ったら、スバルと小娘(エミリア)が外で不気味な踊りを披露していたのよ......

 

 

「......って、ていうか......アイツ.....ベティーにあんなにも、当たり前かのように気安く触れてきやがったのよ......! 許せないかしら......」

 

 

大体、なんでベティーへの恩返しが抱き上げて、腕をしっかりと背中まで回してからクルクル回るという、どう考えても子供をあやす時のような煩わしい行為なのかしら!?

 

 

「あ、あんなの......ちっとも楽しくなんかないのよ......はぁ、疲れる......」

 

 

ズルズルと、メイド姉妹の努力の証が見えるホコリ一つない綺麗な窓ガラスにべったりと張り付き、その場でスバルの突拍子のない行動を思い出して恥ずかしさと嬉しさで崩れ落ちてしまう。

 

そんなベティーが、アイツ(スバル)の身に余る行動に頭を抱えながらスバルを眺めていると、メイド姉妹の二人がにーちゃと楽しく触れ合っていたスバル達の前にやってきたかしら。

 

それで、厳かに一礼すると、

 

 

「「当主、ロズワール様がお戻りになられました。どうかお屋敷へ」」

 

 

一瞬のズレもない完璧なステレオ音声で、スバル達を屋敷の中へご案内していったのよ。

 

 

 

「ふっふっふ.....ついに、きたのよ......」

 

 

ついにこれから、誰が犯人かも分からない、陰謀渦巻くおどろおどろしいロズワール邸での一週間が、アイツを待っているかしら.....

 

 

「いや、ベティー自身は分かってはいるけれど......」

 

 

ここで口を出してみてもいいけれど......ロズワールの福音書に書かれてない事をしたら、何を問い詰められるのか分かったもんじゃないのよ......

 

 

「......まぁ、しばらくはベティーが直々に伝授させたシャマクがなにか奇跡を起こしてくれる事に期待するかしら......」

 

 

とりあえず、お腹が空いたから久しぶりにごはんを食べに行くかしら......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「上から見てた感じ、アレなのよ。......お前、相当に頭が残念みたいかしら」

 

 

朝食の場、と双子に案内された食堂で、巻き毛の少女が挨拶代わりにそう言った。

 

 

着替えるために部屋に戻ったエミリアと途中で別れたため、今、食堂の中にいるのはスバルと巻き毛の少女だけ。

少女の皮肉にスバルは盛大に嫌な顔をしてみせる。

 

 

 

「爽やかな早朝に顔会わせていきなり何を言いやがんだ、このロリ」

 

 

 

「何かしらその単語。聞いたことないのに、不快な感覚だけはするのよ」

 

 

 

「攻略対象外に幼いって意味だ。俺、年下属性あんまりないし」

 

 

 

「......ベティーにここまで無礼な口を叩けるのも、かえって哀れに思えるかしら」

 

 

皮肉めいた少女の言葉を意図的に無視して、スバルは広い食堂をざっと見渡す。

 

食堂は中央に白いクロスのかかった卓が置かれており、すでに皿の並べられた席が点在している。スバルの用意もあるなら、下座のどれかがスバルの席だろう。

 

 

 

「テーブルマナーその他わからない俺に、レクチャーすることを許してやるぜ?」

 

 

 

「不遜極まるかしら。わからないならわからないなりに素直に頭を下げるがいいのよ」

 

 

 

「まぁまぁそう適当にあしらうなよ、ベティー。......ほら、貸し一つって事で、お願いします! 師匠!」

 

 

 

「誰が師匠かしら!? それに、お前を間接的に助けてやった恩は数知れずのはずなのよー!!」

 

 

顔を赤くして怒りを露わにする少女に、スバルは掌をひらひらと振って上座に座る。すると、

 

 

「まぁ、いいのよ。......しょうがないから、お前にベティーが直々に、テーブルマナー?をみっちりと叩き込んでやるかしら」

 

 

 

「おぉ! 流石だぜベティー!! マジ天使!」

 

 

 

「ふっ、もっと褒めるがいいのよ!」

 

 

 

「可愛い! ツンデレ! ロリ! 魔法少女! クルクル髪! チョココロネ! 傲慢!」

 

 

 

「何かしらその馬鹿にしたような言い方は!! 流石のベティーでも怒るのよー!!」

 

 

上座から下ろされた。

 

こうして、この壮大な屋敷の当主と呼ばれる人物が来るまで、スバルはツンデレな少女から怒られたりはたかれたりしながら、最低限のテーブルマナーを学んだ。

 

 

 

「失礼いたします、お客様。食事の配膳をさせていただきます」

 

 

「失礼するわ、お客様。食器とお茶の配膳をさせてもらうから」

 

 

と、そんなわいわいとしていたスバル達の元に、食堂の扉を開き、台車を押す双子のメイドがやってきた。

 

 

青髪がサラダやパンといった、オーソドックスな朝食メニューを食卓に並べ、桃髪が手早くカップにお茶を注いで配膳していく。

温かな香りに、思わずスバルの腹が鳴った。

 

 

「おほー、いいねいいね。いかにも貴族的な食事だ。......これで異世界チックなゲテモノばっか並んだらどうしようかと思ってたぜ」

 

 

場所が異世界であるだけに、何が出てくるか心配していたスバルは一安心。

 

パッと見、肉体的にも精神的にも重大な危機を及ぼしそうなメニューは見当たらない。

 

テンションが上がり、背もたれに体重を預けて軋ませるスバル。椅子の軋む音が食堂に響き、澄まし顔の少女の横顔に苛立ちが浮かぶ。

 

 

恩人である筈の巻き毛の少女に、なぜかちょっかいをかけずにいられないスバル。

少女の澄まし顔をもっと感情的に崩してやろうと悪戯心が芽生えて、スバルは気合いを入れて尻を滑らせ──

 

 

 

 

「あはーぁ。元気なもんじゃーぁないの。いーぃことだよ、いーぃこと」

 

 

そうする前に、新たに食堂へ入ってきた人物の嬉しそうな声が全てを中断させていた。

 

 

長身の人物だった。

 

スバルより頭半分は背が高く、濃紺の髪を背に届くぐらいまで伸ばしている。

しかし、その体つきは細身というより華奢に近く、肌の色も病的に白い。

 

整った面貌に左右で色違いの、青と黄色の瞳が色鮮やかにその印象を強めている。

 

 

──その配色が奇抜すぎる服装と、ピエロのような顔のメイクがなければ。

 

 

 

「......飯の前の余興にいちいちピエロ雇ってんのか。金持ちの考えはわかんねぇな......」

 

 

「何を考えてるのかはおおよそ想像はつくけど、ベティーは不干渉させてもらうのよ」

 

 

「つれねぇな、ベティー。俺とお前の仲だろ? もっといちゃいちゃトークしようぜ」

 

 

「今度同じことをベティーに言ったら一生暗闇の世界に閉じ込めて廃人にしてやるのよ」

 

 

「お前が言うと本当にやってきそうなんだから洒落にならねえなあほんと!......頼むから、そういうのはわりとマジの方でやめてくれよ? ほれ、ゆーびきーりげーんまーん......」

 

 

「そんなにベティーの手を気安く触るんじゃないかしら!」

 

 

「食事の場での乱暴はやめてね!?」

 

 

ぷんすかと怒りをあらわにしながら、こちらに手を向けておぞましい何か(陰魔法)を放とうとする少女の手を慌てて静止させ、スバルは少し調子に乗りすぎたと反省する。

 

 

次、ほんとに次は容赦しないのよ! と、つれない態度で会話から離脱する少女にスバルが苦笑をしていると、食堂の中に踏み出すピエロがスバルと同じく少女を見て目を見開く。

 

 

「おーぉやーぁ? ベアトリスがいるなんて珍しい。久々にわーぁたしと食事を一緒にしてくれる気になったとは、嬉しいじゃーぁないの」

 

 

「頭幸せなのはそこの奴だけで十分かしら。ベティーはにーちゃを待ってるだけなのよ」

 

 

馴れ馴れしい発言をすげなく切り捨て、少女──ベアトリスの視線はピエロの背後へ。

食堂の入口からピエロに遅れて入ってくるのは、着替えてきた銀髪の少女だ。

 

 

「にーちゃ!」

 

 

弾むように席を立ち、長いスカートを揺らしてベアトリスが走る。

花の咲いたような笑みを浮かべる姿は、これまでの少女の生意気な評価を忘れさせる愛嬌に満ちていた。

 

 

ベアトリスの視線の先に立つのはエミリアだ。が、応じるのはエミリアではない。

 

 

「や。ベティー、四日ぶり。ちゃんと元気でお淑やかにしてたかな?」

 

 

気楽な様子で銀髪から姿を見せる灰色の子猫、パックの言葉にベアトリスは頷いた。

 

 

「にーちゃの帰りを心待ちにしてたのよ。今日は一緒にいてくれるのかしら!」

 

 

「うん、だいじょうぶだよー。今日は久しぶりに二人でゆっくりしてようか」

 

 

「わーい、なのよ!」

 

 

エミリアの肩から飛び立ち、ベアトリスの掌の上にパックが着地。ベアトリスは受け止めたパックを愛おしげに抱くと、その場でくるくると回り出す。

 

 

「ふふ、おったまげたでしょ。ベアトリスったら、パックにべったりなんだから」

 

 

「おったまげたってきょうび聞かねぇな......」

 

 

和気藹々とした風景に驚くスバルに、悪戯っぽく笑うエミリアが歩み寄る。

 

相変わらず死語を使いこなす彼女にお決まりの返答をすると、エミリアは「んん?」とスバルを見つめた。

 

 

「スバルって、意外としっかりした座り方とか作法ができるのね。わたし、ちょっとびっくりしちゃったかも」

 

 

「お、ついにそこに気付いちゃった? まぁ俺ってば、エミリアたんの未来の騎士になる為に、日々礼儀作法その他諸々をレクチャーしてる男だからね。騎士になる為には、これくらいはしっかりしとかないとな!」

 

「ごめん、ちょっと何言ってるのかわかんない。でも、礼儀正しいことは、良いことよ?」

 

「そもそも、ソイツにテーブルマナー?を教えてやったのはベティーなのよ」

 

「そこ暴露しちゃうかなぁ!?」

 

 

愛する少女からは意味を理解してもらえず、部屋の隅で子猫と仲良く戯れていた少女からは隠しておきたかった内部事情を暴露され。スバルは、あまりの仕打ちにどんよりと気分を降下させつつも、大人しく席に座った。

 

 

その様子をなんとも言えない怪しげな風貌で見つめていたピエロは、大テーブルのもっとも上座であるその席、先ほどスバルが座ろうとした席にゆっくりと腰を下ろした。

 

そのことに気が付いたスバルは、机に肘を付き手で顎をを支えながら、気だるげにピエロの顔を見やると、

 

 

「おいおい。俺が言うのもなんだけど、そこ勝手に座ってっと偉い人に怒られっかもよ」

 

 

「あ、その心配は大丈夫......っていうか、スバルにやっぱり名乗ってなかったんだ」

 

 

忠告するスバルに、ほとほと呆れた声と顔つきでエミリアが呟く。ただし、エミリアの呆れはスバルだけではなく、道化の方にも向けられていた。

 

 

「どゆこと?」

 

 

「それはつーぅまり、こういうことだーぁとも」

 

 

スバルの疑問に椅子に座ったままの道化が、大きく両手を広げて応じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私がこの屋敷の当主、ロズワール・L・メイザースというわーぁけだよ。無事に当家でくつろげているようで、なーぁによりだとも。──ナツキ・スバルくん」

 

 

と、道化姿の変態貴族は清々しいぐらいに図々しく名乗ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

......ベティーがにーちゃと遊んだり、笑い合ったり、戯れあったりしている内にも事は進み。

 

 

 

スバルが二人のメイド姉妹の得意分野を当てようとして、桃髪の方の妹への溺愛っぷりに、げんなりしたり。

 

 

今現在のルグニカ王国の現状を聞いて、銀髪の娘が王選候補者の一人だということを聞かされ、小娘の身分をはっきりと理解して今までの態度を改めると言った直後に髪をなで回したり。

 

ただし、スバルが「俺をこの屋敷で雇ってくれ」なんて言い出した時には、思わず素でにやつきそうになっちゃったかしら......にーちゃに見られなくて、よかったのよ。

 

 

そんな感じで、スバルとその他諸々の会話を流しながら思いに耽った後、にーちゃと共に自室へ帰ろうとした時、話題の矛先がベティーに向いてきたのよ。

 

 

 

「待てって。そう急ぐ必要もないだろ......っていうから人任せにしないでなんか喋ってくれよ、ベティー。この場で唯一、お前の立場だけまだはっきりとしてねえんだ。......もしかして、ロズワールの妹だったり?」

 

「これの親戚扱いだなんて、お前もベティーを怒らせるのが上手なようかしら......」

 

 

散々な評価をしてやってるのに、楽しげに笑ってるロズワールが鼻に付くのよ......

 

 

 

 

「ベティーはロズワールのお屋敷にある禁書庫の司書さんだよー」

 

 

「ふっ、にーちゃに言われてしまったら詳細に語るほかないかしら。にーちゃの言う通り、ベティーはこれの妹でもなく、れっきとした一司書兼、禁書庫の番人かしら」

 

 

「ほー、なんか禁書庫の番人って通り名、俺の内なる男の子心を激しくくすぐるんだけど。お前、結構凄いやつだったんだな」

 

 

ふふー、とスバルにベティーがにーちゃとの連携のとれた自己紹介をしていると、銀髪の小娘が少し笑い、小首を傾げ。

 

 

 

「そうしてると、すごーく仲良しの二人が子猫を可愛がってるみたいに見えるわね」

 

 

「まあな。なんてったって、俺とベティーの付き合いは貧民街にまで遡るからな! この絆の糸はそう簡単には引きちぎれないぜー?」

 

 

「楽しそうにしているところ結構なのよ。......ベティーには、そんなにお前と仲良くなった記憶なんてないかしら」

 

 

「ほーれ、随分久しぶりのハイチュウだ!」

 

 

「ベティーとスバルは、まぁ気の許せる相手同士みたいなもんかしら!」

 

 

現代菓子を使われちゃ、しょうがないのよ。二度と手に入らない貴重なコレは、大事にしまっておくかしら......

 

 

 

「にゃにゃにゃ、スバル!......あんまりうちのベティーをそう甘やかしたりして、連れ去ったりしたらだめだよー?」

 

 

「そこら辺はしっかり分かってるつもりだって、パック。......いや、お父さん。俺は、エミリアたん一筋なんだから!」

 

 

「ふふふ、そんなに簡単にうちの娘はやらんよ?」

 

 

「もう、二人ともちゃかさないの。......ほんとに、調子いいんだから」

 

 

「はーぁいはい。それじゃ、紹介の続きといこーぉか。ラム、レム」

 

 

空気がだいぶ柔らかくなってきた頃に、ロズワールが再び紹介を始めたのよ。......それじゃ、そろそろベティーはにーちゃと一緒に自室に帰るかしら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「改めまして、当家の使用人頭を務めさせていただいております、レムです」

 

 

「改めて、ロズワール様のお屋敷で平使用人として仕事をしている、ラムよ」

 

 

「姉様急激にフランクになってんな。いや、俺が言えた話じゃねぇけど」

 

金髪縦ロールの少女が帰った後、スバルは手を取り合ってこちらを見てくる双子の自己紹介に耳を傾ける。

 

 

 

「だってお客様......改め、スバルくんは同僚になるのでしょう?」

 

「だってお客様......改め、バルスって立場同じの下働きでしょ?」

 

「おい、姉様。俺の名前が目潰しの呪文になってんぞ」

 

 

初対面の場では必ず一度は触れられる鉄板ネタだ。もっとも、ラムとレムがそれを知っているはずもない。

 

もどかしさを堪えつつ、スバルはロズワールを振り返った。

 

 

「俺の立場ってアレか。やっぱ執事とかってより使用人見習い的な?」

 

「現状だと二人の指示で雑用、ってのが一番だーぁろうね。不満だったりする?」

 

「不満があるとすれば、雇ってと養ってを間違えたさっきまでの自分にしかねぇな。ま、悔やんでも仕方ないことは悔やまない。そんなわけで、よろしくお願いしますぜ、先輩方。超頑張るぜー、俺!......粉骨アレしてな」

 

 

 

「「砕身」」

 

 

「ソレしてな」

 

 

一瞬、出てこなかった単語を三人で指差し確認。それから「イエーイ」と手を伸ばすスバルに二人がハイタッチで応じる。

 

すでになかなかの連携、というよりノリがいい。

 

 

 

「仲良きことは美しきかな。お互いのわだかまりもなーぁいみたいで、雇い主としても大いに結構なことだーぁよ。ねーぇ?」

 

 

「不思議と波長が合ってな。下手すると、あの金髪縦ロールドリルロリより相性いいかもしれないぜ」

 

 

「そんなにベアトリスと仲良し扱いされたくなかったんだ......」

 

 

「いや、そういう訳じゃないけどな......あいつはあいつで、なんだかんだ好きだしな」

 

 

不憫そうだったが、そう答えたスバルの言葉に安心した様子のエミリアの呟きが、この集まりの終わりを意味する一言になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「......んで、姉様はどうしてわざわざハンカチで手を拭いているんですかねぇ!?」

 

 

「いやらしい」

 

 

「姉様は流石です」

 

 

「あーごめん!! やっぱちょっとだけ苦手かもしれない気がしてきたなー!! ベティー!! やっぱお前最高だわ!!!」

 

 

「ふふっ、スバルの言葉に、ベアトリスも喜んでいると思う、今頃......」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「......ぅ~......」

 

 

 

「や、ベティーもたまにはスバルにデレたりするんだねぇ」

 

 

スバル達の会話を聞いていたベアトリスが壁に手をついてずるずると力を失くしていく様子を見て、パックは楽しげに苦笑した。

 

 

 




今、リゼロの16巻を読んでいるのですが、もうほんとベア子好きにはたまらないですよね。スバルくんとのやり取りが可愛すぎて死にます。

ここまで読んで下さり、ありがとうございました......

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