Re:ゼロから始めるベアトリス生活   作:初代TK

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こんばんは。

ついこの前、大きめのブックオフに足を運んだのですが、110円で本が買えるって、ほんとお得ですよね。

......リゼロは、きちんとキレイな新品を買っていますよ?


ナツキ・スバルと双子姉妹

 

 

 

 

採寸を終えて、衣裳部屋の外でラムと合流し、代わりにレムとは別行動になった。

 

 

「上着の直しは夜の内に。明日の朝までには終わらせて届けますから」

 

仕事が詰まっているはずのレムはそう言い渡すと、ラムに意味深な目配せをしてからその場を立ち去った。

目と目で通じ合う二人の態度に、スバルは不思議に思いラムの肩をつつく。

 

 

「なぁ、さっきのレムのアイコンタクト、何て言ってたんだ?」

 

「二人きりになるとスバルいやらしい目をするから気をつけて、だそうよ。ケダモノ」

 

 

「あれだけのサインにそんな意味が......おい、ちょっと距離とるなよ、傷付くから! あ、ベティーは別に離れなくてもいいぞ?......俺、そっち系の趣味はないから」

 

「な、ななな......なんて失礼なやつなのかしら!! 流石のベティーでも、今のスバルの発言は許せな、んむっ!?」

 

「分かった分かった、そうだよな、ベティーはそういう攻略対象的なあれじゃあなくて、攻略対象の妹ぐらいの立ち位置だよな。ああ、ほんと可愛い......」

 

「しゅ、スーバールー!!! 苦しいのよー!!」

 

 

己の肩を抱いてスバルから離れるラムに傷心しつつ、同じように肩を竦めつつスバルから離れようとした少女、ベアトリスを抱き上げて、目一杯可愛がるスバル。どちらかと言えば、肩を竦めて離れようとした方が(ベアトリス)失礼な気もするが。

 

 

「ほら、ベアトリス様を甚振るのはそこまでして、さっさとやる事をやりなさい、バルス」

 

 

「へいへい、分かっておりますよーっと......」

 

 

 

 

今度こそ、スバルの屋敷の使用人としての時間が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「......そうね。丁度、ベアトリス様もいる事だし......ベアトリス様。ラムはやることがあるので、この何も知らないまぬけなバルスに、屋敷の案内をして下さりませんか?」

 

「......はぁ!?」

 

「......えぇ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「......おおよそ、屋敷全体の案内はこれで終わったかしら。後は建物の外に庭園と、屋敷と門の間の前庭があるけど、そっちは勝手に一人で見るがいいのよ......ここまでで何か質問はあるかしら」

 

 

「案内イベントって、普通エミリアたんがやってくれるべきイベントな気がしないか?」

 

「ないようだから、さっさと仕事、するがいいのよ。それが今のお前に課せられている、唯一の役割かしら」

 

「......うるせーなこの引きこもりロリ!」

 

 

「は......い、一体何を言いやがるのかしらお前は!? ベティーはそんな、なにもしないだけのただの穀潰しじゃないのよ!! どっちかと言うと、今のスバルの方がよっぽど穀潰ししてるかしら!!」

 

 

「言ったな、お前......見てろ、この生意気ロリめ......俺の秘められた家事スキルで、今すぐにでもこの屋敷とお前の薄汚れた禁書庫をピッカピカにしてやるよ......」

 

 

「はいそこまで」

 

 

「あだぁ!?」

 

「にゃんっ!?」

 

 

 

スバルとベアトリス、お互いの額がくっつこうとしているほどに近付きながら言い合った喧嘩は、たまたま廊下を通り掛かったラムの手によって、互いのおでこをぶつけられる結果に終わった。

 

 

「今日のラムの仕事は、ちょうど前庭と庭園の手入れと周囲確認。昼食の準備を手伝って、その後、陽日八時から銀食器を磨くから、それをバルスには手伝ってもらうわ」

 

 

「くっそ、痛ぇ......まぁ、それは全然やるけど、ちょっと陽日とかって表現について聞いていいか?」

 

 

「うぅ、おでこがひりひりするのよ......」

 

 

今朝、目覚めのときにも聞かされた用語だ。陽日、とはおそらく明るい時間のことを指しているのだろうと、スバルは赤くなったおでこをさすりながら、涙目でうずくまっている少女を擁護しつつも推測する。

 

 

「陽日八時とかってのは時間の表現だよな......時計とかって、あるのか?」

 

「トケイ......? 魔刻結晶なら、屋敷の至るところにあるでしょう。そこにも」

 

 

ラムが指差す方を見て、スバルは鈍い光を放っている結晶を見つける。廊下の壁の上部──元の世界なら時計でも置かれていそうな位置に、その結晶は取り付けてあった。

 

ぼんやりと淡い緑色の光を放つ結晶に、スバルは目を細める。

 

 

「気になってはいたけど、あれが時計代わりか。どう判断したらいいんだ?」

 

 

「あいにく一般常識の欠落しているバルスに割く時間なんてないわ。ベアトリス様に頼んで聞いてみなさい」

 

 

「確かに俺が非常識なのかもしれないけど、もうちょっと言い方あったよね!?」

 

 

「べ、ベティーが......ついで......」

 

 

そう、きびすを返しスバルから背を向けて去っていったラムの背中を恨めしく思いながら見送ったスバルは、未だへこんでいる少女、ベアトリスと仲直りをしてから、この世界の常識について学んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あだーーっ!!」

 

 

先程作り上げたばかりのまだ新しい傷口から赤い血を滴らせて、スバルは半泣きで悲鳴を上げていた。

 

血の出る左手を振るスバルを見て、隣で同じ作業に従事しているラムが目を細め、少しだけ笑みを浮かべる。

 

 

「反省のないことだわ。バルス、上達って言葉を知らないの?」

 

 

「けどね、先輩。俺、箸以外の調理器具を触ったことないとこからスタートなんですよ」

 

言い訳しながら切った指を口に含み、口内に鉄の味を感じながらスバルは膨れる。

 

 

場所は厨房で、時間はお昼より少し前。ベアトリスと別れたスバルは、その後合流したラムと一緒に庭の手入れを終えた後、屋敷に戻り昼食の準備をするレムの手伝いをしていた。もっとも、

 

 

「全く素人である俺はともかく、ラムまで皮剥き専門ってのは実際どうなのよ。姉の威厳とかは」

 

 

「得意分野はレムに任せて、長所を活かした仕事をするの。ラムの出番はここじゃないわ」

 

 

「事前に得意分野でも能力値で負けてるって聞いてるんですけど!?」

 

 

掃除洗濯料理裁縫(さいほう)、およそ家事技能では全てレムに劣っているというのが事前情報。実際、野菜の皮を剥くラムの手つきは十分に手慣れた人間の領域だが。

 

 

「姉様もスバルくんも、そろそろ準備は大丈夫ですか?」

 

 

そう言いながら、皮剥き担当の二人が目を剥きそうな勢いで調理を進めるレムがいるのだから形無しだ。

レムの手際の良さは尋常の域になく、調理作業そのものが一種のパフォーマンスのように感じられるほど洗練されている。

隅っこで競い合うように、レベルの低い雑用に追われている二人とは大違いだ。

 

大鍋に材料を流し込み、かき混ぜていたレムが振り返る。そして、黙々と皮剥きする姉と出血するスバルを見て、レムは何事もなかったかのように頷くと、

 

 

「さすが姉様。お野菜の皮剥きをする姿すらも、絵になります」

 

「清々しいまでの身内びいきっすねレムさん!! 是非俺の仕事ぶりにもコメントが欲しいです!」

 

 

「そのお野菜を作った畑の持ち主が可哀想です」

 

 

「心が痛くなるからやめて!!」

 

 

「バルスはナイフの扱いがなってないのよ。皮剥きするとき、野菜じゃなくナイフを動かしてるから手を切る。ナイフは固定にして、野菜の方を切るのよ」

 

 

未だ血が止まらず口に指を含むスバルを横目に、ラムが助言をしながらジャガイモを綺麗に剥いてみせる。皮が途切れずに頭から最後まで繋がった、見事な一枚剥き。

 

 

「何を隠そう......ラムの得意料理は、蒸かし芋よ」

 

 

パフォーマンスとしても実用的な一枚剥きを終えて、ラムがスバルに可愛らしくウィンクする。

 

「勝ち誇った顔で何を言い出してんだよ! クソ、見てろ。俺の愛刀『流れ星』が、お前に目に物見せてくれちゃるぜ!」

 

負けん気に任せてナイフを手に取り、木製の柄を握り締めて気合いを入れる。

何の変哲もない普通の果物ナイフだが、今日からこれがスバルにとっての愛刀『流れ星』だ。

 

 

「うおおーー!」

 

と、声を上げながら体を小さく丸めて、ラムのアドバイス通りにナイフは固定して野菜の方を回す。最初に深々と実を抉ったが、その後は快調に滑り出して内心で驚いた。

ちらと横目にすれば、指摘通りにやってのけるスバルに自慢げな顔のラムがいる。

 

素直に感謝するのも癪なので、スバルは無言で皮剥きに集中──と、

 

 

「そんな熱心に見つめられると照れるんだけど......どしたの?」

 

じっと、自分を見るレムの視線に気付いてスバルは顔を上げる。一通りの準備を終えたレムは背筋を正したまま、作業するスバルを無言で見つめていた。それを指摘されて、レムはわずかに驚いた顔をしてから言葉を紡ごうとする。

 

 

「──バルスの皮剥き姿の無様さが目につくんでしょう。特に頭、髪型がなってないわ」

 

 

「これ、自前でやっててわりとうまく切れたと思ってんだけど......」

 

 

「少なくとも、使用人として置いておくのに落第点なのは間違いないわ。──ねえ、レム」

 

 

「......え、はい。そうですね。確かにちょっと少しだけほんのささやかに気になります」

 

 

「だいぶ気になるみたいで悪かったですね!」

 

 

「ちなみに屋敷の人の髪はレムが手入れをしているわ。ラムの髪の手入れや朝の着付けもレムのお手製よ。いいでしょう」

 

「なるほど、双子だし互いにやれば鏡映しに......言い方おかしくね?」

 

 

今のラムの言い方だと、まるで一方的にレムだけが奉仕している形に聞こえた。しかし、聞き返すスバルの前でラムは腕を組んでふんぞり返る。

 

 

「バルスの思っている通りよ」

 

 

「少しは妹に貢献しろよ、姉様!」

 

ダメな姉分を留まることなく発揮するラムは、スバルの叫びも素知らぬ顔だ。それからラムはレムが整えているという桃色の髪をそっと撫でてレムを見やり、

 

 

「よかったら、レム。バルスの髪、少し整えてやるといいわ──髪が気になるから、バルスをずっと見つめていたんでしょう?」

 

 

「おいおい、女の子に髪の毛いじられるとか、ドキドキして手元が狂うっつの」

 

 

「......はい、そうです。ちょっと梳いて、毛先を整えるだけでも見映えが変わると」

 

 

「だそうよ」

 

「いや、だそうよじゃねえよ......」

 

 

性格の問題か、スバルに対しすでに遠慮が欠片もないラムと違い、レムの方はまだスバルへの態度を決めかねている様子だ。距離を縮めること自体はスバルも賛成だが、

 

 

「嫌なら嫌って、そう言った方がいいと思うぜ。嫌がられたい訳じゃないけど!」

 

 

「いえ、そんなことは。レムも少し、かなり少し、とても少し気になるのは事実ですから」

 

 

すごい気にされているのがわかって、スバルは更に自信を喪失する。個人的には決まっていると思っていただけに

 

 

 

──などと、意識を疎かにする内に。

 

 

 

 

「──あ」

 

 

三者の声が重なり、『流れ星』がジャガイモからスバルの指へと刃筋をシフト。

 

浅く桂剥きに手の皮が持っていかれて、スバルの悲鳴が上がる。

 

 

 

「うおあぁーー!! 痛ったあぁーっ!! 綺麗にさっくり持ってかれたーーッ!」

 

 

「愛刀が聞いて呆れる関係性だわ。愛が一方通行なら、偏愛刀に呼び変えたらどう?」

 

 

「姉様、そろそろお湯が湧きますので、切ったお野菜をこちらに......」

 

 

「お前ら、もうちょっとぐらい新人の進退に興味持とうぜ!」

 

 

 

仕事優先の姿勢は素晴らしいことだと、そう褒める気力は今のスバルにはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






平和な時間も、いよいよ終わりの時が来たようです。
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