Re:ゼロから始めるベアトリス生活   作:初代TK

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11話のサビと同時に叫ぶスバルくんのシャマクのシーンは、いつ見てもかっこいいと思うんです。ほんと。




激戦の末の終幕

 

「にーちゃ!──はい! なのよ!!」

 

 

戦いの最中とは思えないほど気分の良さそうな声で答えた少女が、パックが消えてから一転、軽蔑の視線をエルザに送りつつ、紫紺に煌めく杭をエルザに定める。

 

 

「あら、次は貴方なのね。あぁ、楽しいわ!」

 

 

さっきまで命の取り合いをしていたエルザが、威勢良く少女にククリナイフを織り混ぜながら、あり得ないスピードで少女の命を削ごうと、うねりながら少女に駆け出す。

 

 

「ベアトリス──!」

 

 

「言われなくとも分かっているかしら。こんな奴、数秒もあれば充分なのよ」

 

 

先程氷の弾幕で発射を中断された杭は、その破壊の力の矛先を見つけて快哉を叫ぶ。

 

 

 

「あら、危ない。幼いのに、随分と過激で強力な魔法を扱うのね」

 

 

「何でもかんでも見た目で決めつけるんじゃないかしら。ほんと、どいつも同じことをいうのよ」

 

 

およそパックの氷柱の速度を超えるであろう、まともに当たったらそれだけで致命傷を負いかねない杭を、エルザに躊躇いなく打ち続ける少女。

 

 

何十にもあるそれをうつ伏せになり、壁に張り付き、天井に這いつくばりながら避けて、避けて、避け続けるエルザ。いくつかがその体に掠り、酷い出血が増えて行く。

 

 

「こっちの相手も、忘れないでよねっ!」

 

 

停止するエルザの背後から迫り来る氷の飛礫。後ろを振り返りもせずに刃を振るい、礫をことごとく打ち落とそうとするが──

 

 

 

「お前、考えが足りないかしら」

 

 

 

「──これは!」

 

 

エルザが避け続け、弾けた杭の破片が小さな杭となり、エルザの周囲全方位を囲み込んだ。

 

 小さな杭といっても、そのサイズはスバルの手の人差し指ほどに匹敵する。それが無数に宙を埋め尽くし、先端をエルザに向けた。

 

そして、

 

 

 

「言ったはずなのよ、ニンゲン。──数秒もいらないと」

 

 

 

冷酷な宣言を切っ掛けに、紫紺の杭が発射された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「......っしゃ! おいフェルト! 今の間に、さっさと扉開けて逃げろ!」

 

 

「──! なんだよそれ! アタシに一人で無様に逃げろってのか!?」

 

赤い双眸が睨むように見上げてくるのも気にせず、スバルは顔を近づけて立つ。

そして一瞬、スバルの気概にフェルトが怯んだような顔をするのを見逃さない。

 

 

「そうだ、さっさと一人やられる前に逃げちまえ。本当ならそれ、俺がやりてぇんだぜ。超情けないけど、俺何もできないからな。こんな空間、一秒だって長居したくねぇよ」

 

 

スバルは目の前の少女の金髪を力任せに撫でつけ、「でも」と息継ぎし、

 

 

「お前は十五で俺は十八。たぶん、お前がこの中で一番年下ってことになる。したら、お前が生きる確率が一番高いとこを選ぶのが当たり前だ。当たり前なんだよ」

 

 

「な、んだよそれ......ふざけ「というか!!」うわ!?」

 

 

スバルがフェルトにずいっと顔を近づけ、小声でフェルトに耳打ちをする。

 

 

「このままじゃ埒が明かねぇ! この世界、衛兵的なもんねぇのか!?」

 

 

「あ、あるにはあるけど......呼べってんのか?」

 

 

「ああそうだ、なんかたまたま最強の剣士が強い癖にそこいらを暇そうにねっ転がってたりすんのはお約束だからな! つう訳で行ってこい!! フェルトぉぉ!!!」

 

 

「──っ!」

 

 

スバルの気圧に押され、弾かれるようにフェルトの矮躯が風に乗って駆け出す。

まさに目にも留まらぬ速さで室内を駆け抜け、風となる少女は出口へ突っ込む。

 

 

それと同時に紫紺の杭が肉に突き立つ音が連鎖し、衝撃に砕け散る紫の結晶が盗品蔵を輝きの乱反射で埋め尽くした。

 

無数の杭は全方位からエルザの細い体を狙い、ハチの巣に仕立て上げたはずだ。

 

 

なのに。

 

 

 

 

「──ああ、痛い。行かせると思う?」

 

 

「......お前、そもそも人じゃなかったかしら」

 

 

フェルトの疾走を真横から阻むのは、ボロボロ、と言う表現も似合わないほど、左は肩から指先まで切り傷でただれ、背中や胴体周りにも無数の小さい穴が開いた状態の、エルザだった。

 

 

シンプルな装飾のナイフは、真っ直ぐフェルトの背中を狙い打つが、

 

 

「てめぇまだ生きてんのかよ!! しぶといにも程があるぜ!! だが、行かせて欲しいなってのがこっちの気持ちだ!!」

 

 

スバルが真横にあったテーブルを蹴りあげた。放たれたナイフは跳ねたボロ机に弾かれて、軒並み役目を放棄する。

 

 

「俺すげぇ! でも思いのほかつま先が痛.......ぶふがるっ!?」

 

 

「危ない小僧!!」

 

火事場の馬鹿力か、あるいは三度死んでも目覚めなかった覚醒の時が訪れたか。

 

 

エルザの蹴りに当たりかけたスバルを、ロム爺が大きな体で乱暴に壁へ突き飛ばす。

 

あまりの威力に目が回り、少しだけ気持ち悪くなったが、お陰でスバルの致命傷は免れた。

 

 

「ナイスアシストだぜ! 爺さん!......ってやっべぇ! おい爺さん! 生きてるか!?」

 

 

「珍しく、少しだけ腹立たしいと思ったわ」

 

 

スバルを心配をよそに、エルザの戦意はますます高まる。

 

 

 

──と、そんなスバルに、

 

 

 

「......ちょい、スバル。ベティーはちょっと席を外すかしら、頑張るのよ」

 

 

「えぇ!? マジで!? この土壇場もいい所で無慈悲な脱退宣言はシャレになりませんことよベティー様!!」

 

 

少女の突然の戦線離脱宣言に驚きを隠せないスバル。

 

 

「大丈夫かしら。お前にはいざとなった時に使える技も教えたはずなのよ。」

 

 

「いやいやいや! こんな状況で使う覚悟とかまだ決まってねぇよほんと! それに「かっこいい所」......へ?」

 

 

 

外れようとする少女を説得しつつも、拾った棍棒でこちらへ飛んでくる氷の破片を力の限り壊すスバルに、恐ろしくも魅力のある提案が掛けられる。

 

 

 

「......この状況でお前がヒーローになって、かっこよくあの小娘を救ってやったら、きっとあの小娘はお前に惚れ「っしゃああぁ!!! やってやろうじゃねぇかぁ!!」......ほんと調子いい奴かしら」

 

 

この男、どんな状況でも己の欲求は押さえられなかった。少女になんとも得のある提案を出されたスバルは、自らが死地にいるという事も忘れて、エルザに畳み掛ける。

 

 

「っっらぁぁぁ──!!!」

 

 

偽サテラが氷柱を発射した瞬間、息をするのも忘れて後ろから棍棒を振り下ろしていた。

 

火事場の馬鹿力が出たのか、棍棒の速度は想像以上。真っ直ぐにエルザの後頭部を目指して風を切り──

 

 

 

「──狙いは上々。でも、殺気が出過ぎていて見え見えなのが残念」

 

 

「殺気か! それら引っくるめて戦闘センスなんざ都会育ちの俺には一つもわかんねぇよ!!」

 

真後ろからの打撃に対し、エルザは刃の峰で棍棒を叩き、軌道をそらして回避を実行。

 

 

エルザの回避場所に狙うようにして、偽サテラが巨大な氷柱を生えさせるが、それもことごとく避けられ、

 

 

 

「そのお遊びもそろそろ見飽きたのだけれど......まだ私を楽しませられそう?」

 

問いかけは低く、微笑は血の色をしていた。背筋にゾッと寒気が走るようなエルザの笑みを見て、スバルはちらりと偽サテラとアイコンタクト。

 

 

「秘められた真の力とかがあるなら、今のうちに出しといた方がいいと思うぜ!」

 

 

「......切り札はあるけど、使うと私以外はだれも残らないわよ」

 

 

「自爆技は勘弁! わかったよ、チクショウ。お願いだから早まらないでね?」

 

 

臆病な自分を振り切るつもりのスバルの冗談に、いたって真面目な偽サテラの返答。

深々と息を吐いて棍棒を握りしめ覚悟を決めるスバルを見て、偽サテラはほんのわずかに唇をゆるめると、

 

 

 

「使ったりしないわよ。まだこんなに一生懸命、あなたが頑張ってるのに。足掻いて足掻いて足掻き抜くの。──親のスネをかじるのは最後の手段なんだから」

 

 

仕方なさそうに、そう語る偽サテラの表情を見て、スバルの中でふいに火がついた。

 

諦めてしまいそうな顔だった。

弱さを受け入れてしまいそうな顔だった。

 

 

 

スバルの中で偽サテラは、自分がどんな苦境にあっても下を向かない少女だった。そんな少女だからこそ、スバルはその微笑む顔が見たいと思って頑張ったのだ。

 

何度となく命を落として、それでもスバルは偽サテラを助けるためにここまできた。ここまでの道のりは、こんな少女の弱々しい顔を見るためじゃない。

 

 

 

「今、俺は何も見なかった」

 

 

「──え?」

 

 

「今のやり取りは全部なしだ。全部なし! なんで俺がここにいるのかやっと思い出した。やってやるぜ、クソだらぁ! 切り札なんか絶対に切らせねぇ!!」

 

 

指を突きつけ、偽サテラとエルザの両方に宣言する。足を踏み鳴らし、唾を飛ばし、感情のままに、魂が吠えたけるままに。

 

 

 

 

「てめぇぶっ飛ばして皆仲良くハッピーエンドだ。お呼びじゃねぇんだ、とっとと帰れ!」

 

 

「......元気が有り余っているようね」

 

 

「やる気もみなぎってきたとこだ。今度の俺はクライマックスだ。勢いが違うぜ」

 

 

軽く身を前に傾けるエルザに、ホームラン予告のように棍棒を突きつける。

 

 

婉然としたエルザの微笑みが闇に溶けた。

 

 

スバルを中心として縦陣無像に飛び回る。

 

 

天井。

 

 

壁。

 

 

柱。

 

 

床。

 

 

 

五感を研ぎ澄ませる。だが奴はきっとその隙を狙ってくる。

 

 

 

 

静止する時間が経つに連れて、どんどんとジャージを通り越して小さな切り傷が増えて行き、血が流れてくる。

 

 

 

 

 

 

『ほら、もう一回やってみるのよ。早く使えるようになりたいなら、これが一番効率がいいかしら』

 

 

 

手厳しい、だけれど慈愛のある少女からのアドバイスが思い浮かんでくる。

 

 

 

 

 

ならばスバルはその期待に答える。

 

 

 

棍棒を縦に構え、いつでも全力で振れるような形にして、相手にわざと力任せに棍棒を振るように()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

奴はきっと、腹を割きに正面から狙ってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───這うような姿勢で、闇に溶け込みながら滑るような動きで迫るエルザが見えた。

 

 

 

 

 

 

「逃げて!!!」

 

 

 

 

 

 

優しい銀髪の少女の、悲鳴にも聞こえる声が響いた。

 

 

 

 

 

故にスバルは、力の限り叫ぶ。

 

 

 

この世界で初めて手に入れた、スバルだけの魔法を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──シャマァァァァク!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おー、ほんとに魔法使ったのよ、アイツ」

 

 

 

やや無理矢理、スバルを言いくるめて戦線離脱したベティーは、今現在盗品蔵の屋根の穴の空いた部分から戦線を眺めているのよ。でもぶっちゃけると今はシャマクで全く見えないかしら。

 

 

 

 

「──てめぇが、くたばりやがれぇぇえ!!!」

 

 

 

......おー!!

 

スバルの力の限りフルスイングした棍棒が、エルザの頭にぶち当たってそのまま盗品蔵の壁にぶっ飛ばされたのよ!!て言うか今更だけれどスバルがかっこいいのよ!!!元祖シャマクが見れたかしら!!!原作崩壊起こしているけれど!!

 

 

......あでも、いくらエルザにシャマクが効きやすいと言っても、流石に無理があったかしら.........このままじゃスバルがやられてしまうのよ。流石に助けて......

 

 

 

「.....ん?」

 

 

 

なんか、上から物凄い赤く燃え上がった人が落ちてき......

 

 

 

あ、ラインハルト。

 

 

 

 

「緊急脱出!!!」

 

 

 

「──そこまでだ」

 

 

 

屋根を貫き、盗品蔵の中央に燃え上がる炎が降臨したのよ。屋根を貫く過程でベティーも半ば巻き込まれかけたけれど、なんとか避け切ったかしら。

 

 

「.....なんて、危なっかしい男かしら」

 

 

「さあ、舞台の幕を引くとしようか──!」

 

 

 

うん、正義感満載の紅の髪したイケメンかしら。

 

 

「......それじゃ、ベティーはここら辺で帰らせて貰うとするかしら」

 

 

もう見るもの見たし、スバルの渾身のシャマクもみれたし。

 

 

「......ふふふ! 今日の収穫は大・満・足! なのよ!!」

 

 

 

さ、あのキザったらしい男にマナ取られる前に、禁書庫に帰るかしら!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いずれ、この場にいる全員の腹を切り開いてあげる。それまではせいぜい、腸を可愛がっておいて」

 

 

廃材を足場に、エルザが跳躍して夜の闇に姿を消した。

 

 

「ご無事ですか──」

 

 

「私のことはどうでもいいでしょう!? それより......」

 

偽サテラはふらつく足を叱咤して壁際──自らを命がけで守り逆さまに倒れているスバルの側へ向かう。

 

 

「ちょっと大丈夫!? 無茶しすぎよっ」

 

 

「お、ぉぉお......ら、楽勝楽勝。あそこってば無茶する場面だろ? あの場で動けんの俺しかいなかったし......いや、ドリルロリな金髪幼女はいたけどさ。あいつがとっさに狙う場所もこっそり当てがあったし」

 

心配そうに顔を寄せてくる偽サテラに手を掲げ、スバルは一撃をもらった腹を軽く撫でる。

尋常でない打撲傷に、服をめくった下が真紫になっているのが見えた。

 

 

「今度こそ、完全にいなくなったよな?」

 

 

「すまない、スバル。さっきのは僕の油断だ。君がいなければ危ないところだった。この方が傷付けられていたら大変なことに......」

 

 

「待て待て待て、言うな言うな言うな言うな! そっから先は発言禁止だ。こんだけ色々もったいぶって、お前の口から聞かされたんじゃ俺が報われん」

 

 

謝罪を口にしかけるラインハルトを制止して、押し黙る彼にスバルは笑みを向ける。それからゆっくりとした動きで振り向き、自分を見上げる銀髪の少女と視線を合わせた。

 

 

彼女は身じろぎし、それから立ち上がる。

二人の間の距離は二歩分、手を伸ばせば届く位置だ。ずいぶんと遠回りしたものだと、ここまでの道のりを感情深く思い出す。

 

 

「......あ、ベティー.........」

 

 

思い出している途中で一人の少女が思い浮かんだが、すぐに振り払って、心配そうにこちらを覗く少女に構わず、スバルは指を天に突きつける。

 

 

左手を腰に当て、右手を天に向けて伸ばし、驚く周りの視線を完全に意識から除外して、スバルは高らかに声を上げる。

 

 

 

「俺の名はナツキ・スバル! 色々と言いたいことも聞きたいことも山ほどあるのはわかっちゃいるが、それらはとりあえず置いといてまず聞こう!」

 

 

「な、なによ......」

 

 

「俺ってば、今まさに君を凶刃から守り抜いた命の恩人! ここまでオーケー!?」

 

 

「おーけー?」

 

 

「よろしいですかの意。ってなわけでオーケー!?」

 

 

OとKを上半身の動きで表現するスバルに、銀髪の少女はひきつりながらも、「お、おーけー」と応じる。

 

 

 

「命の恩人、それこそが俺!......そしてそれに助けられたヒロインが君。そんなら相応のお礼があってもいいんじゃないか? ないかな!?」

 

 

「......わ、わかってるわよ。私にできることなら、って条件付きだけど」

 

 

「なぁらぁ、俺の願いはオンリーワン、ただ一個だけだ」

 

 

指を一本だけ立てて突きつけ、くどいくらいにそれを強調。

 

スバルの言葉に少女が不安に瞳を揺らしながらも、決意を瞳に宿して頷いた。

 

 

「そう、俺の願いは──」

 

 

「うん」

 

 

 

歯を光らせて、指を鳴らして、親指を立てて決め顔を作り、

 

 

 

 

 

 

 

「──君の名前を、教えてほしい」

 

 

 

 

呆気にとられたような顔で、少女の紫紺の瞳が見開かれた。

 

 

しばしの沈黙が二人の間に落ちる。スバルの眼差しは揺れない。ただ真っ直ぐに、目の前に立つ銀髪の少女のことだけを見つめている。そして、

 

 

 

「ふふっ」

 

 

 

口元に手を当てて、白い頬を紅潮させ、銀髪を揺らしながら少女が笑った。

 

それは諦めた笑みでもなく、儚げな微笑でもなく、覚悟を決めた悲愴なものでもない。

 

 

ただ純粋に、楽しいから笑った。それだけの微笑みだ。

 

 

 

 

「──エミリア」

 

 

「え......」

 

 

笑い声に続いて伝えられた単語に、スバルは小さな吐息だけを漏らす。

 

 

彼女はそんなスバルの反応に姿勢を正し、唇に指を当てながら悪戯っぽく笑い。

 

 

 

「私の名前はエミリア。ただのエミリアよ。ありがとう、スバル」

 

 

「私を助けてくれて」と彼女は手を差し出した。

 

その差し出された白い手を見下ろし、おずおずとその手に触れる。あの時とは違う、指が細く、掌が小さく、華奢でとても温かい、血の通う女の子の手だった。

 

 

 

──助けてくれてありがとう。

 

 

 

そう言いたいのは彼女だけではない、スバルの方だった。スバルの方が先に彼女に恩を受けていたのだ。だからこれは、それがようやく返せただけのこと。

 

 

通算して三回、刃傷沙汰で命を落として辿り着いた結末。

 

 

 

あれだけ傷付いて、あれだけ嘆いて、あれだけ痛い思いをして、あれだけ命懸けで戦い抜いて、その報酬が彼女の名前と笑顔一つ。

 

 

 

ああ、なんと──。

 

 

 

 

「ああ、まったく、わりに合わねぇ」

 

 

 

言いながらもスバルもまた笑い、固く少女──エミリアの手を握り返したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───それからラインハルトが拾った棍棒が滑らかな断面を晒して、鋭い音を立てて地面に落ちた後に、察したスバルがラインハルトからの気まずい視線を受けながらジャージをめくると、腹部が横一文に裂け、大量の鮮血が噴出して。

 

 

 

──ああ、焦ってたりしててもマジ可愛いな、異世界ファンタジー。

 

 

そんないつかと同じような感想を最後に、激痛とショックがスバルの意識を波涛の如く押し流していったのは、また後の話。

 

 

 

 




お待たせしました。

次回からようやく、二章に入ります......フェルト達のその後は原作見ましょう(投げやり)


ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
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